はじめに|あなたの保険料、本当に適正ですか?
「保険料が家計を圧迫している気がするけれど、万が一のことを考えると解約するのが怖い…」
この記事をお読みいただいているあなたも、そんな複雑な想いを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
私は、CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)資格を持ち、大手銀行で10年間、証券会社で5年間、個人のお客様の資産運用や保険相談に携わってきました。これまで3,000件を超える保険相談を受け、多くの方の「保険の見直し」をお手伝いしてきました。
実は、私自身も20代後半の結婚当初、保険の営業マンに言われるがままに加入した結果、月々の保険料が7万円を超え、家計を大きく圧迫していた経験があります。当時の年収は450万円でしたから、年間の保険料が84万円。手取り年収の約25%を保険料に費やしていたのです。
「これはおかしい」と気づき、保険の勉強を始めて見直しを行った結果、保障内容を充実させながらも、保険料を月2万8千円まで削減することができました。年間で約50万円の節約です。
この経験が、私が保険相談に力を入れるきっかけとなりました。
保険は人生で2番目に大きな買い物と言われています。住宅の次に高額な支出となる保険を、なんとなく継続していませんか?
この記事では、私の実体験と、3,000件の相談経験から得た知見をもとに、あなたが「本当に必要な保障」を見極め、年間20万円以上の保険料削減を実現する方法をお伝えします。
第1章|なぜ多くの人が「保険貧乏」になってしまうのか
1-1. 保険業界の「売る側の都合」を知っていますか?
保険の見直しを始める前に、まず知っておいていただきたいのが、保険業界の構造的な問題です。
保険会社の営業員や代理店は、当然ながら「保険を販売すること」が仕事です。そして、多くの場合、販売手数料は保険料が高いほど、保障期間が長いほど高くなる仕組みになっています。
営業員にとって最も「おいしい」商品は何でしょうか?
それは、終身保険や養老保険といった「貯蓄性の高い保険」や、がん保険・医療保険の「特約を多数付けた商品」です。これらの商品は保険料が高く、営業員の手数料収入も大きくなります。
一方で、掛け捨ての定期保険や、シンプルな医療保険は保険料が安く、営業員の手数料も少なくなります。そのため、本当にお客様のためを思うなら勧めるべき「コストパフォーマンスの良い保険」が提案されにくい構造になっているのです。
1-2. 「不安」を煽る営業トークの落とし穴
保険営業の現場でよく使われるトークをいくつかご紹介しましょう。
「今は健康でも、将来病気になった時に保険に入れなくなりますよ」
これは、確かに一理あります。しかし、重要なのは「どの程度の保障があれば十分なのか」という視点です。がんになった時の治療費は確かに高額になる可能性がありますが、高額療養費制度により、実際の自己負担は月10万円程度に抑えられます。
「働けなくなった時のための保障も必要ですよね」
就業不能保険や所得補償保険の提案でよく使われるフレーズです。しかし、会社員の方であれば、傷病手当金により給料の約3分の2が最長1年6か月支給されます。また、障害が残った場合は障害年金もあります。
これらの公的保障を説明せずに民間保険を勧めるのは、フェアではありません。
1-3. 私が経験した「保険貧乏」の実例
ここで、私が実際にお会いした相談者の方の事例をご紹介します(プライバシーに配慮し、一部内容を変更しています)。
35歳会社員のAさん(年収500万円、妻・子ども2人)の場合
Aさんが加入していた保険は以下の通りでした:
- 終身保険(死亡保障1,000万円):月額2万5千円
- 定期保険(死亡保障2,000万円):月額8千円
- がん保険(診断給付金100万円+各種特約):月額1万2千円
- 医療保険(日額1万円+各種特約):月額9千円
- 三大疾病保険:月額7千円
- 妻の医療保険:月額6千円
合計月額:6万7千円(年額80万4千円)
Aさんの手取り年収が約400万円でしたから、なんと年収の20%を保険料に支払っていたのです。
「家計が苦しくて、子どもの習い事も諦めさせている状況です。でも、保険は万が一のためには必要だし…」
そう肩を落としながら相談に来られたAさん。しかし、詳しく保障内容を分析すると、明らかに「過剰保障」の状態でした。
Aさんに必要な保障を計算し直した結果、以下のようになりました:
見直し後の保険設計
- 収入保障保険(月額15万円×60歳まで):月額5千円
- がん保険(診断給付金100万円のみ):月額3千円
- 医療保険(日額5千円、シンプルタイプ):月額3千円
- 妻の医療保険(日額5千円):月額3千円
合計月額:1万4千円(年額16万8千円)
なんと、年間で63万6千円の削減となりました。保障内容は必要十分に保ちながら、これだけの節約ができたのです。
第2章|本当に必要な保障を見極める「3つの基本原則」
2-1. 基本原則①:「起こる確率は低いが、起こったら経済的に致命傷となるリスク」にのみ備える
保険の本来の目的は、「滅多に起こらないけれど、起こったら家計が破綻してしまうようなリスク」に備えることです。
例えば、以下のようなケースです:
- 一家の大黒柱が急死し、残された家族の生活費が困窮する
- 長期間の入院が必要な重篤な病気にかかり、高額な治療費がかかる
- 火事で家が全焼し、建て直しに数千万円が必要になる
一方で、「起こる確率が高いリスク」や「起こっても貯蓄で対応できる程度のリスク」については、保険で備える必要はありません。
保険で備える必要がないリスクの例:
- 風邪をひいて通院費が1万円かかる(頻繁に起こり、金額も小さい)
- 1週間程度の入院(貯蓄で対応可能)
- 老後の生活費不足(確実に起こることなので、貯蓄や投資で準備すべき)
2-2. 基本原則②:公的保障を正しく理解し、「足りない部分」だけを民間保険で補う
多くの方が誤解されているのですが、日本には非常に充実した公的保障制度があります。
主な公的保障制度
高額療養費制度 医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。一般的な所得の方(年収約370万円~約770万円)の場合、月の自己負担上限額は約9万円です。
傷病手当金 会社員の方が病気やケガで働けなくなった場合、給料の約3分の2が最長1年6か月支給されます。
障害年金 病気やケガで障害が残った場合、障害の程度に応じて年金が支給されます。
遺族年金 一家の大黒柱が亡くなった場合、残された配偶者や子どもに年金が支給されます。
これらの公的保障を踏まえて、「本当に足りない部分」だけを民間保険で補うのが合理的です。
2-3. 基本原則③:ライフステージの変化に合わせて定期的に見直す
保険は「一度入ったら終わり」ではありません。結婚、出産、住宅購入、子どもの独立、定年退職など、ライフステージが変わるたびに、必要な保障額も変化します。
ライフステージ別の保障ニーズ
独身時代
- 死亡保障:基本的に不要(葬儀費用程度の200万円があれば十分)
- 医療保障:最低限でOK(貯蓄で対応できる範囲)
結婚・出産期
- 死亡保障:家族の生活費を考慮して大幅にアップ
- 医療保障:働けない期間の収入減少リスクを考慮
子育て期
- 死亡保障:子どもの教育費を含めて最も高額に設定
- 医療保障:家計への影響が大きいため手厚く
子ども独立期
- 死亡保障:子どもの独立に合わせて段階的に減額
- 医療保障:老後の医療費リスクを考慮して見直し
老後期
- 死亡保障:配偶者の生活費程度まで減額
- 医療保障:介護リスクも含めて検討
第3章|年間20万円削減を実現する「保険見直し」の具体的手順
3-1. 【STEP1】現在加入している保険の「棚卸し」をする
まずは、現在加入している保険をすべて洗い出しましょう。
用意するもの
- 保険証券
- 年払い・月払いの保険料が分かる資料
- 電卓またはスマートフォンの計算機能
記録すべき項目
- 保険種類(死亡保険、医療保険、がん保険など)
- 保険会社名・商品名
- 保障内容(死亡保険金額、入院日額など)
- 保険料(月額・年額)
- 保険期間(終身・定期の別、満期日)
- 払込期間
- 解約返戻金の有無・金額
私がお勧めする整理表の作り方
保険種類 | 保険会社・商品名 | 主な保障内容 | 保険料(月額) | 保険料(年額) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
終身保険 | ○○生命「××保険」 | 死亡保障500万円 | 18,000円 | 216,000円 | 解約返戻金あり |
がん保険 | △△生命「がん保険□□」 | 診断給付金100万円+特約5つ | 8,000円 | 96,000円 | 特約の内容要確認 |
この作業により、「こんなに保険料を払っていたのか」という現実を数字で把握できます。
3-2. 【STEP2】家族構成と家計状況から「必要保障額」を計算する
次に、あなたとご家族にとって本当に必要な保障額を計算します。
死亡保障の必要額計算方法
①遺族の生活費を計算する
現在の生活費から、亡くなった方の分を差し引いて計算します。
- 現在の生活費:月30万円
- 亡くなった夫の分(食費・小遣いなど):月5万円
- 遺族の生活費:月25万円
②遺族の収入を計算する
- 妻のパート収入:月8万円
- 遺族年金:月12万円
- 不足額:月5万円(25万円 – 8万円 – 12万円)
③子どもが独立するまでの期間を計算する
- 子どもの現在の年齢:5歳と2歳
- 下の子が22歳になるまで:20年間
④必要な死亡保険金額を計算する
月5万円 × 12か月 × 20年 = 1,200万円
ただし、教育費の支出がある期間(約18年間)は、さらに月2万円程度上乗せを考慮します。 月2万円 × 12か月 × 18年 = 432万円
合計必要保障額:約1,600万円
医療保障の必要額計算方法
①高額療養費制度を考慮した自己負担額を確認する
一般的な年収の方の場合:月約9万円の自己負担上限
②差額ベッド代や食事代などの実費を見積もる
- 差額ベッド代(希望する場合):1日5,000円~
- 食事代:1日約1,500円
③働けない期間の収入減少を考慮する
会社員の場合:傷病手当金で給料の約3分の2を補償 自営業者の場合:公的保障なし
④必要な医療保険の保障額を計算する
会社員の場合:入院日額5,000円~7,000円程度で十分 自営業者の場合:入院日額10,000円程度
3-3. 【STEP3】「削るべき保険」と「残すべき保険」を仕分けする
必要保障額を計算したら、現在の保険と比較して、削るべきものと残すべきものを仕分けしましょう。
削るべき保険の特徴
①貯蓄性の高い保険(終身保険・養老保険・学資保険)
これらの保険は、保障機能と貯蓄機能が混在しているため、コストパフォーマンスが悪いことが多いです。
例えば、終身保険で死亡保障500万円、月保険料18,000円の場合:
- 30年間の総払込保険料:648万円
- 30年後の解約返戻金:約450万円
これは、年利回りに換算するとマイナスになってしまいます。同じ保障を掛け捨ての定期保険で確保すれば、月3,000円程度で済む場合が多く、差額の15,000円を投資に回した方が、はるかに効率的です。
②特約が多数付いた医療保険・がん保険
- 先進医療特約:確かに先進医療は高額ですが、利用する確率は非常に低い
- 通院特約:外来治療は高額療養費の対象外で、自己負担も限定的
- がん診断給付金の複数回給付:がんの再発リスクはありますが、初回の100万円で十分対応可能
③就業不能保険・所得補償保険
会社員の方の場合、傷病手当金があるため、基本的には不要です。
残すべき保険の特徴
①収入保障保険
死亡保障を効率的に確保できる優秀な商品です。子どもの成長に合わせて保障額が減っていく仕組みのため、保険料も割安です。
②シンプルな医療保険
入院日額5,000円~7,000円程度で、余計な特約が付いていないもの。
③シンプルながん保険
診断給付金100万円程度のシンプルなもの。がん治療の初期費用をカバーできれば十分です。
3-4. 【STEP4】新しい保険への切り替えと解約のタイミング
保険の見直しで重要なのが、切り替えのタイミングです。
新しい保険に加入してから古い保険を解約する
これは鉄則です。先に解約してしまうと、新しい保険の加入審査で万が一引受拒否になった場合、無保険状態になってしまいます。
解約返戻金がある保険の取り扱い
終身保険などで解約返戻金がある場合は、解約のタイミングを慎重に検討しましょう。
- 加入から10年未満:解約返戻金が払込保険料を大きく下回る可能性が高い
- 加入から10~15年:解約返戻金と払込保険料がほぼ同額
- 加入から20年以上:解約返戻金が払込保険料を上回る場合もある
ただし、これらの保険を継続しても、将来的にインフレリスクを考慮すると、実質的な価値は目減りします。早めに解約して、その資金を投資に回す方が合理的な場合が多いです。
第4章|保険種類別「賢い選び方」完全ガイド
4-1. 死亡保険|収入保障保険が最もコストパフォーマンスが良い理由
死亡保険には大きく分けて3つの種類があります。
①定期保険 一定期間のみ保障される掛け捨ての保険。保険料は安いが、保障期間が終了すると保障がなくなる。
②終身保険 一生涯保障が続く保険。保険料は高いが、解約返戻金がある。
③収入保障保険 毎月一定額の年金を受け取れる保険。保険期間が経過するにつれて保障額が減っていく。
なぜ収入保障保険がおすすめなのか
子育て世代の死亡保障ニーズは、子どもの成長と共に減少していきます。子どもが小さいうちは教育費や生活費が長期間必要ですが、子どもが成長するにつれて必要期間は短くなります。
この合理的なニーズに最も適しているのが収入保障保険です。
具体的な比較例
35歳男性、60歳まで保障、保障額1,500万円相当の場合:
- 定期保険(保険金額1,500万円):月額約6,000円
- 終身保険(死亡保険金1,500万円):月額約35,000円
- 収入保障保険(月額10万円×25年):月額約4,000円
収入保障保険が最も保険料が安く、合理的であることが分かります。
収入保障保険選びのポイント
- 非喫煙者割引があるか確認する タバコを吸わない方は、保険料が20~30%割安になる商品があります。
- 健康体割引があるか確認する BMIや血圧などの健康状態が良好な場合、さらに保険料が割安になります。
- 保険料払込免除特約は必要最小限に がんなどの特定疾病で保険料が免除になる特約がありますが、その分保険料が高くなります。本当に必要かよく検討しましょう。
4-2. 医療保険|「入院日額はいくら必要?」の正しい考え方
医療保険を選ぶ際に最も悩むのが、「入院日額をいくらにすれば良いのか」という点です。
実際の入院費用の内訳を知る
①医療費(保険適用部分) 高額療養費制度により、一般的な年収の方は月約9万円が上限
②差額ベッド代
- 大部屋(4人部屋以上):0円
- 2人部屋:平均3,000円/日
- 1人部屋:平均6,000円/日
③食事代 1日約1,500円(保険外)
④日用品・衣類代 1日約1,000円
⑤家族の交通費・宿泊費 地域や状況により大きく変動
入院日額の適正額を計算する
一般的なケース(大部屋を利用)の場合
- 高額療養費の自己負担:1日約3,000円(月9万円÷30日)
- 食事代:1日1,500円
- 日用品代:1日1,000円
- 合計:1日約5,500円
このため、入院日額5,000円~7,000円程度あれば十分です。
個室希望の場合 差額ベッド代6,000円をプラスして、入院日額12,000円程度が目安になります。
医療保険選びのポイント
①手術給付金の倍率を確認する 入院を伴う手術:入院日額の10~20倍 外来手術:入院日額の5倍程度が標準的です。
②先進医療特約は付けるべきか? 先進医療特約の保険料は月100円程度と安いため、「お守り」として付けても良いでしょう。ただし、先進医療を受ける確率は非常に低いことは理解しておきましょう。
③通院特約は基本的に不要 外来治療費は高額になりにくく、通院特約の給付条件も厳しいため、コストパフォーマンスは良くありません。
4-3. がん保険|「診断給付金100万円」あれば十分な理由
がん保険については、多くの方が「がんになったらお金がかかる」という漠然とした不安から、過剰な保障を求めがちです。
がん治療の実際の費用
①手術費用 健康保険が適用されるため、高額療養費制度により月約9万円が上限
②抗がん剤治療費 こちらも健康保険適用。外来治療の場合も高額療養費制度の対象
③入院費用 他の病気と同じく、高額療養費制度により月約9万円が上限
④自由診療(保険外治療) こちらは全額自己負担となりますが、効果が不明確な治療も多く含まれます。
なぜ診断給付金100万円で十分なのか
がん治療で最も経済的な負担が大きいのは、治療期間中の収入減少です。手術や抗がん剤治療により仕事を休まざるを得ない期間の収入をカバーするのが、がん保険の主な役割です。
診断給付金100万円があれば:
- 治療初期の医療費:約30万円(3か月分の高額療養費)
- 収入減少分の補填:約70万円(月15万円×約5か月)
この程度の資金があれば、標準的ながん治療には十分対応できます。
がん保険選びのポイント
①診断給付金は「悪性新生物」だけでなく「上皮内新生物」も対象になるものを選ぶ 上皮内新生物(初期がん)も保障対象になっているかを必ず確認しましょう。
②複数回給付よりも、給付条件を重視する 診断給付金の複数回給付(再発時)も魅力的ですが、2回目以降の給付条件が厳しい商品が多いです。それよりも、1回目の給付条件が明確で分かりやすい商品を選びましょう。
③先進医療特約は付けても良いが、過度な期待は禁物 先進医療は治療効果が確立されていない実験的な治療が多く含まれます。重粒子線治療などは確かに高額ですが、利用する確率は極めて低いことを理解しておきましょう。
4-4. 学資保険|「教育費は保険で準備すべきではない」理由
学資保険について相談を受けることがよくありますが、現在の低金利環境では、基本的におすすめできません。
学資保険の問題点
①返戻率が低い 現在の学資保険の返戻率は、多くの商品で103~107%程度です。18年間お金を拘束して、わずか3~7%の増加では、インフレリスクを考慮するとマイナスになる可能性があります。
②途中解約のリスク 家計が苦しくなった時に途中解約すると、元本割れしてしまいます。教育費準備という長期的な目標と、家計の流動性確保のバランスが悪いのです。
③契約者の死亡リスクへの対応が中途半端 学資保険には契約者(通常は親)が死亡した場合の保険料払込免除特約が付いていますが、この保障のために返戻率が下がっています。死亡保障は別途定期保険で準備し、教育費は効率的に運用した方が合理的です。
教育費の効率的な準備方法
①つみたてNISAを活用する 年間40万円まで、最長20年間の積立投資が可能で、運用益が非課税になります。
- 毎月3万円を18年間積立
- 年利回り3%で運用できた場合
- 元本648万円が約850万円に成長
②ジュニアNISAを活用する 2023年で新規受付は終了しましたが、既存の口座は18歳まで運用可能です。
③一般的な投資信託で積立投資 つみたてNISA枠を超えた部分は、一般的な投資信託で積立投資を行います。
4-5. 介護保険|公的介護保険を理解してから検討する
民間の介護保険の検討前に、まず公的介護保険制度を正しく理解しましょう。
公的介護保険の概要
①利用できるサービス
- 居宅サービス(ホームヘルプ、デイサービスなど)
- 施設サービス(特別養護老人ホームなど)
- 地域密着型サービス
②自己負担割合 所得に応じて1~3割負担
③月額利用限度額 要介護度に応じて設定(要介護5で約36万円)
民間介護保険が必要なケース
①公的介護保険ではカバーしきれない費用
- 有料老人ホームの入居金や月額費用の差額
- 介護用品の購入費
- 家族の交通費や宿泊費
②家族の収入減少リスク 家族が介護のために仕事を休んだり、退職したりするリスク
民間介護保険選びのポイント
①給付条件を必ず確認する
- 公的介護保険の要介護度に連動するタイプ
- 保険会社独自の基準で判定するタイプ
公的介護保険に連動するタイプの方が、給付条件が明確で分かりやすいです。
②一時金タイプか年金タイプか 一時金タイプ:まとまった資金が一度に受け取れる 年金タイプ:毎月一定額を受け取れる
年金タイプの方が、長期間の介護に適しています。
第5章|「解約すべき保険」の見極め方と解約手続きの注意点
5-1. 解約すべき保険の典型パターン
これまでの相談経験から、解約をお勧めすることが多い保険のパターンをご紹介します。
①外貨建て保険
「米ドル建て終身保険」「豪ドル建て養老保険」などの外貨建て保険は、以下の問題があります:
- 為替手数料が高い(往復で4~6%程度)
- 保険関係費用が不透明
- 為替リスクを保険で取る合理性が低い
外貨投資をしたいなら、外貨建てETFや外国債券で直接投資した方が、手数料も安く効率的です。
②変額保険
「運用実績に応じて保険金額が変動する保険」として販売されていますが:
- 運用手数料が高い(年1.5~3%程度)
- 運用商品の選択肢が限定的
- 保険部分と運用部分を分離した方が効率的
投資をしたいなら投資信託で、保障が欲しいなら掛け捨て保険で、それぞれ別々に対応した方が良いでしょう。
③特約が多数付いた古い保険
10年以上前に加入した保険で、以下のような特約が多数付いているものは見直しの対象です:
- 成人病特約
- 女性疾病特約
- 通院特約
- 家族特約
これらの特約は給付条件が複雑で、実際に給付を受けられる確率が低い傾向にあります。
5-2. 解約時の注意点|「解約控除」と「解約返戻金」の計算方法
保険を解約する際は、いくつかの注意点があります。
①解約控除について
加入から一定期間内(通常は10年以内)に解約すると、解約控除という手数料が差し引かれることがあります。
例:終身保険の場合
- 加入1年以内の解約:解約控除20万円
- 加入3年以内の解約:解約控除10万円
- 加入5年以内の解約:解約控除5万円
②解約返戻金の計算例
加入から5年経過した終身保険(月払い保険料2万円)の場合:
- 総払込保険料:2万円 × 12か月 × 5年 = 120万円
- 解約返戻金(保険会社が提示):65万円
- 実質的な損失:55万円
このように、解約返戻金は払込保険料を大きく下回ることが多いです。
③解約の判断基準
解約返戻金が払込保険料を下回っていても、以下の場合は解約を検討すべきです:
- 今後も保険料を払い続ける負担が重い
- 保障内容が現在のニーズに合っていない
- 他の金融商品で運用した方が効率的
「損切り」の考え方で判断することが重要です。
5-3. 解約手続きの具体的な流れ
①保険会社への連絡
解約の意思を保険会社に連絡します。方法は以下の通りです:
- 電話(コールセンター)
- インターネット(マイページ)
- 営業担当者への連絡
②解約請求書の記入・提出
保険会社から解約請求書が送付されるので、必要事項を記入して返送します。
必要な書類:
- 解約請求書
- 保険証券
- 印鑑証明書(高額な場合)
- 本人確認書類
③解約返戻金の受取り
通常、手続き完了から1週間程度で指定口座に振り込まれます。
④税務上の取り扱い
解約返戻金が払込保険料を上回った場合は、一時所得として税金がかかります。
一時所得 = (解約返戻金 – 払込保険料 – 50万円)× 1/2
例:解約返戻金200万円、払込保険料150万円の場合 一時所得 = (200万円 – 150万円 – 50万円)× 1/2 = 0円(税金なし)
5-4. 解約を引き止める営業マンへの対処法
保険を解約する際、営業担当者から強い引き止めを受けることがあります。
よくある引き止めトーク
「今解約すると大損しますよ」 →解約返戻金が少ないことを理由にした引き止めですが、将来的な損失の拡大を防ぐ意味で解約が正しい判断の場合もあります。
「保険料の支払いを一時停止する方法もあります」 →保険料の払済保険への変更を提案されることがありますが、根本的な解決にはなりません。
「特約だけ解約して、主契約は残しませんか」 →一見合理的に見えますが、主契約自体に問題がある場合は意味がありません。
効果的な対処法
①事実を淡々と伝える 「家計状況が変わったので、保険を見直すことにしました」 「他の金融商品で資産形成を行うことにしました」
②感情論に巻き込まれない 「お世話になったから…」という情に訴える話は別として、経済的な判断は合理的に行いましょう。
③書面での手続きを要求する 口約束ではなく、必ず書面での解約手続きを要求しましょう。
第6章|新しい保険選び|「本当に良い保険」を見分ける15のチェックポイント
6-1. 保険会社・商品選びの基本チェックポイント
①ソルベンシー・マージン比率を確認する
ソルベンシー・マージン比率は、保険会社の健全性を示す指標です。200%以上が健全とされており、できれば500%以上の会社を選びたいところです。
主要保険会社のソルベンシー・マージン比率(2024年度):
- 日本生命:約900%
- 第一生命:約700%
- 明治安田生命:約1,000%
②格付けを確認する
格付会社による保険会社の格付けも参考になります:
- S&P、Moody’s、R&Iなどの格付け
- A格以上が望ましい
③商品内容の透明性
- 保険料の内訳が明確に説明されているか
- 解約返戻金の推移が分かりやすく提示されているか
- 特約の給付条件が複雑すぎないか
6-2. 死亡保険選びの具体的チェックポイント
①保険料の安さだけで選ばない
最安値の保険が必ずしも良いとは限りません。以下の点もチェックしましょう:
- 更新時の保険料上昇幅
- 健康体割引の適用条件
- 保険会社の安定性
②更新型か全期型かを確認する
- 更新型:一定期間ごとに保険料が上がる
- 全期型:保険期間中の保険料が一定
子育て期の死亡保障は、全期型の方が計画を立てやすいです。
③保険金の支払い実績を確認する
保険会社のホームページで、保険金の支払い件数や支払い率を確認できます。支払い率が極端に低い会社は避けた方が無難です。
④契約者配当の有無
相互会社の保険では、契約者配当が期待できる場合があります。ただし、配当は確約されたものではないため、あくまで「おまけ」程度に考えましょう。
6-3. 医療保険選びの具体的チェックポイント
①入院日数の制限を確認する
- 1入院あたりの支払い限度日数
- 通算支払い限度日数
現在は入院の短期化が進んでいるため、1入院60日程度の保障があれば十分です。
②手術給付金の対象範囲を確認する
- 公的医療保険の手術料の算定対象となる手術すべてが対象か
- 内視鏡手術や日帰り手術も対象か
③先進医療特約の保障範囲
- 技術料の実額保障か定額保障か
- 交通費・宿泊費の保障があるか
④給付金の支払い条件
- 日帰り入院も対象になるか
- 外来手術も対象になるか
6-4. がん保険選びの具体的チェックポイント
①診断給付金の給付条件
- 上皮内新生物(初期がん)も対象か
- 診断確定時に即座に支払われるか
②複数回給付の条件
- 2回目以降の給付条件は現実的か
- 給付間隔の制限はあるか
③治療給付金の対象範囲
- 抗がん剤治療は月単位での給付か
- 放射線治療は回数制限があるか
④免責期間
がん保険には通常、加入から90日間の免責期間があります。この期間中にがんと診断されても給付金は支払われません。
6-5. 契約時の最終チェックポイント
①クーリングオフ期間を確認する
保険契約には、契約から8日以内であれば無条件で解約できるクーリングオフ制度があります。契約後に冷静に考え直す期間として活用しましょう。
②告知事項を正確に記入する
健康状態や既往歴は、正確に告知する必要があります。告知義務違反があると、給付金が支払われない可能性があります。
③契約者・被保険者・受益者の設定を確認する
税務上の取り扱いに影響するため、適切な設定になっているか確認しましょう。
④保険料の支払い方法を検討する
- 月払い vs 年払い:年払いの方が保険料は安くなりますが、家計への負担を考慮して決めましょう
- 口座振替 vs クレジットカード払い:クレジットカード払いでポイントが貯まる場合もあります
第7章|保険見直し後の「資産形成戦略」
7-1. 保険料削減で生まれた「月2~5万円」の活用法
保険の見直しにより年間20万円以上の削減ができると、月換算で2~5万円程度の余裕が生まれます。この資金をどう活用するかで、将来の家計は大きく変わります。
削減できた保険料の活用優先順位
①緊急時資金の確保 まずは、生活費の6か月分程度の緊急時資金を銀行預金で確保しましょう。
例:月の生活費25万円の場合 25万円 × 6か月 = 150万円
②高金利の借入れがあれば返済を優先 住宅ローン以外で金利3%以上の借入れがあれば、投資よりも返済を優先した方が確実にプラスになります。
- クレジットカードのリボ払い:年15~18%
- カードローン:年3~15%
- 自動車ローン:年2~5%
③つみたてNISAを活用した長期投資 年間40万円(月約3万3千円)までの投資信託購入については、運用益が非課税になります。
④iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金準備 会社員の場合、月23,000円まで拠出でき、拠出額は全額所得控除の対象になります。
7-2. つみたてNISAを活用した効率的な資産形成
つみたてNISAの基本的な仕組み
- 年間投資額:40万円まで
- 投資期間:20年間(2024年から新しいNISA制度が開始)
- 対象商品:金融庁が認めた投資信託・ETF
- 税制優遇:運用益が非課税
おすすめの投資信託選び
①信託報酬(手数料)の安さ 年0.2%以下のインデックスファンドを選びましょう。
おすすめファンド例:
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):信託報酬0.1144%
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):信託報酬0.0968%
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド:信託報酬0.0938%
②分散投資の重要性
全世界株式に投資するファンドなら、一本で十分な分散効果が得られます。
③長期投資のシミュレーション
毎月3万円を20年間、年利回り5%で運用した場合:
- 元本:720万円
- 運用益:約500万円
- 合計:約1,220万円
保険で同じ金額を20年間積み立てても、せいぜい750万円程度にしかなりません。差額は約470万円にもなります。
7-3. iDeCoで老後資金を効率的に準備する方法
iDeCoの税制優遇は保険を大きく上回る
①拠出時の所得控除 拠出額は全額所得控除の対象となります。
例:年収500万円の会社員が月23,000円拠出した場合 年間拠出額:276,000円 税率20%(所得税+住民税)と仮定 年間節税額:約55,000円
②運用中の非課税 運用益に対する税金(通常20.315%)がかかりません。
③受取時の優遇 年金で受け取る場合:公的年金等控除の対象 一時金で受け取る場合:退職所得控除の対象
iDeCoの商品選びのポイント
①手数料の安いネット証券を選ぶ
- SBI証券:口座管理手数料無料
- 楽天証券:口座管理手数料無料
- マネックス証券:口座管理手数料無料
②商品ラインナップが豊富な金融機関を選ぶ 低コストのインデックスファンドが充実している金融機関を選びましょう。
③元本確保型商品の比率は最小限に 定期預金や保険商品の比率が高いと、インフレリスクに対応できません。基本的には投資信託中心の配分にしましょう。
7-4. 住宅ローンの繰上返済vs投資の判断基準
保険料削減で生まれた余裕資金を、住宅ローンの繰上返済に充てるか、投資に回すかは多くの方が悩むポイントです。
住宅ローンの繰上返済を優先すべきケース
①住宅ローン金利が3%以上の場合 投資の期待リターンを上回る確実な効果が得られます。
②変動金利で金利上昇リスクを感じている場合 将来の金利上昇に備えて、元本を減らしておく安心感があります。
③借入残高が多く、精神的負担を感じている場合 数字だけでは測れない「借金のない安心感」も大切な要素です。
投資を優先すべきケース
①住宅ローン金利が1%台以下の場合 長期的な投資リターン(年3~5%)を期待できるなら、投資の方が有利です。
②住宅ローン控除を受けている場合 住宅ローン控除により実質的な負担金利が0.5%以下になっている場合は、投資を優先しましょう。
③まだ若く、投資期間を長く取れる場合 20~30代であれば、長期投資の複利効果を最大限活用できます。
バランス型のアプローチ
余裕資金の半分を繰上返済、半分を投資に回すという方法もあります。リスクとリターンのバランスを取りながら、両方のメリットを享受できます。
第8章|保険営業マンに騙されない「5つの護身術」
8-1. 護身術①:「今だけ」「あなただけ」の甘い言葉に要注意
保険営業でよく使われる心理的なテクニックをご紹介します。
①希少性の演出 「この商品は来月で販売停止になります」 「年度末までの限定商品です」
→保険商品に「限定」はほぼありません。似たような商品は他社からも販売されています。
②特別感の演出 「あなただけに特別な条件でご提案します」 「上司に特別に掛け合いました」
→保険料は金融庁の認可を受けて決められており、個別に割引することはできません。
③緊急性の演出 「今の年齢なら安い保険料で加入できます」 「健康なうちに入っておかないと」
→確かに年齢が上がれば保険料は高くなりますが、必要のない保険に加入する理由にはなりません。
8-2. 護身術②:「返戻率」の数字に惑わされない
返戻率のマジック
「この終身保険は返戻率105%です!元本保証で利息も付きます!」
このような説明を受けた時は、以下の点を確認しましょう:
①いつの時点の返戻率か?
- 加入後10年:返戻率70%
- 加入後20年:返戻率90%
- 加入後30年:返戻率105%
30年後の返戻率だけを強調して、途中解約時の元本割れリスクを説明しない場合があります。
②実質的な利回りはどの程度か? 返戻率105%を30年で実現する場合: (1.05)^(1/30) – 1 = 約0.16%
年利回りわずか0.16%です。銀行の定期預金よりも低い水準です。
③インフレリスクは考慮されているか? 年1~2%のインフレが続けば、実質的にはマイナスリターンになってしまいます。
8-3. 護身術③:「特約」の罠を見抜く
保険の特約は、営業員にとって手数料を稼ぎやすい部分です。
不要な特約の典型例
①リビング・ニーズ特約 余命6か月と診断された場合に死亡保険金の一部を前払いで受け取れる特約ですが、実際に利用するケースは稀です。
②介護前払特約 要介護状態になった場合に死亡保険金を前払いで受け取れる特約ですが、給付条件が厳しく、実際の給付率は低い傾向にあります。
③疾病障害による保険料払込免除特約 がんなどの特定疾病になった場合に以後の保険料が免除される特約ですが、その分基本保険料が高くなります。
特約検討時のチェックポイント
- この特約がない場合、どの程度困るのか?
- 特約の保険料は妥当な水準か?
- 給付条件は現実的か?
8-4. 護身術④:営業員の「資格」と「経験」を確認する
保険募集人の資格レベル
保険を販売するためには、以下の資格が必要です:
①一般課程試験 保険募集の基本的な知識を問う試験(合格率約90%)
②専門課程試験 より専門的な知識を問う試験(合格率約80%)
③応用課程試験 コンプライアンスやコンサルティング能力を問う試験
④生命保険大学課程 最も高レベルの試験
確認すべきポイント
- どのレベルの資格を持っているか?
- ファイナンシャルプランナー(FP)資格を持っているか?
- 保険業界での実務経験年数は?
資格が低い営業員ほど、会社のマニュアル通りの提案しかできない傾向があります。
8-5. 護身術⑤:複数社の見積もりを必ず取る
比較検討の重要性
保険は目に見えない商品のため、比較が難しく感じられますが、以下の点で必ず複数社を比較しましょう。
①同条件での保険料比較
- 同じ年齢・性別・健康状態
- 同じ保障額・保障期間
- 同じ特約内容
②保険会社の安定性比較
- ソルベンシー・マージン比率
- 格付け
- 支払い実績
③アフターサービスの比較
- 給付金請求手続きの簡便性
- コールセンターの対応時間
- インターネット上での手続き対応範囲
効率的な比較方法
①保険の窓口・保険代理店の活用 複数社の商品を比較提案してもらえますが、代理店の手数料体系により推奨商品に偏りがある場合があります。
②インターネット上の一括見積もりサービス 基本的な条件での比較は可能ですが、詳細な相談はできません。
③各社のホームページでの資料請求 最も正確な情報が得られますが、手間がかかります。
比較時の注意点
- 保険料の安さだけで判断しない
- 給付条件の違いを必ず確認する
- 更新時の保険料上昇も考慮する
第9章|保険見直し成功事例|「年間30万円削減」を実現した5つの家庭
実際に保険見直しを行い、大幅な削減を実現されたご家庭の事例をご紹介します。すべて私が実際に相談をお受けしたケースですが、プライバシー保護のため、一部内容を変更しています。
9-1. 【事例1】30代共働き夫婦|年間32万円削減(月2万7千円→月1万円)
【ご家族構成】
- 夫:32歳(会社員、年収550万円)
- 妻:30歳(会社員、年収420万円)
- 子ども:3歳、1歳
【見直し前の保険内容】
夫の保険
- 終身保険(死亡保障800万円):月15,000円
- がん保険(診断給付金100万円+特約6つ):月8,000円
- 医療保険(日額10,000円+特約4つ):月6,000円
- 小計:月29,000円
妻の保険
- 終身保険(死亡保障300万円):月8,000円
- 女性医療保険(日額10,000円+特約3つ):月5,000円
- がん保険(診断給付金50万円):月4,000円
- 小計:月17,000円
子どもの保険
- 学資保険2件:月8,000円
【合計:月54,000円(年間64万8千円)】
【見直し後の保険設計】
夫の保険
- 収入保障保険(月額12万円×60歳まで):月4,000円
- がん保険(診断給付金100万円のみ):月2,000円
- 小計:月6,000円
妻の保険
- 収入保障保険(月額8万円×60歳まで):月2,000円
- 医療保険(入院日額5,000円):月2,000円
- 小計:月4,000円
【合計:月10,000円(年間12万円)】
【削減効果:年間52万8千円】
見直しのポイント
①終身保険を解約し、必要な期間だけの死亡保障を収入保障保険で確保 ②過剰な特約をすべて削除 ③学資保険を解約し、つみたてNISAでの教育費準備に変更
削減した資金の活用方法
- つみたてNISA:夫婦合計で月66,000円(年間80万円の非課税枠フル活用)
- 緊急時資金の積み増し:月20,000円
「保険料が家計を圧迫していたのが嘘のようです。子どもの将来のための教育費も、投資信託の積み立てで効率よく準備できそうで安心しました」(奥様談)
9-2. 【事例2】40代シングルマザー|年間24万円削減(月3万5千円→月1万5千円)
【ご家族構成】
- 母:42歳(会社員、年収380万円)
- 子ども:中学2年生、小学4年生
【見直し前の保険内容】
- 終身保険(死亡保障1,000万円):月20,000円
- がん保険(診断給付金200万円+特約多数):月12,000円
- 医療保険(日額15,000円+特約5つ):月8,000円
- 子ども2人の学資保険:月15,000円
【合計:月55,000円(年間66万円)】
【見直し後の保険設計】
- 収入保障保険(月額10万円×60歳まで):月4,000円
- がん保険(診断給付金100万円のみ):月3,000円
- 医療保険(入院日額5,000円):月3,000円
- 県民共済(子ども2人分):月2,000円
【合計:月12,000円(年間14万4千円)】
【削減効果:年間51万6千円】
見直しのポイント
①シングルマザーのため死亡保障は重要だが、収入保障保険で効率的に確保 ②がん保険の過剰な特約を整理 ③学資保険を解約し、児童手当の積み立てで教育費を準備
特に配慮した点
シングルマザーの方は、万が一の時の子どもの生活が心配で過剰な保障を求めがちです。しかし、遺族年金や児童扶養手当などの公的給付を正しく計算すると、必要な保障額はそれほど高額ではありません。
削減した資金の活用方法
- 緊急時資金の積み増し:月30,000円
- 子どもの習い事費用:月20,000円
「一人で子どもを育てていく不安から、保険をたくさん掛けすぎていました。正しい知識を教えてもらい、本当に必要な保障だけに絞ることで、こんなに家計が楽になるとは思いませんでした」
9-3. 【事例3】50代夫婦|年間36万円削減(月4万8千円→月1万8千円)
【ご家族構成】
- 夫:52歳(会社員、年収720万円)
- 妻:50歳(パート、年収120万円)
- 子ども:2人とも独立済み
【見直し前の保険内容】
夫の保険
- 終身保険(死亡保障2,000万円):月25,000円
- がん保険(特約多数):月8,000円
- 医療保険(日額10,000円):月5,000円
- 介護保険:月6,000円
妻の保険
- 終身保険(死亡保障500万円):月8,000円
- 医療保険(日額8,000円):月4,000円
【合計:月56,000円(年間67万2千円)】
【見直し後の保険設計】
夫の保険
- 定期保険(死亡保障500万円、65歳満期):月3,000円
- がん保険(診断給付金100万円のみ):月4,000円
- 医療保険(入院日額5,000円):月3,000円
妻の保険
- 医療保険(入院日額5,000円):月3,000円
- がん保険(診断給付金100万円のみ):月5,000円
【合計:月18,000円(年間21万6千円)】
【削減効果:年間45万6千円】
見直しのポイント
①子どもの独立により死亡保障を大幅に減額 ②50代からの新たな保険加入は保険料が高いため、必要最小限に絞る ③老後の医療費リスクに備えた医療保険は継続
削減した資金の活用方法
- iDeCo:夫婦合計で月41,000円(夫23,000円、妻18,000円)
- 定期預金(老後資金):月20,000円
「子どもが独立したのに、子育て期と同じ保障を続けていました。見直しにより、老後資金の準備により多くの資金を回せるようになりました」
9-4. 【事例4】20代独身男性|年間18万円削減(月2万3千円→月8千円)
【ご本人】
- 26歳(会社員、年収420万円)
【見直し前の保険内容】
- 終身保険(死亡保障500万円):月12,000円
- がん保険(特約多数):月6,000円
- 医療保険(日額10,000円+特約3つ):月5,000円
【合計:月23,000円(年間27万6千円)】
【見直し後の保険設計】
- 医療保険(入院日額5,000円):月3,000円
- がん保険(診断給付金100万円のみ):月2,000円
- 定期保険(死亡保障200万円):月1,000円
【合計:月6,000円(年間7万2千円)】
【削減効果:年間20万4千円】
見直しのポイント
①独身のため死亡保障は最小限(葬儀費用程度) ②医療保険・がん保険も最低限の保障に絞る ③終身保険は解約し、投資で資産形成を行う
削減した資金の活用方法
- つみたてNISA:月33,000円
- 将来の住宅購入資金積み立て:月15,000円
「社会人になったばかりで、保険の知識もなく営業マンの言われるままに加入していました。独身の自分にはこんなに大きな保障は必要ないと分かり、浮いたお金で将来のための投資を始めることができました」
9-5. 【事例5】60代夫婦|年間22万円削減(月3万円→月1万2千円)
【ご家族構成】
- 夫:63歳(定年退職済み、年金受給中)
- 妻:61歳(専業主婦)
【見直し前の保険内容】
夫の保険
- 終身保険(死亡保障800万円):月15,000円
- がん保険:月5,000円
- 介護保険:月8,000円
妻の保険
- 終身保険(死亡保障300万円):月6,000円
- 医療保険:月4,000円
【合計:月38,000円(年間45万6千円)】
【見直し後の保険設計】
夫の保険
- 終身保険(死亡保障300万円):月5,000円
- 医療保険(入院日額5,000円):月3,000円
妻の保険
- 医療保険(入院日額5,000円):月4,000円
【合計:月12,000円(年間14万4千円)】
【削減効果:年間31万2千円】
見直しのポイント
①年金生活のため、死亡保障は配偶者の生活資金程度に縮小 ②がん保険・介護保険は、貯蓄で対応することに変更 ③保険料負担を軽くし、年金生活の家計を安定させる
「年金生活になっても、現役時代と同じ保険を続けていました。本当に必要な保障を見直すことで、年金だけでも安心して暮らせるようになりました」
第10章|保険見直し後の「長期的な資産形成プラン」
10-1. 保険見直しで生まれた余裕資金の「5年・10年・20年計画」
保険見直しにより年間20万円以上の削減ができた場合、この資金をどのように活用するかで、将来の資産形成に大きな差が生まれます。
年間24万円(月2万円)削減できた場合のシミュレーション
【運用利回り3%の場合】
- 5年後:約128万円(元本120万円+運用益8万円)
- 10年後:約279万円(元本240万円+運用益39万円)
- 20年後:約658万円(元本480万円+運用益178万円)
【運用利回り5%の場合】
- 5年後:約133万円(元本120万円+運用益13万円)
- 10年後:約302万円(元本240万円+運用益62万円)
- 20年後:約822万円(元本480万円+運用益342万円)
保険で20年間積み立てていた場合、480万円がせいぜい500万円程度にしかなりませんから、投資による資産形成の威力が分かります。
10-2. ライフステージ別「最適な資産配分」戦略
20代・30代前半(独身・新婚期)
この時期は、まだ家族を支える責任が少なく、投資期間を長く取れるため、積極的な資産運用が可能です。
推奨資産配分
- 国内株式:30%
- 先進国株式:50%
- 新興国株式:10%
- 国内債券:5%
- 先進国債券:5%
具体的な商品例(つみたてNISA)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):70%
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX):20%
- eMAXIS Slim 国内債券インデックス:10%
30代後半・40代(子育て期)
教育費の準備が必要になる一方で、まだ投資期間は比較的長く取れる時期です。
推奨資産配分
- 国内株式:25%
- 先進国株式:40%
- 新興国株式:5%
- 国内債券:15%
- 先進国債券:15%
教育費準備の考え方
- 大学進学まで10年以上ある場合:投資中心で準備
- 大学進学まで5年以内の場合:定期預金中心で準備
10-3. 「つみたてNISA」「iDeCo」「課税口座」の使い分け戦略
優先順位①:つみたてNISA 年間40万円まで投資でき、運用益が非課税になります。いつでも解約できるため、最も活用しやすい制度です。
活用法
- 毎月33,000円の積立投資
- 全世界株式インデックスファンドを中心に投資
- 教育費など中期的な目標資金としても活用可能
優先順位②:iDeCo 拠出時の所得控除、運用中の非課税、受取時の優遇措置と、三重の税制優遇があります。
活用法
- 会社員:月23,000円まで拠出可能
- 自営業者:月68,000円まで拠出可能
- 老後資金準備の中核として活用
優先順位③:一般課税口座 つみたてNISA・iDeCoの枠を超えた部分は、一般の課税口座で投資を行います。
活用法
- 低コストのインデックスファンドを中心に投資
- 年間の利益が20万円以下なら確定申告不要
- 必要に応じて利益確定や損切りを実行
10-4. 将来の「インフレリスク」に備える投資戦略
インフレが資産に与える影響
年2%のインフレが20年間続いた場合:
- 現在の100万円の価値 → 20年後は約67万円の価値
銀行預金や保険だけで資産を保有していると、インフレにより実質的な価値が目減りしてしまいます。
インフレに強い資産への投資
①株式 企業の収益がインフレに連動して成長するため、長期的にはインフレに強い資産です。
②不動産 不動産価格や賃料はインフレに連動して上昇する傾向があります。REITを通じて小額から投資可能です。
③物価連動債券 インフレ率に応じて元本や利息が調整される債券です。日本では「物価連動国債」が発行されています。
推奨ポートフォリオ(インフレ対応版)
- 国内株式:25%
- 先進国株式:40%
- 国内REIT:10%
- 先進国REIT:10%
- 物価連動債券:10%
- その他債券:5%
おわりに|あなたの「お金の不安」を「安心」に変える第一歩
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事では、私の実体験と3,000件を超える相談経験をもとに、保険の見直しで年間20万円以上の削減を実現する方法をお伝えしてきました。
重要なことは、保険はあくまで「手段」であって「目的」ではないということです。
本当の目的は、あなたとご家族が安心して暮らせる経済基盤を築くことです。そのためには、保険だけでなく、貯蓄、投資、公的保障制度を総合的に活用する必要があります。
今日からできる3つのアクション
①現在の保険を「棚卸し」する まずは、加入している保険をすべて洗い出し、年間の保険料総額を計算してみてください。手取り年収の10%を超えている場合は、見直しが必要です。
②公的保障制度を理解する 高額療養費制度、傷病手当金、遺族年金など、充実した公的保障があることを正しく理解しましょう。多くの方が思っているほど、民間保険に頼る必要はありません。
③削減できた保険料で資産形成を始める 保険料を削減できたら、その資金を「つみたてNISA」や「iDeCo」を活用した長期投資に回しましょう。保険よりもはるかに効率的な資産形成が可能です。
最後に、私からのメッセージ
この記事を書いている今も、多くの方が「なんとなく不安だから」という理由で、過剰な保険に加入されています。
しかし、正しい知識を身につけることで、その不安は「安心」に変わります。
必要のない保険料を毎月支払い続けることは、将来の自分と家族から大切な資金を奪っているのと同じです。一方で、適切な保険と効率的な資産形成を組み合わせることで、真の経済的安心を手に入れることができます。
あなたの人生は、あなた自身の手で変えることができます。
「保険の見直しは面倒だし、よく分からない」と思われるかもしれません。しかし、一度しっかりと見直しを行えば、その効果は何十年も続きます。
将来のあなたとご家族のために、今こそ行動を起こしてください。
お金の不安から解放され、本当に大切なことに集中できる人生を、一緒に築いていきましょう。
【著者プロフィール】
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)資格保有。大手銀行で10年間、証券会社で5年間、個人顧客の資産運用・保険相談に従事。これまで3,000件以上の保険相談を手がけ、多くの方の保険料削減と効率的な資産形成をサポート。自身も20代で過剰な保険に加入していた経験から、「本当に必要な保障の見極め方」について発信を続けている。現在は独立系ファイナンシャルプランナーとして活動中。
【参考文献・データ出典】
- 金融庁「つみたてNISAの概要」
- 厚生労働省「高額療養費制度の概要」
- 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
- 各保険会社の商品パンフレット・約款