執筆者:田中 健二(CFP認定ファイナンシャルプランナー、AFP認定歴12年、元大手銀行資産運用コンサルタント)
はじめに:「年金にも税金がかかるの?」という不安に寄り添って
「年金をもらえるようになったら、あとは安心して暮らせる」
多くの方がそう思っていらっしゃるのではないでしょうか。しかし、実際に年金生活が始まると、「え、年金にも税金がかかるの?」「思っていたより手取りが少ない…」という声を、私はファイナンシャルプランナーとして数多く聞いてまいりました。
私自身、父が年金生活に入った際に、家族で税金の仕組みを調べることになりました。当時の父は「40年間きちんと保険料を納めてきたのに、なぜ税金を取られるんだ」と困惑していました。その時の経験が、今の私の「シニアの方々の税金に対する不安を少しでも軽くしたい」という想いの原点になっています。
この記事では、年金生活者の方が実際にどのような税金を負担することになるのか、そしてどのような節税方法があるのかを、CFP資格を持つ私が、できる限り分かりやすく、そして正直にお伝えします。
「税金のことは複雑でよく分からない」「できれば専門家に任せたい」というお気持ち、とてもよく分かります。でも、基本的な仕組みを理解しておけば、無駄な税金を払わずに済んだり、受けられる控除を見逃したりすることがなくなります。
一緒に、安心できる年金生活のための税金対策を考えていきましょう。
第1章:年金にかかる税金の基本 〜「こんなにかかるの?」を解消する〜
年金も「所得」として扱われる現実
まず知っておいていただきたいのは、年金は税法上「雑所得」として扱われ、所得税と住民税の課税対象になるということです。
「え?年金って、現役時代に保険料を払って積み立てたお金でしょう?なぜ税金がかかるの?」
この疑問、本当によく分かります。実は私も最初は同じように思っていました。しかし、年金制度は単純な積立制度ではなく、現役世代が支払う保険料で現在の年金受給者を支える「世代間扶養」の仕組みになっているのです。
そのため、年金を受け取る際には「所得を得ている」とみなされ、税金がかかってしまうのです。これは国民年金、厚生年金、企業年金、個人年金のいずれも同様です。
公的年金等控除という「救済措置」
ただし、年金生活者の税負担を軽減するために、「公的年金等控除」という特別な控除制度が設けられています。
令和4年分以降の公的年金等控除額(65歳以上の場合)
- 年金収入330万円以下:控除額110万円
- 年金収入330万円超410万円以下:控除額110万円+(年金収入-330万円)×25%
- 年金収入410万円超770万円以下:控除額130万円+(年金収入-410万円)×15%
- 年金収入770万円超1,000万円以下:控除額184万円+(年金収入-770万円)×5%
- 年金収入1,000万円超:控除額195万5千円
65歳未満の方の場合は、最低控除額が60万円になります。
実際の計算例で理解を深める
68歳のAさん(年金収入200万円のみ)の場合を見てみましょう。
所得税の計算
- 年金収入:200万円
- 公的年金等控除:110万円
- 雑所得(年金所得):200万円-110万円=90万円
- 基礎控除:48万円
- 課税所得:90万円-48万円=42万円
- 所得税:42万円×5%=2万1,000円
住民税の計算
- 雑所得(年金所得):90万円(所得税と同じ)
- 基礎控除:43万円(住民税は所得税より5万円少ない)
- 課税所得:90万円-43万円=47万円
- 住民税(所得割):47万円×10%=4万7,000円
- 住民税(均等割):5,000円
- 住民税合計:4万7,000円+5,000円=5万2,000円
年間の税負担合計:2万1,000円+5万2,000円=7万3,000円
「思っていたより多い」と感じられるかもしれませんね。でも、これは基本的な控除のみを適用した場合です。実際には、この後ご紹介する様々な控除を活用することで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
年金以外の所得がある場合の影響
年金以外にも収入がある場合は、合算して課税されます。
主な年金以外の所得
- 給与所得:65歳以降もパートやアルバイトで働いている場合
- 不動産所得:アパート経営や土地の賃貸収入
- 配当所得:株式の配当金
- 利子所得:預貯金の利息(通常は源泉分離課税)
- 雑所得:原稿料、講演料、個人年金など
私が相談を受けた70歳のBさんは、年金200万円の他に、アパート経営による不動産所得が年間80万円ありました。この場合、年金と不動産所得を合算した280万円が総所得金額となり、税負担が大きく増えることになります。
第2章:意外と知らない!年金の種類別税金のしくみ
国民年金・厚生年金の税金
国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)は、いずれも「公的年金等」として扱われ、前述の公的年金等控除の適用を受けることができます。
令和5年度の年金支給額(満額の場合)
- 国民年金:年額79万5,000円(月額6万6,250円)
- 厚生年金:国民年金+報酬比例部分
国民年金のみを受給している場合、年間79万5,000円であれば公的年金等控除110万円の範囲内に収まるため、所得税はかかりません。ただし、住民税の非課税限度額は自治体によって異なるため、注意が必要です。
企業年金・確定拠出年金の税金
企業年金(確定給付企業年金等)
企業年金も公的年金等控除の対象となりますが、受給方法によって税金の取り扱いが変わります。
- 年金として受給:公的年金等控除の対象
- 一時金として受給:退職所得として扱われ、退職所得控除の対象
私が相談を受けた事例では、企業年金を一時金で受け取った方が税負担が軽くなるケースが多くありました。ただし、一時金として受け取ると、その後の年金収入がなくなるため、長期的な資金計画をしっかり立てる必要があります。
確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)
確定拠出年金の受給時の税金も、受給方法によって異なります。
- 年金として受給:公的年金等控除の対象
- 一時金として受給:退職所得として扱われ、退職所得控除の対象
特に注意が必要なのは、確定拠出年金と企業年金を同時期に一時金として受け取る場合です。退職所得控除を重複して受けることができない場合があるため、受給のタイミングを調整することで節税効果を高めることができます。
個人年金の税金
個人年金保険
個人年金保険から受け取る年金は「雑所得」として扱われますが、公的年金等控除の対象外となります。
計算方法: 雑所得 = 年金年額 - 必要経費
必要経費は、支払った保険料を受給期間で割った金額となります。
例:保険料総額1,200万円、受給期間10年の場合 必要経費 = 1,200万円 ÷ 10年 = 120万円/年
年金年額が150万円の場合、雑所得は30万円となります。
第3章:住民税の落とし穴 〜「所得税はゼロなのに住民税がかかる」理由〜
住民税と所得税の違いを理解する
年金生活者の方からよく聞かれるのが、「所得税はかからないと言われたのに、住民税の納付書が来た」というお話です。
これは、住民税と所得税で基礎控除額や非課税限度額が異なるためです。
基礎控除の違い
- 所得税:48万円
- 住民税:43万円
住民税の非課税限度額 住民税には「均等割」と「所得割」があり、それぞれに非課税限度額が設定されています。
東京23区の場合(令和5年度):
- 均等割非課税:前年の合計所得金額が45万円以下
- 所得割非課税:前年の総所得金額等が35万円以下
自治体によって金額が異なるため、お住まいの市区町村に確認することをお勧めします。
住民税の具体的な計算例
72歳のCさん(年金収入155万円)の住民税を計算してみましょう。
所得計算
- 年金収入:155万円
- 公的年金等控除:110万円
- 雑所得:155万円-110万円=45万円
所得税の計算
- 雑所得:45万円
- 基礎控除:48万円
- 課税所得:45万円-48万円=0円(マイナスは0円)
- 所得税:0円
住民税の計算
- 雑所得:45万円
- 基礎控除:43万円
- 課税所得:45万円-43万円=2万円
- 所得割:2万円×10%=2,000円
- 均等割:5,000円(45万円以下なので均等割は非課税→実際は0円)
- 住民税合計:2,000円
このように、所得税はかからないものの、住民税がかかるケースがあります。
介護保険料・国民健康保険料への影響
住民税の課税・非課税は、介護保険料や国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)の金額にも大きく影響します。
介護保険料 65歳以上の方の介護保険料は、住民税の課税状況に応じて決まります。住民税非課税世帯は保険料が軽減されるため、わずかな所得の違いで年間数万円の負担差が生じることもあります。
後期高齢者医療保険料 75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度でも、住民税の課税状況によって保険料が決まります。
私が相談を受けた事例では、年金収入をわずか5万円減らすことで住民税非課税となり、介護保険料と後期高齢者医療保険料を合わせて年間約10万円の負担軽減につながったケースもありました。
第4章:これは知っておきたい!シニアが活用できる控除制度
医療費控除 〜年齢とともに増える医療費を節税に活かす〜
年金生活者の方にとって、最も活用しやすい控除の一つが医療費控除です。
医療費控除の基本
- 年間医療費が10万円(所得200万円未満の場合は所得の5%)を超えた部分が控除対象
- 控除限度額:200万円
- 家族全員分の医療費を合算できる
対象となる医療費
- 病院・診療所での診療費、治療費
- 薬局で購入した薬代(医師の処方によるもの)
- 入院費用(食事代含む)
- 介護保険サービスの自己負担額(一部)
- 通院のための交通費(公共交通機関)
- 在宅医療の費用
- 予防接種代(治療目的の場合)
対象外となるもの
- 健康診断費用(病気が見つからなかった場合)
- 美容目的の治療費
- 健康食品・サプリメント代
- 自家用車での通院ガソリン代
私の相談者で78歳のDさんは、年金収入180万円で、年間の医療費が25万円かかっていました。
Dさんの医療費控除計算
- 年間医療費:25万円
- 医療費控除額:25万円-10万円=15万円
- 所得税の軽減額:15万円×5%=7,500円
- 住民税の軽減額:15万円×10%=1万5,000円
- 合計軽減額:2万2,500円
医療費控除を申請することで、年間2万円以上の税金が戻ってきました。
セルフメディケーション税制という選択肢
平成29年から始まった制度で、年間1万2,000円を超えるOTC医薬品(薬局で買える薬)の購入費用について、8万8,000円を限度として控除を受けることができます。
ただし、通常の医療費控除との併用はできないため、どちらが有利かを計算して選択する必要があります。
社会保険料控除 〜支払った保険料は全額控除〜
年金生活者も様々な社会保険料を支払っています。これらは全額が社会保険料控除の対象となります。
対象となる保険料
- 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
- 介護保険料
- 国民年金保険料(任意加入の場合)
- 家族分の国民年金保険料
- 前納した保険料
特に注意したいのが、家族分の保険料を支払った場合です。
例えば、年金収入の多い夫が、収入の少ない妻の国民健康保険料を支払った場合、夫の社会保険料控除として申告できます。これにより、世帯全体での税負担を軽減することができます。
生命保険料控除 〜新制度と旧制度の使い分け〜
年金生活に入っても、生命保険や医療保険を継続している方は多いでしょう。保険料は生命保険料控除の対象となります。
新制度(平成24年1月1日以降契約)の控除限度額
- 一般生命保険料:4万円
- 介護医療保険料:4万円
- 個人年金保険料:4万円
- 合計限度額:12万円
旧制度(平成23年12月31日以前契約)の控除限度額
- 一般生命保険料:5万円
- 個人年金保険料:5万円
- 合計限度額:10万円
新旧の契約がある場合は、どちらか一方を選択するか、新制度の限度額内で合算することができます。
私の相談者の中には、古い保険契約を見直すことで、保険料を下げながら控除額を最大化できたケースもあります。ただし、保険の見直しは慎重に行う必要があります。
配偶者控除・配偶者特別控除
年金生活者でも、配偶者の所得状況によって配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができます。
配偶者控除(令和5年分) 配偶者の年間合計所得金額が48万円以下の場合に受けられます。
- 控除を受ける人の合計所得金額900万円以下:38万円
- 900万円超950万円以下:26万円
- 950万円超1,000万円以下:13万円
配偶者が70歳以上の場合は、控除額が10万円加算されます。
配偶者特別控除 配偶者の年間合計所得金額が48万円超133万円以下の場合に、段階的に控除を受けることができます。
年金生活者夫婦の場合、片方の年金収入を調整することで配偶者控除を受けられる場合があります。ただし、年金の受給開始時期を遅らせることには慎重な検討が必要です。
扶養控除 〜同居する親族がいる場合〜
同居する親族を扶養している場合、扶養控除を受けることができます。
扶養控除額(令和5年分)
- 一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満):38万円
- 特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円
- 老人扶養親族(70歳以上):48万円
- 同居老親等(70歳以上で同居している直系尊属):58万円
年金生活者の方が、高齢の両親を扶養しているケースも多くあります。この場合、扶養控除によって大きな節税効果を得ることができます。
障害者控除 〜介護認定を受けている場合の特例〜
本人や家族が障害者の場合、障害者控除を受けることができます。
障害者控除額
- 一般の障害者:27万円
- 特別障害者:40万円
- 同居特別障害者:75万円
要介護認定と障害者控除 要介護認定を受けている方は、市区町村から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで、障害者控除を受けられる場合があります。
私が担当した事例では、要介護3の認定を受けていた85歳のEさんが、この制度を知らずに過去5年分の控除を受け損なっていました。更正の請求により、約15万円の還付を受けることができました。
寡婦控除・ひとり親控除
配偶者と死別・離婚した場合に受けられる控除です。
ひとり親控除
- 控除額:35万円
- 要件:現在婚姻していない人で、生計を一にする子がいる場合
寡婦控除
- 控除額:27万円
- 要件:夫と死別・離婚し、現在婚姻していない女性で、合計所得金額が500万円以下の場合
特に、配偶者と死別した年金生活者の方は、これらの控除を見落としがちです。該当する可能性がある方は、ぜひ確認してみてください。
第5章:年金以外の収入がある場合の節税術
給与所得がある場合の税金対策
65歳以降もパートやアルバイトで働いている方は多くいらっしゃいます。給与所得がある場合の税金について解説します。
給与所得控除 給与収入に応じて控除額が決まります。
令和5年分の給与所得控除:
- 収入162万5,000円以下:55万円
- 162万5,000円超180万円以下:収入×40%-10万円
- 180万円超360万円以下:収入×30%+8万円
- 360万円超660万円以下:収入×20%+44万円
- 660万円超850万円以下:収入×10%+110万円
- 850万円超:195万円(上限)
在職老齢年金との調整 厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働く場合、「在職老齢年金」により年金額が減額される場合があります。
65歳以降の在職老齢年金: (給与月額+年金月額)が47万円(令和5年度)を超えた場合、超えた額の2分の1が年金から減額されます。
私の相談者で68歳のFさんは、年金月額15万円、パート収入月額12万円でした。この場合、合計27万円で47万円以下のため、年金の減額はありません。
働き方の調整による節税
給与収入を調整することで、配偶者控除の適用を受けられる場合があります。
例:妻が年金月額5万円(年間60万円)、パート収入月額8万円(年間96万円)の場合
- 年金所得:60万円-60万円(公的年金等控除)=0円
- 給与所得:96万円-55万円(給与所得控除)=41万円
- 合計所得:0円+41万円=41万円
合計所得41万円であれば、配偶者控除(38万円)の対象となります。
不動産所得がある場合の節税術
アパート経営や土地の賃貸により不動産所得がある場合の節税方法をご紹介します。
不動産所得の計算 不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
必要経費として認められる主なもの
- 固定資産税・都市計画税
- 損害保険料
- 修繕費
- 減価償却費
- 管理会社への手数料
- 税理士への報酬
- 借入金利息
青色申告による節税 不動産所得がある場合、青色申告承認申請書を提出することで、以下の特典を受けることができます。
- 青色申告特別控除:最大65万円(e-Tax利用等の要件あり)
- 青色事業専従者給与:家族への給与を必要経費にできる
- 純損失の繰越控除:赤字を3年間繰り越せる
私が相談を受けた70歳のGさんは、アパート経営による年間収入300万円から、必要経費200万円と青色申告特別控除55万円を差し引き、不動産所得45万円として申告していました。
減価償却の活用
建物の取得費用は、法定耐用年数にわたって減価償却費として必要経費に算入できます。
例:木造アパート(法定耐用年数22年)を1,100万円で取得した場合 年間減価償却費 = 1,100万円 ÷ 22年 = 50万円
この50万円を毎年必要経費として計上できるため、大きな節税効果があります。
配当所得の節税術
株式投資による配当金がある場合の税金対策です。
配当所得の課税方法
- 申告不要制度:源泉徴収のみで課税関係終了
- 総合課税:他の所得と合算して課税
- 申告分離課税:他の所得と分離して一定税率で課税
総合課税を選択するメリット 配当控除により、税負担を軽減できる場合があります。
配当控除率:
- 課税所得1,000万円以下の部分:所得税10%、住民税2.8%
- 課税所得1,000万円超の部分:所得税5%、住民税1.4%
年金所得が少ない場合、総合課税を選択することで配当控除により税額が軽減される可能性があります。
NISA・つみたてNISAの活用
年金生活者でも、NISA・つみたてNISAを活用することができます。
- 一般NISA:年間120万円まで、最長5年間非課税
- つみたてNISA:年間40万円まで、最長20年間非課税
私の相談者で65歳のHさんは、退職金の一部を使って一般NISAで配当利回りの高い株式に投資し、年間約20万円の配当を非課税で受け取っています。
第6章:確定申告のポイント 〜「面倒だから」で損をしないために〜
年金生活者の確定申告義務
年金生活者でも、以下の場合は確定申告が必要です。
確定申告が必要な場合
- 公的年金等の収入金額が400万円を超える場合
- 公的年金等以外の所得金額が20万円を超える場合
- 源泉徴収されていない年金等を受けている場合
確定申告が不要でも申告した方が良い場合
- 医療費控除を受ける場合
- 寄附金控除(ふるさと納税)を受ける場合
- 社会保険料控除の追加がある場合
- 源泉徴収税額がある場合(還付の可能性)
私が担当した事例で、「年金だけだから確定申告は不要」と思っていた72歳のIさんが、医療費控除と生命保険料控除を申告することで、年間3万円の還付を受けたケースがありました。
確定申告書の作成方法
国税庁「確定申告書等作成コーナー」の活用
インターネットで確定申告書を作成できる無料のサービスです。画面の指示に従って入力するだけで、正確な申告書を作成できます。
手順
- 国税庁ホームページにアクセス
- 「確定申告書等作成コーナー」をクリック
- 「作成開始」から申告書を選択
- 所得や控除の金額を入力
- 申告書をダウンロード・印刷
年金所得者の確定申告書(簡易版)
年金所得者専用の簡単な申告書も用意されています。以下の要件を満たす場合に利用できます。
- 年金所得以外の所得が20万円以下
- 源泉徴収された税額がある
- 各種控除の追加がある
e-Tax利用のメリット
電子申告(e-Tax)を利用すると、以下のメリットがあります。
24時間申告可能 税務署の開庁時間に関係なく、いつでも申告書を提出できます。
還付が早い 書面提出の場合約1.5~2ヶ月かかる還付が、e-Taxなら約3週間で処理されます。
青色申告特別控除の優遇 不動産所得がある場合、e-Tax利用で最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
添付書類の省略 医療費の領収書や社会保険料の証明書などの添付を省略できます(保存義務あり)。
申告期限と延滞税
確定申告の期限 毎年2月16日から3月15日まで(土日の場合は翌平日)
還付申告の期限 還付を受ける場合は、翌年1月1日から5年間申告可能
延滞税 期限後申告の場合、延滞税がかかります。
延滞税の割合(令和5年分):
- 期限の翌日から2ヶ月以内:年2.4%
- 2ヶ月経過後:年8.7%
体調不良などやむを得ない事情がある場合は、税務署に相談することをお勧めします。
税理士への依頼を検討すべきケース
以下の場合は、税理士への依頼を検討することをお勧めします。
複雑な所得がある場合
- 不動産所得で青色申告をする場合
- 事業所得がある場合
- 株式の売却損益がある場合
相続税の申告が必要な場合 配偶者や親族が亡くなり、相続税の申告が必要な場合は、専門知識が必要です。
税理士報酬の目安 年金所得者の確定申告:5万円~10万円程度 (所得の種類や複雑さによって異なります)
私の相談者には、「自分で申告するのは不安」という理由で税理士に依頼される方も多くいらっしゃいます。費用はかかりますが、間違いがなく、節税のアドバイスも受けられるメリットがあります。
第7章:住民税・国民健康保険料等への影響と対策
住民税額による各種制度への影響
住民税の課税・非課税は、年金生活者にとって非常に重要な意味を持ちます。各種制度の自己負担額に大きく影響するためです。
高額療養費制度
70歳以上の高額療養費の自己負担限度額は、住民税の課税状況によって決まります。
令和5年8月以降の自己負担限度額(70歳以上):
所得区分 | 外来(個人単位) | 外来+入院(世帯単位) |
---|---|---|
現役並み所得者Ⅲ(住民税課税所得690万円以上) | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 同左 |
現役並み所得者Ⅱ(住民税課税所得380万円以上) | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 同左 |
現役並み所得者Ⅰ(住民税課税所得145万円以上) | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 同左 |
一般(住民税課税) | 18,000円(年間上限144,000円) | 57,600円 |
住民税非課税 | 8,000円 | 24,600円 |
住民税非課税世帯の場合、一般区分と比べて外来で月額1万円、入院で月額約3万3,000円の負担軽減となります。
介護保険料
65歳以上の介護保険料は、住民税の課税状況等に応じて決まります。
東京都の標準的な保険料(令和5年度)の例:
段階 | 対象者 | 保険料率 | 年額保険料 |
---|---|---|---|
第1段階 | 住民税非課税世帯で老齢福祉年金受給者等 | 基準額×0.3 | 23,400円 |
第2段階 | 住民税非課税世帯で合計所得金額80万円以下 | 基準額×0.5 | 39,000円 |
第3段階 | 住民税非課税世帯で合計所得金額80万円超 | 基準額×0.7 | 54,600円 |
第4段階 | 住民税課税世帯だが本人は非課税 | 基準額×0.9 | 70,200円 |
第5段階 | 本人住民税課税で合計所得金額200万円未満 | 基準額×1.0 | 78,000円 |
住民税非課税かどうかで、年間保険料が約2万円~4万円変わることがあります。
後期高齢者医療保険料
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度でも、住民税の課税状況によって保険料や窓口負担割合が決まります。
東京都の保険料(令和5年度):
- 均等割:46,400円
- 所得割:所得に応じて8.68%
住民税非課税世帯の場合、均等割が軽減されます。
窓口負担割合
- 現役並み所得者:3割負担
- 一般:2割負担(令和4年10月から)
- 住民税非課税等:1割負担
住民税非課税世帯を目指す所得調整
住民税非課税世帯になることで得られるメリットが大きいため、可能な範囲で所得調整を検討する価値があります。
住民税非課税の要件(東京23区の場合)
単身世帯:前年の合計所得金額が45万円以下 夫婦世帯:前年の合計所得金額が91万円以下(35万円×人数+21万円)
年金収入での非課税ライン
65歳以上の単身世帯の場合: 年金収入155万円以下(155万円-110万円(公的年金等控除)=45万円)
夫婦世帯(夫婦とも65歳以上)の場合: 夫婦合計の年金収入が201万円以下
所得調整の方法
- 公的年金の繰下げ受給 年金受給開始を75歳まで繰り下げることで、受給前の住民税非課税期間を延長できます。ただし、繰下げによる増額との兼ね合いを慎重に検討する必要があります。
- iDeCoの活用 60歳以降もiDeCoに加入できる場合があります。掛金は所得控除の対象となるため、所得を圧縮できます。
- 小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済やiDeCo以外の確定拠出年金の掛金は、全額が所得控除の対象となります。
- ふるさと納税の活用 寄附金控除により所得を圧縮できますが、住民税非課税世帯の場合は節税効果が限定的になります。
各種減免制度の活用
住民税や国民健康保険料等には、収入が少ない場合の減免制度があります。
住民税の減免
- 生活保護を受けている場合
- 災害により被害を受けた場合
- 失業等により収入が激減した場合
国民健康保険料の減免
- 世帯の前年所得が一定基準以下の場合
- 失業等により収入が激減した場合
- 災害により被害を受けた場合
これらの制度は、自治体によって内容が異なるため、お住まいの市区町村に相談することをお勧めします。
第8章:相続税対策も視野に入れた資産管理
年金生活者の相続税対策
年金生活に入ると、残された家族のことを考える機会も増えてきます。相続税対策についても触れておきます。
相続税の基礎控除 相続税は、遺産総額が基礎控除額を超えた場合にかかります。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:配偶者と子2人の場合 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
配偶者の税額軽減 配偶者が相続する財産については、1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
年金生活者ができる相続税対策
- 生前贈与の活用 年間110万円以下の贈与は贈与税がかかりません。長期間にわたって計画的に贈与することで、相続財産を減らすことができます。
- 生命保険の活用 死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。現預金を保険に変えることで相続税を軽減できます。
- 不動産の活用 現預金よりも不動産の方が相続税評価額が低くなる場合があります。ただし、流動性が低下するデメリットもあります。
私の相談者で78歳のJさんは、預貯金2,000万円の一部で一時払い終身保険に加入し、相続税対策を図りました。
成年後見制度の検討
年金生活者にとって重要なのが、認知症等により判断能力が低下した場合の備えです。
法定後見制度 判断能力が不十分になってから家庭裁判所に申し立てる制度
- 後見:判断能力が欠けている状態
- 保佐:判断能力が著しく不十分な状態
- 補助:判断能力が不十分な状態
任意後見制度 元気なうちに、将来後見人となる人との間で契約を結ぶ制度
任意後見制度を活用することで、自分の意思で後見人を選び、支援してもらう内容を決めることができます。
家族信託という選択肢
近年注目されているのが家族信託です。財産の管理・処分を信頼できる家族に託すことで、認知症対策をすることができます。
ただし、これらの制度は複雑なため、司法書士や弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
第9章:実際の計算事例で理解を深める
ケーススタディ1:一般的な年金受給者夫婦
設定条件
- 夫(68歳):厚生年金180万円、企業年金60万円
- 妻(65歳):国民年金78万円、個人年金24万円
- 夫婦とも健康で、年間医療費は夫15万円、妻10万円
- 夫名義の預貯金から生命保険料年12万円を支払い
夫の税金計算
- 所得計算
- 公的年金所得:(180万円+60万円)-110万円=130万円
- 個人年金所得:24万円-(支払保険料/受給期間) ※簡略化のため24万円とする
- 所得控除
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:25万円(健康保険料、介護保険料等)
- 生命保険料控除:12万円(上限)→実際の控除額は約4万円
- 配偶者控除:38万円(妻の所得が48万円以下のため)
- 医療費控除:15万円-10万円=5万円
- 課税所得
- 130万円-(48万円+25万円+4万円+38万円+5万円)=10万円
- 所得税
- 10万円×5%=5,000円
- 住民税
- 課税所得:130万円-(43万円+25万円+4万円+33万円+5万円)=20万円
- 所得割:20万円×10%=2万円
- 均等割:5,000円
- 住民税合計:2万5,000円
妻の税金計算
- 所得計算
- 公的年金所得:78万円-110万円=0円(マイナスは0円)
- 個人年金所得:24万円
- 所得控除
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:12万円
- 医療費控除:10万円-10万円=0円(10万円以下のため控除なし)
- 課税所得
- 24万円-(48万円+12万円)=0円(マイナスは0円)
- 税金
- 所得税:0円
- 住民税:0円(所得が45万円以下のため非課税)
世帯の年間税負担合計:3万円
ケーススタディ2:不動産所得のある年金受給者
設定条件
- 年齢:72歳(単身)
- 年金収入:200万円
- 不動産収入:アパート経営により年間300万円
- 不動産経費:150万円(管理費、修繕費、減価償却費等)
- 青色申告特別控除:55万円
所得計算
- 公的年金所得
- 200万円-110万円=90万円
- 不動産所得
- 300万円-150万円-55万円=95万円
- 合計所得金額
- 90万円+95万円=185万円
所得控除
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:30万円
- 生命保険料控除:4万円
課税所得 185万円-(48万円+30万円+4万円)=103万円
税金計算
- 所得税
- 103万円×5%=5万1,500円
- 住民税
- 課税所得:185万円-(43万円+30万円+4万円)=108万円
- 所得割:108万円×10%=10万8,000円
- 均等割:5,000円
- 住民税合計:11万3,000円
年間税負担合計:16万4,500円
このケースでは、不動産所得があるため税負担が大きくなりますが、青色申告特別控除や各種経費の計上により、かなりの節税効果があります。
ケーススタディ3:医療費が多い年金受給者
設定条件
- 年齢:75歳(単身)
- 年金収入:160万円
- 年間医療費:50万円(入院手術あり)
- その他の所得:なし
所得計算 公的年金所得:160万円-110万円=50万円
所得控除
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:20万円
- 医療費控除:50万円-10万円=40万円
課税所得 50万円-(48万円+20万円+40万円)=0円(マイナスは0円)
税金
- 所得税:0円
- 住民税:0円(所得が45万円超だが、医療費控除により非課税)
このケースでは、医療費控除により税金がかからなくなります。医療費が多い年金生活者にとって、医療費控除は非常に重要な制度です。
第10章:よくある質問と注意点
Q1:年金から税金が天引きされているのに、なぜ確定申告が必要なの?
年金から天引きされているのは「仮の税金」です。実際の税額は、1年間の所得や適用される控除によって決まります。
特別徴収(天引き)されている税金
- 所得税:10.21%(復興特別所得税含む)
- 住民税:前年の所得に基づく税額
年金以外の所得がある場合や、医療費控除等の控除を受ける場合は、確定申告により正確な税額を計算する必要があります。
Q2:夫婦の年金を合算して申告できますか?
いいえ、できません。所得税は個人単位で課税されるため、夫婦それぞれが申告する必要があります。
ただし、医療費控除や生命保険料控除等は、実際に支払った人が控除を受けることができるため、夫婦のうち所得の多い人が支払い、控除を受けることで節税効果を高めることができます。
Q3:年金をもらいながら働いている場合、確定申告は必要ですか?
以下の場合は確定申告が必要です。
確定申告が必要な場合
- 給与収入が年間20万円を超える場合
- 複数の勤務先から給与をもらっている場合
- 年末調整を受けていない場合
確定申告をした方が良い場合
- 源泉徴収税額があり、還付を受けられる可能性がある場合
- 医療費控除等の控除を追加で受けたい場合
Q4:個人年金と公的年金の税金の扱いは違うのですか?
はい、扱いが異なります。
公的年金(国民年金、厚生年金等)
- 公的年金等控除の適用あり
- 雑所得として申告
個人年金保険
- 公的年金等控除の適用なし
- 雑所得として申告(必要経費の差し引きあり)
個人年金の方が税負担が重くなる傾向があります。
Q5:海外居住の期間がある場合、年金の税金はどうなりますか?
居住者か非居住者かによって取り扱いが異なります。
居住者の場合
- 全世界所得に対して日本で課税
- 外国で支払った税金は外国税額控除の適用あり
非居住者の場合
- 日本の年金は20.42%の税率で源泉徴収
- 租税条約により軽減される場合あり
海外居住を検討している場合は、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
Q6:認知症になった場合、税金の手続きはどうなりますか?
認知症により本人が手続きできない場合、以下の方法があります。
成年後見制度の利用
- 家庭裁判所で選任された後見人が代理で手続き
- 親族が後見人になる場合と専門職後見人の場合あり
税理士への委任
- 本人の意思確認ができる段階で税理士と委任契約
- 継続的な税務手続きを依頼
家族による代理
- 簡単な手続きは家族が代理可能な場合あり
- 税務署に事前相談が必要
Q7:ふるさと納税は年金生活者でもお得ですか?
所得税・住民税を支払っている場合はお得ですが、住民税非課税世帯の場合はメリットがありません。
ふるさと納税の上限額目安 年金収入のみの場合の上限額(概算):
- 年金200万円:約1万円
- 年金250万円:約2万5,000円
- 年金300万円:約4万円
上限額を超えた寄附は自己負担となるため、注意が必要です。
第11章:年金生活を豊かにする資産活用術
退職金の有効活用
多くの方が年金生活開始と同時に退職金を受け取ります。この退職金を有効活用することで、年金生活をより豊かにすることができます。
退職金の税制優遇
退職金は退職所得として優遇されています。
退職所得の計算: (退職金-退職所得控除)× 1/2
退職所得控除額
- 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
例:勤続35年、退職金2,000万円の場合 退職所得控除:800万円+70万円×15年=1,850万円 退職所得:(2,000万円-1,850万円)× 1/2=75万円
この75万円に対してのみ税金がかかるため、大幅な税制優遇となっています。
退職金の運用方法
私がお勧めしている退職金の活用法をご紹介します。
- 生活資金の確保
- 当面の生活費3~5年分は安全性の高い定期預金等で確保
- 年金だけでは不足する生活費を補完
- 医療・介護資金の準備
- 将来の医療費・介護費用として500万円~1,000万円を別途確保
- 一時払い終身保険や介護保険の活用も検討
- 余裕資金の運用
- 残った資金を長期的な資産運用に活用
- NISA・つみたてNISAを最大限活用
- リスクを抑えた運用商品を中心に
年金生活者向けの投資戦略
年金生活者の投資は、現役世代とは異なるアプローチが必要です。
年金生活者の投資の基本方針
- 元本割れリスクの最小化
- 生活に必要な資金は絶対に投資に回さない
- 余裕資金の範囲内での運用
- 流動性の確保
- いつでも現金化できる商品を選択
- 固定期間のある商品は慎重に検討
- インフレ対策
- 物価上昇に備えた資産の確保
- 現金だけでなく、実物資産への投資も検討
具体的な投資商品
債券投資
- 個人向け国債(10年変動、5年固定、3年固定)
- 社債(格付けの高い企業の社債)
- 外国債券(為替リスクに注意)
株式投資
- 高配当株(配当利回り3~5%程度)
- 株主優待銘柄(生活に役立つ優待)
- インデックスファンド(リスク分散効果)
不動産投資
- REIT(不動産投資信託)
- 不動産クラウドファンディング
- 実物不動産投資(資金力のある場合)
私の相談者で67歳のKさんは、退職金2,500万円を以下のように配分しました。
- 生活資金(定期預金):1,000万円(40%)
- 医療・介護資金(一時払い終身保険):500万円(20%)
- 安定運用(個人向け国債、高配当株):700万円(28%)
- 成長性投資(インデックスファンド):300万円(12%)
このような分散投資により、リスクを抑えながら年間約3%のリターンを得ています。
NISA・つみたてNISAの活用
年金生活者でもNISA・つみたてNISAを活用することができます。
一般NISA
- 年間投資枠:120万円
- 非課税期間:最長5年間
- 対象商品:株式、投資信託等
つみたてNISA
- 年間投資枠:40万円
- 非課税期間:最長20年間
- 対象商品:金融庁が認めた投資信託
年金生活者におすすめの活用法
- 配当・分配金の非課税効果を活用 高配当株やREITをNISA口座で保有することで、配当・分配金を非課税で受け取れます。
- つみたてNISAで長期投資 年金生活が20年以上続く可能性を考えると、つみたてNISAでの長期投資も有効です。
- 夫婦でのNISA活用 夫婦それぞれがNISA口座を開設することで、非課税投資枠を倍にできます。
第12章:専門家との上手な付き合い方
ファイナンシャルプランナー(FP)の活用
年金生活の資産管理について、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
FPに相談するメリット
- 個人の状況に応じたオーダーメイドのアドバイス
- 税制改正等の最新情報の提供
- 客観的な立場からの資産運用提案
- 相続対策等の長期的な視点でのアドバイス
FPの選び方
- 資格の確認
- CFP(国際ライセンス)
- AFP(国内ライセンス)
- 1級・2級FP技能士
- 得意分野の確認
- 年金・社会保険
- 税務
- 投資・運用
- 相続・事業承継
- 相談料の確認
- 時間制(1時間5,000円~1万円程度)
- パッケージ料金
- 継続相談契約
- 中立性の確認
- 特定の金融商品を販売しているかどうか
- 複数の選択肢を提示してくれるかどうか
税理士への依頼
複雑な税務処理や節税対策については、税理士への相談をお勧めします。
税理士に依頼すべきケース
- 不動産所得がある場合
- 相続税の申告が必要な場合
- 青色申告を行う場合
- 複数の所得がある場合
税理士費用の目安
- 年金所得のみの確定申告:3万円~5万円
- 不動産所得がある場合:10万円~20万円
- 相続税申告:遺産総額の0.5~1.0%程度
金融機関との付き合い方
年金の受け取りや資産運用で金融機関とのお付き合いが続きます。
銀行・信用金庫
- 年金受取口座としての利用
- 定期預金等の安全資産での運用
- 住宅ローンの完済手続き
証券会社
- NISA口座の開設・活用
- 株式・投資信託の購入
- 退職金の運用相談
注意すべき点
- 手数料の確認 投資商品の購入時・保有時の手数料を必ず確認してください。
- リスクの説明 元本保証でない商品については、リスクの説明を十分に受けてください。
- セカンドオピニオン 大きな金額の運用を行う場合は、複数の金融機関で相談することをお勧めします。
私の経験では、年金生活者の方が金融機関から不適切な商品を勧められるケースが散見されます。「今だけ」「あなただけ」といった営業トークには注意が必要です。
おわりに:安心できる年金生活のために
ここまで、年金生活者の税金について詳しく解説してまいりました。「こんなにたくさんのことを覚えなければいけないのか」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、すべてを完璧に理解する必要はありません。大切なのは、「年金にも税金がかかること」「様々な控除制度があること」「専門家のサポートを受けられること」を知っていることです。
私がファイナンシャルプランナーとして多くの年金生活者の方々とお話しする中で感じるのは、皆さんが持つ「将来への不安」の多くは、「知らないこと」から生まれているということです。
税金の仕組みを正しく理解し、適切な対策を講じることで、年金生活をより豊かに、より安心して送ることができます。そして、何より大切なのは、一人で悩まずに、信頼できる専門家に相談することです。
最後に、年金生活者の皆様へのメッセージ
年金は、皆様が長年にわたって築き上げてきた大切な老後の財産です。その年金を、税金の仕組みを理解し、適切な節税対策を講じることで、最大限有効活用していただきたいと思います。
分からないことがあれば、遠慮なく専門家に相談してください。私たちファイナンシャルプランナーや税理士は、皆様の豊かな年金生活をサポートするために存在しています。
健康で、安心できる年金生活を送るために、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
執筆者プロフィール 田中 健二(CFP認定ファイナンシャルプランナー、AFP認定歴12年) 大手銀行で10年間個人向け資産運用コンサルタントとして勤務後、証券会社で投資アドバイザーとして5年間の経験を積む。自身も20代で株式投資で200万円の損失を経験するも、30代でつみたてNISAと確定拠出年金により資産3,000万円を形成。現在は独立系FPとして、「一人ひとりの価値観と生活スタイルに合った、無理のない資産形成」をモットーに活動中。
※この記事の内容は令和5年時点の税制に基づいています。税制は改正される可能性があるため、最新の情報については国税庁ホームページ等でご確認ください。また、個別具体的な税務については、税理士等の専門家にご相談ください。