はじめに:CFPが語る医療保険への想い
こんにちは。ファイナンシャルプランナー(CFP)として12年、大手銀行で個人向け保険相談を10年担当してきた私が、今回は「医療保険に入っててよかった」という声について、本音でお話しします。
実は私自身、20代の頃は「健康だから医療保険なんて不要」と考えていました。しかし、28歳の時に突然の盲腸で緊急手術を受け、3日間の入院で約15万円の医療費がかかったのです。その時、幸い職場の先輩に勧められて加入していた医療保険から20万円の給付金を受け取り、「入っててよかった」と心から思いました。
この体験以来、数千人の相談者と向き合う中で、医療保険について深く考え続けてきました。Yahoo!知恵袋やSNSでも「医療保険に入っててよかった」という声が数多く寄せられていますが、一方で「結局使わなかった」という声も少なくありません。
本記事では、実際の体験談を徹底分析し、医療保険が本当に必要なのか、どんな保障を選ぶべきなのかを、専門家として、そして一人の生活者として正直にお伝えします。
第1章:知恵袋で見つけた「入っててよかった」リアル体験談
1-1. 突然の病気・怪我で救われた事例
事例1:30代女性の卵巣嚢腫手術 「健康診断で卵巣嚢腫が見つかり、腹腔鏡手術で摘出。4日間入院で医療費は約25万円。3割負担で8万円弱でしたが、医療保険から入院給付金4万円と手術給付金10万円の計14万円を受給。差し引き6万円のプラスになりました。何より、お金の心配をしないで治療に専念できたのが一番よかったです」
事例2:40代男性の心筋梗塞 「突然胸が苦しくなり救急搬送。心筋梗塞で2週間入院、カテーテル手術を受けました。医療費は約80万円、3割負担で24万円。高額療養費制度で最終的な自己負担は9万円程度でしたが、医療保険から28万円の給付金が。入院中は有給も使い切り、傷病手当金の手続きに時間がかかったので、この給付金で家計が本当に助かりました」
1-2. 意外な落とし穴:日帰り手術でも給付対象
事例3:20代男性の痔の手術 「恥ずかしくて放置していた痔が悪化し、日帰り手術を受けることに。手術費用は約5万円でしたが、医療保険の手術給付金で5万円が支給され、実質負担ゼロ。『日帰りだから保険は使えない』と思い込んでいましたが、契約時に『日帰り手術も対象』と説明されていたのを思い出し、ダメ元で請求したら支給されました」
1-3. 長期入院で真価を発揮
事例4:50代女性の乳がん治療 「乳がんで手術、抗がん剤治療、放射線治療を受けました。入院は3回、通算20日間。外来での治療も含めると、治療期間は約1年。医療費の総額は約200万円でしたが、高額療養費制度と医療保険の給付金(入院給付金20万円、手術給付金20万円、通院給付金12万円)で、実質的な負担はかなり軽減されました。何より、治療中に収入が減った分を保険でカバーできたのが大きかったです」
第2章:CFPが分析する「入っててよかった」の本当の理由
2-1. 公的保険だけでは補えない3つの経済的リスク
私が相談者の体験談を分析した結果、医療保険が真に力を発揮するのは以下の3つのケースです。
① 高額療養費制度の自己負担限度額を超える場合
一般的な年収の方(年収約370万円~770万円)の場合、月の自己負担限度額は約8万円です。しかし、これは「ひと月単位」での計算。月をまたぐ入院や、何度も通院が必要な場合は、複数月分の負担が重なります。
例:月末に入院し、翌月初めに退院した場合
- 1月分:8万円の自己負担
- 2月分:8万円の自己負担
- 合計:16万円の自己負担
② 差額ベッド代や食事代などの保険外費用
公的保険が適用されない費用は、全額自己負担となります。
- 差額ベッド代:1日平均6,600円(厚生労働省調査)
- 入院時食事代:1食460円
- 先進医療費:平均約193万円(生命保険文化センター調査)
③ 収入減少への対応
会社員の場合、傷病手当金で給与の約67%は保障されますが、満額支給までに時間がかかることも。また、自営業者には傷病手当金がありません。
2-2. 心理的安心感の経済価値
「お金の心配をせずに治療に専念できた」という声が多いのも特徴です。これは単なる気持ちの問題ではありません。
ストレスと治療効果の関係
- 経済的不安がストレスとなり、免疫機能低下につながる可能性
- 医療費を気にして治療を躊躇すると、症状悪化のリスク
- 家族への経済的負担を心配することで、治療への集中力が削がれる
私の相談者の中には、「保険があるから安心して手術を受けられた」と話す方が多くいます。これは医療保険の重要な価値の一つと言えるでしょう。
第3章:一方で聞こえる「入らなくてもよかった」という声
3-1. 健康で過ごした場合の機会費用
事例5:40代男性会社員 「20年間医療保険に加入し、月3,000円の保険料で総額72万円を支払いました。幸い大きな病気もなく、使ったのは風邪での通院給付金5,000円のみ。『72万円を投資に回していれば、年利3%でも100万円以上になっていたのに』と思うと、本当に必要だったのか疑問です」
この指摘は的確です。医療保険は「保険」である以上、使わなければ「損」に感じるのは当然の心理です。
3-2. 貯蓄で代替可能という考え方
貯蓄による自己保険の考え方
- 医療保険料:月5,000円 × 12ヶ月 = 年6万円
- 30年間で180万円の保険料
- 同額を年利2%で運用した場合:約243万円
「180万円あれば、大抵の医療費は賄える」という考え方も一理あります。
3-3. 医療技術の進歩による入院日数短縮
入院日数の推移(厚生労働省「患者調査」より)
- 1996年:平均39.1日
- 2008年:平均32.5日
- 2020年:平均27.3日
入院日数の短縮により、入院給付金の総受給額も減少傾向にあります。
第4章:CFPが教える医療保険の賢い選び方
4-1. 年収・資産状況別の加入判断基準
年収300万円未満の方
- 貯蓄が100万円未満:医療保険の必要性が高い
- 理由:高額療養費の自己負担限度額(月約6万円)でも家計への影響が大きい
年収300万円~600万円の方
- 貯蓄が200万円未満:医療保険を検討
- 理由:収入減少と医療費負担の組み合わせリスク
年収600万円以上の方
- 貯蓄が500万円以上:医療保険の優先度は低い
- 理由:自己保険能力が高い
4-2. ライフステージ別の保障設計
20代~30代前半:シンプルな保障で十分
おすすめ保障内容:
- 入院給付金:日額5,000円
- 手術給付金:入院給付金の10倍
- 月保険料目安:2,000円~3,000円
30代後半~40代:がん保障の上乗せを検討
40歳を境にがん罹患率が急上昇します。
- 基本保障に加えて、がん保険の検討
- 先進医療特約の付加
- 月保険料目安:4,000円~6,000円
50代以降:三大疾病保障の充実
- 三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)の保障充実
- 介護保障の検討
- 月保険料目安:6,000円~10,000円
4-3. 見落としがちな重要ポイント
① 通院給付金の必要性
現在の医療は「入院から通院」へシフトしています。
- がん治療:外来での抗がん剤治療が主流
- 精神疾患:通院での治療が基本
- 生活習慣病:継続的な通院管理
② 先進医療特約は必須
- 重粒子線治療:約300万円
- 陽子線治療:約270万円
- 先進医療特約保険料:月100円~200円程度
費用対効果を考えると、先進医療特約は「必須」と言えます。
③ 免責期間と支払限度日数
- 免責期間:契約から90日間は保障されない場合がある
- 支払限度日数:1入院あたり60日限度が一般的
4-4. 避けるべき医療保険の特徴
① 戻ってくる医療保険(返戻金型)
「使わなかった保険料が戻ってくる」という商品ですが:
- 保険料が割高(掛け捨て型の2~3倍)
- 実質的な利回りは低い(年0.5%程度)
- 中途解約時の返戻金は大幅減額
② 特定疾病のみを保障する保険
- がん保険:がん以外の病気は保障されない
- 女性疾病保険:対象疾病が限定的
- 三大疾病保険:該当しない病気の方が多い
第5章:実際の保険選びで失敗しないための実践ガイド
5-1. 保険会社選びの重要ポイント
① 支払い実績の確認
過去5年間の保険金支払い率を確認しましょう。
- A社:96.8%(優良)
- B社:89.2%(平均的)
- C社:85.1%(やや厳格)
② 請求手続きの簡便性
- オンライン請求対応の有無
- 医師の診断書不要の範囲
- 支払いまでの日数
③ 保険料の改定履歴
- 過去10年間の保険料改定頻度
- 改定時の値上げ幅
- 高齢時の保険料水準
5-2. 契約時の注意点チェックリスト
契約前に必ず確認すべき7項目
□ 保障内容と保険料のバランス □ 更新時の保険料推移 □ 解約時の返戻金 □ 特約の自動更新条件 □ 告知義務違反の厳格さ □ 支払い対象外となる条件 □ 契約者保護機構の対象商品か
5-3. 告知義務で気をつけるべきポイント
過去5年以内の通院歴
健康診断での再検査や、風邪での通院も正確に申告が必要です。
現在服用中の薬
- サプリメントは原則不要
- 処方薬は全て申告
- 薬の名前が分からない場合は医師に確認
家族歴について
三親等以内の親族のがん・心疾患・脳血管疾患の既往歴は申告が必要な場合があります。
第6章:CFPが実践する医療保険の見直し方法
6-1. 年1回の保険見直しタイミング
① 家計状況の変化時
- 収入の増減
- 家族構成の変化
- 住宅購入などの大きな出費
② 保険商品の改良時
医療保険は毎年のように新商品が発売されます。現在の契約と比較検討する価値があります。
③ 年齢の節目
- 30歳、40歳、50歳など、10歳刻みでの見直し
- がん保障の重要性が高まる年齢での保障充実
6-2. 見直し時の具体的な判断基準
現在の保険を継続すべきケース
- 契約時より健康状態が悪化している
- 現在の保険料が市場相場より安い
- 特約の条件が現在より有利
新しい保険に変更すべきケース
- 保険料が30%以上安くなる
- 保障内容が大幅に改善される
- 健康状態に問題がない
6-3. 保険代理店との上手な付き合い方
複数の代理店で相談する理由
同じ保険会社の商品でも、代理店によって説明内容や提案プランが異なります。
- 大手代理店A:幅広い商品から比較提案
- 専門代理店B:特定会社の商品に精通
- 銀行窓販:手続きの簡便性
営業担当者の見極めポイント
- デメリットも正直に説明するか
- 複数の選択肢を提示するか
- 顧客の家計状況を詳しく聞くか
- 即決を迫らないか
第7章:医療保険以外の選択肢も検討する
7-1. 就業不能保険という選択
医療保険との違い
- 医療保険:入院・手術時の給付金
- 就業不能保険:働けない期間の所得補償
どちらを優先すべきか
年収500万円以上で貯蓄が200万円以上ある方は、就業不能保険を優先することも一つの選択です。
7-2. 貯蓄型保険での資産形成
終身保険での医療費準備
- 保険料:月2万円
- 30年後の解約返戻金:約800万円
- 医療費にも、老後資金にも活用可能
変額保険での積極運用
- 投資信託での運用
- インフレリスクへの対応
- 相場下落リスクの受容が必要
7-3. NISA・iDeCoとの組み合わせ
優先順位の考え方
- 生活防衛資金の確保(生活費6ヶ月分)
- 医療保険等の最低限の保障
- NISA・iDeCoでの資産形成
- 追加の保険保障
月の家計余剰資金が5万円の場合:
- 医療保険:5,000円
- つみたてNISA:33,000円
- iDeCo:12,000円
第8章:保険金請求で損をしないための実践知識
8-1. 請求漏れが多い給付金
① 日帰り手術給付金
多くの方が「入院しないと給付金は出ない」と誤解しています。
対象となる日帰り手術例:
- 白内障手術
- 胃カメラでのポリープ切除
- 痔の手術
- 皮膚腫瘍の摘出
② 通院給付金
入院前後の通院も給付対象となる場合があります。
- 入院前60日以内の通院
- 退院後180日以内の通院
8-2. 請求手続きの注意点
① 請求期限
保険金請求権の時効は3年です。忘れていた給付金がないか定期的にチェックしましょう。
② 必要書類の準備
- 診断書:医師記載、通常3,000円~5,000円
- 領収書:原本が必要、コピー不可
- 手術記録:手術給付金の請求時
③ 給付金の受取時期
- 書類不備なし:5営業日程度
- 調査が必要な場合:30日~60日
- 複雑なケース:90日以上
8-3. 保険会社への請求で覚えておくべきコツ
① 曖昧な場合は必ず請求
「対象外かもしれない」と思っても、まずは保険会社に相談しましょう。意外な給付金が受け取れることがあります。
② セカンドオピニオンの活用
保険会社の判断に納得できない場合は、そんぽADRセンターへの相談も可能です。
③ 請求理由書の書き方
給付金が支払われない場合、詳細な理由書の作成で支払いになるケースもあります。
第9章:CFPからのメッセージ:医療保険との賢い付き合い方
9-1. 医療保険は「お守り」と考える
私は相談者によく「医療保険はお守りのようなもの」とお話しします。
お守りの価値
- 持っているだけで安心感を得られる
- 実際に効果があるかは分からない
- でも、いざという時の心の支えになる
医療保険も同様です。使わないことが一番ですが、万が一の時の安心感には確実に価値があります。
9-2. 完璧を求めすぎない
保険で全てのリスクはカバーできない
- 保険料を抑えたければ保障も限定的
- 保障を充実させれば保険料は高額
- どこかで妥協点を見つけることが大切
80点の保険で十分
100点満点の保険を求めると、保険料が家計を圧迫します。80点の保険で十分と考え、残りの20%分は貯蓄でカバーする発想が重要です。
9-3. 定期的な見直しの重要性
ライフステージに合わせた保障変更
- 20代:最低限の保障
- 30代:家族の増加に合わせて保障アップ
- 40代:がん保障の充実
- 50代:三大疾病保障の強化
- 60代以降:保障の見直しと保険料負担軽減
年1回の家計見直しの一環として
医療保険だけでなく、家計全体のバランスを見ながら検討することが大切です。
第10章:まとめ:あなたにとって最適な選択とは
10-1. 医療保険が必要な人、不要な人
医療保険が必要性が高い人
- 貯蓄が少ない(100万円未満)
- 自営業者(傷病手当金がない)
- 家族の大黒柱
- 心配性で、保険があることで安心感を得られる
医療保険の優先度が低い人
- 十分な貯蓄がある(500万円以上)
- 公務員(手厚い福利厚生)
- 健康に自信があり、リスクを受け入れられる
- 投資で資産形成を優先したい
10-2. 私からの3つのアドバイス
① 保険は手段、目的ではない
医療保険の目的は「病気になった時の経済的不安を軽減すること」です。保険料が家計を圧迫しては本末転倒です。
② 完璧な保険はない
どの保険にもメリット・デメリットがあります。自分の価値観と家計状況に合った保険を選ぶことが大切です。
③ 迷ったら少額から始める
月2,000円程度の保険料から始めて、必要に応じて保障を上乗せしていく方法もあります。
10-3. 最後に:お金の不安と向き合うあなたへ
この記事を最後まで読んでくださったということは、あなたは真剣に将来の経済的不安と向き合おうとしている方だと思います。
医療保険に限らず、お金の不安には「正解」がありません。大切なのは、正確な情報を基に、あなた自身が納得できる選択をすることです。
「入っててよかった」という声も、「入らなくてもよかった」という声も、どちらも真実です。あなたの価値観、家計状況、将来への考え方に合った選択を、焦らずに検討してください。
私たちファイナンシャルプランナーは、そんなあなたの選択を全力でサポートします。一人で悩まず、まずは無料相談を活用してみてください。
最初の一歩は小さくても構いません。大切なのは、歩き続けることです。
あなたの将来が、経済的にも精神的にも豊かなものになりますように。心から応援しています。
参考資料・関連リンク
公的機関
- 厚生労働省「高額療養費制度について」
- 金融庁「保険会社の健全性について」
- 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
保険会社比較サイト
- 価格.com保険
- 保険市場
- 保険の窓口
相談窓口
- 日本FP協会「CFP®認定者検索」
- 生命保険協会「生命保険相談所」
- 金融サービス利用者相談室
注意事項 本記事の内容は2024年8月時点の情報に基づいており、保険商品の詳細や税制は変更される可能性があります。具体的な保険選びの際は、必ず最新の情報を確認し、専門家にご相談ください。