MENU

【速報】三陽商会(8011) 2026年2月期第1四半期決算分析|逆風下の95%営業減益、それでも強気の通期予想を維持する理由とは?

2025年6月30日、アパレル大手の株式会社三陽商会(コード番号: 8011)が2026年2月期 第1四半期の決算を発表しました 。結果は、売上高が前年同期比5.7%減、営業利益は同95.1%減と、厳しいスタートとなりました

しかし、同社は通期の増収増益予想を据え置いています 。この一見すると矛盾した状況の背景には何があるのでしょうか。

本記事では、発表された決算短信を基に、三陽商会の現在の経営状況と今後の見通しを、投資家目線で徹底分析します。

目次

1. 2026年2月期 第1四半期 決算ハイライト

まず、主要な経営成績を見ていきましょう。

項目2026年2月期 Q1実績2025年2月期 Q1実績前年同期比
売上高14,508 百万円 15,378 百万円 Δ5.7%
営業利益36 百万円 747 百万円 Δ95.1%
経常利益25 百万円 730 百万円 Δ96.6%
親会社株主に帰属する四半期純利益36 百万円 590 百万円 Δ93.8%
1株当たり四半期純利益3.44 円 50.63 円

Google スプレッドシートにエクスポート

売上高、各利益ともに前年同期を大幅に下回る厳しい結果となりました。特に営業利益は95.1%の減少となり、収益性が大きく悪化したことが分かります

2. 95%営業減益の背景にある3つの要因

なぜこれほどまでに利益が落ち込んだのでしょうか。決算短信からは、主に3つの要因が読み取れます。

(1) 外部環境の悪化:冷え込む消費マインドとインバウンド失速

第1四半期(2025年3月~5月)の経済環境は、三陽商会にとって厳しいものでした

  • 円安や資源価格の上昇、不安定な国際情勢を背景に、消費者の先行き不透明感が高まりました 。
  • 恒常的な物価上昇により、消費者の生活防衛意識が強まり、消費マインドが著しく低下しています 。
  • アパレル業界に目を向けると、消費マインドの冷え込みに加えてインバウンド消費が急減速 。主要な販売チャネルである百貨店の売上は4ヶ月連続で前年割れとなるなど、市場全体が低迷しました 。

このような逆風が、同社の売上を直撃した格好です。

(2) 収益性の悪化:売上確保のためのセール強化が裏目に

厳しい市況の中、同社は売上を確保するためにセール販売の強化を余儀なくされました 。しかし、これが収益性を圧迫します。

決算短信には「売上高低下に伴う在庫超過を回避するためにセール販売を強化したことによりプロパー販売比率が低下し、全体の粗利益率は前年より悪化しております」との記載があります

正規価格で販売する「プロパー販売」の比率が下がり、利益率の低いセール品の割合が増えたことで、売上総利益(粗利)が減少しました。売上高は約5.7%の減少に対し、売上総利益は約8%減少しており 、粗利益率の悪化が利益を押し下げた様子がうかがえます。

(3) コスト削減努力も及ばず

一方で、同社はコスト管理に努めています。販売費及び一般管理費(販管費)は、計画に対して変動費を含め4億円を減額することに成功しました

しかし、売上高の減少に伴う売上総利益の落ち込みをカバーするには至らず、結果として大幅な営業減益という厳しい結果に着地しました

3. 財務分析:財務の健全性は依然として高水準

大幅減益は懸念材料ですが、同社の財務基盤は揺らいでいません。

  • 自己資本比率: 68.1%
  • 純資産: 382億6千8百万円

自己資本比率は68.1%と非常に高い水準を維持しており、財務的な安定性は抜群です 。これは短期的な業績悪化に対する強力なバッファとなります。

当四半期末の総資産は前期末から約8億円減の562億円となりました 。主な要因は、配当金の支払いなどにより現金及び預金が約26億円減少した一方で、土地(約5億円増)や投資有価証券(約5億円増)を取得したことです

4. 今後の見通し:Q1実績とは裏腹な「強気の通期予想」

今回の決算で最も注目すべきは、大幅減益の第1四半期決算を発表したにもかかわらず、

通期の業績予想を据え置いた点です

通期業績予想 (2025年3月1日~2026年2月28日)

  • 売上高: 625億円 (前期比 3.3%増)
  • 営業利益: 33億円 (前期比 21.5%増)
  • 1株当たり当期純利益: 384.27円

第1四半期の営業利益がわずか3千6百万円 だったのに対し、通期では33億円 を見込んでいます。これは、残りの9ヶ月で約32.6億円の営業利益を稼ぎ出す必要があることを意味し、極めて強気な計画と言えます。同社が中期経営計画に則り、下期以降の売上回復と収益性改善に自信を持っている表れかもしれません

株主還元:増配予想を継続

もう一つのポジティブな要素は株主還元です。同社は2026年2月期の年間配当を

1株あたり139円(中間69円、期末70円)と予想しており、前期の129円から増配となる見込みです 。これも業績回復への自信の裏付けと捉えることができます。

5. まとめ:投資家が注目すべき今後のポイント

今回の三陽商会の決算をまとめると、以下の3点に集約されます。

  1. 厳しいQ1実績: 消費マインドの低下とセール販売強化により、第1四半期は95%の大幅な営業減益となりました 。
  2. 盤石な財務基盤: 自己資本比率68.1%と財務の健全性は極めて高く、経営の安定性に不安は小さいです 。
  3. 強気な通期計画: 厳しいQ1実績にもかかわらず、通期での増収増益・増配予想を維持しています 。下期でのV字回復を織り込んでいる形です。

今後の株価を占う上で、投資家が注目すべきは**「強気な通期計画の達成可能性」**に尽きるでしょう。具体的には、以下の点を継続的にウォッチしていく必要があります。

  • 月次売上高の動向: 市況が回復し、売上が計画通りに推移しているか。
  • 粗利益率の改善: セールへの依存から脱却し、プロパー販売比率を高められるか。
  • 第2四半期決算: 通期計画達成に向けた進捗を確認する上で、次の決算が極めて重要になります。

逆風下での厳しい船出となりましたが、盤石な財務を背景にV字回復を狙う三陽商会。その強気な計画が実現するのか、今後の展開から目が離せません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次