執筆者プロフィール 田中 美咲(ファイナンシャルプランナー) CFP資格保有、AFP認定歴12年。大手銀行での個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社での投資アドバイザー経験5年。自身も20代で株式投資で200万円の損失を経験したのち、30代でつみたてNISAと確定拠出年金で資産形成に成功(現在資産3,000万円)。新婚時代の借金200万円完済の経験も持つ。「お金の不安で眠れない夜を過ごしている人の心を軽くしたい」という想いで、このメディアを運営している。
「投資信託って結局何を選べばいいの?」そのお悩み、とてもよくわかります
「投資を始めたいけれど、投資信託の種類がありすぎて何がなんだか…」 「インデックスとかアクティブとか、カタカナばかりで頭が混乱する」 「失敗したくないけど、どれが自分に合っているのかさっぱりわからない」
もしあなたがそんな風に感じているなら、それは決して恥ずかしいことではありません。実は、私自身も投資を始めた20代の頃は、証券会社の窓口で「おすすめです」と言われるがまま、手数料の高い投資信託を買って、結果的に200万円もの損失を出してしまった経験があります。
当時の私は「プロが勧めるなら間違いないだろう」と安易に考えていました。でも、投資信託の基本的な種類すら理解していなかったため、自分の投資スタイルや目的に全く合わない商品を選んでしまったのです。
あの失敗から15年が経ち、今では3,000万円の資産を築くことができました。その経験を通して痛感したのは、投資信託の種類と特徴を正しく理解することの重要性です。
この記事では、投資信託の基本的な種類について、専門用語をできる限り使わず、身近な例を交えながらお話しします。私の失敗談や成功体験も包み隠さずお伝えしますので、あなたの投資選びの参考になれば幸いです。
そもそも投資信託とは?家計に例えて考えてみましょう
投資信託を理解するために、まずは身近な例で考えてみましょう。
想像してください。あなたが住んでいるマンションの住民20世帯で、「みんなでお金を出し合って、美味しいお米を産地直送で大量購入しよう」という話し合いをしているとします。
一世帯では10キロのお米しか買えませんが、20世帯分をまとめれば200キロ。農家さんと直接交渉して、品質の良いお米を安く購入できるかもしれません。でも、誰かが農家さんを探したり、品質をチェックしたり、配送の手配をしたりする必要がありますよね。
この「みんなでお金を出し合う仕組み」が投資信託の基本的な考え方です。
投資信託を家計に例えると:
- 住民たち → 投資家(あなたを含む)
- 出し合うお金 → 投資資金
- お米選びの専門家 → ファンドマネージャー(投資のプロ)
- 購入するお米 → 株式や債券などの投資対象
- 管理費 → 信託報酬(運用にかかる手数料)
個人では数万円しか投資できなくても、多くの投資家のお金を集めることで、数百億円、数千億円という規模で投資ができ、より効率的な運用が可能になるのです。
私が初めて投資信託を理解できたのは、実はこの「お米の共同購入」の例えを聞いたときでした。それまでは「投資信託は難しくて専門的なもの」というイメージしかありませんでしたが、「なるほど、みんなでお金を出し合って専門家に運用をお任せする仕組みなのね」と腑に落ちたのを覚えています。
【基本中の基本】運用方法による2つの大分類:「インデックス型」と「アクティブ型」
投資信託を理解する上で最も大切なのが、運用方法による分類です。これを理解すれば、投資信託選びの8割は成功したも同然です。
インデックス型投資信託:「平均点を確実に取りにいく優等生タイプ」
インデックス型の基本的な仕組み
インデックス型投資信託とは、日経平均株価やTOPIXなどの「指数(インデックス)」と同じような値動きを目指す投資信託のことです。
学校のテストで例えると、「クラスの平均点と同じ点数を取ることを目標とする」というイメージです。90点や100点を狙うのではなく、クラス平均が70点なら70点を、平均が80点なら80点を目指します。
具体例で理解してみましょう:
日経平均株価に連動するインデックス型投資信託を考えてみてください。日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場に上場している代表的な225社の株価を平均したものです。
この投資信託は、その225社の株式を、日経平均株価と同じ割合で購入します。トヨタ自動車の比重が高ければトヨタ株を多く、ソニーの比重が低ければソニー株を少なく、というように機械的に購入するのです。
インデックス型のメリット:家計に優しい3つの理由
1. 手数料が安く、家計への負担が軽い
私が最初に投資信託を買ったとき、よくわからないまま窓口で勧められたアクティブ型の投資信託を購入しました。その投資信託の年間手数料(信託報酬)は1.5%でした。
後になってインデックス型投資信託の存在を知ったとき、その手数料の安さに驚愕しました。多くのインデックス型投資信託の信託報酬は0.1%〜0.5%程度。つまり、同じ100万円を運用するのに、私が最初に選んだ投資信託では年間1万5,000円の手数料がかかっていたのに対し、インデックス型なら1,000円〜5,000円程度で済むのです。
「年間1万円の差なんて大したことない」と思われるかもしれませんが、20年間運用すると20万円の差になります。複利効果を考えると、実際の差はもっと大きくなります。
2. 投資先が分散されていて、リスクが比較的低い
インデックス型投資信託は、指数に含まれる多くの企業に自動的に分散投資されます。日経平均連動型なら225社、TOPIX連動型なら約2,100社に分散投資されることになります。
これは、家計の安全性を考える上で非常に重要です。もし1つの会社の株式だけに投資していて、その会社が倒産したら投資金額は0円になってしまいます。しかし、225社に分散投資していれば、1社が倒産してもその影響は225分の1に抑えられます。
3. 感情に左右されない、機械的な運用
私が初回の投資で大損した理由の一つは、感情的な判断でした。株価が下がると「もっと下がるかも」と不安になって売却し、株価が上がると「もっと上がるかも」と欲が出て追加購入する。結果的に「高く買って安く売る」という最悪のパターンを繰り返していました。
インデックス型投資信託は、指数に機械的に連動するため、ファンドマネージャーや投資家の感情が入り込む余地がありません。これが、長期的に安定した運用成績をもたらす要因の一つになっています。
インデックス型のデメリット:知っておくべき2つのリスク
1. 平均を上回る成績は期待できない
インデックス型投資信託は、指数と同じような動きを目指すため、指数を大きく上回る成績を期待することはできません。日経平均株価が年間10%上昇したら、インデックス型投資信託も約10%の上昇。それ以上の成績は望めません。
2. 市場全体が下落すると、一緒に下落する
2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのように、市場全体が大きく下落するときは、インデックス型投資信託も同様に下落します。個別に優秀な企業があっても、市場全体の流れには逆らえません。
ただし、私の経験では、このようなショック後には市場は回復する傾向があります。重要なのは、短期的な下落に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことです。
アクティブ型投資信託:「平均を上回る成績を目指すチャレンジャータイプ」
アクティブ型の基本的な仕組み
アクティブ型投資信託とは、ファンドマネージャーが積極的に投資先を選んで、市場平均を上回る成績を目指す投資信託のことです。
学校のテストで例えると、「クラス平均が70点なら、80点や90点を目指す」というイメージです。優秀な先生(ファンドマネージャー)が、生徒一人ひとりの特徴を分析し、最適な勉強法を考えて、平均を上回る成績を目指します。
アクティブ型のメリット:大きな可能性を秘めた2つの特徴
1. 市場平均を上回る成績を期待できる可能性
優秀なファンドマネージャーが運用するアクティブ型投資信託では、市場平均を大きく上回る成績を期待できます。実際に、長期間にわたって市場平均を上回る成績を続けている投資信託も存在します。
2. 専門家の知識と経験を活用できる
ファンドマネージャーは、企業の決算書を詳細に分析したり、経営陣と直接面談したり、業界の動向を深く調査したりと、個人投資家では難しい高度な分析を行います。その専門知識を活用できるのは、アクティブ型投資信託の大きな魅力です。
アクティブ型のデメリット:家計への影響を考えるべき3つのリスク
1. 手数料が高く、家計への負担が重い
前述の通り、私が最初に購入したアクティブ型投資信託の信託報酬は1.5%でした。これは、100万円投資した場合、何もしなくても毎年1万5,000円の手数料がかかることを意味します。
さらに、購入時手数料として投資金額の1〜3%程度、解約時にも信託財産留保額として0.3%程度の手数料がかかることが多く、これらを合計すると、投資信託を購入・保有・解約するだけで、投資金額の数%が手数料として消えてしまいます。
2. ファンドマネージャーの腕に依存する不確実性
どんなに優秀なファンドマネージャーでも、常に市場平均を上回る成績を出し続けることは困難です。金融庁の調査によると、過去20年間で市場平均を上回る成績を出し続けたアクティブ型投資信託は全体の2〜3割程度とされています。
私が最初に購入したアクティブ型投資信託も、最初の2年間は好調でした。しかし、3年目にファンドマネージャーが交代してから成績が悪化し、最終的に大きな損失を出すことになりました。
3. 情報開示が限定的で、運用方針がわかりにくい
インデックス型投資信託は、連動する指数が明確なので、どのような投資を行っているかが比較的わかりやすいです。しかし、アクティブ型投資信託は、運用方針や投資先の詳細が外部からはわかりにくく、「今、自分のお金がどのような投資に使われているのか」を把握することが困難です。
私の体験談:200万円の損失から学んだ教訓
20代の頃、私は証券会社の営業担当者に勧められるまま、「日本株アクティブ成長ファンド」という投資信託に毎月5万円ずつ積み立て投資を始めました。
最初の1年間は順調で、投資金額60万円に対して約10万円の利益が出ていました。「やっぱりプロに任せると違うな」と得意になっていたのを覚えています。
しかし、2年目から状況が一変しました。市場が調整局面に入ったにも関わらず、そのファンドは市場以上に大きく下落したのです。投資金額120万円に対して、評価額は80万円まで落ち込みました。
焦った私は、営業担当者に相談しました。すると、「今度はこちらのファンドがおすすめです」と別のアクティブ型投資信託を勧められました。「損切り」という言葉に押し切られ、80万円で解約して別のファンドに投資したのですが、それも結果的に失敗。最終的に投資元本200万円のうち、手元に残ったのは120万円でした。
この失敗から学んだ教訓は以下の通りです:
- 手数料の高さは長期的に大きな負担になる
- 営業担当者の言葉を鵜呑みにしてはいけない
- 短期的な成績に一喜一憂してはいけない
- 自分で投資信託の特徴を理解してから選ぶべき
この失敗があったからこそ、インデックス型投資信託の良さを理解し、現在の資産形成につながったのだと思います。
【安心の選択肢】バランス型投資信託:「お任せでちょうどいい塩梅を目指すタイプ」
バランス型投資信託とは?
バランス型投資信託とは、株式、債券、不動産投資信託(REIT)など、複数の資産に分散投資する投資信託のことです。
料理で例えると、「和洋中、何でも作れる便利な調味料」のようなものです。塩だけ、醤油だけでは限界がありますが、複数の調味料を適度に混ぜ合わせることで、バランスの取れた味付けができます。
バランス型の3つの魅力:忙しい現代人にぴったりの理由
1. これ1つで分散投資が完成する手軽さ
私の友人で、2歳と5歳の子育てをしながらフルタイムで働いている佐藤さんという女性がいます。彼女は「投資は必要だとわかっているけれど、複数の投資信託を選んで、それぞれの配分を考えて、定期的にリバランスして…なんて時間がない」と悩んでいました。
そんな佐藤さんにおすすめしたのがバランス型投資信託でした。1つの商品で国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券に分散投資でき、プロが自動的にバランスを調整してくれるので、佐藤さんは毎月決まった金額を積み立てるだけで済みます。
2. 専門知識がなくても適切な資産配分を実現
適切な資産配分を決めるには、各資産の特徴、相関関係、期待リターン、リスクなどの専門知識が必要です。しかし、バランス型投資信託なら、運用会社のプロが考えた資産配分で投資できます。
3. 自動リバランス機能で、常に最適な状態を維持
株式が値上がりして全体に占める比率が高くなったとき、債券が値下がりして比率が低くなったとき、バランス型投資信託なら自動的に売買を行って、目標とする資産配分に戻してくれます(これをリバランスといいます)。
個人でこれを行うには、定期的に各資産の比率をチェックし、必要に応じて売買を行う必要がありますが、バランス型投資信託なら全て自動で処理されます。
バランス型のデメリット:理解しておくべき2つの注意点
1. 手数料がやや高めに設定されていることが多い
バランス型投資信託は、複数の資産に投資し、リバランスも自動で行うため、その分手数料(信託報酬)がやや高めに設定されていることが多いです。インデックス型の単一資産投資信託の信託報酬が0.1〜0.3%程度なのに対し、バランス型は0.3〜1.0%程度のことが多いです。
2. 資産配分を自分で調整できない
例えば、「今は株式相場が好調だから、株式の比率を一時的に高めたい」と思っても、バランス型投資信託では投資家が資産配分を変更することはできません。運用会社が決めた配分に従うしかないのです。
バランス型の種類:ライフステージに合わせた3つのタイプ
1. 保守型(債券重視):50歳以上・リスクを抑えたい方向け
- 資産配分例:株式30%、債券60%、その他10%
- 期待リターン:年3〜5%程度
- リスク:比較的低い
2. 中庸型(バランス重視):30〜40代・標準的なリスクを取りたい方向け
- 資産配分例:株式50%、債券40%、その他10%
- 期待リターン:年4〜6%程度
- リスク:中程度
3. 積極型(株式重視):20〜30代・高いリターンを期待したい方向け
- 資産配分例:株式70%、債券20%、その他10%
- 期待リターン:年5〜8%程度
- リスク:やや高い
私の現在のポートフォリオは、個別に複数の投資信託を組み合わせていますが、もし今から投資を始めるとしたら、まずはバランス型投資信託から始めるかもしれません。特に、投資に割ける時間が限られている方や、「とりあえず投資を始めてみたい」という方には、非常におすすめできる選択肢だと思います。
【もう一つの大切な分類】投資対象による種類:「何に投資するかで決まる特徴」
投資信託を選ぶ際に、運用方法(インデックス型・アクティブ型)と同じくらい重要なのが、何に投資するかという投資対象による分類です。
国内株式型:「日本企業の成長に投資する安心感」
特徴と魅力
国内株式型投資信託は、トヨタ自動車、ソニー、ソフトバンクグループなど、私たちが日常的に商品やサービスを利用している日本企業の株式に投資します。
私がこのタイプの投資信託で好きなのは、投資先企業の動向が理解しやすいことです。新聞やニュースで取り上げられる企業が多いので、「あ、この会社に投資してるんだ」という実感を持ちやすいのです。
期待できる年利とリスク
- 期待リターン:年5〜8%程度
- リスク:中程度(海外株式より低い傾向)
- 為替リスク:なし
こんな方におすすめ
- 海外投資に不安を感じる方
- 日本経済の将来性を信じている方
- 為替変動リスクを避けたい方
海外株式型:「世界の成長企業に投資する可能性」
特徴と魅力
海外株式型投資信託は、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどの米国企業や、欧州、アジアの企業株式に投資します。
私が海外株式投資を始めたきっかけは、10年前に「日本の人口は減少していくけれど、世界の人口は増加している。経済成長の中心は海外に移っていくのではないか」と感じたことでした。実際、過去10年間の成績を見ると、海外株式型投資信託の方が国内株式型よりも好成績を残している場合が多いです。
期待できる年利とリスク
- 期待リターン:年6〜10%程度
- リスク:中〜高程度
- 為替リスク:あり(円安になると有利、円高になると不利)
注意すべきポイント:為替リスクについて
海外株式型投資信託で最も注意すべきは為替リスクです。例えば、米国株が10%上昇しても、同時期に円が対ドルで10%上昇(円高)すれば、日本円ベースでのリターンはプラスマイナス0になってしまいます。
私の経験では、短期的には為替変動の影響が大きく出ることがありますが、10年、20年という長期で見れば、企業の成長力の方が為替変動よりも投資成績に大きな影響を与える傾向があります。
こんな方におすすめ
- より高いリターンを期待したい方
- 世界経済の成長を取り込みたい方
- 長期投資を前提とした方
国内債券型:「安全性を重視する堅実な選択」
特徴と魅力
国内債券型投資信託は、日本国債や日本企業が発行する社債に投資します。債券は「お金を貸して、利息をもらう」という投資ですので、株式に比べて値動きが穏やかです。
私の母(60歳)は、退職金の一部を国内債券型投資信託で運用しています。「老後資金だから、大きく増やす必要はないけれど、減らすのも困る」という母のニーズにぴったり合っているからです。
期待できる年利とリスク
- 期待リターン:年1〜3%程度
- リスク:低い
- 為替リスク:なし
現在の課題:低金利環境の影響
ただし、現在の日本は長期間にわたって低金利政策が続いており、国内債券投資信託の利回りも非常に低くなっています。銀行預金よりは良いものの、インフレ率を考慮すると実質的なリターンはわずかという状況です。
こんな方におすすめ
- 元本の安全性を最重視する方
- 50代以降で、リスクを抑えた運用をしたい方
- ポートフォリオの安定性を高めたい方
海外債券型:「海外の金利と為替の恩恵を受ける可能性」
特徴と魅力
海外債券型投資信託は、米国債券、欧州債券、新興国債券などに投資します。日本よりも金利の高い国の債券に投資することで、より高い利息収入を期待できます。
期待できる年利とリスク
- 期待リターン:年2〜5%程度
- リスク:中程度
- 為替リスク:あり
注意すべき為替リスク
海外債券投資信託も、海外株式と同様に為替リスクがあります。ただし、債券の場合は定期的な利息収入があるため、為替変動による影響を利息でカバーできる場合があります。
不動産投資信託(REIT):「不動産オーナーになる感覚」
特徴と魅力
REIT(リート)は、オフィスビル、商業施設、住宅、物流施設などの不動産に投資する投資信託です。個人では買えない大型の不動産物件にも、少額から投資できます。
私は資産の約10%をREITに投資しています。理由は、株式や債券とは異なる値動きをするため、ポートフォリオ全体のリスク分散効果があるからです。
期待できる年利とリスク
- 期待リターン:年3〜7%程度
- リスク:中程度
- 特徴:配当利回りが比較的高い
REITの魅力:高い分配金
REITは、収益の大部分を投資家に分配する仕組みになっているため、分配金利回りが株式投資信託よりも高い傾向があります。私の保有するREIT投資信託は、年間約4%の分配金を出しています。
【実践編】初心者が失敗しない投資信託の選び方:5つのステップ
理論はわかったけれど、「実際にどれを選んだらいいの?」というのが一番の悩みだと思います。私自身の失敗と成功の経験を踏まえて、初心者の方におすすめする選び方をお伝えします。
ステップ1:投資の目的と期間を明確にする
なぜこのステップが重要なのか
私が最初に失敗した原因の一つは、「投資の目的」が曖昧だったことです。「なんとなくお金を増やしたい」という漠然とした思いで始めたため、短期的な値動きに一喜一憂し、最終的に損失を出してしまいました。
目的別の投資信託選び
老後資金作り(20年以上の長期)
- 推奨:海外株式インデックス型 or 積極型バランス型
- 理由:長期間の投資により、短期的な変動リスクを抑制しつつ、高いリターンを期待できる
教育資金作り(5〜15年の中期)
- 推奨:中庸型バランス型 or 国内株式インデックス型
- 理由:使用時期が決まっているため、極端なリスクは避けつつ、ある程度のリターンを狙う
緊急資金の一部運用(3〜5年の短期)
- 推奨:国内債券型 or 保守型バランス型
- 理由:必要な時に元本割れのリスクを抑制することを優先
ステップ2:リスク許容度を把握する
リスク許容度とは
リスク許容度とは、「投資金額がどの程度減ったら夜も眠れなくなるか」の基準です。これは投資において極めて重要な概念ですが、多くの初心者の方が軽視してしまいがちです。
私の失敗体験:リスク許容度を超えた投資
20代の頃、私は貯金200万円のうち150万円を投資に回しました。「若いうちはリスクを取った方がいい」という情報を鵜呑みにしたからです。
しかし、投資を始めて半年後、市場の調整で投資金額が120万円まで目減りしました。30万円の含み損です。その時の精神的ストレスは想像以上でした。仕事中も投資信託の基準価額が気になって集中できず、夜も値動きが心配で眠れませんでした。
結果的に、耐え切れずに120万円で全て売却。その後、市場が回復して投資信託の基準価額は購入時を上回りましたが、私はその恩恵を受けることができませんでした。
適切なリスク許容度の目安
この経験から、私は以下のような基準を推奨しています:
- 保守的な方:投資金額の10%の減少(10万円投資なら1万円の損失)まで許容
- 標準的な方:投資金額の20%の減少(10万円投資なら2万円の損失)まで許容
- 積極的な方:投資金額の30%の減少(10万円投資なら3万円の損失)まで許容
ステップ3:手数料を必ずチェックする
手数料の重要性:複利の逆効果
手数料は、複利と逆の効果をもたらします。年利5%で運用できても、手数料が年2%かかれば、実際のリターンは年3%になってしまいます。
私が200万円損失した投資信託の手数料内訳
- 購入時手数料:3%(60万円投資時に1.8万円)
- 信託報酬:年1.5%(年間9,000円〜1.8万円)
- 信託財産留保額:0.3%(解約時に約2,400円〜3,600円)
2年間保有した場合、手数料だけで約5万円かかりました。これは投資元本120万円に対して約4%にあたります。仮に投資信託の成績がプラスマイナス0だったとしても、手数料だけで4%の損失が確定していたのです。
手数料の目安
- インデックス型:信託報酬年0.1〜0.5%、購入時手数料0円が理想
- バランス型:信託報酬年0.3〜0.8%、購入時手数料0円が理想
- アクティブ型:信託報酬年0.5〜2.0%(ただし、高い手数料に見合う成績があるかを要確認)
ステップ4:過去の運用実績を確認する
運用実績の見方
過去の成績が将来を保証するものではありませんが、ファンドの特徴や運用方針の妥当性を判断する材料にはなります。
確認すべきポイント
- 設定来の年率リターン:投資信託が設定されてから現在までの年平均リターン
- 市場平均との比較:同じカテゴリーの他の投資信託や市場指数との比較
- 下落時の動き:2008年リーマンショック、2020年コロナショックなど、市場が大きく下落した時期の値動き
私が重視するポイント
私が投資信託を選ぶ際に特に重視するのは、下落時の動きです。市場が好調な時期に良い成績を出すのは当然ですが、市場が不調な時期にどの程度下落を抑えられるかが、その投資信託の真価を示すからです。
ステップ5:少額から始めて経験を積む
「習うより慣れろ」の重要性
どんなに理論を学んでも、実際に投資を経験しなければわからないことがたくさんあります。特に、「自分のリスク許容度」は、実際に投資金額が変動するのを経験して初めて正確に把握できるものです。
私のおすすめ:段階的投資法
- 1ヶ月目:月1万円から開始
- 3ヶ月経過後:問題なければ月2万円に増額
- 6ヶ月経過後:さらに問題なければ月3万円に増額
- 1年経過後:自分のリスク許容度と投資方針が固まったら、目標金額まで増額
この方法なら、仮に最初に選んだ投資信託が自分に合わなかったとしても、損失を最小限に抑えることができます。
【要注意】初心者が陥りがちな5つの落とし穴
15年間の投資経験と、多くの相談者を見てきた中で、初心者の方が特に陥りやすい失敗パターンをお伝えします。私自身も、これらの失敗をほぼ全て経験しました。
落とし穴1:「毎月分配型」の甘い罠
毎月分配型投資信託とは
毎月分配型投資信託とは、毎月決まった日に分配金(配当のようなもの)を受け取れる投資信託です。「毎月お小遣いがもらえる」ような感覚で、特に退職後の方に人気があります。
なぜ甘い罠なのか
私のセミナーで、70代の田中さん(仮名)からこんな相談を受けました。
「毎月5万円の分配金をもらえる投資信託を500万円で購入しました。年利12%の高利回りで満足しています」
しかし、詳細を確認してみると、その投資信託の基準価額(1口あたりの値段)は、購入時の10,000円から6,000円まで下落していました。つまり、500万円の投資は300万円の価値になっていたのです。
毎月5万円の分配金を1年間受け取ったとしても60万円。元本の減少200万円には遠く及びません。実質的に、自分の投資元本を少しずつ取り崩してもらっているだけだったのです。
毎月分配型を避けるべき理由
- 複利効果が働かない:分配金を再投資しないため、資産の成長が遅くなる
- 税金が毎回かかる:分配金には毎回税金がかかるため、効率が悪い
- 手数料が高い:毎月分配型は一般的に信託報酬が高い
落とし穴2:金融機関の窓口での「おすすめ商品」
私の苦い経験:銀行窓口での勧誘
投資を始めた頃、私は地方銀行の窓口で投資信託を購入しました。担当者は親身になって相談に乗ってくれ、「田中様にぴったりの商品があります」と勧めてくれました。
その投資信託は、購入時手数料3%、信託報酬年1.8%の海外債券アクティブ型でした。「海外の高金利を活かした安定運用」という説明に納得して購入したのですが、後にこれが大きな失敗だったと気づきました。
窓口販売の問題点
- 手数料の高い商品を勧められがち:金融機関の収益になる商品を優先的に勧められる
- 販売員の知識不足:投資信託の専門家ではない場合が多い
- 顧客の利益より販売目標を優先:ノルマ達成のため、顧客に最適でない商品を勧める場合がある
対策:ネット証券の活用
現在、私は主要な投資をネット証券で行っています。ネット証券なら:
- 購入時手数料が0円の投資信託が豊富
- 信託報酬の安い商品を自分で選べる
- 営業を受ける心配がない
- 24時間いつでも取引できる
落とし穴3:短期的な値動きに振り回される「狼狈売り」
狼狽売りとは
狼狽売りとは、投資信託の基準価額が下落した時に、慌てて売却してしまうことです。私も経験がありますが、これが投資で失敗する最大の原因の一つです。
私の狼狽売り体験
2011年の東日本大震災直後、日経平均株価は大きく下落しました。私が保有していた国内株式インデックス投資信託も、約20%下落しました。
連日のニュース映像と、毎日減り続ける投資信託の評価額を見て、私は「このまま日本経済は立ち直れないのではないか」という不安に駆られました。そして、震災から1ヶ月後、含み損が最大になったタイミングで全て売却してしまいました。
ところが、その後日本の復興需要や企業の努力により、株価は徐々に回復。私が売却した投資信託も、半年後には購入時の価格を上回っていました。
狼狽売りを防ぐ方法
- 投資する前にシミュレーションしておく:「30%下落しても保有し続ける」など、事前にルールを決める
- 定期的な積立投資を活用:一括投資より、毎月定額積立の方が心理的負担が少ない
- 長期的な視点を保つ:過去の金融危機も、長期的には回復している歴史を思い出す
落とし穴4:「話題の投資信託」への飛び乗り
話題性に惑わされる危険
メディアやSNSで話題になっている投資信託に、深く考えずに投資してしまうパターンです。
私が失敗した「中国株ブームファンド」
2007年頃、中国経済の急成長を背景に、中国株投資信託が大きな話題になりました。「年利30%も夢ではない」という宣伝文句に踊らされた私は、50万円を中国株アクティブ型投資信託に投資しました。
しかし、購入のタイミングは既に中国株相場の高値圏。その後、中国株は大きく調整し、私の投資は半年後には30万円まで目減りしました。結局、損切りして終了。典型的な「高値掴み」でした。
話題の投資信託を検討する際のチェックポイント
- なぜ今話題になっているのか:既に株価が大きく上昇した後ではないか
- 長期的な成長性があるか:一時的なブームではないか
- 自分の投資方針に合っているか:単に話題だから、という理由だけで選んでいないか
落とし穴5:「複数の投資信託に分散投資」の勘違い
間違った分散投資の例
投資の基本は分散投資ですが、多くの初心者の方が誤解されているのが、「複数の投資信託を買えば分散投資になる」という考えです。
私の知人で、こんな方がいました:
- 日経平均インデックス投資信託
- TOPIX連動投資信託
- 国内大型株アクティブ投資信託
- 日本株バリュー投資信託
一見、4つの投資信託に分散投資しているように見えますが、全て「日本株」への投資です。これでは、日本の株式市場が下落した時に、全ての投資信託が同時に下落してしまいます。
正しい分散投資とは
- 地域の分散:国内、先進国、新興国
- 資産の分散:株式、債券、不動産
- 時間の分散:一括投資ではなく、積立投資
【具体的な始め方】今日からできる3つのアクション
理論を学んだら、次は実践です。投資信託を始めるための具体的なステップをお伝えします。
アクション1:証券口座を開設する
ネット証券がおすすめな理由
私は現在、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社に口座を持っていますが、初心者の方にはSBI証券または楽天証券をおすすめしています。
SBI証券の特徴
- 投資信託の取扱本数が最多クラス
- 購入時手数料0円の投資信託が豊富
- つみたてNISA対象商品が充実
- クレジットカード積立でポイント還元
楽天証券の特徴
- 楽天ポイントで投資信託を購入可能
- 楽天カード決済で積立投資ができる
- 楽天銀行との連携でお得な金利
- 投資情報が充実
口座開設の手順(約1週間で完了)
- オンラインで申込み(本人確認書類をアップロード)
- 郵送で口座開設通知書を受取
- 初回ログイン・初期設定
- 銀行口座から資金を入金
アクション2:つみたてNISAを活用する
つみたてNISAとは
つみたてNISAは、年間40万円まで(月約3.3万円)の投資信託積立投資で得た利益が、最長20年間非課税になる制度です。通常、投資信託の利益には約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAならその税金がかかりません。
つみたてNISAのメリット
- 税制優遇:利益に税金がかからない
- 商品が厳選:金融庁が選定した低コスト商品のみ
- 長期投資前提:短期的な売買を抑制する仕組み
- 少額から開始:月100円からでも投資可能
私のつみたてNISA活用体験
私は2018年からつみたてNISAを満額(年40万円)活用しています。現在の投資信託は以下の通りです:
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 月2万円
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 月1.3万円
6年間の運用結果:投資元本240万円→評価額約350万円(約110万円の含み益)
もし通常の課税口座で運用していたら、110万円の利益に対して約22万円の税金がかかっていました。つみたてNISAのおかげで、この税金を節約できています。
アクション3:月1万円から積立投資を開始
初心者におすすめの投資信託3選
15年の経験と、現在の運用実績を踏まえて、初心者の方におすすめできる投資信託を3つご紹介します。
1. eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 投資対象:全世界の株式(先進国・新興国含む)
- 運用方法:インデックス型(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス連動)
- 信託報酬:年0.1144%
- おすすめ理由:これ1本で世界中の株式に分散投資できる
2. eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- 投資対象:米国の主要企業500社
- 運用方法:インデックス型(S&P500指数連動)
- 信託報酬:年0.09372%
- おすすめ理由:世界最大の経済大国の成長を取り込める
3. eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- 投資対象:国内外の株式・債券・不動産に8分の1ずつ投資
- 運用方法:インデックス型
- 信託報酬:年0.143%
- おすすめ理由:これ1本で完璧な分散投資が完成
私の推奨する投資配分(月3万円の場合)
保守的な方
- 全世界株式 1万円
- バランス型 2万円
標準的な方
- 全世界株式 2万円
- 米国株式 1万円
積極的な方
- 全世界株式 1.5万円
- 米国株式 1.5万円
まとめ:あなたの投資信託選びを成功に導く5つの心構え
最後に、15年間の投資経験で学んだ、投資信託で成功するための心構えをお伝えします。
心構え1:完璧を求めず、まずは始めてみる
投資信託を始める前、私は「どの商品が最も良いのか」を調べ続けて、なかなか投資を開始できませんでした。しかし、今振り返ってみると、完璧な投資信託などありません。重要なのは、リスクを理解した上で、早く始めることです。
時間は投資家にとって最大の武器です。20代で投資を始めるのと30代で始めるのでは、複利効果に大きな差が生まれます。完璧を求めて始めないよりも、60点の選択で今すぐ始める方がはるかに良い結果をもたらします。
心構え2:短期的な損失を恐れない
投資を続けていると、必ず含み損を抱える時期があります。私も何度も経験しましたが、その度に「投資を続けるべきか」悩みました。
しかし、過去100年以上の株式市場の歴史を見ると、短期的には大きな変動があっても、長期的には右肩上がりの成長を続けています。短期的な損失を恐れて投資をやめてしまったら、長期的な成長の恩恵を受けることができません。
重要なのは、短期的な損失に動揺しない精神的な準備をしておくことです。
心構え3:定期的な見直しを怠らない
投資信託を購入したら終わり、ではありません。年に1〜2回は、以下の点を確認しましょう:
- 投資目標に変更はないか
- リスク許容度に変化はないか
- より良い投資信託が登場していないか
- 資産配分に大きな偏りが生じていないか
私は毎年1月に、前年の投資成績を振り返り、必要に応じてポートフォリオの調整を行っています。
心構え4:感情的な判断を避ける
投資における最大の敵は、恐怖と欲です。市場が大きく下落すると恐怖で売却し、大きく上昇すると欲に駆られて追加購入する。この感情的な売買が、投資成績を悪化させる最大の原因です。
感情的な判断を避けるコツ
- 事前に投資ルールを決めておく
- 定期的な積立投資を活用する
- 投資信託の基準価額を毎日チェックしない
- 長期的な視点を常に意識する
心構え5:投資は人生を豊かにする手段だと理解する
最後に、最も大切な心構えです。投資は、人生を豊かにするための手段であって、目的ではありません。投資でお金を増やすことばかりに気を取られて、家族との時間や自分の健康をおろそかにしては本末転倒です。
私が投資を続ける理由は、将来の経済的不安を軽減し、家族との時間をより大切にするためです。老後に子供たちに経済的な負担をかけたくないし、妻と一緒に趣味を楽しめる余裕を持ちたいからです。
投資はあくまでも手段。大切なのは、あなたがどんな人生を送りたいかという目標です。
投資信託の世界は、最初は複雑で難しく感じるかもしれません。でも、基本的な種類と特徴を理解すれば、あなたにぴったりの商品を選ぶことができます。
私の200万円の損失も、決して無駄ではありませんでした。その失敗があったからこそ、正しい投資方法を学び、現在の資産を築くことができました。
あなたも、完璧を求めず、小さな一歩から始めてみてください。月1万円からでも構いません。10年後、20年後のあなたは、今日始めた投資に必ず感謝することでしょう。
投資は一人で悩む必要はありません。わからないことがあれば、信頼できるファイナンシャルプランナーに相談したり、証券会社のサポートを活用したりしてください。
あなたの投資ライフが、豊かで実りあるものになることを心より願っています。