はじめに:あなたの辛い気持ち、痛いほど分かります
NISA口座の画面を開くたび、赤い数字が目に飛び込んできて、胃がキリキリと痛む。「なんで始めてしまったんだろう」「このまま損が膨らんだらどうしよう」―そんな思いで夜も眠れない日々を過ごしていませんか。
私はファイナンシャルプランナー(CFP資格保有)として、これまで12年間、数多くの方のマネー相談に乗ってきました。大手銀行での個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社での投資アドバイザー経験5年を通じて、含み損に悩む多くの方々の心の痛みを目の当たりにしてきました。
そして何より、私自身が20代の頃、株式投資で200万円という大きな損失を経験した当事者でもあります。当時の絶望感、自分を責める気持ち、周りの人に相談できない孤独感―今でも鮮明に覚えています。
でも、今お伝えしたいのは、その経験があったからこそ、30代でつみたてNISAと確定拠出年金による堅実な資産形成で現在3,000万円の資産を築くことができたということです。含み損は確かに辛いものですが、適切な対処法を知ることで、必ずその先に光が見えてきます。
この記事では、NISA含み損の現実的な対処法から心の整理術まで、私の実体験と専門知識を総動員して、あなたの不安に寄り添いながら解説していきます。一人で抱え込まず、一緒に冷静な判断への道筋を見つけていきましょう。
第1章:NISA含み損の現実と心理的ダメージを理解する
なぜNISA含み損は特に辛く感じるのか
NISA含み損が通常の投資損失よりも心理的ダメージが大きい理由は、複数の要因が重なっているからです。
「せっかくの非課税枠なのに…」という後悔の念
NISAは年間の投資枠が決まっており、一度使った枠は元に戻りません。つみたてNISAなら年間40万円、一般NISAなら年間120万円(2024年以降の新NISA制度では成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)という貴重な非課税枠を使って投資したにもかかわらず、含み損を抱えてしまった時の「もったいない」という気持ちは、通常の課税口座での損失以上に強烈です。
私がこれまで相談を受けた方の中には、「NISAは絶対に損をしてはいけない制度だと思っていた」と涙ながらに話される方もいらっしゃいました。実際には、NISAはあくまで非課税制度であり、投資である以上、元本割れのリスクは存在するのですが、制度の特別感から「絶対に得をするもの」という誤解を持ってしまう方が少なくありません。
初心者投資家が陥りやすい期待値の罠
NISA制度の普及により、投資初心者の方が投資を始めるケースが急増しています。金融庁の調査によると、NISA口座開設者の約6割が投資未経験者です。投資経験が浅い状態で始めた場合、どうしても短期的な値動きに一喜一憂してしまいがちです。
「投資は長期で見れば必ず儲かる」という情報だけを信じて始めたものの、実際に含み損を目の当たりにすると、その理論と現実のギャップに困惑してしまうのです。私自身も20代の頃、まさにこの状況でした。雑誌で「株式投資で資産倍増!」という記事を読んで株を始めたものの、リーマンショック時に200万円の損失を出し、投資への恐怖心を植え付けられました。
損失回避バイアスが増幅する心理的苦痛
行動経済学でいう「損失回避バイアス」も、NISA含み損の辛さを増幅させます。人間は得をすることよりも、損をすることの方を約2倍強く感じると言われています。100万円の利益の喜びよりも、50万円の損失の痛みの方が心理的インパクトが大きいのです。
毎日NISA口座の残高をチェックして、含み損の数字を見るたびに心が痛むのは、この心理メカニズムが働いているからです。私の相談者の中には、「NISAの画面を見るのが怖くて、もう3ヶ月間アプリを開いていない」という方もいらっしゃいました。
含み損と実現損失の違いを正しく理解する
含み損について考える時、まず理解しておきたいのが「含み損」と「実現損失」の違いです。
含み損はまだ「損失」ではない
含み損は、あくまで現在の時価と購入価格の差額であり、売却するまでは確定した損失ではありません。株価や投資信託の基準価額は日々変動するため、今日含み損であっても、明日にはプラスに転じる可能性もあります。
私が銀行員時代に担当していたお客様で、こんな方がいらっしゃいました。リーマンショック時に投資信託で大きな含み損を抱え、「もうダメだ」と諦めかけていた方でしたが、その後の経済回復で含み損が解消され、最終的にはプラスになったのです。その時お客様が言われた「含み損の時に売らなくて本当に良かった」という言葉が、今でも印象に残っています。
時間軸によって見え方が変わる投資成果
投資の成果は、見る時間軸によって大きく変わります。日単位、月単位で見ると大きな含み損でも、年単位、5年単位で見ると全く違った結果になることがあります。
例えば、2020年3月のコロナショック時、多くの投資家が大きな含み損を抱えました。しかし、その後の回復により、2021年には多くの投資信託が過去最高値を更新しています。つまり、含み損の期間を乗り越えた投資家は、結果的に大きなリターンを得ることができたのです。
データで見るNISA投資家の実態
金融庁が公表している「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」によると、興味深いデータが見えてきます。
NISA投資家の運用成果の実態
2022年12月末時点でのつみたてNISA口座の運用状況を見ると、約8割の口座がプラスの運用成果を上げています。しかし、これは制度開始からの累計での話であり、短期的に見れば含み損を抱えている期間も当然存在していました。
特に2022年は世界的な株価下落により、多くのNISA投資家が含み損を経験しました。しかし、長期的な視点で投資を継続した方々の多くが、その後の回復局面で利益を得ています。
投資継続率から見える成功パターン
同調査では、つみたてNISAの投資継続率が90%以上と非常に高いことも分かっています。これは、含み損の期間があっても投資を継続している方が多いことを示しています。
私のこれまでの経験でも、含み損の期間を乗り越えて投資を継続された方々の多くが、最終的には投資に対してポジティブな感情を持つようになっています。逆に、含み損に耐えきれずに早期に売却してしまった方は、その後の相場回復を指をくわえて見ることになり、より大きな後悔を抱えることになりがちです。
第2章:感情的になる前に!冷静な現状分析の方法
あなたの投資目的と時間軸を再確認する
含み損に直面した時、まず行うべきは感情的な判断ではなく、冷静な現状分析です。投資を始めた時の目的と時間軸を思い出してみましょう。
なぜNISAで投資を始めたのか?
多くの方がNISA投資を始める理由は以下のようなものです:
- 老後資金の準備(20年、30年後を見据えて)
- 子どもの教育資金の準備(10年、15年後を目標に)
- マイホーム購入の頭金作り(5年、10年後を想定)
- 何となく将来が不安だから
もしあなたの投資目的が老後資金の準備で、まだ30代や40代であれば、現在の含み損は長期投資の過程での一時的な調整局面に過ぎない可能性が高いです。
私が以前相談を受けた35歳の会社員の方は、老後資金作りのためにつみたてNISAを始めて2年目に大きな含み損を抱えていました。しかし、「あと30年以上ある」という時間軸で考え直すことで、心理的な負担が大幅に軽減されました。その後も継続して投資を続け、現在は順調に資産を積み上げています。
短期的な感情と長期的な目標のギャップ
投資における最大の敵は、短期的な感情と長期的な目標のギャップです。日々の値動きに一喜一憂することで、本来の投資目的を見失ってしまいがちです。
例えば、20年後の老後資金作りが目的なのに、1年間の含み損で投資をやめてしまうのは、ゴールに向かって歩いている途中で、ちょっとした石につまずいたからといって引き返してしまうようなものです。
含み損の「深刻度」を客観視する4つの指標
含み損の状況を感情的ではなく客観的に判断するために、以下の4つの指標で現状を分析してみましょう。
1. 損失率(パーセンテージ)で見る
投資額に対する含み損の割合を計算してみましょう。
- 5%以下:市場の通常の変動範囲内
- 5〜15%:調整局面、よくある範囲
- 15〜30%:大きな調整局面、しかし回復の可能性は十分
- 30%以上:深刻な状況、投資内容の見直しが必要かもしれません
例えば、100万円投資して含み損が10万円(10%の下落)なら、これは株式市場では珍しいことではありません。S&P500指数でも年間で10%以上下落する年は、過去30年間で10回以上あります。
2. 投資期間との関係で見る
投資を始めてからの期間も重要な判断材料です。
- 1年未満:短期的な変動の可能性が高い
- 1〜3年:市場サイクルの一部と考えられる
- 3〜5年:やや長期的な調整、投資内容の検証が必要
- 5年以上:投資戦略の根本的な見直しが必要かもしれません
私の経験では、投資を始めて半年から1年程度で含み損に悩まれる方が最も多いです。しかし、この期間での含み損は、長期投資の観点からはほとんど意味を持ちません。
3. 投資商品の性質で見る
投資している商品の性質によって、含み損の意味合いが変わります。
- 全世界株式インデックスファンド:長期的には回復の可能性が高い
- 先進国株式インデックスファンド:比較的安定した投資対象
- 新興国株式ファンド:値動きが大きいが成長性も期待できる
- 個別銘柄:企業固有のリスクがある
- テーマ型ファンド:流行りに左右される可能性がある
一般的に、分散投資されたインデックスファンドであれば、含み損からの回復可能性は個別銘柄よりも高いと考えられます。
4. 家計に与える影響で見る
最も重要なのは、現在の含み損があなたの生活に与える影響です。
- 日常生活に支障がない:冷静に長期視点で判断可能
- やや心配だが生活は大丈夫:投資継続を検討
- 含み損が拡大すると生活が厳しい:投資額の見直しが必要
- すぐにでも現金が必要:部分的な売却を検討
投資の大原則は「生活に支障のない余剰資金で行う」ことです。もし含み損の拡大が生活を脅かす状況であれば、投資額そのものを見直す必要があります。
市場全体の状況を把握する重要性
あなたの投資成果を評価する際は、個人の成果だけでなく、市場全体の状況も把握することが重要です。
ベンチマーク(比較指標)との比較
投資信託であれば、その商品のベンチマークとなる指数との比較を行いましょう。例えば、全世界株式ファンドであれば「MSCI All Country World Index」、日本株式ファンドであれば「日経平均株価」や「TOPIX」との比較です。
もしあなたの投資信託の下落率が、ベンチマークと同程度であれば、それは個別商品の問題ではなく、市場全体の調整局面である可能性が高いです。
経済ニュースや世界情勢との関連性
含み損が発生している時期の経済ニュースや世界情勢を振り返ってみることも有効です。
- 金利上昇局面:株式相場に下押し圧力
- 地政学的リスク:市場の不安定化要因
- 企業業績の悪化:株価下落の直接的要因
- 為替相場の変動:外国資産への影響
これらの要因が一時的なものか、構造的なものかを判断することで、含み損の性質も見えてきます。
投資日記をつけて感情と事実を分離する
含み損に悩んでいる時こそ、投資日記をつけることをお勧めします。これは私自身が20代の株式投資失敗後に始めた習慣で、冷静な判断力を保つのに非常に役立ちました。
日記に記録すべき内容
- その日の投資成果(含み損益)
- 市場全体の動き
- 経済ニュースや気になった情報
- 自分の感情(不安、焦り、後悔など)
- 今後の投資方針についての考え
感情と事実を分けて考える効果
投資日記をつけることで、「感情的な反応」と「客観的な事実」を分けて考えられるようになります。
例えば、こんな記録をつけてみてください:
【事実】
- つみたてNISA含み損:-15万円(-12%)
- 日経平均:前日比-2.3%
- 米国金利上昇のニュース
【感情】
- 不安で眠れない
- 投資をやめたい気持ち
- 損失がもっと拡大するのではという恐怖
このように記録することで、現在の含み損が「市場全体の調整」によるものであり、自分だけが損をしているわけではないことが客観視できます。
第3章:含み損への5つの対処戦略
戦略1:ドルコスト平均法の継続(最も基本的で効果的)
含み損を抱えている時の最も基本的で効果的な対処法は、ドルコスト平均法による投資の継続です。これは私自身が20代の投資失敗から立ち直るために採用した戦略でもあります。
ドルコスト平均法の心理的メリット
ドルコスト平均法とは、定期的に一定額を投資することで、価格が高い時は少ない口数を、価格が安い時は多くの口数を購入する投資手法です。含み損の状況では、安い価格で多くの口数を購入できるため、平均購入価格を下げる効果があります。
私がつみたてNISAを始めた30代前半、まさにリーマンショック後の混乱期でした。毎月3万円ずつ投資を続けていましたが、最初の2年間はほとんど含み損の状態でした。しかし、価格が下がっている間も投資を継続したことで、平均購入価格が下がり、その後の回復局面で大きなリターンを得ることができました。
含み損時の購入は「バーゲンセール」
含み損を抱えている状況を「バーゲンセール」と捉える視点の転換が重要です。同じ投資信託を、以前よりも安い価格で購入できるチャンスと考えるのです。
例えば、1万円で購入した投資信託が8,000円に下がっているとします。この時に1万円追加投資すると、8,000円で1.25口購入できます。平均購入価格は9,000円となり、今後9,000円を超えれば含み益に転じます。
投資継続のための「自動積立設定」の活用
感情的な判断を排除するため、自動積立設定を活用することを強くお勧めします。私の相談者の中で投資に成功している方の共通点は、「相場を見ずに機械的に積立を続けている」ことです。
毎月の給料日に自動的に一定額が積み立てられる設定にしておけば、含み損の状況でも感情に左右されずに投資を継続できます。これは心理的な負担を大幅に軽減する効果もあります。
戦略2:部分的な損切りと投資戦略の見直し
すべての含み損を抱え続けることが正解ではありません。状況によっては、部分的な損切りと投資戦略の見直しが必要な場合もあります。
損切りを検討すべき5つのケース
- 投資方針と異なる商品を購入していた場合 例:長期投資のつもりがテーマ型ファンドを購入していた
- リスク許容度を超えた投資をしていた場合 例:家計に余裕がないのに月3万円の積立をしていた
- 投資商品の運用方針が変更された場合 例:インデックスファンドがアクティブファンドに変更された
- より良い投資選択肢が見つかった場合 例:高い信託報酬の商品から低コストの商品への乗り換え
- ライフイベントにより資金が必要になった場合 例:住宅購入、教育費、医療費など
損切りの「タイミング」と「方法」
損切りを行う場合は、感情的な判断ではなく、明確な基準を設けることが重要です。
私がお客様にお勧めしている損切り基準の一例:
- 投資額の30%以上の含み損が6ヶ月以上続いている
- 投資商品の運用方針が当初の期待と大きく異なっている
- 家計状況の変化により投資継続が困難になった
損切りを行う場合も、一度にすべてを売却するのではなく、段階的に減らしていく方法がリスクを軽減できます。
「損切り」ではなく「投資戦略の修正」として捉える
損切りという言葉にはネガティブなイメージがありますが、実際には「投資戦略の修正」として前向きに捉えることが大切です。
私自身も30代の時、高い信託報酬のアクティブファンドから低コストのインデックスファンドに切り替える際に、一部含み損で売却しました。当時は「損をした」と感じましたが、長期的に見れば、この判断が資産形成の成功につながりました。
戦略3:投資額の調整とリスク許容度の再評価
含み損に悩んでいる場合、そもそもの投資額があなたのリスク許容度に適していない可能性があります。
「毎晩眠れる投資額」への調整
投資の大原則は「毎晩安眠できる範囲での投資」です。含み損が気になって眠れない、日常生活に支障をきたしているという状況であれば、投資額を減らすことを検討しましょう。
私がファイナンシャルプランナーとして相談を受ける際によく使うのが「毎晩眠れる投資額テスト」です。現在の投資額が半分になっても生活に支障がないか、精神的に耐えられるかを想像してもらいます。もし答えが「NO」であれば、投資額を減らすことをお勧めします。
年収・年齢・家族構成に応じた適正投資額
一般的な適正投資額の目安をご紹介しますが、これはあくまで参考値であり、個人の状況により大きく異なります。
【年収別・年代別の投資額目安(年間)】
- 20代・年収300万円:年間24万円(月2万円)
- 30代・年収500万円:年間60万円(月5万円)
- 40代・年収700万円:年間84万円(月7万円)
ただし、この金額はあくまで理論値です。実際には、以下の要因を考慮する必要があります:
- 家族構成(配偶者・子どもの有無)
- 住宅ローンの有無
- 両親の介護予定
- 健康状態
- 転職・起業の予定
段階的な投資額増加のアプローチ
いきなり大きな金額で投資を始めるのではなく、段階的に投資額を増やしていくアプローチも有効です。
例えば:
- 最初の半年:月1万円
- 慣れてきたら:月2万円
- 1年後に問題なければ:月3万円
この方法であれば、市場の値動きや自分の感情の変化を確認しながら、無理のない範囲で投資額を調整できます。
戦略4:分散投資の見直しと商品の入れ替え
含み損の原因が、投資商品の選択ミスや分散不足にある場合は、商品の見直しを検討しましょう。
集中投資のリスクを分散投資で軽減
特定の地域や業種に偏った投資をしていた場合、分散投資による リスクの軽減が有効です。
よくある集中投資の例:
- 日本株式のみ
- アメリカ株式のみ
- 特定のテーマ(AI、グリーンエネルギーなど)のみ
- 成長株のみ、価値株のみ
私が相談を受けた40代の会社員の方は、「AI関連株が伸びる」という情報を信じて、AI関連のテーマ型ファンドのみに投資していました。しかし、AI関連株の調整局面で大きな含み損を抱えることになりました。その後、全世界株式インデックスファンドに切り替えることで、リスクを分散し、安定した成果を上げています。
低コストインデックスファンドへの切り替え
高い信託報酬のアクティブファンドや、テーマ型ファンドを保有している場合、低コストのインデックスファンドへの切り替えを検討しましょう。
信託報酬の比較例:
- アクティブファンド:年率1.5〜2.0%
- テーマ型ファンド:年率1.0〜1.8%
- インデックスファンド:年率0.1〜0.5%
年率1.5%の差は、長期投資では大きな差となります。100万円を20年間運用した場合、年率1.5%の差で約34万円の差が生まれます。
リバランスによる分散投資の最適化
既に複数の投資商品を保有している場合は、定期的なリバランス(資産配分の調整)が重要です。
例えば、当初は「株式50%、債券50%」で投資を始めたものの、株価下落により「株式30%、債券70%」になってしまった場合、一部の債券を売却して株式を購入することで、元の配分に戻します。
戦略5:税制優遇制度の活用と損益通算
NISA以外の税制優遇制度や、損益通算の仕組みを活用することで、含み損の影響を軽減できる場合があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)との使い分け
NISAとiDeCoを併用している場合、それぞれの特性を活かした使い分けが重要です。
NISAの特徴:
- いつでも売却・引き出し可能
- 非課税期間に制限あり(つみたてNISA:20年、一般NISA:5年)
- 損益通算不可
iDeCoの特徴:
- 60歳まで引き出し不可
- 掛金が所得控除の対象
- 運用益も非課税
含み損を抱えているNISA資産がある場合、新たな投資はiDeCoの拠出額を増やすことで、所得控除による税制メリットを享受しながら、リスクを分散できます。
特定口座での投資との組み合わせ
NISA口座では損益通算ができませんが、特定口座であれば損益通算が可能です。大きな含み損を抱えている場合は、今後の新規投資を特定口座で行うことも一つの選択肢です。
特定口座のメリット:
- 損益通算が可能
- 繰越控除(3年間)が利用可能
- 投資額に制限なし
住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除を受けている場合、iDeCoの所得控除メリットが十分に活用できない可能性があります。この場合は、NISAを優先的に活用することが有効です。
私が相談を受けた30代のご夫婦は、住宅ローン控除を受けているため、iDeCoではなくNISAを夫婦それぞれで満額活用する戦略を取りました。これにより、税制メリットを最大限に活用しながら、効率的な資産形成を実現しています。
第4章:心の整理術と投資マインドセットの再構築
含み損を「授業料」として受け入れる心構え
含み損に悩んでいる時、まず行うべき心の整理は、この経験を「授業料」として受け入れることです。これは決して諦めを意味するのではなく、今後の投資人生における貴重な学習機会として捉えることです。
失敗から学ぶ投資の本質
私自身の20代での200万円の株式投資失敗は、当時は絶望的に思えましたが、今振り返ればその後の投資人生における最も重要な「授業料」でした。その失敗があったからこそ、以下のことを学べました:
- 投資にはリスクが必ず伴うこと
- 感情的な判断は大抵間違いであること
- 長期投資の重要性
- 分散投資の必要性
- 自分のリスク許容度の把握
もしあの失敗がなければ、その後のつみたてNISAでの成功もなかったかもしれません。200万円という大きな授業料でしたが、それ以上の価値ある学びを得ることができました。
含み損から得られる5つの教訓
現在の含み損から、以下のような教訓を得ることができます:
- 市場の不確実性への理解 どんなに優秀なファンドマネージャーでも、短期的な市場の動きを正確に予測することは不可能です。含み損を経験することで、この現実を身をもって理解できます。
- 自分のリスク許容度の発見 含み損でどの程度の精神的ストレスを感じるかで、自分の真のリスク許容度が分かります。これは今後の投資戦略を決める上で極めて重要な情報です。
- 長期投資の重要性の実感 短期的な変動に一喜一憂することの無意味さを実感できます。これは長期投資を成功させるための必要な心構えです。
- 投資教育の必要性 自分の投資知識の不足を認識できます。これを機に、投資について真剣に学ぶきっかけとなります。
- お金との向き合い方の見直し 投資だけでなく、家計管理や人生設計について考え直すきっかけとなります。
投資は「長期戦」であることを再認識する
含み損に悩んでいる多くの方に共通するのが、投資を短期的な視点で捉えてしまっていることです。投資の本質は「長期戦」であることを改めて認識しましょう。
歴史的データから見る長期投資の優位性
過去のデータを見ると、長期投資の優位性は明らかです。例えば、S&P500指数の過去90年間(1934〜2024年)のデータを見ると:
- 1年間の投資期間:約30%の確率で損失
- 5年間の投資期間:約15%の確率で損失
- 10年間の投資期間:約5%の確率で損失
- 20年間の投資期間:損失になったことはほぼなし
つまり、投資期間が長くなるほど、損失となる確率は大幅に減少します。現在の含み損は、この長期的な成功への過程における一時的な現象に過ぎないのです。
「時間」が最大の味方になる理由
長期投資において「時間」が最大の味方となる理由は、複利効果と市場の成長性にあります。
複利効果の例:
- 元本100万円、年利5%で運用
- 10年後:約163万円
- 20年後:約265万円
- 30年後:約432万円
このように、時間が長くなるほど複利効果は加速度的に威力を発揮します。現在の含み損は、この複利効果の恩恵を受けるための必要な過程なのです。
世界経済の長期的成長への信頼
長期投資の根拠は、世界経済の長期的な成長への信頼です。人口増加、技術革新、新興国の発展など、世界経済を押し上げる要因は数多く存在します。
過去200年間を見ても、戦争、恐慌、パンデミックなど様々な困難がありましたが、世界経済は長期的には成長を続けています。現在の一時的な調整局面も、この大きな流れの中の小さな波に過ぎないと考えることができます。
他人と比較しない投資哲学の確立
SNSや投資系YouTubeなどで、他人の投資成果を目にする機会が増えています。しかし、他人との比較は投資においては有害でしかありません。
SNSの「成功談」に惑わされない
SNSで見かける投資の成功談の多くは、以下のような問題があります:
- 成功事例のみの選別報告 失敗談は投稿されにくく、成功談のみが目立つため、投資の実態とは乖離しています。
- 短期的な成果の強調 長期投資の成果ではなく、短期的な値上がりによる一時的な成功が多く報告されています。
- リスクの軽視 大きなリターンの裏にある大きなリスクについては言及されないことが多いです。
私の相談者の中にも、SNSの投資成功談を見て焦りを感じ、リスクの高い投資に手を出して失敗された方がいらっしゃいます。他人の投資成果は参考程度に留め、自分の投資方針を貫くことが重要です。
あなただけの投資成功基準を設定する
他人との比較ではなく、あなた自身の投資成功基準を設定しましょう。
成功基準の例:
- 10年後に住宅購入の頭金500万円を準備する
- 30年後に老後資金3,000万円を準備する
- 毎年の生活費を投資収益でまかなえるようになる
- 子どもの大学費用を投資で準備する
これらの基準は人それぞれ異なります。年収1,000万円の人と年収400万円の人では、当然目標も手段も異なって当然です。
投資は「手段」であり「目的」ではないという視点
投資それ自体が目的になってしまうと、含み損への恐怖や他人との比較による焦りが生まれます。投資はあくまで、あなたの人生目標を達成するための「手段」であることを忘れないでください。
私がファイナンシャルプランナーとして常にお客様にお伝えしているのは、「投資の成功とは、お金を増やすことではなく、あなたの人生を豊かにすることです」ということです。現在の含み損も、この大きな目標への過程における一つの経験に過ぎません。
メンタルヘルスケアの重要性
含み損による精神的ストレスは、投資判断を狂わせるだけでなく、健康や日常生活にも悪影響を与える可能性があります。適切なメンタルヘルスケアを行いましょう。
投資ストレスの身体的・精神的症状
投資による含み損ストレスは、以下のような症状として現れることがあります:
身体的症状:
- 不眠症状
- 食欲不振または過食
- 頭痛、肩こり
- 胃腸の不調
- 集中力の低下
精神的症状:
- 不安感、焦燥感
- 抑うつ気分
- イライラしやすい
- 自分を責める気持ち
- 将来への過度な心配
これらの症状が続く場合は、投資額の見直しや、場合によっては投資の一時中断も検討すべきです。
ストレス軽減のための具体的方法
- 投資画面を見る頻度を制限する 毎日、時には1日に何度も投資残高をチェックするのをやめましょう。週1回、月1回程度に制限することで、短期的な変動に惑わされなくなります。
- 投資以外の趣味や活動に時間を使う 投資のことばかり考えてしまう状況を避けるため、他の趣味や活動に積極的に取り組みましょう。
- 信頼できる人に相談する 一人で悩まず、家族や友人、またはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。
- 瞑想や深呼吸などのリラクゼーション ストレス軽減に効果的なリラクゼーション技法を取り入れましょう。
- 適度な運動と十分な睡眠 基本的な生活習慣を整えることで、ストレス耐性を高めることができます。
私自身も20代の投資失敗時は、毎日株価をチェックして一喜一憂し、夜も眠れない日々を過ごしていました。しかし、投資画面を見る頻度を週1回に制限し、ランニングを始めることで、徐々に精神的な安定を取り戻すことができました。
専門家への相談のタイミング
以下のような状況では、ファイナンシャルプランナーやカウンセラーなどの専門家への相談を検討しましょう:
- 含み損の心配で日常生活に支障をきたしている
- 家族関係に投資の悩みが影響している
- 投資について一人で判断することに不安を感じる
- 投資方針を根本的に見直したい
専門家への相談は決して恥ずかしいことではありません。むしろ、冷静で客観的な判断を行うための重要なステップです。
第5章:今後の投資戦略と成功への道筋
失敗から学んだ「負けない投資」の原則
含み損の経験を活かして、今後は「負けない投資」を心がけましょう。これは「儲からない投資」という意味ではなく、「大きな失敗をしない堅実な投資」という意味です。
投資の大原則「卵を一つのカゴに盛るな」の実践
分散投資は投資の基本中の基本ですが、多くの個人投資家が十分に実践できていません。真の分散投資とは、以下の4つの分散を意味します:
- 資産クラスの分散
- 株式、債券、リート(不動産投資信託)、コモディティ(商品)など
- 地域の分散
- 日本、アメリカ、ヨーロッパ、新興国など
- 時間の分散
- 一度に大きな金額を投資せず、時間をかけて少しずつ投資
- 通貨の分散
- 円建て資産だけでなく、外貨建て資産も組み入れる
私が現在実践している分散投資の例をご紹介します:
【私の資産配分(3,000万円の内訳)】
- 全世界株式インデックス:40%(1,200万円)
- 先進国債券インデックス:20%(600万円)
- 日本株式インデックス:15%(450万円)
- リートインデックス:10%(300万円)
- 新興国株式インデックス:10%(300万円)
- 現金・預金:5%(150万円)
この配分により、特定の地域や資産クラスで大きな下落があっても、全体への影響を最小限に抑えることができます。
「コア・サテライト戦略」の活用
すべての投資を分散投資にする必要はありません。「コア・サテライト戦略」を使って、安定性と成長性のバランスを取りましょう。
コア部分(全体の70〜80%):
- 低コストのインデックスファンド
- 全世界株式や先進国株式など安定した投資対象
- 長期間保有し続ける
サテライト部分(全体の20〜30%):
- 個別株式やテーマ型ファンド
- 新興国株式やコモディティなど変動の大きい投資対象
- より積極的なリターンを狙う
この戦略により、コア部分で安定性を確保しながら、サテライト部分でリターンの向上を目指すことができます。
「損小利大」の投資マインドセット
投資における「損小利大」とは、損失は小さく抑え、利益は大きく伸ばすという考え方です。具体的には:
損失を小さく抑える方法:
- 適切な損切りルールの設定
- 投資額のコントロール
- リスク管理の徹底
利益を大きく伸ばす方法:
- 長期保有による複利効果の活用
- 成長性の高い投資対象への投資
- 感情的な利確の回避
私の経験では、大きな損失の多くは「もう少し待てば回復するだろう」という希望的観測から生まれます。逆に、大きな利益を逃すのは「利益が出ているうちに確定したい」という恐怖心からです。この感情をコントロールすることが、投資成功の鍵となります。
年代別・ライフステージ別の投資戦略見直し
含み損を機に、あなたの年代やライフステージに適した投資戦略を見直しましょう。
20代の投資戦略:時間を最大の武器にする
20代の最大の武器は「時間」です。30年、40年という長期間を投資に充てることができるため、短期的な含み損は全く気にする必要がありません。
20代にお勧めする投資戦略:
- 投資比率:収入の20〜30%
- 資産配分:株式80〜90%、債券10〜20%
- 投資対象:全世界株式インデックスファンド中心
- 投資期間:30年以上の超長期投資
20代で含み損に悩んでいる方にお伝えしたいのは、「含み損は20代の特権」だということです。なぜなら、20代でしか経験できない貴重な学習機会であり、それを30年以上の投資期間で回復させる時間があるからです。
私が相談を受けた25歳の会社員の方は、つみたてNISAで1年間に50万円の含み損を抱えていました。しかし、「あと35年あります」という言葉で、投資に対する考え方が180度変わりました。現在も継続して投資を続け、徐々に含み損が解消されてきています。
30代の投資戦略:バランス型投資の開始
30代は結婚、出産、住宅購入など、ライフイベントが多い年代です。20代ほど積極的なリスクは取れませんが、まだ十分な投資期間があります。
30代にお勧めする投資戦略:
- 投資比率:収入の15〜25%
- 資産配分:株式60〜80%、債券20〜40%
- 投資対象:全世界株式+先進国債券の組み合わせ
- 投資期間:20〜30年の長期投資
30代で重要なのは、ライフイベントによる資金需要と投資のバランスです。住宅購入を控えている場合は、頭金分は投資せずに預金で確保しておくことが重要です。
40代の投資戦略:安定性重視への転換
40代は子どもの教育費が最も重くのしかかる年代です。また、親の介護なども現実的な問題となってきます。投資戦略も安定性を重視したものに転換する必要があります。
40代にお勧めする投資戦略:
- 投資比率:収入の10〜20%
- 資産配分:株式50〜70%、債券30〜50%
- 投資対象:バランス型ファンドやターゲットイヤーファンド
- 投資期間:15〜25年の中長期投資
40代で含み損を抱えている場合は、投資期間を考慮した冷静な判断が必要です。教育費や住宅ローンで家計が厳しい場合は、投資額を減らすことも選択肢の一つです。
50代以降の投資戦略:資産保全重視
50代以降は、資産を増やすことよりも、これまで築いた資産を保全することが重要になります。含み損のリスクを最小限に抑えた保守的な投資戦略が適しています。
50代以降にお勧めする投資戦略:
- 投資比率:収入の5〜15%
- 資産配分:株式30〜50%、債券50〜70%
- 投資対象:債券型ファンドや配当重視型ファンド
- 投資期間:10〜20年の中期投資
50代で大きな含み損を抱えている場合は、退職までの期間を考慮して、場合によっては損切りも検討する必要があります。
テクノロジー活用による効率的な投資管理
現代のテクノロジーを活用することで、感情に左右されない効率的な投資管理が可能になります。
ロボアドバイザーの活用
ロボアドバイザーは、アルゴリズムによって自動的に資産配分やリバランスを行うサービスです。感情的な判断を排除したい方には特に有効です。
主要なロボアドバイザーサービス:
- WealthNavi(ウェルスナビ)
- THEO(テオ)
- 楽ラップ
- ダイワファンドラップオンライン
ロボアドバイザーのメリット:
- 感情に左右されない投資判断
- 自動リバランス機能
- 分散投資の自動化
- 少額から始められる
ただし、手数料が通常のインデックスファンドより高い(年率0.7〜1.0%程度)点は注意が必要です。
投資管理アプリの活用
スマートフォンアプリを使って、効率的な投資管理を行いましょう。
お勧めの投資管理アプリ:
- マネーフォワード ME:資産管理・家計簿
- 家計簿Zaim:支出管理・投資記録
- SBI証券アプリ:投資状況の確認
- 楽天証券アプリ:投資状況の確認
これらのアプリを活用することで:
- 資産状況の一元管理
- 投資成果の可視化
- 家計との連動管理
- 投資目標の進捗確認
が可能になります。
AI投資情報サービスの活用
AIを活用した投資情報サービスも充実してきています。
主要なAI投資情報サービス:
- 日本取引所グループの適時開示情報
- ブルームバーグの市場分析
- ロイターの経済ニュース
- 金融庁の政策情報
これらのサービスを活用することで、客観的で専門的な投資判断の材料を得ることができます。
自動積立設定の最適化
テクノロジーを活用した自動積立設定により、感情的な投資判断を完全に排除できます。
最適な自動積立設定:
- 給料日翌日の自動引き落とし設定
- ボーナス時の追加投資設定
- 家計余剰金の自動投資設定
- 目標達成時の自動売却設定
私自身も、自動積立設定を最大限に活用することで、市場の動向に関係なく継続的な投資を実現しています。これにより、含み損の期間も感情に左右されることなく投資を継続でき、結果的に大きなリターンを得ることができました。
専門家との付き合い方とセカンドオピニオンの活用
投資判断に迷った時は、専門家の意見を求めることも重要です。ただし、専門家との適切な付き合い方を理解しておく必要があります。
ファイナンシャルプランナー(FP)の活用法
ファイナンシャルプランナーは、投資だけでなく、家計全体の最適化を支援する専門家です。
FPに相談すべき内容:
- 投資方針の策定
- リスク許容度の診断
- ライフプラン全体の設計
- 保険や税金を含めた総合的な資産形成戦略
FP選びのポイント:
- CFP・AFP等の資格保有者
- 特定の金融商品の販売を主目的としていない
- 相談料が明確に設定されている
- 実務経験が豊富
私自身、ファイナンシャルプランナーとして多くの相談を受けてきましたが、含み損で悩まれている方の多くは、投資だけでなく家計全体の見直しが必要なケースがほとんどです。
セカンドオピニオンの重要性
重要な投資判断については、複数の専門家からセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。
セカンドオピニオンを求めるべき場面:
- 大きな損切りを検討している時
- 投資方針の大幅な変更を考えている時
- 高額な投資商品を勧められた時
- 家計状況に大きな変化があった時
異なる立場の専門家から意見を聞くことで、より客観的で適切な判断ができるようになります。
金融機関の営業担当者との付き合い方
銀行や証券会社の営業担当者とは、利益相反関係があることを理解して付き合いましょう。
営業担当者との付き合い方:
- 商品説明は参考程度に聞く
- 手数料や リスクについて詳細を確認する
- 即断即決は避ける
- 他の選択肢も検討する
特に含み損で悩んでいる時は、「損失を取り戻せる商品がある」といった営業を受けやすいので注意が必要です。
投資コミュニティとの適切な関わり方
投資に関するオンラインコミュニティやセミナーに参加することも有効ですが、適切な距離感を保つことが重要です。
健全なコミュニティの特徴:
- 特定の商品を強く勧誘しない
- リスクについても率直に議論する
- 多様な投資手法を認める
- 初心者にも優しい雰囲気
逆に、以下のようなコミュニティは避けるべきです:
- 「絶対に儲かる」といった表現を使う
- 高額な投資商品や情報商材を販売する
- 失敗談やリスクについて触れない
- 批判的な意見を排除する
第6章:具体的なアクションプランと次のステップ
今すぐできる5つの実践的アクション
含み損の状況を改善するために、今すぐ実践できる具体的なアクションをご紹介します。これらは私が実際に相談者の方々にお勧めし、効果を確認している方法です。
アクション1:投資状況の完全な棚卸し
まず、現在の投資状況を正確に把握しましょう。感情的になっている時こそ、客観的なデータが重要です。
【投資棚卸しシート】 以下の項目をエクセルやメモ帳に整理してください:
- 投資商品名
- 投資開始時期
- 投資元本(累計投資額)
- 現在評価額
- 含み損益(金額・パーセント)
- 信託報酬(年率)
- 投資目的(老後資金・教育費など)
- 投資期間の予定
この棚卸しを行うことで、どの投資が本当に問題なのか、どの程度の含み損なのかが明確になります。
私が相談を受けた40代の主婦の方は、「すべての投資で損をしている」と思い込んでいましたが、棚卸しをしてみると、5つの投資商品のうち2つは実際にはプラスになっていることが判明しました。思い込みではなく、事実に基づいた判断をすることが重要です。
アクション2:投資目標の再設定と優先順位付け
投資目標が曖昧だと、含み損への対処方針も決められません。明確で具体的な目標を再設定しましょう。
【投資目標設定シート】
- 目標金額:具体的な数字
- 達成期限:○年○月まで
- 目的:老後資金、教育費、住宅購入など
- 重要度:◎(絶対必要)、○(できれば)、△(余裕があれば)
- 現在の進捗率:目標に対する達成率
例:
- 目標:老後資金3,000万円準備
- 期限:25年後(65歳時)
- 重要度:◎
- 現在の進捗率:8%(240万円÷3,000万円)
このように目標を明確化することで、現在の含み損が全体の目標達成にどの程度影響するかが見えてきます。25年という長期目標であれば、現在の一時的な含み損は目標達成に大きな影響を与えないことが分かります。
アクション3:投資頻度とチェック頻度の適正化
含み損のストレスを軽減するため、投資頻度とチェック頻度を適正化しましょう。
【推奨頻度設定】
- 新規投資:月1回(給料日後)
- 投資状況チェック:月1回(月末)
- 投資方針見直し:年2回(6月・12月)
- 商品見直し:年1回(12月)
毎日投資画面をチェックしている方は、週1回、さらには月1回へと段階的に頻度を下げてみてください。私の相談者の多くが、チェック頻度を下げることで精神的な負担が大幅に軽減されたと報告しています。
アクション4:緊急時資金の確保状況確認
投資の含み損が気になる理由の一つに、「いざという時にお金が足りなくなるのでは」という不安があります。まず、緊急時資金が十分確保されているかを確認しましょう。
【緊急時資金の目安】
- 独身の場合:生活費の6ヶ月分
- 夫婦の場合:生活費の6〜12ヶ月分
- 子どもありの場合:生活費の12ヶ月分
この緊急時資金が確保されていれば、投資の含み損はすぐに取り崩す必要がないお金であることが確認できます。逆に緊急時資金が不足している場合は、投資額を減らして現金を確保することを検討しましょう。
アクション5:投資教育の継続学習計画策定
含み損を機に、投資について本格的に学び直しましょう。正しい知識があれば、将来的な含み損への不安も軽減されます。
【学習計画例(3ヶ月間)】 1ヶ月目:基礎知識の習得
- 金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
- 投資信託協会の教育資料
- 基本的な投資用語の理解
2ヶ月目:実践的知識の習得
- 投資関連書籍2〜3冊の読書
- オンライン投資セミナーの受講
- ポートフォリオ理論の基礎学習
3ヶ月目:応用知識と戦略策定
- 税制の理解(NISA・iDeCo・特定口座)
- 自分に合った投資戦略の策定
- 専門家との相談実施
私自身、20代の投資失敗後に3年間かけて投資の勉強をし直しました。CFP資格の取得もこの時期です。正しい知識があることで、市場の変動に対しても冷静に対処できるようになりました。
段階別回復プログラム(3ヶ月・6ヶ月・1年計画)
含み損からの回復は一朝一夕には実現しません。段階的な計画を立てて、着実に前進しましょう。
第1段階:心理的安定期(最初の3ヶ月)
この期間の目標は、含み損に対する過度な不安や焦りを解消し、冷静な判断ができる心理状態を取り戻すことです。
【3ヶ月間の具体的行動】
- 投資画面チェックを週1回に制限
- 投資教育の基礎学習開始
- 家計の見直しと緊急時資金確保
- ストレス軽減活動の実践(運動・趣味など)
- 信頼できる人への相談
この期間は新規投資を一時停止し、現状の整理と心理的安定を最優先にします。私の相談者の多くが、この3ヶ月間で含み損に対する見方が大きく変わったと報告しています。
【3ヶ月後の目標状態】
- 含み損を見ても動揺しない
- 投資の基礎知識を理解している
- 長期投資の重要性を実感している
- 緊急時資金が確保されている
第2段階:戦略再構築期(4〜6ヶ月目)
心理的に安定したら、投資戦略の見直しと再構築を行います。
【4〜6ヶ月目の具体的行動】
- 投資ポートフォリオの見直し
- 高コスト商品から低コスト商品への切り替え検討
- 分散投資の最適化
- 自動積立設定の見直し
- 専門家との相談実施
この期間で、含み損の原因となった投資の問題点を特定し、改善策を実行します。
【6ヶ月後の目標状態】
- 最適化された投資ポートフォリオの構築
- 自動積立による機械的投資の実現
- 投資方針書の作成完了
- 専門家との相談体制確立
第3段階:継続投資期(7〜12ヶ月目)
最終段階では、見直した投資戦略を継続し、長期投資の習慣を確立します。
【7〜12ヶ月目の具体的行動】
- 新投資戦略による継続投資
- 定期的なポートフォリオチェック(月1回)
- 投資成果の記録と分析
- 投資知識の継続学習
- 年次投資戦略見直し
【1年後の目標状態】
- 含み損への不安がほぼ解消
- 長期投資の習慣が確立
- 市場変動に動じない投資マインド形成
- 継続学習による投資知識向上
私が相談を受けた方々の多くが、この1年間のプログラムを通じて、含み損に対する考え方が根本的に変わったと報告しています。単に損失を回復しただけでなく、投資に対する正しい理解と自信を獲得されています。
家族との投資方針共有方法
投資、特に含み損について家族と話し合うのは難しいものですが、家族の理解と協力を得ることで、より良い投資判断ができるようになります。
配偶者との投資方針共有
夫婦間での投資方針の共有は、家計管理の観点からも重要です。
【配偶者との話し合いポイント】
- 投資の目的と目標の共有
- リスク許容度の確認
- 家計に占める投資額の妥当性
- 含み損が生活に与える影響度
- 今後の投資継続方針
重要なのは、投資の専門用語を使わず、日常的な言葉で説明することです。「10年後に子どもの大学費用として500万円準備したい」「そのために毎月3万円を積み立てている」「今は30万円のマイナスだけど、10年あれば回復の可能性が高い」といった具体的で分かりやすい説明を心がけましょう。
子どもへの金融教育機会として活用
含み損の経験は、子どもへの金融教育の良い機会でもあります。年齢に応じて適切な情報を共有しましょう。
【年齢別金融教育内容】
- 小学生:お金の大切さ、貯金の重要性
- 中学生:投資の基本概念、リスクとリターン
- 高校生:複利効果、長期投資の重要性
- 大学生:具体的な投資方法、税制優遇制度
私の家庭でも、投資の含み損について子ども(当時中学生)と話し合いました。「投資はお金を増やすためのものだけど、時には減ることもある。でも長い目で見れば、きっと良い結果になる」という説明をしたところ、子どもなりに投資への理解を深めてくれました。
親世代への投資状況報告方法
親世代に投資状況を報告する際は、心配をかけないよう配慮が必要です。
【親への報告ポイント】
- 投資は余剰資金で行っていることを強調
- 長期投資の計画性をアピール
- 生活に支障がないことを明確に伝える
- 投資の勉強を継続していることを報告
「親世代は投資に否定的」という先入観を持たず、丁寧に説明すれば理解してもらえることが多いです。私の相談者の中にも、最初は反対していた親御さんが、説明を聞いて投資を始めたというケースがあります。
プロフェッショナルサポートの活用方法
含み損の状況を改善するために、様々なプロフェッショナルサポートを活用しましょう。
ファイナンシャルプランナー(FP)の効果的活用法
FPは投資だけでなく、家計全体の最適化を支援してくれます。
【FP相談時の準備事項】
- 家計簿(3ヶ月分)
- 投資状況一覧
- 保険証券
- 住宅ローン明細
- 将来の目標・計画
【FP選定基準】
- CFP・AFP等の上位資格保有
- 金融商品販売を主目的としない独立系FP
- 相談料が時間制で明確
- 実務経験10年以上
私自身、同業者として他のFPに相談することもあります。客観的な第三者の視点は、自分では気づかない改善点を発見する上で非常に有効です。
税理士・会計士との連携
高額な投資を行っている場合や、法人での投資を検討している場合は、税理士や会計士との連携も重要です。
【税理士相談のメリット】
- 税務上の最適化アドバイス
- 損益通算の活用方法
- 相続対策との連携
- 法人化のメリット・デメリット
証券会社・銀行の投資相談サービス活用
大手証券会社や銀行では、投資相談サービスを提供しています。ただし、商品販売が目的である点を理解して活用しましょう。
【金融機関相談時の注意点】
- 商品の手数料を必ず確認
- 複数社で比較検討
- 即決は避ける
- セカンドオピニオンを求める
オンライン投資相談サービスの活用
最近では、オンラインでの投資相談サービスも充実しています。
【オンライン相談のメリット】
- 全国どこからでも相談可能
- 相談料が比較的安い
- 記録が残るため振り返りが容易
- 複数の専門家の意見を聞きやすい
私も定期的にオンライン投資セミナーに参加し、最新の投資動向や制度変更について情報収集を行っています。
終章:含み損を乗り越えた先にある豊かな未来
投資失敗体験が人生に与える価値
現在、含み損で苦しんでいるあなたに、最後にお伝えしたいことがあります。今の辛い体験は、決して無駄ではありません。むしろ、あなたの人生を豊かにする貴重な財産になります。
失敗から得られる5つの人生スキル
- 冷静な判断力 含み損の経験を通じて、感情に左右されない冷静な判断力が身につきます。これは投資だけでなく、人生のあらゆる選択において役立つスキルです。
- リスクマネジメント能力 投資におけるリスクを肌で感じることで、人生全般におけるリスクマネジメント能力が向上します。
- 長期的思考力 短期的な変動に惑わされず、長期的な視点で物事を考える力が養われます。
- 精神的耐性 困難な状況を乗り越える精神的な強さが身につきます。これは人生の様々な局面で活かされます。
- 謙虚さと学習意欲 失敗を通じて自分の無知を認識し、継続的に学び続ける姿勢が身につきます。
私自身、20代の200万円の投資失敗は当時は絶望的でしたが、今振り返ればその後の人生を大きく変える転換点でした。あの失敗がなければ、ファイナンシャルプランナーになることもなかったでしょうし、多くの方の資産形成支援をすることもできませんでした。
「転んでもただでは起きない」マインドセット
含み損の経験を「転んでもただでは起きない」機会として活用しましょう。この経験から最大限の学びを得ることで、将来的により大きな成功を手にすることができます。
私が相談を受けた30代の会社員の方は、つみたてNISAで100万円の含み損を経験しました。しかし、その後投資について本格的に勉強し、現在では個人投資家として年間100万円以上の投資収益を安定的に得ています。「あの含み損がなければ、真剣に投資を学ぶことはなかった。今では感謝している」と話されています。
10年後のあなたへのメッセージ
10年後、今の含み損の苦しみを振り返った時、あなたはきっとこう思うでしょう。「あの経験があったから、今の自分がある」と。
10年後に実現している可能性の高い状況
- 投資の含み損は完全に回復し、大きな利益を得ている
- 投資に関する正しい知識と経験を身につけている
- 市場の変動に動じない強いメンタルを持っている
- 家族や友人に投資について適切なアドバイスができている
- 経済的な不安から解放されている
これらは決して夢物語ではありません。正しい方法で長期投資を継続すれば、高い確率で実現できる未来です。
今日から始める「未来への投資」
含み損を抱えている今この瞬間も、実は「未来への投資」をしている時間です。この苦しい経験が、将来のあなたにとって最も価値ある投資になります。
今日から始められる「未来への投資」:
- 投資に関する正しい知識の習得
- 長期的思考力の養成
- リスクマネジメント能力の向上
- 精神的な強さの構築
- 謙虚な学習姿勢の維持
最後に:一人で悩まず、共に歩みましょう
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。NISA含み損の辛さ、不安、恐怖—あなたの気持ちは痛いほど分かります。でも、決して一人で悩まないでください。
投資は孤独な作業のように思えますが、実際は多くの仲間が同じ道を歩んでいます。含み損で苦しんでいるのは、あなただけではありません。そして、その苦しみを乗り越えて成功した人たちもたくさんいます。
私自身、これからも一人の投資家として、一人のファイナンシャルプランナーとして、皆さんと共に歩んでいきたいと思っています。お金の不安で眠れない夜を過ごしている人の心を軽くしたい。一人ひとりの価値観と生活スタイルに合った、無理のない資産形成を実現してもらいたい。それが私の変わらぬ願いです。
今、この瞬間からできること
- 深呼吸をして、一時的な数字に惑わされないと決める
- この記事で紹介した「現状分析」を実践する
- 投資の目的と期間を再確認する
- 信頼できる人に相談する
- 投資について正しく学び直す
含み損は確かに辛いものです。でも、それは失敗ではありません。投資の過程における自然な現象であり、成功への通過点なのです。
今は辛くても、必ず光が見えてきます。あなたの投資が成功し、経済的な不安から解放される日が来ることを、心から信じています。
そしてその時、今の含み損の経験が、あなたにとって最も価値ある「投資」だったことを実感されるでしょう。
一緒に、一歩ずつ前に進んでいきましょう。あなたの豊かな未来を、心から応援しています。
筆者紹介 田中 健太郎(仮名) ファイナンシャルプランナー(CFP認定・AFP認定歴12年) 大手銀行個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社投資アドバイザー経験5年 自身も20代で株式投資で200万円の損失を経験するも、30代でつみたてNISAと確定拠出年金による堅実な資産形成で現在資産3,000万円を達成。「お金の不安で眠れない夜を過ごしている人の心を軽くしたい」という思いで、個人投資家の資産形成支援に取り組んでいる。
免責事項 本記事の内容は、筆者の個人的な経験と見解に基づくものであり、投資を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。また、税務や法律に関する事項については、専門家にご相談ください。