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子なし夫婦の保険は本当にいらない?元銀行員FPが語る賢い保険選びの全て

目次

はじめに:私自身の保険選びの失敗談から

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの田中と申します(CFP資格保有、AFP認定歴12年)。大手銀行で10年間、個人向け資産運用コンサルタントとして働き、その後証券会社で5年間投資アドバイザーを務めました。

実は、私自身も子なし夫婦として10年間過ごした経験があります。その間、保険について本当に多くの悩みを抱えました。

結婚当初、保険の営業マンに「お子さんがいないなら医療保険だけで十分ですよ」と言われ、夫婦で月額8,000円の医療保険に加入しました。しかし3年後、夫が脳梗塞で3ヶ月入院した際、就業不能状態が続き、医療費以上に生活費の工面に苦労したのです。結果的に貯金を200万円取り崩すことになりました。

この経験から、子なし夫婦だからこそ考えるべき保険の在り方があることを痛感しました。現在は適切な保険設計により、夫婦で月額15,000円の保険料で、将来への不安なく過ごせています。

今回は、「子なし夫婦に保険は本当にいらないのか?」という疑問に、専門家として、そして実体験者として、徹底的にお答えします。

第1章:子なし夫婦の保険に対する3つの誤解

誤解1:「扶養家族がいないから生命保険は不要」

多くの子なし夫婦が抱く最大の誤解がこれです。確かに、子どもがいる家庭のような高額な死亡保障は必要ありません。しかし、ゼロで良いわけではありません。

考えるべき現実的なケース

配偶者が亡くなった場合を想像してみてください。悲しみの中でも、現実的には以下の費用が発生します:

  • 葬儀費用:平均200万円(全日本冠婚葬祭互助協会調べ)
  • 住宅ローンの残債処理(団体信用生命保険でカバーされない部分)
  • 配偶者の収入減による生活水準の維持費用
  • 実家への帰省費用や引っ越し費用

私のクライアントのAさん(40代女性)は、ご主人を急性心筋梗塞で亡くされました。住宅ローンは団信で完済されましたが、葬儀費用、お墓の購入、実家への引っ越し費用で約400万円が必要になりました。「まさか自分が」と思っていましたが、準備不足を深く後悔されていました。

誤解2:「医療保険があれば安心」

医療保険だけでは、実際の闘病生活をカバーしきれません。なぜなら、現代の医療費の自己負担額は、高額療養費制度により月額10万円程度に抑えられるからです。

本当に必要なのは「働けない期間の収入補償」

私が銀行員時代に相談を受けたBさんご夫婦の事例をご紹介します。

Bさん(35歳・会社員)が交通事故で半年間働けなくなりました。医療費は月5万円程度でしたが、問題は収入の減少でした。

  • 傷病手当金:給与の約67%(月20万円→13万円)
  • 生活費の削減:月28万円→20万円に圧縮
  • 妻のパート収入:月8万円→12万円に増加

それでも月3万円の赤字が続き、半年で18万円の貯金を取り崩すことになりました。「医療保険に入っていたから安心だと思っていたのに、現実は甘くなかった」とBさんは振り返ります。

誤解3:「貯金があれば保険は不要」

「貯金1,000万円あるから保険はいらない」という考えも危険です。なぜなら、貯金は一度使ってしまえば減ってしまうからです。

保険と貯金の根本的な違い

保険は「起こるかわからないリスクを、確実に小さなコストで移転する仕組み」です。一方、貯金は「確実に貯まるが、使えば減る資産」です。

例えば、がんになった場合を考えてみましょう:

  • 治療費:5年間で300万円
  • 収入減:年間100万円×3年=300万円
  • 合計:600万円

1,000万円の貯金があっても、この600万円を使えば残り400万円です。しかし、適切な保険(がん保険+就業不能保険)に月額8,000円で加入していれば、貯金を一切減らすことなく治療に専念できます。

第2章:子なし夫婦が本当に必要な保険とは

優先順位1位:就業不能保険(収入保障保険)

子なし夫婦にとって最も重要な保険は、就業不能保険です。なぜなら、働けなくなることが最大のリスクだからです。

就業不能保険の基本的な仕組み

就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった際に、毎月決まった金額を受け取れる保険です。

選び方のポイント

  1. 給付金額の設定
    • 夫婦の生活費の70%程度を目安に設定
    • 例:月30万円の生活費なら月20万円の給付金
  2. 給付期間の選択
    • 65歳満了がおすすめ(年金受給開始まで)
    • 短期間(2年)は保険料は安いが、長期療養には対応できない
  3. 免責期間の確認
    • 60日免責:保険料は安いが、短期入院は対象外
    • 180日免責:保険料はより安いが、半年以上の療養が対象

実際の保険料例(30歳夫婦の場合)

  • 夫:月額給付金15万円、65歳満了 → 月額保険料3,500円
  • 妻:月額給付金10万円、65歳満了 → 月額保険料2,800円
  • 合計:月額6,300円

この保険料で、どちらかが働けなくなっても、65歳まで安定した収入を確保できます。

優先順位2位:医療保険(がん保険含む)

医療保険は「治療費の補填」ではなく「治療に専念するための環境作り」として考えましょう。

選ぶべき医療保険の特徴

  1. 入院給付金:日額5,000円〜8,000円 高額療養費制度により、実際の自己負担は月10万円程度。入院給付金で十分カバーできます。
  2. 先進医療特約:必須 重粒子線治療(300万円)、陽子線治療(250万円)など、健康保険対象外の治療をカバー。月額100円程度で2,000万円まで保障。
  3. 三大疾病一時金:100万円以上 がん、急性心筋梗塞、脳卒中と診断された際の一時金。治療の選択肢を広げるために重要。

がん保険の必要性

がんは2人に1人がかかる国民病です。子なし夫婦だからこそ、配偶者が闘病中でも経済的不安なく治療を受けられる環境を整えておくべきです。

おすすめのがん保険の保障内容

  • 診断一時金:200万円(初回のみ)
  • 治療給付金:月額10万円(抗がん剤治療期間中)
  • 入院給付金:日額10,000円(がん入院時)
  • 手術給付金:20万円(がん手術1回につき)

月額保険料:夫婦合計4,000円程度

優先順位3位:死亡保険(整理資金程度)

子なし夫婦の死亡保険は、高額である必要はありません。しかし、ゼロである必要もありません。

必要な死亡保障額の考え方

  1. 葬儀費用:200万円
  2. 住宅関連費用:100万円
    • 賃貸の場合:原状回復費、引っ越し費用
    • 持ち家の場合:相続手続き費用
  3. 生活整理費用:200万円
    • 残された配偶者の当面の生活費
    • 実家への帰省費用など

合計:500万円程度

おすすめの死亡保険タイプ

  1. 定期保険(10年更新型)
    • 保険料:夫婦合計月額2,000円程度
    • メリット:安い保険料で必要期間のみ保障
    • デメリット:更新時に保険料が上がる
  2. 収入保障保険
    • 保険料:夫婦合計月額3,000円程度
    • メリット:年金形式で受け取り、使いすぎ防止
    • デメリット:一括受取時は受取総額が減る

第3章:ライフステージ別・子なし夫婦の保険設計

20代子なし夫婦:「将来への基盤作り期」

20代の子なし夫婦は、まだ収入も少なく、将来の方向性も定まっていない時期です。この時期の保険は「最低限の安心」を「最小限のコスト」で確保することが重要です。

20代夫婦の実際の保険設計例

【Cさんご夫婦の場合】

  • 夫:26歳、年収350万円、会社員
  • 妻:25歳、年収280万円、会社員
  • 生活費:月22万円

保険設計の内容

  1. 医療保険
    • 夫:入院日額5,000円、先進医療特約付き → 月額1,800円
    • 妻:入院日額5,000円、先進医療特約付き → 月額1,600円
  2. がん保険
    • 夫:診断一時金100万円 → 月額1,200円
    • 妻:診断一時金100万円 → 月額1,000円
  3. 就業不能保険
    • 夫:月額8万円、60歳満了 → 月額1,800円
    • 妻:月額6万円、60歳満了 → 月額1,400円
  4. 死亡保険
    • 夫婦それぞれ300万円の定期保険 → 月額1,400円

月額保険料合計:10,200円(手取り収入の約2%)

この設計により、どちらかが病気になっても、最低限の生活は維持できます。また、20代のうちに保険に加入することで、将来の保険料負担も軽減されます。

30代子なし夫婦:「安定期」

30代は収入も安定し、将来の方向性も見えてくる時期です。この時期は保障を充実させつつ、老後資金の準備も視野に入れた保険設計が重要です。

30代夫婦の実際の保険設計例

【Dさんご夫婦の場合】

  • 夫:34歳、年収500万円、会社員
  • 妻:32歳、年収400万円、会社員
  • 生活費:月28万円
  • 住宅ローン:月8万円(団信加入済み)

保険設計の内容

  1. 医療保険
    • 夫:入院日額8,000円、先進医療特約、三大疾病一時金100万円 → 月額3,200円
    • 妻:入院日額8,000円、先進医療特約、三大疾病一時金100万円 → 月額2,800円
  2. がん保険
    • 夫:診断一時金200万円、治療給付金月額10万円 → 月額2,500円
    • 妻:診断一時金200万円、治療給付金月額10万円 → 月額2,200円
  3. 就業不能保険
    • 夫:月額15万円、65歳満了 → 月額3,500円
    • 妻:月額12万円、65歳満了 → 月額2,800円
  4. 死亡保険
    • 夫婦それぞれ500万円の収入保障保険 → 月額2,000円

月額保険料合計:19,000円(手取り収入の約3%)

この設計により、長期療養が必要になっても、住宅ローンを継続しながら治療に専念できます。

40代子なし夫婦:「充実期と老後準備期」

40代は収入のピークを迎える一方で、老後への不安も現実的になってくる時期です。保険と貯蓄のバランスを考えた設計が重要です。

40代夫婦の実際の保険設計例

【Eさんご夫婦の場合】

  • 夫:42歳、年収700万円、会社員
  • 妻:40歳、年収500万円、会社員
  • 生活費:月35万円
  • 住宅ローン:月10万円(残り15年)
  • 貯蓄:1,200万円

保険設計の内容

  1. 医療保険
    • 夫:入院日額10,000円、先進医療特約、三大疾病一時金200万円 → 月額4,500円
    • 妻:入院日額10,000円、先進医療特約、三大疾病一時金200万円 → 月額4,000円
  2. がん保険
    • 夫:診断一時金300万円、治療給付金月額15万円 → 月額3,800円
    • 妻:診断一時金300万円、治療給付金月額15万円 → 月額3,400円
  3. 就業不能保険
    • 夫:月額20万円、65歳満了 → 月額5,200円
    • 妻:月額15万円、65歳満了 → 月額4,100円
  4. 死亡保険
    • 夫婦それぞれ800万円の収入保障保険 → 月額3,500円

月額保険料合計:28,500円(手取り収入の約3.5%)

40代は保険料が高くなりますが、その分収入も増えているため、充実した保障を確保できます。

50代子なし夫婦:「老後準備本格化期」

50代は老後まで残り10〜15年という時期です。この時期の保険は「老後の医療費リスク」に重点を置いた設計が重要です。

50代夫婦の実際の保険設計例

【Fさんご夫婦の場合】

  • 夫:52歳、年収800万円、会社員
  • 妻:50歳、年収450万円、パート
  • 生活費:月30万円
  • 住宅ローン:完済済み
  • 貯蓄:2,500万円

保険設計の内容

  1. 医療保険(終身型)
    • 夫:入院日額10,000円、先進医療特約、三大疾病一時金300万円 → 月額7,200円
    • 妻:入院日額10,000円、先進医療特約、三大疾病一時金300万円 → 月額6,500円
  2. がん保険(終身型)
    • 夫:診断一時金300万円、治療給付金月額15万円 → 月額5,500円
    • 妻:診断一時金300万円、治療給付金月額15万円 → 月額4,800円
  3. 就業不能保険
    • 夫:月額15万円、65歳満了 → 月額8,200円
    • 妻:月額10万円、65歳満了 → 月額6,800円
  4. 死亡保険
    • 夫婦それぞれ300万円の終身保険(老後の医療費準備も兼ねる) → 月額8,000円

月額保険料合計:47,000円(手取り収入の約5%)

50代は保険料が最も高くなりますが、老後の安心のためには必要な投資です。特に終身保険や終身医療保険により、老後の保障を確保しています。

第4章:子なし夫婦が避けるべき保険の罠

罠1:「学資保険代わりの貯蓄型保険」

子どもがいないからといって、学資保険の代わりに貯蓄型保険に加入するのは危険です。

なぜ貯蓄型保険が子なし夫婦に向かないのか

  1. 流動性の低さ 子なし夫婦は、子どもの教育費という明確な支出予定がありません。そのため、いつお金が必要になるかわからない状況で、解約時に元本割れリスクのある貯蓄型保険は適していません。
  2. インフレリスク 現在の低金利環境では、貯蓄型保険の利回りは年0.5〜1%程度です。インフレ率が2%になれば、実質的にお金の価値は目減りしてしまいます。

実際の失敗事例

私のクライアントのGさん(35歳男性)は、「子どもがいないから老後資金作りのために」と月額3万円の終身保険に加入しました。しかし、3年後に転職で収入が減り、解約を余儀なくされました。支払った108万円に対し、解約返戻金は85万円。23万円の損失となりました。

代替案:つみたてNISA + 定期保険

  • つみたてNISA:月額3万円(年利3〜5%期待)
  • 定期保険:月額2,000円(死亡保障500万円)

この組み合わせにより、流動性を保ちながら老後資金を準備し、万一の際の保障も確保できます。

罠2:「過剰な死亡保障」

保険営業マンによくある提案が「ご夫婦で3,000万円ずつの死亡保障」です。しかし、子なし夫婦にそこまで高額な死亡保障は不要です。

なぜ過剰なのか

  1. 配偶者の生活費 配偶者一人の生活費は、夫婦二人の生活費の70%程度になります。また、遺族年金(厚生年金の場合、月額10〜15万円)も受給できます。
  2. 住宅費 住宅ローンがあれば団体信用生命保険で完済されます。賃貸であれば、より安い住居への住み替えも可能です。

適正な死亡保障額の計算例

【Hさんご夫婦の場合】

  • 夫:年収600万円、厚生年金加入
  • 妻:年収400万円、厚生年金加入
  • 現在の生活費:月30万円

夫が亡くなった場合の妻の生活

  1. 生活費の変化
    • 夫婦二人:月30万円
    • 妻一人:月20万円(30万円×70%)
  2. 収入の変化
    • 妻の給与:月25万円(手取り)
    • 遺族厚生年金:月12万円(概算)
    • 合計:月37万円
  3. 収支
    • 収入37万円 – 支出20万円 = 月17万円の黒字

この計算により、Hさんの場合、高額な死亡保障は不要であることがわかります。むしろ、葬儀費用や当面の生活整理費用として500万円程度の保障で十分です。

罠3:「外貨建て保険」

最近、銀行窓口でよく勧められる外貨建て保険も、子なし夫婦には向きません。

外貨建て保険のリスク

  1. 為替リスク 保険料や保険金が外貨建てのため、円安・円高により実際の受取額が変動します。
  2. 手数料の高さ 為替手数料、保険関係費、運用管理費など、複数の手数料がかかり、実質利回りが低下します。
  3. 複雑性 仕組みが複雑で、実際の利回りやリスクが分かりにくく、トラブルの原因となりやすいです。

実際のトラブル事例

Iさん(45歳女性)は、銀行で「米ドル建て終身保険なら年利3%の運用が期待できる」と勧められ、月額500ドル(当時1ドル=110円、月額55,000円相当)の保険に加入しました。

5年後、円安により1ドル=150円になったときに解約を検討しましたが、保険関係費等により解約返戻金は支払済み保険料の85%程度。為替差益があっても、実際の受取額は支払った円建て保険料を下回る結果となりました。

第5章:保険見直しのタイミングと注意点

見直しタイミング1:収入の大幅な変化

転職、昇進、配偶者の就業状況変化など、収入に大きな変化があった場合は保険を見直すべきタイミングです。

収入増加時の見直しポイント

  1. 保障額の増額検討 生活水準が上がれば、それを維持するための保障も必要になります。
  2. 保険の質の向上 より充実した保障内容の保険への切り替えを検討しましょう。

収入減少時の見直しポイント

  1. 保険料負担の軽減 家計を圧迫しない範囲での保険料に調整します。
  2. 保障の優先順位見直し 最も必要な保障は何かを改めて検討します。

実際の見直し事例

Jさんご夫婦は、夫の転職により世帯年収が900万円から600万円に減少しました。従来の保険料月額35,000円は家計を圧迫するため、以下のように見直しました:

見直し前

  • 医療保険:夫婦合計15,000円
  • がん保険:夫婦合計8,000円
  • 就業不能保険:夫婦合計10,000円
  • 死亡保険:夫婦合計2,000円

見直し後

  • 医療保険:入院日額を8,000円から5,000円に減額 → 12,000円
  • がん保険:診断一時金を200万円から100万円に減額 → 5,000円
  • 就業不能保険:給付金額を15万円から10万円に減額 → 7,000円
  • 死亡保険:継続 → 2,000円

月額保険料:35,000円 → 26,000円(9,000円削減)

保障は減りましたが、最低限必要な保障は維持できています。

見直しタイミング2:健康状態の変化

持病の発症や健康診断での異常値の指摘があった場合、保険の見直しが困難になることがあります。

健康なうちにやっておくべきこと

  1. 保険加入の完了 健康状態に問題がないうちに、必要な保険には加入しておきましょう。
  2. 将来の保障ニーズの検討 現在は不要でも、将来必要になる可能性がある保障について検討しておきましょう。

持病があっても加入できる保険

近年、持病があっても加入できる「引受基準緩和型保険」や「無選択型保険」が増えています。

引受基準緩和型保険の特徴

  • 告知項目が3〜5項目と少ない
  • 保険料は一般の保険の1.5〜2倍
  • 加入後1年間は保障が半額

無選択型保険の特徴

  • 告知なしで加入可能
  • 保険料は一般の保険の2〜3倍
  • 加入後2年間は保障が半額または対象外

実際の加入事例

Kさん(48歳男性)は、糖尿病と診断された後に医療保険への加入を検討しました。一般の医療保険は謝絶となりましたが、引受基準緩和型医療保険に加入できました。

  • 入院日額:5,000円
  • 月額保険料:8,500円(一般の医療保険なら4,500円程度)
  • 加入後1年間の保障:入院日額2,500円

保険料は高くなりましたが、「何もないよりは安心」とKさんは満足されています。

見直しタイミング3:住宅購入

住宅を購入し、住宅ローンに団体信用生命保険を付帯した場合、死亡保障の見直しが必要です。

団体信用生命保険とは

住宅ローンの債務者が死亡または高度障害状態になった場合、住宅ローンの残債が保険金で完済される保険です。

団信加入後の保険見直しポイント

  1. 死亡保障の減額 住宅ローンがなくなることで、配偶者の住居費負担が軽減されるため、死亡保障を減額できます。
  2. 就業不能保険の重要性増加 住宅ローンがある間は、就業不能状態でも返済が続くため、就業不能保険の重要性が増します。

実際の見直し事例

Lさんご夫婦は、3,000万円の住宅を購入し、団信に加入しました。これに伴い保険を見直しました:

見直し前

  • 死亡保険:夫1,000万円、妻500万円

見直し後

  • 死亡保険:夫500万円、妻300万円
  • 就業不能保険:夫月額20万円(新規加入)、妻月額10万円(新規加入)

死亡保障を減額し、その分を就業不能保険に回すことで、より現実的なリスクに対応できる保険設計に変更しました。

第6章:保険会社・商品の選び方

保険会社選びの基準

保険は長期間にわたる契約のため、保険会社の経営安定性は非常に重要です。

チェックすべき指標

  1. ソルベンシー・マージン比率 保険会社の支払能力を示す指標。200%以上が健全とされ、500%以上あると安心です。
  2. 格付け 格付け機関による信用度評価。AA以上が望ましいです。
  3. 保険料収入の推移 安定して成長している会社は経営が安定しています。

主要保険会社の比較(2024年時点)

会社名ソルベンシー・マージン比率格付け(R&I)特徴
日本生命948.2%AA+国内最大手、保障重視
第一生命745.8%AA総合力が高い
明治安田生命1,087.7%AA相互扶助重視
住友生命834.5%AA-バランス重視
かんぽ生命3,241.5%AA-郵便局ネットワーク

商品選びのポイント

医療保険選びのポイント

  1. 基本保障の充実度
    • 入院給付金の支払限度日数
    • 手術給付金の対象範囲
    • 先進医療特約の有無
  2. 特約の内容
    • 三大疾病一時金
    • 女性疾病特約
    • 精神疾患保障
  3. 保険料の手頃さ 同等保障なら保険料が安い商品を選びましょう。

おすすめ医療保険(2024年時点)

オリックス生命「新CURE」

  • 特徴:シンプルで分かりやすい
  • 入院:日額5,000円、60日型
  • 手術:入院中20万円、外来5万円
  • 先進医療:2,000万円まで
  • 保険料例:30歳男性 月額1,531円

アフラック「ちゃんと応える医療保険EVER Prime」

  • 特徴:三大疾病に手厚い
  • 入院:日額5,000円、60日型(三大疾病は無制限)
  • 手術:入院中10万円、外来2.5万円
  • 先進医療:2,000万円まで
  • 保険料例:30歳男性 月額1,740円

がん保険選びのポイント

  1. 診断一時金の充実 初回診断時だけでなく、再発・転移時も対象かチェック
  2. 治療給付金の範囲 抗がん剤治療、放射線治療、手術すべてが対象か確認
  3. 上皮内がんの扱い 上皮内がんも診断一時金の対象かチェック

おすすめがん保険(2024年時点)

アフラック「生きるためのがん保険Days1」

  • 診断給付金:100万円(2年に1回、回数無制限)
  • 治療給付金:月額10万円
  • 上皮内がん:診断給付金10万円
  • 保険料例:30歳男性 月額2,770円

SBI生命「がん保険(自由診療タイプ)」

  • 診断給付金:300万円(初回のみ)
  • 自由診療:実費(月額1,000万円限度)
  • 標準治療:月額20万円
  • 保険料例:30歳男性 月額3,490円

申込時の注意点

告知書記入のポイント

  1. 正確な記入 虚偽記載は保険金不払いの原因となります。
  2. 詳細な記録の保管 診断書や検査結果は保管しておきましょう。
  3. 不安な場合は相談 記入に迷ったら、保険会社に確認しましょう。

クーリングオフの活用

申込後8日以内であれば、理由を問わず契約を取り消せます。十分検討してから決断しましょう。

実際のトラブル事例と対策

Mさん(35歳女性)は、5年前の子宮筋腫の手術歴を「軽微だから」と告知しませんでした。その後、子宮がんで保険金を請求したところ、告知義務違反により保険金が支払われませんでした。

対策

  • 軽微でも手術歴は必ず告知する
  • 診断書のコピーを保管しておく
  • 不明な点は保険会社に確認する

第7章:保険料を抑える賢い加入方法

年払い・全期前納の活用

月払いよりも年払い、さらに全期前納を活用することで保険料を大幅に削減できます。

支払方法による保険料の違い

例:30歳男性、医療保険月額2,000円の場合

支払方法年間保険料割引率
月払い24,000円
年払い23,280円3%割引
全期前納(30年)540,000円10%割引(月払い総額600,000円)

全期前納のメリット・デメリット

メリット

  • 大幅な保険料削減
  • 途中で支払いを忘れる心配がない
  • インフレリスクの回避

デメリット

  • 初期費用が高額
  • 途中解約時の返金が少ない場合がある
  • 保険会社の破綻リスク

実際の活用事例

Nさんご夫婦(夫35歳、妻33歳)は、医療保険とがん保険で月額12,000円の保険料を支払っていました。退職金1,000万円を受け取ったタイミングで、30年分を全期前納しました。

  • 月払い総額:12,000円×12ヶ月×30年=432万円
  • 全期前納額:380万円
  • 節約額:52万円

この52万円を老後資金として運用することで、さらなる資産形成につながりました。

団体保険の活用

会社員であれば、勤務先の団体保険を活用することで保険料を大幅に削減できます。

団体保険のメリット

  1. 保険料の安さ 一般の保険の50〜70%程度の保険料
  2. 告知の簡素化 簡易な告知で加入できることが多い
  3. 手続きの簡便さ 給与天引きで手続きが簡単

団体保険のデメリット

  1. 退職時の継続性 退職すると継続できない場合が多い
  2. 保障内容の制限 選択できる保障内容が限定的
  3. 年齢による制限 一定年齢で保障が減額される場合がある

賢い団体保険の活用法

Oさん(42歳男性)は、団体保険と個人保険を組み合わせて保険料を最適化しました:

基本保障:団体保険

  • 医療保険:月額800円(入院日額5,000円)
  • 死亡保険:月額500円(500万円)

追加保障:個人保険

  • がん保険:月額2,500円(診断一時金200万円)
  • 就業不能保険:月額3,500円(月額15万円)

合計保険料:月額7,300円

同等の保障を個人保険のみで組んだ場合、月額12,000円程度かかるため、4,700円の節約となります。

ネット保険の活用

インターネット専業の保険会社は、店舗や営業マンがいない分、保険料が安く設定されています。

ネット保険のメリット

  1. 保険料の安さ 対面販売型の保険会社より20〜30%安い
  2. 24時間申込可能 いつでもどこでも申込できる
  3. シンプルな商品設計 複雑な特約が少なく、分かりやすい

ネット保険のデメリット

  1. 相談体制の限界 対面での相談ができない
  2. 商品数の少なさ 選択肢が限定的
  3. 手続きの自己責任 すべて自分で手続きする必要がある

おすすめネット保険

ライフネット生命

  • 特徴:シンプルで分かりやすい商品
  • 強み:就業不能保険の保障が充実
  • 医療保険例:30歳男性 月額1,000円程度

楽天生命(旧アイリオ生命)

  • 特徴:楽天ポイントが貯まる
  • 強み:がん保険の保障が手厚い
  • がん保険例:30歳男性 月額1,500円程度

実際の活用事例

Pさんご夫婦(夫38歳、妻36歳)は、すべてをネット保険で組み立てました:

夫の保険

  • 医療保険(ライフネット生命):月額1,200円
  • がん保険(楽天生命):月額1,800円
  • 就業不能保険(ライフネット生命):月額2,800円
  • 死亡保険(ライフネット生命):月額800円

妻の保険

  • 医療保険(ライフネット生命):月額1,000円
  • がん保険(楽天生命):月額1,500円
  • 就業不能保険(ライフネット生命):月額2,200円
  • 死亡保険(ライフネット生命):月額600円

合計月額保険料:11,900円

同等の保障を大手生命保険会社で組んだ場合、18,000円程度かかるため、年間約7万円の節約となります。

第8章:保険以外でリスクに備える方法

緊急予備資金の確保

保険だけに頼るのではなく、現金での緊急予備資金も重要です。

緊急予備資金の目安

子なし夫婦の場合、生活費の6〜12ヶ月分を目安に現金で準備しておきましょう。

月30万円の生活費の場合

  • 最低限:180万円(6ヶ月分)
  • 理想的:360万円(12ヶ月分)

緊急予備資金の管理方法

  1. 普通預金:生活費1〜2ヶ月分 すぐに引き出せる資金
  2. 定期預金:生活費3〜6ヶ月分 少し金利が高く、衝動的な使用を防げる
  3. 個人向け国債(変動10年):生活費3〜6ヶ月分 元本保証で普通預金より高金利

実際の緊急予備資金活用事例

Qさんご夫婦は、夫が突然の病気で6ヶ月間休職することになりました。事前に緊急予備資金300万円を準備していたため、保険給付金の支払いまでの期間も安心して療養に専念できました。

  • 収入減:月20万円×6ヶ月=120万円
  • 治療費:50万円
  • 緊急予備資金使用:170万円

保険給付金(就業不能保険月額15万円×6ヶ月=90万円)と合わせて、貯金の取り崩しは80万円で済みました。

健康管理による予防

病気にならないことが最大のリスク管理です。

具体的な健康管理方法

  1. 定期健康診断の受診 会社の健康診断に加え、人間ドックも年1回受診
  2. がん検診の受診
    • 胃がん検診:40歳以上年1回
    • 大腸がん検診:40歳以上年1回
    • 肺がん検診:40歳以上年1回
    • 乳がん検診:40歳以上2年に1回
    • 子宮頸がん検診:20歳以上2年に1回
  3. 生活習慣の改善
    • 適度な運動:週3回、30分以上
    • 禁煙・節酒
    • バランスの良い食事
    • 十分な睡眠

健康管理の経済効果

Rさん(45歳男性)は、3年前から本格的な健康管理を始めました:

取り組み内容

  • ジム通い:月額8,000円
  • 人間ドック:年1回30,000円
  • サプリメント:月額3,000円
  • 年間支出:126,000円

効果

  • 血圧が正常値に改善
  • 体重10kg減量
  • 健康保険料の削減効果:年間36,000円(健康保険組合の優遇制度)
  • 医療費削減:年間50,000円(風邪などの軽微な病気が激減)

実質的な負担は年間40,000円で、健康と医療費削減の両方を実現しています。

収入源の多様化

一つの収入源に依存することもリスクです。副業や投資により収入源を多様化しましょう。

おすすめの収入多様化方法

  1. 副業
    • Webライティング
    • オンライン講師
    • ハンドメイド販売
    • アフィリエイト
  2. 投資
    • つみたてNISA
    • iDeCo
    • 株式投資
    • 不動産投資(REIT)
  3. スキルアップ
    • 資格取得
    • 語学学習
    • IT技術習得

実際の多様化事例

Sさんご夫婦(夫40歳、妻38歳)は、以下の収入源を構築しました:

夫の収入

  • 本業:月額35万円
  • 副業(プログラミング):月額8万円
  • 投資収益:月額3万円
  • 合計:月額46万円

妻の収入

  • 本業:月額25万円
  • 副業(Webライティング):月額5万円
  • 投資収益:月額2万円
  • 合計:月額32万円

世帯収入:月額78万円

本業以外の収入が月額18万円あることで、どちらかが働けなくなっても生活水準を大きく下げることなく過ごせます。

住居費の最適化

住居費は家計の大きな部分を占めるため、最適化することで保険料に回せる資金を増やせます。

持ち家vs賃貸の比較

持ち家のメリット

  • 資産として残る
  • 住宅ローン完済後は住居費が大幅減
  • 団体信用生命保険による保障

持ち家のデメリット

  • 初期費用が高額
  • 固定資産税・修繕費が継続的に発生
  • 住み替えの自由度が低い

賃貸のメリット

  • 初期費用が少ない
  • 住み替えの自由度が高い
  • 修繕費の負担がない

賃貸のデメリット

  • 資産として残らない
  • 高齢になると借りにくくなる
  • 住居費が一生続く

子なし夫婦の住居選択指針

  1. 30代前半まで:賃貸がおすすめ
    • ライフスタイルの変化に対応しやすい
    • 頭金の準備期間として活用
  2. 30代後半〜40代:購入検討時期
    • 住宅ローンの返済期間を十分確保できる
    • 老後の住居費削減効果が大きい
  3. 50代以降:慎重な判断が必要
    • 住宅ローンの返済期間が短くなる
    • 老後の住み替えニーズを考慮

実際の住居費最適化事例

Tさんご夫婦(夫35歳、妻33歳)は、賃貸から購入に切り替えることで保険料の余裕を作りました:

賃貸時代

  • 家賃:月額12万円
  • 保険料:月額8,000円(最低限の保障)

購入後

  • 住宅ローン:月額8万円
  • 管理費・税金:月額2万円
  • 住居費合計:月額10万円
  • 浮いた資金:月額2万円

この2万円を保険料に回すことで、充実した保障を確保できました:

  • 保険料:月額20,000円(就業不能保険を追加)

第9章:老後を見据えた保険戦略

老後の医療費リスク

子なし夫婦にとって、老後の医療費は大きなリスクです。子どもがいないため、経済的・身体的サポートを受けにくいからです。

老後の医療費データ

生命保険文化センターの調査によると、75歳以上の医療費は以下の通りです:

  • 外来医療費:年間平均35万円
  • 入院医療費:年間平均80万円
  • 介護費用:月平均8万円(要介護3の場合)

老後の医療費への備え方

  1. 終身医療保険の活用 現役時代に保険料を払い込み、老後は保険料負担なしで保障を継続
  2. 医療費専用貯蓄 老後の医療費として300〜500万円を別途準備
  3. 健康寿命の延伸 予防医療と健康管理により、医療費の発生自体を抑制

実際の老後医療費準備事例

Uさんご夫婦(夫50歳、妻48歳)は、以下の方法で老後の医療費に備えています:

終身医療保険

  • 夫:入院日額10,000円、60歳払済 → 月額15,000円
  • 妻:入院日額10,000円、60歳払済 → 月額13,000円

医療費専用貯蓄

  • つみたてNISA:月額33,000円×15年=約700万円(年利4%想定)
  • 個人向け国債:月額20,000円×15年=360万円

合計準備額:約1,060万円

この準備により、老後の医療費に関する不安を大幅に軽減できます。

介護リスクへの対応

子なし夫婦は、配偶者が要介護状態になった際の負担が特に重くなります。

介護の現実

厚生労働省の調査によると:

  • 要介護認定者数:約669万人(2022年)
  • 平均介護期間:約5年
  • 在宅介護の場合の月額費用:約8万円
  • 施設介護の場合の月額費用:約12〜15万円

介護保険制度の限界

公的介護保険では、利用料の1〜3割が自己負担となります。また、以下の費用は全額自己負担です:

  • 差額ベッド代
  • 食事代(一部)
  • 日用品費
  • 理美容代

民間介護保険の活用

民間の介護保険により、公的介護保険では不足する部分を補完できます。

おすすめの介護保険タイプ

  1. 介護一時金タイプ 要介護認定時に一時金を受給
    • メリット:まとまった資金を自由に使える
    • デメリット:長期介護の場合、資金が不足する可能性
  2. 介護年金タイプ 要介護状態の間、年金形式で受給
    • メリット:長期介護にも対応
    • デメリット:短期介護の場合、受給額が少ない
  3. 複合タイプ 一時金と年金の両方を受給
    • メリット:様々な介護状況に対応
    • デメリット:保険料が高い

実際の介護保険活用事例

Vさんご夫婦(夫45歳、妻43歳)は、以下の介護保険に加入しています:

夫の介護保険

  • 介護一時金:300万円
  • 介護年金:月額10万円
  • 月額保険料:8,500円

妻の介護保険

  • 介護一時金:200万円
  • 介護年金:月額8万円
  • 月額保険料:7,200円

この保障により、どちらかが要介護状態になっても、在宅・施設のどちらでも対応できます。

相続対策としての生命保険

子なし夫婦の場合、相続人が配偶者と両親または兄弟姉妹になるため、相続対策も重要です。

子なし夫婦の相続の特徴

  1. 法定相続人
    • 配偶者:2/3または3/4
    • 両親:1/3(両親が存命の場合)
    • 兄弟姉妹:1/4(両親が他界している場合)
  2. 遺留分
    • 両親:遺産の1/6
    • 兄弟姉妹:遺留分なし

生命保険を活用した相続対策

生命保険金は受取人固有の財産となるため、相続財産に含まれません。これを活用して以下の対策が可能です:

  1. 配偶者への資産継承 配偶者を受取人とする生命保険により、確実に資産を残せます
  2. 相続税対策 生命保険金には非課税枠(500万円×法定相続人数)があります
  3. 納税資金の準備 相続税の納税資金として生命保険金を活用できます

実際の相続対策事例

Wさんご夫婦(夫55歳、妻53歳)は、以下の相続対策を行っています:

現在の資産

  • 自宅:3,000万円
  • 預貯金:2,000万円
  • 投資信託:1,500万円
  • 合計:6,500万円

相続対策

  • 夫の終身保険:1,000万円(妻が受取人)
  • 妻の終身保険:1,000万円(夫が受取人)

効果

  1. 配偶者への確実な資産継承 生命保険金1,000万円は確実に配偶者が受け取れます
  2. 相続税の軽減
    • 法定相続人:配偶者、夫の両親の2名=3名
    • 生命保険非課税枠:500万円×3名=1,500万円
    • 実際の生命保険金:1,000万円
    • 課税対象額:0円(1,000万円 < 1,500万円)
  3. 納税資金の確保 生命保険金を相続税の納税資金として活用可能

老後の住居費対策

老後の住居費は、子なし夫婦にとって大きな負担となります。

老後の住居パターン

  1. 持ち家(ローン完済済み)
    • メリット:住居費が大幅削減(管理費・税金のみ)
    • デメリット:修繕費、バリアフリー化費用
  2. 賃貸継続
    • メリット:修繕費負担なし、住み替え容易
    • デメリット:家賃負担が継続、高齢者の入居制限
  3. 高齢者向け住宅
    • メリット:見守りサービス、バリアフリー
    • デメリット:入居一時金、月額費用が高額

住居費対策としての保険活用

終身保険や個人年金保険を活用して、老後の住居費を準備できます。

実際の住居費対策事例

Xさんご夫婦(夫48歳、妻46歳)は、老後の住居費として以下の準備をしています:

現在の住居

  • 賃貸マンション:月額10万円

老後の住居費準備

  • 個人年金保険:夫婦合計月額3万円(65歳から月額12万円受給)
  • つみたてNISA:月額2万円×17年≒500万円(住み替え費用)

65歳時点の住居費

  • 年金受給額:月額12万円
  • 現在の家賃:月額10万円
  • 余裕資金:月額2万円

この準備により、老後も現在と同水準の住居で生活できます。

第10章:保険見直しの実践ガイド

現在の保険の棚卸し方法

保険の見直しを始める前に、現在加入している保険を正確に把握しましょう。

保険証券の整理

  1. 保険証券の収集
    • 生命保険証券
    • 医療保険証券
    • 損害保険証券(自動車保険、火災保険など)
    • 勤務先の団体保険資料
  2. 保険内容の一覧表作成
保険会社商品名保険種類保険金額月額保険料契約日満期・更新日
A生命終身保険死亡保障1,000万円15,000円2015/4/1
B生命医療保険医療保障日額5,000円3,000円2018/6/15
  1. 保険料の年間支払総額計算 月額保険料×12ヶ月で年間支払額を算出し、家計に占める割合を確認しましょう。
  2. 保障の重複チェック 同じようなリスクに対して複数の保険で保障していないか確認します。

実際の棚卸し事例

Yさんご夫婦(夫40歳、妻38歳)の棚卸し結果:

夫の保険

  • 終身保険:死亡保障2,000万円、月額25,000円
  • 医療保険:入院日額10,000円、月額4,500円
  • がん保険:診断一時金100万円、月額2,000円
  • 団体保険:死亡保障500万円、月額800円

妻の保険

  • 終身保険:死亡保障1,000万円、月額18,000円
  • 医療保険:入院日額5,000円、月額2,500円
  • 女性疾病保険:入院日額5,000円、月額1,800円

月額保険料合計:54,600円(年間655,200円)

この棚卸しにより、以下の問題点が発見されました:

  • 死亡保障が過剰(子なし夫婦で合計3,500万円)
  • 医療保障の重複(妻の医療保険と女性疾病保険)
  • 就業不能保障が不足

保険ニーズの再評価

現在の生活状況と将来の計画を踏まえて、本当に必要な保障を再評価しましょう。

ライフプラン表の作成

年齢ごとの収入・支出・資産の変化を予測します。

Yさんご夫婦のライフプラン例

年齢(夫/妻)年収(万円)年間支出(万円)必要保障額(万円)備考
40/381,200480死亡500、就業不能月20現在
45/431,350520死亡400、就業不能月18住宅ローン減少
50/481,500550死亡300、就業不能月15貯蓄増加
55/531,400500死亡200、就業不能月12役職定年
60/58900450死亡200、就業不能月10再雇用
65/63300360死亡200、医療重視年金受給開始

リスクの優先順位付け

  1. 高頻度・高影響:最優先対応
    • 病気・ケガによる就業不能
    • 医療費負担
  2. 低頻度・高影響:保険で対応
    • がん・三大疾病
    • 死亡
  3. 高頻度・低影響:自己負担
    • 風邪などの軽微な病気
    • 短期入院
  4. 低頻度・低影響:無視
    • 特殊な疾病
    • 極めて稀なリスク

見直し後の保険設計案

Yさんご夫婦の見直し案を具体的に提示します。

見直し前の問題点

  • 月額保険料:54,600円(家計の13.7%)
  • 死亡保障過剰:3,500万円
  • 就業不能保障不足:0円
  • 医療保障重複あり

見直し後の保険設計

夫の保険

  • 収入保障保険:月額15万円(65歳まで)→ 月額4,200円
  • 医療保険:入院日額8,000円、先進医療特約 → 月額3,500円
  • がん保険:診断一時金200万円、治療給付金月額10万円 → 月額2,800円
  • 就業不能保険:月額20万円(65歳まで)→ 月額4,800円

妻の保険

  • 収入保障保険:月額10万円(65歳まで)→ 月額2,800円
  • 医療保険:入院日額8,000円、先進医療特約 → 月額3,000円
  • がん保険:診断一時金200万円、治療給付金月額8万円 → 月額2,200円
  • 就業不能保険:月額15万円(65歳まで)→ 月額3,800円

見直し後の月額保険料:27,100円(年間325,200円)

見直し効果

  • 保険料削減:月額27,500円(年間330,000円)
  • 実用的な保障への転換:就業不能保障を新たに確保
  • 家計に占める割合:6.8%(適正水準)

保険会社との交渉術

既存の保険を見直す際の保険会社との交渉ポイントをお伝えします。

解約前の確認事項

  1. 解約返戻金の確認 特に貯蓄型保険は、早期解約により大きく元本割れする可能性があります。
  2. 特約の中途付加可能性 解約ではなく、特約を追加することで必要な保障を確保できる場合があります。
  3. 払済保険への変更 保険料の支払いを停止し、保障額を減額して継続する方法です。

実際の交渉事例

Zさん(42歳男性)は、20年前に加入した終身保険(死亡保障2,000万円、月額保険料25,000円)の見直しを検討しました。

検討選択肢

  1. 解約
    • 解約返戻金:280万円
    • 支払済保険料:600万円
    • 損失:320万円
  2. 払済保険への変更
    • 保険料支払い停止
    • 死亡保障:800万円(継続)
    • 解約返戻金:280万円→将来の保障に活用
  3. 特約追加
    • 基本契約は継続
    • 就業不能特約を追加:月額5,000円

選択結果 Zさんは払済保険への変更を選択しました。月額25,000円の保険料負担がなくなり、その資金を就業不能保険(月額15,000円)と老後資金の積立(月額10,000円)に回すことができました。

保険以外の選択肢の検討

すべてのリスクを保険でカバーする必要はありません。保険以外の選択肢も検討しましょう。

自己保険の活用

一定の貯蓄がある場合、小さなリスクは自己負担とすることで保険料を節約できます。

自己保険が適している分野

  • 短期入院(1週間未満)
  • 外来での小手術
  • 歯科治療(保険外診療)

計算例 医療保険(入院日額5,000円、月額保険料2,000円)について考えてみましょう。

  • 30年間の保険料総額:2,000円×12ヶ月×30年=72万円
  • 入院給付金(仮に生涯で30日入院):5,000円×30日=15万円
  • 差額:57万円

この57万円を貯蓄しておけば、実際の医療費を自己負担できます。ただし、長期入院や高額医療費のリスクは保険でカバーすることをおすすめします。

投資による資産形成

保険料の一部を投資に回すことで、より効率的な資産形成が可能です。

保険vs投資の比較例

終身保険の場合

  • 月額保険料:20,000円
  • 30年後解約返戻金:600万円
  • 実質利回り:年約0.8%

つみたてNISA + 定期保険の場合

  • つみたてNISA:月額18,000円(年利4%想定)
  • 定期保険:月額2,000円(死亡保障500万円)
  • 30年後の資産:約1,240万円
  • 保障:500万円

投資には元本割れリスクがありますが、長期積立投資により、保険よりも大きな資産形成効果が期待できます。

まとめ:子なし夫婦の賢い保険選び

ここまで、子なし夫婦の保険について詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめさせていただきます。

子なし夫婦の保険の基本的な考え方

子なし夫婦にとって保険は「いらない」のではなく、「必要な保障を適正な保険料で確保する」ことが重要です。子どもがいる家庭とは異なるリスクと必要保障額を正しく理解し、自分たちの価値観とライフプランに合った保険設計を行いましょう。

重要な3つのポイント

  1. 就業不能リスクを最重視 子なし夫婦にとって最大のリスクは働けなくなることです。就業不能保険を保険設計の中心に据えましょう。
  2. 過剰な死亡保障は不要 高額な死亡保障よりも、生きているうちのリスクに備える医療保険やがん保険を充実させましょう。
  3. 老後を見据えた設計 子どもからの支援を期待できない分、老後の医療費や介護費用により手厚く備える必要があります。

年代別の推奨保険設計(再掲)

20代:月額保険料の目安10,000円

  • 医療保険(入院日額5,000円)
  • がん保険(診断一時金100万円)
  • 就業不能保険(月額給付金8〜10万円)
  • 死亡保険(300万円程度)

30代:月額保険料の目安19,000円

  • 医療保険(入院日額8,000円、三大疾病特約付き)
  • がん保険(診断一時金200万円、治療給付金付き)
  • 就業不能保険(月額給付金12〜15万円)
  • 死亡保険(500万円程度)

40代:月額保険料の目安28,500円

  • 医療保険(入院日額10,000円、先進医療特約付き)
  • がん保険(診断一時金300万円、充実した治療保障)
  • 就業不能保険(月額給付金15〜20万円)
  • 死亡保険(800万円程度)

50代:月額保険料の目安47,000円

  • 終身医療保険(老後保障重視)
  • 終身がん保険(治療技術の進歩に対応)
  • 就業不能保険(定年まで)
  • 介護保険(一時金・年金型)

保険料を抑える5つの方法

  1. ネット保険の活用:対面販売型より20〜30%安い
  2. 団体保険の併用:勤務先の制度を最大限活用
  3. 年払い・全期前納:月払いより3〜10%お得
  4. 必要最小限の保障設計:過剰な保障を避ける
  5. 定期的な見直し:年1回は保険内容をチェック

保険以外のリスク管理の重要性

保険はあくまでリスク管理の一部です。以下の対策も併せて行いましょう:

  • 緊急予備資金:生活費6〜12ヶ月分の現金確保
  • 健康管理:定期健診、運動習慣、食生活改善
  • 収入源の多様化:副業、投資による収入の分散
  • 住居費の最適化:家計に占める住居費の適正化

私からの最後のメッセージ

保険は「お守り」のようなものです。使わないに越したことはありませんが、いざという時の安心感は何物にも代えがたいものです。

私自身、夫の脳梗塞という予期せぬ出来事により、保険の重要性を痛感しました。しかし同時に、保険だけに頼るのではなく、総合的なリスク管理の重要性も学びました。

子なし夫婦だからこそ、お互いがお互いの「最大の保険」です。配偶者が安心して治療に専念できるよう、経済的な備えをしっかりと整えておきましょう。

保険選びで迷った時は、以下の3つの質問を自分に問いかけてみてください:

  1. この保険は、私たち夫婦の将来の不安を本当に解消してくれるか?
  2. この保険料は、家計を圧迫することなく継続して支払えるか?
  3. この保障内容は、私たちのライフプランに合っているか?

すべてに「はい」と答えられる保険こそが、あなたにとって最適な保険です。

保険は一度入って終わりではなく、ライフステージの変化に合わせて見直していくものです。年に一度は夫婦で保険について話し合い、現在の保障が適切かどうかを確認してください。

最後に、保険に関する情報は日々変化しています。新しい商品の登場、法改正、医療技術の進歩など、様々な要因により最適な保険は変わります。常に最新の情報を収集し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

あなたご夫婦が、経済的な不安なく、充実した人生を送れることを心から願っています。保険という安心の土台の上に、素晴らしい人生を築き上げてください。


執筆者プロフィール 田中理恵(仮名) ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者、AFP認定者) 大手銀行で10年間個人向け資産運用コンサルタント、証券会社で5年間投資アドバイザーを歴任。自身も子なし夫婦として様々な保険選びの悩みを経験。現在は独立系FPとして、一人ひとりの価値観に寄り添った保険設計を行っている。モットーは「お金の不安で眠れない夜を一つでも減らしたい」。

免責事項 本記事の内容は2024年時点の情報に基づいており、保険商品の内容や保険料は変更される場合があります。実際の保険選びの際は、最新の商品内容を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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