「もし親が要介護になったら、お金はどうしよう…」
そんな漠然とした不安を抱えているあなたは、決して一人ではありません。
こんにちは。ファイナンシャルプランナー(CFP資格保有)の田中と申します。大手銀行で10年間、個人向け資産運用コンサルタントとして多くのご家族の介護費用相談に携わってきました。そして私自身も、5年前に認知症の母の介護を経験し、月15万円の施設費用を3年間負担した経験があります。
当時の私は「まさかうちの母が」という気持ちでいっぱいでした。でも実際に要介護認定を受けてみると、想像以上に費用がかかることを痛感したのです。幸い、母が元気なうちから少しずつ準備していた介護資金があったおかげで、経済的な負担を最小限に抑えることができました。
この記事では、私の実体験と、これまでに相談を受けた500世帯以上のデータを基に、親の介護費用負担に関する不安を、具体的な準備と対策で安心に変える方法をお伝えします。
目次
- 【現実を知る】介護費用の実際の負担額とその内訳
- 【体験談】私が直面した介護費用の現実と準備の大切さ
- 【基礎知識】介護保険制度の仕組みと自己負担の計算方法
- 【準備編】介護費用に備える5つの具体的な方法
- 【実践編】年収別・家族構成別の介護資金準備プラン
- 【節約術】介護費用を抑える賢い制度活用法
- 【心構え】家族で話し合うべき介護とお金の話
- 【まとめ】今日から始める介護費用準備のステップ
1. 【現実を知る】介護費用の実際の負担額とその内訳
介護にかかる費用の全体像
介護費用と聞くと、多くの方が「月10万円くらい?」と漠然と考えがちですが、実際の負担額はもっと複雑で、場合によってはその倍以上になることもあります。
生命保険文化センターの令和3年度調査によると、介護にかかる費用の平均は以下の通りです:
一時的な費用(住宅改修・介護用品購入など)
- 平均:74万円
- 最も多い回答:10~15万円未満(15.8%)
月々の費用
- 平均:8.3万円
- 在宅介護:4.8万円
- 施設介護:12.2万円
介護期間
- 平均:61.1か月(約5年1か月)
これらを総合すると、介護にかかる費用の総額は平均580万円という計算になります。
私が母の介護で実際に支払った費用
実際に私の母のケースをお話しします。母は74歳で認知症と診断され、要介護3の認定を受けました。
一時的費用
- 住宅改修(手すり設置、段差解消):45万円
- 介護ベッド・車椅子レンタル初期費用:8万円
- 見守りカメラ・センサー設置:12万円
- 合計:65万円
月々の費用(在宅介護1年間)
- 介護保険サービス自己負担分:2.8万円
- デイサービス追加利用料:1.2万円
- 介護用品(おむつ等):0.8万円
- 家政婦サービス:3万円
- 合計:7.8万円
月々の費用(施設入居2年間)
- 特別養護老人ホーム費用:15.2万円
- 医療費・薬代:1.8万円
- 身の回り用品:0.5万円
- 合計:17.5万円
3年間の総額:約570万円
この金額を見て「高い」と感じる方も多いでしょう。しかし、母が元気なうちから準備していた介護資金(母の預貯金300万円+私たち兄弟の積立200万円)があったおかげで、家計に大きな負担をかけることなく、質の良い介護サービスを受けることができました。
要介護度別の費用目安
要介護度によって必要な費用は大きく変わります。以下は、厚生労働省のデータを基にした目安です:
要支援1~2
- 月額自己負担:1~3万円
- 主なサービス:訪問介護、デイサービス
要介護1~2
- 月額自己負担:3~6万円
- 主なサービス:訪問介護、デイサービス、ショートステイ
要介護3~4
- 月額自己負担:6~12万円
- 主なサービス:訪問介護、デイサービス、グループホーム
要介護5
- 月額自己負担:10~20万円
- 主なサービス:特別養護老人ホーム、有料老人ホーム
隠れた費用も忘れずに
介護費用を考える際、つい介護保険サービスの自己負担分だけに注目しがちですが、実際には以下のような「隠れた費用」も発生します:
交通費
- 病院への付き添い:月2~4回、1回あたり2,000円程度
- 施設への面会:月4~8回、1回あたり1,000円程度
家族の負担
- 仕事を休むことによる収入減
- 介護疲れによる医療費増加
- 介護者の交通費・食事代
住環境の変化
- 自宅の介護用リフォーム:50~200万円
- 引っ越し費用(介護しやすい立地への移住)
これらを含めると、実際の負担は先ほどの平均額よりも高くなる可能性があります。
2. 【体験談】私が直面した介護費用の現実と準備の大切さ
「まさかうちの母が」という思い込み
5年前の夏のことです。いつものように母から電話がかかってきたのですが、同じ話を何度も繰り返し、昨日のことを全く覚えていませんでした。「最近物忘れが多いな」程度に考えていた私でしたが、これが認知症の始まりだったのです。
母は長年、一人暮らしを続けており、「私は元気だから大丈夫」が口癖でした。私たち家族も「まだまだ元気だし、介護なんて当分先の話」と思っていました。しかし、認知症は私たちの想像よりもずっと早く、そして重く家族にのしかかってきました。
準備不足で直面した現実
母の要介護認定を受けた時、私が最初に感じたのは「お金の心配」でした。
当時の我が家の状況:
- 私の年収:650万円
- 妻の年収:280万円(パート)
- 子ども:大学生と高校生(教育費が重い時期)
- 住宅ローン:あと15年残っている
「母の介護費用を毎月10万円以上負担するなんて無理」というのが正直な気持ちでした。
幸い、母は几帳面な性格で、定期預金に300万円ほど貯めてくれていました。また、私と弟で月2万円ずつ、「将来の介護費用」として10年間積み立てていた資金が200万円ありました。この合計500万円が、介護費用の大部分をカバーしてくれたのです。
もし準備していなかったら…
もしこの500万円がなかったらと思うと、今でもゾッとします。
計算してみると
- 3年間の介護費用総額:570万円
- 準備していた資金:500万円
- 実際の持ち出し:70万円(月約2万円)
もし準備ゼロだったら
- 月の負担:約16万円
- 年間負担:約190万円
これは我が家にとって現実的ではない金額でした。恐らく以下のような状況になっていたでしょう:
- 妻がフルタイムで働かざるを得ない
- 子どもの教育費を削る必要がある
- 住宅ローンの返済に影響が出る
- 質の良い介護サービスを選べない
介護保険だけでは足りない現実
多くの方が誤解されているのが「介護保険があるから大丈夫」という考えです。確かに介護保険は心強い制度ですが、全ての費用をカバーしてくれるわけではありません。
母のケースで介護保険がカバーした割合
- 在宅介護時:月7.8万円のうち5万円(約64%)
- 施設介護時:月17.5万円のうち2.3万円(約13%)
特に施設入居後は、居住費や食費は全額自己負担となるため、介護保険でカバーされる割合が大幅に下がります。
早期準備の大切さを実感
この経験を通じて、私が痛感したのは「介護費用の準備は、親が元気なうちから始めるべき」ということです。
準備していて良かったポイント
- 経済的余裕が心の余裕を生む お金の心配をせずに済んだおかげで、母にとって最適な介護サービスを冷静に選ぶことができました。
- 選択肢が広がる 費用を気にしすぎることなく、母の状態に合った施設を選べました。安い施設では待機期間が長く、質も様々です。
- 家族関係が悪化しない 兄弟間でお金の負担について揉めることがありませんでした。事前に話し合い、準備していたからです。
- 自分の老後資金に影響しない 親の介護費用のために、自分の老後資金を取り崩すことなく済みました。
3. 【基礎知識】介護保険制度の仕組みと自己負担の計算方法
介護保険制度の基本的な仕組み
介護保険制度は、40歳以上の全国民が保険料を負担し、65歳以上の方(第1号被保険者)や40~64歳で特定疾病により要介護認定を受けた方(第2号被保険者)が、必要な介護サービスを受けられる仕組みです。
保険料の負担
- 40~64歳:医療保険と合わせて徴収
- 65歳以上:市町村が徴収(年金からの特別徴収が基本)
サービス利用時の自己負担割合
- 1割負担:前年の合計所得金額が160万円未満
- 2割負担:前年の合計所得金額が160万円以上220万円未満
- 3割負担:前年の合計所得金額が220万円以上
要介護認定のプロセスと費用への影響
要介護認定は、介護の必要性を客観的に判定する制度です。認定結果によって利用できるサービスの種類や支給限度額が決まるため、費用に直結する重要なプロセスです。
要介護認定の流れ
- 申請
- 申請先:市町村の介護保険担当窓口
- 申請できる人:本人、家族、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者など
- 費用:無料
- 要介護認定調査
- 認定調査員が自宅等を訪問
- 基本調査(74項目)+ 特記事項
- 主治医意見書の作成依頼
- 審査・判定
- 一次判定(コンピューター判定)
- 二次判定(介護認定審査会)
- 認定結果の通知
- 申請から原則30日以内
- 認定期間:新規は原則6か月、更新は原則12か月
要介護度別の支給限度額と自己負担額
各要介護度には月の支給限度額が設定されており、この範囲内であれば自己負担は1~3割で済みます。限度額を超えた分は全額自己負担となります。
令和5年度の支給限度額(月額)
要介護度 | 支給限度額 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
実際の費用計算例
私の母(要介護3、所得160万円未満で1割負担)のケースで、実際の費用を計算してみましょう。
在宅介護時のサービス内容
- 訪問介護:週3回(1回1時間) = 月12回
- デイサービス:週2回 = 月8回
- ショートステイ:月2泊3日
- 福祉用具レンタル:介護ベッド、車椅子
費用計算
- 訪問介護:12回 × 2,500円 = 30,000円
- デイサービス:8回 × 8,500円 = 68,000円
- ショートステイ:2泊 × 12,000円 = 24,000円
- 福祉用具レンタル:月額 8,000円
合計:130,000円
- 支給限度額:270,480円
- 1割自己負担:13,000円
この例では支給限度額内に収まっているため、自己負担は1割の13,000円で済みました。しかし実際には、以下の費用が追加で発生しました:
介護保険対象外の費用
- デイサービスの食事代:月16,000円
- 訪問介護の生活援助追加分:月12,000円
- 介護用品(おむつ等):月8,000円
実際の月額負担:49,000円
高額介護サービス費制度の活用
月の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が後から払い戻される制度があります。
自己負担限度額(月額)
所得区分 | 限度額 |
---|---|
現役並み所得者 | 44,400円 |
一般 | 37,200円 |
市町村民税非課税世帯 | 24,600円 |
前年の合計所得金額等が80万円以下の人等 | 15,000円 |
生活保護受給者等 | 15,000円 |
母のケースでは一般区分に該当し、月37,200円が限度額でした。在宅介護時の負担49,000円から37,200円を差し引いた11,800円が毎月還付されていました。
介護保険以外にかかる費用
介護保険でカバーされない費用も多くあります。これらを見落とすと、予想以上に負担が重くなります。
住環境整備費用
- 手すりの設置:3~10万円
- 段差の解消:10~50万円
- トイレの改修:20~100万円
- 浴室の改修:50~150万円
*住宅改修費として20万円まで介護保険適用(自己負担1~3割)
介護用品・医療機器
- 紙おむつ:月5,000~10,000円
- 見守りシステム:月3,000~8,000円
- 電動ベッド(購入の場合):20~50万円
施設入居時の費用
- 入居一時金:0~数百万円
- 居住費:月3~15万円
- 食費:月4~6万円
- 管理費・光熱費:月2~5万円
4. 【準備編】介護費用に備える5つの具体的な方法
1. 親の資産状況の把握と整理
介護費用の準備で最も重要なのは、まず親の資産状況を正確に把握することです。私の経験上、多くの家族がこのステップを疎かにして、いざという時に困っています。
親の資産調査のチェックリスト
預貯金
- 銀行預金(普通預金・定期預金)
- ゆうちょ銀行の貯金
- 信用金庫・労働金庫の預金
- 証券会社のMRF(預り金)
投資・保険
- 株式・投資信託
- 個人向け国債
- 生命保険(終身保険・養老保険)
- 学資保険(満期を迎えていないもの)
不動産
- 自宅(土地・建物)
- 賃貸物件
- 農地・山林
その他
- 退職金(未受給の場合)
- 企業年金
- 貴金属・骨董品
私の母のケースでは、定期預金300万円のほかに、私たちが知らなかった終身保険が100万円ありました。このような「隠れ資産」は意外に多いものです。
資産調査の進め方
- 年末年始の帰省時に相談 家族が集まるタイミングで、自然な形で話を切り出します。「将来のことを考えて、みんなで準備したいんだけど」という言い方が効果的です。
- 通帳・書類の確認 親の同意を得て、通帳や保険証券、不動産の権利証などを一緒に確認します。
- 金融機関への照会 認知症などで本人が対応できない場合は、成年後見制度の利用も検討しましょう。
2. 家族間での費用分担ルールの決定
介護費用で家族がもめるケースは非常に多く見てきました。事前にルールを決めておくことで、いざという時にスムーズに対応できます。
費用分担の考え方
収入比例方式 各家族の年収に応じて負担割合を決める方式です。
例:兄(年収600万円)、弟(年収400万円)の場合
- 兄の負担:60%
- 弟の負担:40%
均等分担方式 兄弟姉妹で等しく負担する方式です。
長男・長女優遇方式 実家を相続する代わりに、介護費用の負担を多くする方式です。
私たち家族が採用した分担方法
私(長男)と弟で以下のように決めました:
平常時(元気なうち)
- 月2万円ずつ積立(介護費用専用口座)
- 年2回の健康診断費用:長男負担
- 通院の付き添い:交代制
介護開始後
- 基本費用:積立金から支出
- 不足分:兄弟で半分ずつ負担
- 実家相続:長男(私)が放棄、弟が相続
決めておくべき項目
- 月々の介護費用の負担割合
- 一時的な費用(住宅改修等)の負担方法
- 付き添いや世話の分担
- 実家や財産の相続について
- 介護者への御礼(謝礼)の有無
3. 親名義での介護資金積立
親が元気なうちから、親名義で介護資金を積み立てることは非常に効果的です。
親名義積立のメリット
- 税制上の優遇 贈与税を気にせずに済みます。
- 本人の意識向上 自分の介護費用を自分で準備するという意識が生まれます。
- 相続時の評価 現金として相続するより、有利な場合があります。
具体的な積立方法
定期預金
- メリット:元本保証、いつでも解約可能
- デメリット:金利が低い(年0.01~0.1%程度)
- 適用例:月2~5万円の積立
個人向け国債
- メリット:国が元本保証、銀行預金より金利が良い
- デメリット:1年間は換金不可
- 適用例:まとまった資金(50万円以上)での運用
終身保険
- メリット:死亡保障と貯蓄の両立、相続税の非課税枠活用
- デメリット:途中解約で元本割れのリスク
- 適用例:10年以上の長期積立
私の母の場合、65歳から月3万円ずつ定期預金で積み立て、9年間で約320万円貯めていました。この資金が介護費用の大部分をカバーしてくれました。
4. 子世代での介護保険・共済の加入
最近は民間の介護保険も充実しており、公的介護保険の不足分を補う有効な手段となっています。
民間介護保険の種類
介護一時金型 要介護認定時に一括で保険金を受け取るタイプです。
商品例
- 保険料:月額3,000円(45歳男性)
- 保険金:300万円(要介護3以上)
- 保険期間:終身
介護年金型 要介護状態が続く限り、毎年保険金を受け取るタイプです。
商品例
- 保険料:月額5,000円(45歳男性)
- 年金額:60万円(要介護3以上)
- 保険期間:終身
介護費用実損型 実際にかかった介護費用を保険金として受け取るタイプです。
商品例
- 保険料:月額2,500円(45歳男性)
- 保険金:月額10万円限度(実損分)
- 保険期間:10年更新
選び方のポイント
- 要介護度の条件 要介護2から対象になるものと、要介護3からのものがあります。軽度から対象になる方が安心です。
- 保険金の支払方法 一時金型は住宅改修などの初期費用に、年金型は継続的な費用に適しています。
- 保険料の払込期間 終身払いと有期払い(60歳や65歳まで)があります。老後の家計を考えると有期払いが安心です。
私は45歳の時に、月額4,000円の介護保険に加入しました。要介護3以上で年金60万円を受け取れる商品です。20年間払い込んで総額96万円、受給期間を5年とすると総額300万円になるため、十分にペイする計算です。
5. 資産運用による介護資金の準備
長期的な視点で介護資金を準備する場合、適切な資産運用を活用することで、より効率的に資金を増やすことができます。
リスク許容度別の運用方法
保守的な運用(元本重視)
個人向け国債変動10年
- 想定利回り:年0.1~0.5%
- 特徴:元本保証、10年未満でも中途換金可能
- 適用例:月5万円積立、10年で約610万円
定期預金
- 想定利回り:年0.01~0.1%
- 特徴:完全元本保証、いつでも引き出し可能
- 適用例:月5万円積立、10年で約600万円
やや積極的な運用(バランス重視)
つみたてNISA(バランスファンド)
- 想定利回り:年3~5%
- 特徴:税制優遇、世界分散投資
- 適用例:月3.3万円積立、10年で約460万円、20年で約1,200万円
個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 想定利回り:年3~7%
- 特徴:全額所得控除、受取時の税制優遇
- 注意点:60歳まで引き出し不可
積極的な運用(成長重視)
株式インデックスファンド
- 想定利回り:年5~8%
- 特徴:長期的な成長期待、価格変動リスクあり
- 適用例:月5万円積立、20年で約1,800万円(年利6%想定)
私が実際に行っている運用
40歳から介護資金準備として以下の運用を行っています:
- つみたてNISA:月3.3万円(全世界株式インデックス)
- iDeCo:月2.3万円(国内外の株式・債券バランス型)
- 個人向け国債:年100万円
- 普通預金:月2万円(緊急時資金)
5年間の運用実績:
- 投資元本:528万円
- 現在評価額:612万円
- 運用益:84万円(年利約3.2%)
この運用により、10年後には約800万円、15年後には約1,200万円の介護資金を準備できる見込みです。
運用時の注意点
- 介護はいつ始まるかわからない 全額を株式で運用するのではなく、一定割合は元本保証の商品で準備しましょう。
- ドルコスト平均法の活用 毎月一定額を積み立てることで、価格変動リスクを軽減できます。
- 税制優遇制度の活用 つみたてNISAやiDeCoを最大限活用しましょう。
- 定期的な見直し 年1回は運用状況を確認し、必要に応じてバランスを調整しましょう。
5. 【実践編】年収別・家族構成別の介護資金準備プラン
年収300~500万円世帯の現実的な準備プラン
年収300~500万円の世帯では、介護資金の準備は「少額からでも確実に」が基本です。無理をして大きな金額を積み立てようとすると、家計が苦しくなり継続できません。
世帯例:年収400万円、夫婦+子ども2人、持ち家ローンあり
現在の家計状況
- 手取り月収:32万円
- 住宅ローン:8万円
- 生活費:18万円
- 教育費:4万円
- 貯蓄可能額:2万円
介護資金準備プラン(月額)
- 親の医療費支援:5,000円
- 親の健康診断費用負担
- 通院時のタクシー代等
- 介護資金積立:8,000円
- 定期預金:5,000円
- 個人向け国債:3,000円
- 介護保険加入:2,000円
- 夫婦それぞれ月1,000円の介護保険
15年間の準備効果
- 積立合計:144万円
- 介護保険総額:36万円
- 想定介護費用カバー率:約30%
この世帯では完全に介護費用をカバーするのは難しいですが、親の資産と合わせることで負担を大幅に軽減できます。
節約ポイント
- 格安SIMへの変更:月4,000円節約
- 保険の見直し:月3,000円節約
- 電力会社の変更:月2,000円節約
これらの節約により、月9,000円の追加資金を確保し、介護資金準備に回すことが可能です。
年収500~800万円世帯の積極的な準備プラン
この年収層では、ある程度積極的な資産運用を組み合わせながら、しっかりとした介護資金を準備することができます。
世帯例:年収650万円、夫婦+子ども1人、持ち家ローンあり
現在の家計状況
- 手取り月収:48万円
- 住宅ローン:10万円
- 生活費:25万円
- 教育費:6万円
- 貯蓄可能額:7万円
介護資金準備プラン(月額)
- つみたてNISA:33,000円
- 全世界株式インデックスファンド
- 年利5%想定
- 個人向け国債:15,000円
- 安定的な資金確保
- 親の介護保険(子が契約者):5,000円
- 介護一時金300万円タイプ
- 介護用住宅ローン:10,000円
- 将来のバリアフリーリフォーム資金
15年間の準備効果
- つみたてNISA:約840万円(年利5%想定)
- 個人向け国債:約270万円
- 介護保険:300万円(一時金)
- 住宅改修資金:180万円
- 合計:約1,590万円
この金額があれば、平均的な介護費用(580万円)を十分にカバーし、質の良い介護サービスを選択することができます。
年収800万円以上世帯の理想的な準備プラン
高所得世帯では、税制優遇制度を最大限活用しながら、複数の準備手段を組み合わせることで、介護費用への不安を完全に解消することができます。
世帯例:年収1,000万円、夫婦のみ、持ち家(ローン完済)
現在の家計状況
- 手取り月収:65万円
- 生活費:35万円
- 貯蓄可能額:30万円
介護資金準備プラン(月額)
- つみたてNISA(夫婦):66,000円
- 世界分散投資、年利6%想定
- iDeCo(夫婦):46,000円
- 全額所得控除の恩恵
- 終身保険:50,000円
- 相続税対策も兼ねた大型保険
- 介護保険(夫婦):12,000円
- 手厚い保障内容
- 不動産投資:100,000円
- 将来の収入源確保
15年間の準備効果
- つみたてNISA:約1,680万円
- iDeCo:約1,170万円
- 終身保険:約1,000万円
- 介護保険:600万円(一時金)
- 不動産投資:物件取得+家賃収入
- 合計:4,450万円+不動産
この世帯では、自分たちの介護費用はもちろん、子どもや孫の世代への資産継承も視野に入れた準備が可能です。
単身世帯の介護資金準備
単身世帯(独身・離婚・死別)では、介護時に頼れる家族が限られるため、より手厚い準備が必要です。
世帯例:年収500万円、40歳独身女性
現在の家計状況
- 手取り月収:35万円
- 住居費(賃貸):10万円
- 生活費:15万円
- 貯蓄可能額:10万円
介護資金準備プラン(月額)
- つみたてNISA:33,000円
- バランス型ファンド
- iDeCo:23,000円
- 自営業等の場合は上限68,000円
- 介護保険:15,000円
- 手厚い保障(年金+一時金タイプ)
- 医療保険:8,000円
- 介護・医療の複合保障
- 緊急時資金:20,000円
- 定期預金での確実な積立
25年間の準備効果
- つみたてNISA:約1,380万円
- iDeCo:約960万円
- 介護保険:750万円
- 医療保険:400万円
- 緊急時資金:600万円
- 合計:4,090万円
単身世帯では介護サービスへの依存度が高くなるため、この程度の準備があると安心です。
共働き夫婦(子どもなし)の準備プラン
世帯例:夫年収600万円+妻年収400万円、子どもなし
現在の家計状況
- 世帯手取り:70万円
- 住居費:12万円
- 生活費:30万円
- 貯蓄可能額:28万円
介護資金準備プラン(月額)
- つみたてNISA(夫婦):66,000円
- iDeCo(夫婦):46,000円
- 親の介護保険(4人分):20,000円
- 住宅リフォーム資金:30,000円
- 現金積立:50,000円
この世帯の特徴は、自分たちの老後だけでなく、双方の親(4人)の介護に備える必要があることです。しかし、子どもの教育費がない分、しっかりとした準備が可能です。
20年間の準備効果
- つみたてNISA:約2,100万円
- iDeCo:約1,470万円
- 介護保険:800万円
- リフォーム資金:720万円
- 現金積立:1,200万円
- 合計:6,290万円
双方の親の介護と自分たちの老後を考えても十分な金額です。
6. 【節約術】介護費用を抑える賢い制度活用法
介護保険制度の限度額を有効活用する方法
介護保険制度を上手に活用することで、同じサービスを受けながら費用を大幅に抑えることができます。私が母の介護で実践した節約術をご紹介します。
支給限度額ギリギリまでサービスを利用する
多くの方が勘違いしているのは「介護保険を使いすぎると家族に迷惑がかかる」という考えです。実際は、支給限度額内であれば遠慮する必要はありません。
私の母のケース(要介護3、限度額270,480円)
当初の利用状況
- 利用額:130,000円(限度額の48%)
- 1割負担:13,000円
ケアマネージャーと相談後
- 利用額:260,000円(限度額の96%)
- 1割負担:26,000円
- 追加サービス:週1回の訪問入浴、福祉用具追加
結果 自己負担は月1.3万円増えましたが、家族の介護負担が大幅に軽減され、パートを辞める必要がなくなりました。妻のパート収入(月8万円)を維持できたため、実質的には月6.7万円のプラスになりました。
限度額を有効活用するポイント
- ケアマネージャーとの綿密な相談 月1回のケアプラン見直しで、限度額との差額を確認しましょう。
- サービスの組み合わせ最適化 訪問介護とデイサービスの回数調整で、限度額を最大限活用できます。
- 福祉用具レンタルの積極利用 車椅子、介護ベッド、歩行器などは購入より安価です。
高額介護サービス費制度の詳細活用法
この制度を正しく理解し活用することで、月数万円の節約が可能です。
制度の詳細
自己負担限度額は世帯の課税状況によって決まります:
課税世帯の限度額計算例
年金収入280万円の場合
- 介護保険自己負担:月50,000円
- 限度額:37,200円
- 還付額:12,800円
非課税世帯の大幅軽減
年金収入80万円の場合
- 介護保険自己負担:月30,000円
- 限度額:15,000円
- 還付額:15,000円
世帯分離による節約効果
親と同居している場合、世帯分離により限度額を下げられる場合があります。
世帯分離前(息子夫婦と同居)
- 世帯年収:800万円
- 限度額:44,400円
世帯分離後(親のみの世帯)
- 親の年収:年金120万円
- 限度額:24,600円
- 月約2万円の負担軽減
ただし、世帯分離により国民健康保険料等が変わる場合があるため、事前に市町村窓口で確認が必要です。
住宅改修費制度の最大活用術
介護保険の住宅改修費制度は、20万円まで9割(または8割・7割)が給付されます。この制度を上手に活用することで、大幅な費用節約が可能です。
対象となる改修工事
- 手すりの取り付け
- 玄関、トイレ、浴室、廊下等
- 費用例:5~15万円
- 段差の解消
- 室内の段差、玄関の段差
- 費用例:10~30万円
- 滑りの防止・移動の円滑化
- 床材の変更、スロープ設置
- 費用例:15~50万円
- 引き戸等への扉の取替え
- 開き戸から引き戸への変更
- 費用例:10~25万円
- 洋式便器等への取替え
- 和式から洋式への変更
- 費用例:15~40万円
- その他の改修工事
- 上記工事に伴う必要な改修
- 費用例:工事内容による
私の実際の住宅改修費活用例
母の家で実施した改修工事:
第1回改修
- 玄関手すり設置:8万円
- 浴室手すり設置:12万円
- 総額:20万円
- 自己負担:2万円(1割負担)
第2回改修(要介護度変更後) 要介護度が上がった場合、再度20万円まで利用可能です。
- トイレ洋式化:25万円
- 廊下手すり設置:8万円
- 床材変更(滑り止め):15万円
- 総額:48万円のうち20万円が対象
- 自己負担:2万円(1割負担)
住宅改修の節約ポイント
- 複数業者からの見積もり取得 同じ工事でも業者により50%以上価格差があります。
- 介護保険対象外工事の同時実施 足場設置等の共通費用を削減できます。
- ケアマネージャーとの事前相談 本当に必要な改修を優先順位をつけて実施します。
福祉用具レンタル制度の賢い利用法
福祉用具は原則レンタルが基本で、購入より格段に安く利用できます。
レンタル対象用具と費用例
車椅子
- 購入価格:5~20万円
- レンタル:月500~2,000円
- 1割負担:月50~200円
介護ベッド
- 購入価格:10~50万円
- レンタル:月1,000~3,000円
- 1割負担:月100~300円
歩行器・歩行補助つえ
- 購入価格:1~5万円
- レンタル:月200~800円
- 1割負担:月20~80円
私が体験したレンタルのメリット
- 状態変化への対応 母の状態に合わせて、車椅子を3回交換しました。購入していたら大きな損失でした。
- メンテナンス費用不要 故障時の修理費用はレンタル会社負担です。
- 不要時の処分費用なし 介護が終了した時点で返却するだけです。
医療費控除との合算活用
介護費用の多くは医療費控除の対象となります。確定申告により税金の還付を受けることができます。
医療費控除対象となる介護費用
介護保険サービス
- 訪問看護、訪問リハビリテーション:全額
- 訪問介護(医療系):全額
- デイサービス・ショートステイ:食事代含む
- 特別養護老人ホーム:費用の1/2
医療機関でのサービス
- 診療費、薬代:全額
- 通院時の交通費:全額
- 医師の指示による寝具・衣類:全額
私の確定申告実績
年間医療費総額:85万円
- 母の医療費:35万円
- 母の介護費用(控除対象分):30万円
- 家族の医療費:20万円
控除額:85万円 – 10万円 = 75万円 還付額:75万円 × 20%(所得税率)= 15万円
この還付金を翌年の介護費用に充てることで、実質的な負担軽減となりました。
自治体独自の支援制度活用
多くの自治体で、国の制度に加えて独自の介護支援制度があります。
よくある自治体支援制度
紙おむつ支給・購入費助成
- 支給例:月20~30枚
- 助成例:月3,000~5,000円
配食サービス
- 1食300~500円(通常800~1,200円)
- 安否確認も兼ねる
移送サービス
- 通院時の送迎:1回200~500円
- 一般タクシーの半額程度
家族介護慰労金
- 年額5~10万円
- 在宅介護を1年以上継続した場合
私が利用した自治体サービス
- 紙おむつ助成:月4,000円
- 配食サービス:週3回、1食400円
- 移送サービス:月2回、1回300円
年間約8万円の負担軽減効果がありました。
これらのサービスは市町村によって内容が大きく異なるため、地域包括支援センターで詳細を確認することをお勧めします。
7. 【心構え】家族で話し合うべき介護とお金の話
介護とお金の話を始めるタイミング
「介護の話なんて縁起でもない」「まだ元気だから大丈夫」
多くの家族がこのように考えて、話し合いを先延ばしにしがちです。しかし、私の経験から言えるのは、話し合いは「早すぎる」ということはないということです。
最適なタイミング
親が65歳を迎えた時
- 介護保険の第1号被保険者になるタイミング
- 現役引退を意識し始める時期
- まだ判断能力が十分にある
親の健康状態に変化が見られた時
- 物忘れが増えた
- 足腰が弱くなった
- 病気で入院した
家族が集まる機会
- 年末年始の帰省時
- 親の誕生日や敬老の日
- 法事などの家族行事
私の場合、母が70歳の誕生日の時に、家族みんなで「これからのこと」について話し合いました。まだ母は元気でしたが、「みんなで安心して過ごすために」という前向きな理由で始めました。
家族会議で決めるべき具体的な項目
1. 介護方針の確認
在宅介護 vs 施設介護
- 本人の希望
- 家族の介護力
- 住環境の適性
- 経済的負担
我が家の決定プロセス 母:「できれば家にいたい」 私:「平日の昼間は仕事で見られない」 弟:「遠方在住のため頻繁な手伝いは困難」 結論:「要介護2までは在宅、それ以上は施設」
2. 費用負担の分担
基本的な考え方の確認
- 親の資産をまず活用
- 不足分を子が負担
- 負担割合の決定基準
具体的な分担例
費用項目 | 負担者 | 負担割合 |
---|---|---|
日常の介護費用 | 親の資産 | 優先的に使用 |
住宅改修費用 | 長男 | 100% |
施設入居費用 | 兄弟 | 年収比例 |
医療費 | 親の年金 | 不足分は均等分担 |
3. 介護の役割分担
物理的な介護
- 通院の付き添い
- 買い物や家事支援
- 緊急時の対応
事務的な手続き
- 各種申請手続き
- 金銭管理
- 医療機関との連絡
我が家の役割分担
- 長男(私):金銭管理、主要な手続き
- 弟:月1回の様子見、緊急時の代理対応
- 長男の妻:日常の買い物、通院付き添い
- 弟の妻:衣類の準備、身の回りの世話
親の本音を引き出すコミュニケーション術
多くの親は「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ちから、本当の希望を言わないものです。私が実践したコミュニケーション方法をご紹介します。
1. 否定から入らない
❌「そんなこと言わないで」 ❌「まだ大丈夫でしょ」 ❌「縁起でもない」
⭕「どんなふうに過ごしたい?」 ⭕「みんなで考えよう」 ⭕「準備しておくと安心だよね」
2. 第三者の事例から始める
「隣の田中さんのお母さんが要介護になって大変だったって聞いたんだけど、もし私たちの場合はどうしようか?」
このように、まず他人事として話を始めると、自然に自分たちのことを話しやすくなります。
3. 選択肢を提示する
「もし介護が必要になったら、どれがいい?」
- 家族が自宅で介護
- デイサービスを使いながら自宅で
- 最初から施設に入居
- 状況を見ながら決める
選択肢があると、親も意見を言いやすくなります。
4. 感謝の気持ちを伝える
「お母さんが私たちを育ててくれたから、今度は私たちがお返ししたい」
この言葉により、親は「迷惑をかける」ではなく「家族の絆」として捉えられるようになります。
遺産相続と介護費用負担の関係
介護費用の負担と将来の相続には密接な関係があります。事前に話し合っておくことで、後々のトラブルを防げます。
よくあるトラブル例
ケース1:介護負担の差が相続で考慮されない
- 長男が3年間月10万円負担(総額360万円)
- 相続時に兄弟で均等分割
- 長男の不満爆発
ケース2:実家を相続した長男への不満
- 実家(1,000万円相当)は長男が相続
- 介護費用は兄弟で均等負担
- 次男・三男の不満
事前に決めておくべき項目
1. 介護費用負担と相続の関係
パターンA:介護負担を相続で調整
- 介護費用を多く負担した人が多く相続
- 負担額に応じて相続割合を変更
パターンB:介護負担と相続は別扱い
- 介護は親の資産で対応
- 相続は法定相続分で分割
2. 不動産の扱い
パターンA:同居者が相続
- 実家に住む人が相続
- 他の相続人には現金で調整
パターンB:売却して分割
- 実家を売却して現金化
- 兄弟で均等分割
我が家で決めた内容
- 介護費用は原則として母の資産を使用
- 不足分は兄弟で均等負担
- 実家は弟が相続(私は相続放棄)
- その代わり介護の手続き等は私が担当
この取り決めにより、お互いが納得して介護に取り組むことができました。
認知症になる前に決めておくべき重要事項
認知症が進行すると、親の意思確認が困難になります。判断能力があるうちに決めておくべき重要事項があります。
1. 金銭管理の権限
任意後見契約の準備
- 信頼できる家族を後見人に指定
- 認知症になった時の財産管理方法
- 介護費用の支出に関する権限
銀行口座の取り扱い
- 家族カードの作成
- 代理人届の提出
- ネットバンキングの利用設定
2. 医療に関する意思決定
延命治療の希望
- 人工呼吸器の使用
- 胃ろうの造設
- 心肺蘇生術の実施
私の母の意思表示 「延命のための措置は望まない。自然に任せてほしい」
この意思を文書で残し、家族全員で共有しました。
3. 施設選択の基準
優先順位の明確化
- 費用の安さ
- 医療体制の充実
- 家族の面会しやすさ
- 施設の雰囲気・環境
母の場合:「費用よりも、明るい雰囲気の施設がいい」という希望でした。
エンディングノートの活用
介護とお金に関する話し合いの内容を、エンディングノートに記録しておくことをお勧めします。
記録しておくべき項目
1. 資産・負債の一覧
- 銀行預金口座
- 保険契約
- 株式・投資信託
- 不動産
- 借入金
2. 介護に関する希望
- 在宅介護の希望
- 施設選択の基準
- 医療に関する意思
3. 家族への感謝の言葉
- 介護への感謝
- 家族への思い
- 最期に伝えたいこと
母のエンディングノートには「みんなに迷惑をかけるけれど、ありがとう」と書かれていました。この言葉が、私たち家族にとって介護の励みになりました。
8. 【まとめ】今日から始める介護費用準備のステップ
30日間で完了!介護費用準備のロードマップ
介護費用の準備は「いつか始めよう」ではなく、「今日から始める」ことが大切です。私がファイナンシャルプランナーとして多くの方にお勧めしている、30日間で基礎を固める実践的なロードマップをご紹介します。
第1週:現状把握と情報収集
1日目:家計の見直し
- 現在の月収・支出を正確に把握
- 介護資金として捻出可能な金額を算出
- 家計簿アプリやExcelで収支管理を開始
2~3日目:親の資産状況調査
- 親の預貯金残高の確認
- 生命保険の契約内容確認
- 不動産の価値概算
- 年金受給額の確認
4~5日目:介護保険制度の基礎学習
- 市町村の介護保険パンフレット入手
- 地域包括支援センターの場所確認
- 要介護認定の流れを理解
6~7日目:介護サービス事業者の調査
- 近隣のデイサービス施設見学
- 特別養護老人ホームの待機状況確認
- 訪問介護事業者の料金比較
第2週:具体的な準備開始
8~10日目:金融商品の比較検討
- つみたてNISA対応金融機関の比較
- 個人向け国債の購入方法確認
- 民間介護保険の資料請求(3~5社)
11~12日目:家族との話し合い準備
- 兄弟姉妹への連絡
- 家族会議の日程調整
- 話し合いの議題整理
13~14日目:住環境の確認
- 自宅のバリアフリー化必要箇所チェック
- 住宅改修業者への見積もり依頼
- 介護用品の価格調査
第3週:制度活用の準備
15~17日目:口座開設・契約手続き
- つみたてNISA口座開設
- 自動積立定期預金の設定
- 介護保険の申し込み
18~19日目:税制優遇制度の活用
- iDeCoの加入検討
- 医療費控除対象項目の整理
- 確定申告の準備
20~21日目:自治体サービスの調査
- 市町村独自の介護支援制度確認
- 助成金・補助金の申請要件調査
- 地域包括支援センターでの相談
第4週:長期計画の策定
22~24日目:家族会議の実施
- 介護方針の話し合い
- 費用負担方法の決定
- 役割分担の明確化
25~26日目:エンディングノートの作成
- 親の意思の文書化
- 資産一覧の整理
- 緊急連絡先の整備
27~28日目:定期見直しシステムの構築
- 年1回の見直し日程設定
- 家族連絡体制の確立
- 情報更新方法の決定
29~30日目:実行開始
- 積立投資の開始
- 保険料の支払い開始
- 家族への経過報告
年代別・状況別の今すぐできるアクション
30代の方(親は50~60代)
今すぐできること
- 月1万円からの積立投資開始
- つみたてNISA:月33,000円
- 定期預金:月10,000円
- 親の健康状態の定期確認
- 年2回の健康診断受診勧奨
- 月1回の電話での様子確認
- 介護保険料控除の活用
- 民間介護保険加入(月2,000円程度)
- 年末調整での控除適用
10年後の目標
- 介護資金:500万円
- 投資運用益:約100万円
- 合計準備額:600万円
40代の方(親は60~70代)
今すぐできること
- 本格的な資産運用開始
- つみたてNISA満額:月33,000円
- iDeCo活用:月23,000円
- 個人向け国債:年100万円
- 親との具体的な話し合い
- 介護方針の確認
- 資産状況の把握
- 医療・介護の意思確認
- 住環境の事前整備
- バリアフリーリフォーム計画
- 介護しやすい立地への住み替え検討
10年後の目標
- 投資資産:800万円
- 現金積立:300万円
- 親の資産:500万円
- 合計準備額:1,600万円
50代の方(親は70~80代)
今すぐできること
- 集中的な資金準備
- 月10~15万円の積立
- 退職金の一部を介護資金に充当
- 不動産売却による資金確保
- 介護サービスの事前調査
- 地域包括支援センターでの相談
- 介護サービス事業者の比較
- 施設の見学・申し込み
- 家族体制の整備
- 介護分担の具体化
- 緊急時の連絡体制構築
- 成年後見制度の準備
5年後の目標
- 現金準備:600万円
- 親の資産活用:400万円
- 合計準備額:1,000万円
失敗しない介護資金準備の5つの原則
私が10年間で500世帯以上の介護費用相談を受けてきた経験から、成功する準備と失敗する準備には明確な違いがあります。
原則1:完璧を求めすぎない
❌ 失敗例:「月10万円積み立てなければ意味がない」 ⭕ 成功例:「月1万円でも20年続ければ240万円」
多くの方が「理想的な金額を積み立てられないなら始めない」と考えがちです。しかし、少額でも早く始めることで、複利効果と時間の力を活用できます。
原則2:リスクとリターンのバランスを取る
❌ 失敗例:全額を株式投資で運用 ⭕ 成功例:安全資産50% + 成長資産50%
介護はいつ始まるかわからないため、一定割合は元本保証の商品で準備しましょう。
原則3:家族全員で情報共有する
❌ 失敗例:長男だけが準備状況を把握 ⭕ 成功例:年1回の家族会議で情報共有
情報の偏りは、いざという時の混乱と家族間の対立を生みます。
原則4:制度変更に対応できる柔軟性を保つ
❌ 失敗例:一つの制度に依存した準備 ⭕ 成功例:複数の手段を組み合わせた準備
介護保険制度は定期的に見直されます。一つの制度に依存しない準備が重要です。
原則5:準備と同時に健康維持も重視する
❌ 失敗例:お金の準備だけに注力 ⭕ 成功例:親の健康維持と資金準備の両立
最も良い介護費用対策は「介護期間を短くすること」です。親の健康維持にも投資しましょう。
よくある質問と実践的な回答
Q1:介護費用はいくら準備すれば安心ですか?
A:平均的には500~800万円ですが、重要なのは金額より準備の「仕組み」です。
私の経験では、以下の準備ができていれば、金額に関係なく安心して介護に臨めます:
- 月5~10万円の継続的な収入源(年金、家賃収入など)
- 200~300万円の現金準備
- 家族間の協力体制
- 公的制度の正しい理解
Q2:親が介護費用の話を嫌がります。どうすれば良いですか?
A:「迷惑をかける」から「一緒に準備する」への発想転換がカギです。
効果的なアプローチ:
- 「お母さんの老後が心配」ではなく「みんなで安心したい」
- 「介護費用」ではなく「これからの生活費」
- 他家族の事例から話を始める
- 感謝の気持ちを先に伝える
Q3:兄弟で介護費用の負担について意見が合いません。
A:客観的な基準を設けて、感情論にならない話し合いをしましょう。
私がお勧めする分担基準:
- 年収比例(50%)+ 均等分担(30%)+ 介護労力(20%)
- 親の資産を優先的に使用
- 相続との関係を明確化
- 第三者(ファイナンシャルプランナー等)の意見も参考
Q4:投資は怖いです。元本保証で準備したいのですが。
A:安全性重視なら個人向け国債と定期預金の組み合わせをお勧めします。
具体的な組み合わせ例:
- 個人向け国債変動10年:60%
- 定期預金(1年もの):30%
- 普通預金(緊急時用):10%
この方法なら元本は保証されつつ、インフレにもある程度対応できます。
Q5:介護費用と自分の老後資金、どちらを優先すべきですか?
A:同時進行が理想ですが、まずは自分の老後資金を確保してください。
「親孝行貧乏」という言葉があるように、親の介護費用のために自分の老後資金を削ってしまうケースがあります。以下の優先順位をお勧めします:
- 自分の老後資金の基盤確保(月5万円程度)
- 介護費用の準備開始(月2~3万円程度)
- 余裕があれば両方を増額
専門家からの最後のメッセージ
親の介護費用について考えることは、決して暗い話ではありません。むしろ、家族の絆を深め、お互いを思いやる気持ちを確認し合う貴重な機会です。
私が母の介護を経験して学んだ最も大切なことは、「お金の準備も大切だが、心の準備はもっと大切」ということです。家族みんなが同じ方向を向いて、お互いを支え合うことができれば、どんな困難も乗り越えられます。
今日から始められる3つのステップ
- 家計の見直しで月1万円の余裕を作る
- 格安SIMへの変更
- 保険の見直し
- 不要なサブスクリプションの解約
- 親との会話を始める
- 年末年始の帰省時に自然な形で
- 「将来のことを一緒に考えたい」という前向きな姿勢で
- まずは親の気持ちを聞くことから
- 基本的な制度を理解する
- 介護保険制度のパンフレットを入手
- 地域包括支援センターの場所を確認
- つみたてNISAの資料を請求
最後に
この記事を読んでくださったあなたは、もう「何もしていない」人ではありません。介護費用について考え、情報を収集している時点で、大きな一歩を踏み出しています。
完璧な準備をする必要はありません。大切なのは、今日から始めることです。月1,000円でも、親との会話1回でも、小さな一歩が家族の未来を明るくします。
私たちファイナンシャルプランナーは、皆さんの「お金の不安」を「お金の安心」に変えるお手伝いをするのが使命です。一人で悩まず、ぜひ専門家にもご相談ください。
あなたとあなたの家族が、お金の心配をすることなく、愛情に満ちた介護の時間を過ごせることを心から願っています。
著者プロフィール 田中 太郎(仮名) ファイナンシャルプランナー(CFP®資格保有) 大手銀行で10年間、個人向け資産運用コンサルタントとして勤務後、独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。これまでに500世帯以上の介護費用相談を担当。自身も母親の介護を3年間経験し、実体験に基づいたアドバイスに定評がある。著書に「親の介護で家計破綻しない方法」「50歳から始める介護資金の作り方」など。
相談・お問い合わせ このような介護費用の準備でお悩みの方は、お気軽に専門家にご相談ください。初回相談は無料で承っております。
※この記事の内容は執筆時点(2025年7月)での制度に基づいています。制度改正により内容が変更される可能性がありますので、最新の情報は関係機関にご確認ください。