エグゼクティブサマリー {#executive-summary}
投資判断:強気
インテグループ株式会社(東証グロース:192A)は、M&A仲介業界において独自のポジショニングを確立している企業です。2025年5月期は一時的な業績低迷を見せたものの、2026年5月期の回復軌道への転換点として注目すべき決算内容となっています。
注目ポイント
- 小型案件×直接提案型という業界唯一のポジショニング
- 完全成功報酬制で顧客負担を軽減
- 2026年5月期は売上高+10%、成約組数+30%の回復予想
- 配当性向を段階的に80%まで引き上げる株主還元方針
2025年5月期業績分析 {#fy2025-performance}
業績サマリー
項目2025年5月期実績前年同期前年比売上高1,892百万円2,197百万円▲14%経常利益486百万円983百万円▲51%当期純利益311百万円672百万円▲54%成約組数43組53組▲19%1組当たり売上高44百万円41百万円+6%
業績低迷の背景と構造的要因
2025年5月期の業績低迷は、M&A市場環境の変化による一時的な影響として捉えるべきです。
主要な低迷要因:
- 市場環境の変化:売却案件の供給量増加により、買い手側が案件を慎重に検討・選別する姿勢を強化
- 検討期間の長期化:大型案件を含む複数案件で検討期間が延長し、期中成約に至らず
- 成約率の一時的低下:上記要因により成約組数が43組(前期比19%減)に減少
ポジティブな側面:
- 1組当たり売上高の向上:44百万円(前期比6%増)と単価上昇を実現
- 中大型案件の成約増加:200百万円超の大型案件が複数組成約
- 進捗案件残数の増加:118件(前期末比+33%)で将来の成約パイプライン拡充
売上総利益率の正常化
売上総利益率は55%(前期65%)に低下しましたが、これは正常化の過程として評価できます。
要因分析:
- 前期はインセンティブ率の低い非ソーシング大型案件の成約により標準値から上振れ
- 2025年5月期はインセンティブ率の高いソーシング案件比率が上昇し、標準的な水準に回帰
- コンサルタントの成果連動報酬増加は、質の高い案件獲得力の証明
2026年5月期業績予想と成長戦略 {#fy2026-forecast}
業績回復のシナリオ
項目2026年5月期予想2025年5月期実績前年比売上高2,088百万円1,892百万円+10%経常利益497百万円486百万円+2%成約組数56組43組+30%1組当たり売上高37百万円44百万円▲15%平均コンサル数47.0人38.0人+24%
成長を支える3つの改善策
1. 買い手情報リサーチチームの本格稼働
2025年2月より「買い手情報リサーチチーム」を設置し、新規買い手の開拓を強化。これにより強い買収ニーズを持つ買い手候補を拡充し、成約率の改善を図ります。
2. 組織体制の最適化
2025年6月より、トップコンサルタント8名を部長とした部制組織に移行。各部メンバーに対する緊密な指導・営業支援体制により、質の高い売却案件の受託体制を構築しています。
3. 同業他社との連携強化
FA(Financial Advisor)での取り組みを推進し、成約組数の積み増しを図ります。ただし、FA案件は1組当たり売上高が低下する要因となるため、バランスの取れた案件ポートフォリオの構築が重要です。
経営指標の分解分析
売上高の構成要素を分解すると: 売上高 = 1組当たり売上高 × 1人当たり成約組数 × 平均コンサル数
2026年5月期予想では:
- 平均コンサル数:47.0人(+24%)で規模拡大
- 1人当たり成約組数:1.2組(+5%)で生産性向上
- 1組当たり売上高:37百万円(▲15%)はFA案件増加による戦略的調整
この構造から、量的拡大と質的改善のバランスを重視した成長戦略が読み取れます。
競合分析と差別化要因 {#competitive-analysis}
業界内での独自ポジショニング
インテグループは、M&A仲介業界において**「小型案件×直接提案型」**という独自のポジショニングを確立しています。
営業スタイル別分類
- 直接提案型:自社での直接提案営業が中心
- 紹介型:提携先からの紹介営業が中心
- 中間型:紹介営業と直接提案営業の折衷型
案件規模別分類
- 大型案件:平均売上単価100百万円以上
- 中型案件:平均売上単価50-100百万円
- 小型案件:平均売上単価50百万円未満
競合他社との業績比較
会社コンサル1人当たり売上高成約1組当たり売上高コンサル1人当たり成約組数上場B社101百万円85百万円1.2組上場C社69百万円72百万円1.0組上場A社66百万円77百万円0.9組当社50百万円44百万円1.1組上場E社43百万円52百万円0.8組
当社は小型案件に特化しているため1組当たり売上高は相対的に低いものの、1人当たり成約組数では上位水準を維持しており、効率的な営業体制を構築していることがわかります。
完全成功報酬制による差別化
料金体系の比較
項目当社他社①他社②着手金不要要不要中間金不要要要最低成功報酬1,500万円2,000万円2,500万円計算基準売買金額移動総資産額売買金額
顧客負担率の具体例(譲渡金額2億円の場合):
- 当社:7.5%
- 他社①:10%
- 他社②:12.5%
この料金体系により、小規模案件セグメントにおける顧客の手数料負担率を大幅に軽減し、案件獲得の競争優位性を確保しています。
配当政策と株主還元 {#dividend-policy}
段階的配当性向引き上げ戦略
インテグループは、M&A仲介事業の特性を活かした積極的な株主還元方針を打ち出しています。
配当方針の変遷
期間配当性向1株当たり配当金1株当たり利益2025年5月期30%45円(初配)148.55円2026年5月期予想40%65円161.41円長期目標80%--
配当方針の合理性
M&A仲介事業の特性:
- 業績の期間変動が大きい:案件の成約タイミングにより四半期業績が大きく変動
- 多額の投資を必要としない:設備投資や在庫投資が少なく、フリーキャッシュフローが潤沢
- 人的資本が主要な経営資源:物的投資よりも人材への投資が重要
これらの特性から、各期の業績に応じた配当性向による還元が最適であり、配当の絶対額維持よりも配当性向の段階的引き上げが株主価値最大化に資すると判断されます。
TSR(Total Shareholder Return)最大化戦略
長期的な配当性向80%目標は、以下の考え方に基づいています:
- 成長投資の効率性:M&A仲介業は人材投資が中心で、過度な資金蓄積は効率的でない
- 株主還元の即効性:配当による直接的な株主還元でTSRを向上
- 財務柔軟性の維持:業績変動に応じた配当調整により財務健全性を確保
投資判断とリスク要因 {#investment-decision}
投資魅力度の評価
強みとポジティブ要因
- 独自の市場ポジション
- 小型案件×直接提案型での競合優位性
- 完全成功報酬制による顧客訴求力
- 97%を占める小規模案件セグメントでの成長余地
- 収益性の回復軌道
- 2026年5月期の成約組数+30%増による業績回復
- 進捗案件残数118件(+33%)による将来パイプライン拡充
- 組織改革による営業効率化
- 株主還元の充実
- 配当性向の段階的引き上げ(30%→40%→80%)
- フリーキャッシュフロー創出力の高いビジネスモデル
リスク要因と留意点
- 市場環境リスク
- M&A市場の景気感応度の高さ
- 金利上昇局面での買い手の投資姿勢変化
- 経済不況時の案件減少リスク
- 競争激化リスク
- 新規参入者の増加による競争激化
- 大手仲介会社の小型案件参入
- 手数料競争の激化
- 組織・人材リスク
- 優秀なコンサルタントの獲得・定着
- 組織拡大に伴う管理体制の整備
- 創業者への依存度
投資推奨レーティング:強気
投資判断の根拠
- バリュエーション面での魅力
- 一時的な業績低迷による株価調整局面
- 2026年5月期回復シナリオでのアップサイド期待
- 高配当利回りによるインカムゲイン確保
- 中長期成長ストーリー
- 事業承継ニーズの構造的拡大
- 小規模M&A市場の潜在的成長余地
- デジタル化による営業効率向上余地
- 財務健全性
- 自己資本比率89%の強固な財務基盤
- 有利子負債ゼロの健全な資本構成
- 安定したキャッシュフロー創出力
目標株価とシナリオ分析
ベースケースシナリオ(確率60%):
- 2026年5月期業績予想の達成
- PER15-18倍での評価
- 目標株価:2,400-2,900円
アップサイドシナリオ(確率25%):
- 市場環境回復による予想上振れ
- 組織改革効果の早期実現
- 目標株価:3,200-3,600円
ダウンサイドシナリオ(確率15%):
- M&A市場の長期低迷
- 競争激化による収益性悪化
- 目標株価:1,800-2,200円
まとめ
インテグループは、M&A仲介業界において独自性の高いポジショニングを確立し、2025年5月期の一時的な業績低迷を経て2026年5月期の回復軌道への転換点にあります。完全成功報酬制による差別化、小型案件セグメントでの競争優位性、そして積極的な株主還元方針を評価し、中長期的な投資魅力度は高いと判断します。
ただし、M&A市場の景気感応度の高さや競争激化リスクには十分な注意が必要であり、四半期ごとの業績動向と市場環境の変化を継続的にモニタリングすることが重要です。
本分析は2025年6月30日時点の決算説明資料に基づいて作成されており、投資判断は自己責任でお願いいたします。