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日本オラクル FY25 決算 “読み解き”レポート

―― 数字の背後にあるストーリーと投資インプリケーションを専門家視点で掘り下げる ――

ご注意
本記事は公開資料に基づく独自分析です。株式の売買は必ずご自身の判断で行ってください。


目次

1. 決算ハイライト ── 数字の「意味」を読む

指標FY24FY25YoY専門家の視点
売上高2,445 億円2,635 億円+7.8%3 期連続の過去最高。特定の大型案件ではなく、クラウドのリカーリング売上が 7 割を牽引している点が質的に評価できる。
営業利益798 億円868 億円+8.8%営業利益率 33.0% を 3 年維持。割高と言われるロイヤルティ料を抱えながらも、高粗利の SaaS 比率が増えたことで“損益分岐点が下がる”構造に転換しつつある。
EPS434.09 円473.91 円+9.2%特別配当終了で配当総額は縮小したが、EPS は 純粋な事業成長で押し上げた。外部資金に頼らない点がキャッシュリッチ企業としての信頼度を高める。
営業CF803 億円666 億円▲17.1%減少は法人税増と売上債権増による一過性。CF 変換率 77% と依然高水準で、FCF ≒ 営業CF という“現金製造機”モデルは維持。

✅ ここがポイント

  • “売上も利益も最高値”はありがちだが、クラウド収益化フェーズで利益率を維持している企業は意外と少ない。
  • ロイヤルティ 1,003 億円(売上比 38.1%)は為替次第でブレるリスク。ただし FY25 は円安局面でも率が横ばい=価格交渉力が働いた可能性

2. セグメント別レビュー ── “数字+洞察”の二段構え

セグメントFY25売上YoY専門家の解釈
クラウドサービス619 億円+28.4%Q3 +42.5% → Q4 +33.8% と減速感が小さい(補足資料 p.2)。利用量課金(OCI)と SaaS サブスクの掛け算が奏功し、単価下落を数量で吸収している。
ライセンスサポート1,124 億円+2.7%オンプレ DB の“保守サブスク化”で高い更新率を維持。足腰=キャッシュ源泉としての役割は今後も大きい。
クラウド&オンプレライセンス486 億円+2.8%X11M 移行期で大型案件が減るなか微増を確保。今後は Alloy(OEMクラウド)を通じた再販モデルでテコ入れ余地。
ハードウェア156 億円▲7.7%Exadata X11M 発売前の買い控え。ハード売上の縮小は クラウド IaaS への移行進捗を意味し、むしろポジティブ。
サービス249 億円+10.3%生成 AI・OCI リフトのコンサル需要が増加。粗利率 23.5% へ上昇し“人月商売”からIP 商売への転換が見え始めた。

3. クラウド × 生成 AI ── 成長の「質」を深掘り

  1. OCI Supercluster(GPU)
    • H100/H200 を採用し、国内クラウド大手比 最大 40–50% コスト優位を掲げる。
    • 生成 AI の推論フェーズだけでなく“学習フェーズを国内で完結”できる点が製造・公共に刺さる。
  2. ガバメントクラウドの覇権競争
    • ISMAP 登録+採択済みは AWS・GCP・OCI の 3 社のみ。Oracle は データベース層の独占的強みを持ち、今後の地方自治体標準化で “陣取りゲーム” の鍵を握る。
  3. Oracle Alloy(ソブリンクラウド)
    • パートナー企業が自社ブランドで OCI を再販できる OEM ビジネス。運用主権を譲る大胆なモデルで、通信キャリアや金融 SIer が参入検討。

投資示唆:これら 3 ドライバーは “相互に補完” するため、1 つ当たれば他も弾みがつく“ドミノ型成長”を描く。


4. コスト構造・キャッシュフロー ── “筋肉質”度を測る

費目FY25YoY専門家の示唆
ロイヤルティ1,003 億円+11.1%売上比 38.1% で横ばい。円高 10% で営業利益▲8〜9% の感応度は要監視。ただしドル建て固定費ゆえ、売上伸ばせばレバレッジが効きやすい。
人件費332 億円+3.1%従業員 2,261 名 → 平均人件費 ~1,470 万円。Big Tech 並みの水準で、AI 競争を戦える人材プールを確保。
営業CF 変換率77%▲10pt税負担増を除けば安定。特別配当 864 億円を払いながらもネットキャッシュを確保。再び自社株買いフェーズに移行する余力あり。

5. FY26–27 バリュエーション感度 ── “数字 × センチメント”で株価を読む

シナリオFY26 EPS想定 PER理論株価ロジック
Bull(AI 追い風)535 円30 倍16,000 円台GPU・政府案件が早期顕在化し、クラウド成長 +25% が続くケース。
Base(会社計画上限)505 円25 倍12,600 円売上 +8%、利益率維持。現状の市場コンセンサスに近い。
Bear(円高・自治体遅延)470 円20 倍9,400 円円高 10% とガバメントクラウドの遅延が重なるストレスシナリオ。

着眼点

  • PER 拡張余地はクラウド ARR のモメンタム次第。 ARR >1,300 億円(FY25 推定)に乗せられるかが分水嶺。
  • 円高・政策遅延によるボトムケースでも 営業利益率 30% 超 を維持できる点はディフェンシブ銘柄としての魅力。

6. 投資リスク & モニタリングリスト

リスク見極めポイント今後の観測イベント
為替USD/JPY 120 円割れ時の EPS 感応度月次 IR レポートのロイヤルティ開示
規制政権交代・ガバメントクラウド予算2026 年度政府予算案(2025/12 公表)
競争AWS Bedrock, Azure OpenAI の追撃生成 AI ベンチマークの公開タイミング
親子関係Oracle US のロイヤルティ契約変更本社決算説明会でのライセンスポリシー文言

7. まとめ ── “トリム済みロケット”は燃料充填フェーズ

  • オンプレ保守 × クラウド成長 の両利きで 利益率 33% 台を死守
  • FY25 は特別配当でいったん体力を削ったが、営業 CF 6,600 億円・現金 666 億円 と再び余力を積み増し。
  • 生成 AI・ガバメントクラウド・Alloy が 三位一体で市場を押し広げる“複合レバレッジ” を持つ稀有な銘柄。

次の注目ポイント

  1. 2025/11 発表予定の 1Q 決算でクラウド YoY +25% を維持できるか
  2. Oracle Alloy の国内初パートナー/商用ローンチ時期
  3. 政府・自治体向け大口案件の契約発表(特に SaaS 領域)
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