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【2026年2月期1Q】YE DIGITAL決算を深堀り解説|ERP×IoT二刀流企業の真価と投資判断

2026年2月期第1四半期のYE DIGITAL(東証スタンダード:2354)は、売上こそ微減(▲2.8%)ながら、最終利益で過去最高を更新する力強いスタートを切りました。注目すべきは、稼ぎ頭であるERP・ビジネスDX事業が着実に成長を続ける一方、IoTソリューションは一時的な“谷間”を迎えている点です。

生成AIを活用した開発効率化、物流・畜産DXといった社会課題対応型サービス、さらに潤沢なキャッシュを背景とした株主還元姿勢など、小粒ながらも含みの多い中堅IT銘柄として注目度が高まっています。

本稿では、決算数値の羅列にとどまらず、専門家視点で事業構造・収益力・中期計画の実現可能性までを徹底解説。企業の本質に迫り、投資判断に資する深いインサイトを提供します。

目次

1. 決算ハイライト & 専門家の着眼点

指標2026/2期1Q前年比会社計画進捗
売上高49.2億円▲2.8%24.6%
営業利益3.15億円▲3.2%19.8%
経常利益3.53億円+9.9%20.8%
最終利益2.18億円+14.1%19.0%

専門家の視点

  • 減収・減益見出しは表面的。営業利益は微減だが、営業外利益に補助金収入0.24億円と持分法益0.15億円が乗ったことで、経常・最終は過去最高。粗利率も改善しており、収益の“質”はむしろ強化されたと見るべきです。
  • 会社計画に対する進捗は例年低めに出る1Qとして妥当。下期偏重型の同社で20%台なら「オン・トラック」と判断できます。

2. ビジネスソリューション部門をどう評価するか

数値の裏側

サブセグメント売上前年比
ERP/ビジネスDX28.1億円+4.9%
移動体通信・自動車向け等13.1億円▲4.3%

専門家の視点

  • ERPの伸長は“プライム案件化+横展開”の成果。自社主導で要件定義から保守まで握るため、粗利率が高位で安定。ページ8の円グラフでもERPが売上の68%を占めることが確認できます。
  • 反対に移動体通信向けは更改一巡で踊り場。ただし5G関連の次期投資サイクルが2027年前後に再点火する可能性があり、減速=撤退サインではないと見ています。
  • 所感:ERP事業が“守りのキャッシュカウ”として機能し、研究開発・M&A原資を賄う構造が鮮明。

3. IoTソリューション部門の“谷間”はチャンスかリスクか

サブセグメント売上前年比コメント
物流DX3.51億円▲20.0%前期受注減による期ズレ
文教DX1.64億円+20.9%デジタル教科書などGIGA2.0需要
畜産DX/スマートシティ他2.80億円▲35.9%補助金タイミング待ち

専門家の視点

  • 物流DXの落ち込みは痛いが、ページ10のウォーターフォールを見ると営業利益▲1.18億円の下押しで済んでおり、固定費過多ではない
  • 引き合い自体は前年超え(会社説明会コメント)で、2Hのリバウンド余地が大きい。ここは株価ドライバーになり得るため、受注残高の四半期推移に注目です。
  • 畜産DXは初期ロット1,000台導入後の“谷”。IoT事業特有の季節変動であり、製品設計の標準化が進めば粗利率改善とボラティリティ低下が見込める

4. 収益性とキャッシュフローの質を検証

指標FY25 1QFY26 1Q
粗利率26.9%27.9%
販管費率20.5%21.5%
営業利益率6.4%6.4%

専門家の視点

  • 粗利率+1ptは生成AI活用による開発工数削減が効いている証左。会社はGitHub Copilot類似ツールを導入済み(説明会質疑より)。人月商売から“付加価値商売”へのシフトが見えます。
  • 賃上げで販管費率が0.9pt悪化も、利益率を横ばいで維持。インフレ環境下でこれは評価ポイント。
  • 無借金でネットキャッシュ36億円。EBITDAの約2年分を余剰現金で持つ安全運転は、中小ITでは希少。

5. 株主還元戦略の実効性

施策進捗評価
年間配当20円予定(利回り2.6%前後)安定配当方針を堅持
自社株買い42万株・2.61億円消化(84%進捗)発行済の2.3%を消却見込み

専門家の視点

  • 総還元性向70%超はTSEスタンダード市場のIT企業としてトップクラス。資金余力を勘案すると、枠消化後の追加還元発表がサプライズになる可能性も。
  • 1株益64.06円に対し年間配当20円=配当性向約31%。自社株買い込みで“配当+α”のトータルリターンを構築している。配当を積み上げるよりキャピタルゲイン志向の経営姿勢が伺えます。

6. 中期経営計画の進捗—バリュエーションを織り込む視座

KPI2024実績2027目標今期ガイダンス進捗率
売上高199億円250億円200億円40%
営業利益14億円30億円16億円53%
ROE16.5%25%13%*

*季節要因を考慮すれば通期15%前後と推測。

専門家の視点

  • 目標はストレッチだが、営業利益53%進捗は“ボトムライン重視”が透ける。IoTの立て直しがカギ。
  • 生成AI・R&D投資による“付加価値経営”を掲げる以上、営業利益率10%(中計最終年度目標)へ向けた粗利率伸長策の具体化が必要。
  • 想定PERレンジ(14〜18倍)に対し足下12倍はIoT不振を織り込んだ値付け。物流DXの受注回復確認がトリガーになればリレーティング余地あり。

7. 投資家が押さえるべきリスク & カタリスト

ポジティブカタリストダウンサイドリスク
● 物流DXの受注回復→通期上方修正▲ IoT案件の期ズレ長期化
● 追加の自社株買い or 特別配当▲ 人件費インフレと採用難によるコスト圧力
● 生成AIによる開発効率化の定量効果▲ 標準化失敗による粗利率の伸び悩み

8. まとめと次のチェックポイント

  • ERP/DX事業が稼ぎ頭でIoTはオプション価値というポートフォリオ。中期ではIoTの反転がバリュエーション拡大の鍵。
  • 今後注視すべきは①物流DX受注残の四半期推移、②生成AI導入効果の可視化、③還元方針のアップデート。いずれも株価ドライバーになり得ます。
  • 専門家の結論:株価12倍PER=“守り”のERP価値。IoT反転が顕在化すれば*15倍(株価≒960円)*近辺のリレーティングポテンシャル。逆にIoTが失速継続なら下値メドはPBR1.3倍前後(≈620円)。リスク/リターンをどう評価するかが投資家の腕の見せ所です。

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