目次
✅ 本記事で得られる示唆
- **数値の背後にある“経営の意図”**を専門家視点で解説
- 既存店客数減少が意味するリスクとチャンス
- 海外再編のシナリオと株価プレミアムの持続条件
- 短期(6 か月)で注目すべきIRイベント
- 投資家の行動指針(バリュエーション&カタリスト)
ご注意:本記事は公開情報に基づく筆者の私見です。投資判断は必ずご自身の責任でお願いします。
目次
- 壱番屋ビジネスモデルを30秒で復習
- 1Q決算ハイライトと専門家の視点
- KPI深堀り:客単価・客数の乖離をどう見るか
- セグメント別トレンドと経営の打ち手
- ガイダンス据え置きの真意――“バッファ”の中身
- 株価プレミアムの源泉を分解する
- 6 か月以内のIRフック&リスクチェック
- まとめ:投資ストーリーとエントリーポイント
- 免責事項
1. 壱番屋ビジネスモデルを30秒で復習
- FC比率約90%——本部はロイヤルティ+食材卸で高い固定費吸収力を持つ。
- 多業態化——大黒屋(ジンギスカン)・麺屋たけ井などを買収し成長エンジンを多層化。
- ネットキャッシュ138億円——M&A余力を維持しつつ配当性向80%をコミット。
→ FC主体ゆえ “薄く広く” 儲けるモデル。出店加速期よりも 客単価改善とLTV最大化 が現局面のテーマ。
2. 1Q決算ハイライトと専門家の視点
売上高 | 営業利益 | 純利益 | 営業利益率 | |
---|---|---|---|---|
実績 | 157.5億円 | 12.7億円 | 9.2億円 | 8.0% |
前年同期比 | +10.5% | +17.2% | +8.8% | +0.2 pt |
通期計画進捗 | 23.4% | 23.5% | 27.9% | ─ |
考察:
- 数量×値上げ=二段ロケット
- 卸売価格引き上げと子会社拡大で二桁増収。価格転嫁が約7 pt寄与、数量増は約3 pt。
- 原材料高(米・油)は想定より緩和し、粗利率改善が利益を押し上げた。
- 利益進捗>売上進捗——“上方修正余地”を残す
- 純利益進捗27.9%は例年より高水準。期中追加コストが無ければ 2Qでガイダンス上振れ観測。
- ただし下期は新メニュー投下・販促費増を予定。ここをどう吸収するかが次の見どころ。
3. KPI深堀り:客単価・客数の乖離をどう見るか
指標 | YoY | 専門家コメント |
---|---|---|
客単価 | +10.3% | 昨年8月の値上げ+高付加価値メニュー(ホロ肉ドカン)が奏功。「アドオン戦略」で単価を底上げ。 |
客数 | ▲6.1% | 値上げ後デリバリーが鈍化。CM・アイドルコラボで巻き返しを図るも戻り切らず。価格弾力性の上限が見えた可能性。 |
既存店売上 | +3.6% | 客単価が客数減を補完。だが 今後も客数マイナスが続けば“空騒ぎ”に。 |
示唆:
- 2Qの客数動向が株価のトリガー。ここでYoYプラス転換できるかがPER維持の分水嶺。
- Uber Eatsキャンペーンは短期ブーストに留まり、アプリ会員化(CRM)の本格強化が不可欠。
4. セグメント別トレンドと経営の打ち手
4-1. 国内CoCo壱番屋
- 既存店+3.6%/客数▲6.1%——“質重視”へ舵を切った結果、粗利率は+0.2 pt改善。
- 純増4店だが直営⇒FC譲渡2店で固定費は増えず。
- 考察:店舗増よりLTV×フランチャイズ収益を優先する戦略。
4-2. 海外CoCo壱番屋
地域 | 既存店YoY | 考察 |
---|---|---|
英国 | +11.1% | ロンドン中心部で“JAPANESE CURRY”訴求が成功。円安も追い風。 |
台湾 | ▲6.5% | 物価高+競合激化で“日系プレミアム”が機能不全。 |
中国 | ▲4.5% | 消費低迷+低価格カレー台頭。撤退orブランド再定義が急務。 |
→ グローバル展開は「英語圏&観光地」に選択集中。その象徴がグアム1号店(5月開業)。
4-3. 子会社事業
- 麺屋たけ井+40.4%——CoCo壱オーナーFC化で高速拡大。
- 大黒屋+12.9%——札幌2号店でジンギスカンの“観光需要”を獲得。
- 考察:平均客単価1,500円超の業態を抱えることで**「高単価ポートフォリオ」**が形成されつつある。
5. ガイダンス据え置きの真意――“バッファ”の中身
- 会社計画 売上673億円・純利33億円を維持。
- なぜ上方修正しない?
- 原材料リスク——米価の期中高騰シナリオを温存。
- 海外の不確実性——台湾・中国のフットプリント見直しコストを考慮。
- 結論: 計画は“ディフェンシブ”。よって実績>計画が続く限り、2Q決算での“ポジティブサプライズ”余地は残る。
6. 株価プレミアムの源泉を分解する
指標 | 壱番屋 | すかいらーくHD | やまや |
---|---|---|---|
PER | 44.6倍 | 49.3倍 | 7.4倍 |
ROE | 13.2% | 6.4% | 9.8% |
FC比率 | 89% | 10% | ─ |
考察:
- 高ROE×キャッシュ創出力がプレミアムの源泉。
- だが 客数マイナス継続→ROE低下→PER圧縮 の連鎖が発生し得る。株価620円(PER30倍)が下限シナリオ。
7. 6 か月以内のIRフック&リスクチェック
タイミング | 可能イベント | 株価インパクト |
---|---|---|
8月 | 秋メニュー発表(高付加価値カツ系?) | 客単価維持→プラス |
9月 | 2Q決算発表(上方修正有無) | 数値サプライズで上下 ±5〜10% |
年内 | 台湾・中国戦略方針(撤退or縮小) | 一時的コスト計上でマイナスも、中長期でプラス |
随時 | 新規M&A発表 | 多業態強化でプラス |
年内 | 自社アプリ大規模改修 | LTV改善期待でプラス |
リスク:原材料急騰、客数回復失速、為替(円高)
8. まとめ:投資ストーリーとエントリーポイント
- プレミアム維持の鍵=客数YoYプラス転換
- 英語圏+観光地の海外拡大 が見えればPER50倍(株価1,030円)も視野。
- ROE低下シナリオではPER中心値35倍(株価725円)までの調整リスク。
エントリー妙味が増す条件
- 既存店客数が連続でYoY+に転換
- 海外(台湾・中国)構造改革のコスト見通しが開示
- アプリ会員数(CRM KPI)が四半期+20%ペースで伸長
9. 免責事項
本稿は公開情報に基づく筆者の見解を示したものであり、投資勧誘を意図するものではありません。最終的な投資判断はご自身でお願いいたします。データは作成時点のもので、正確性を保証するものではありません。お問い合わせ・取材依頼はページ下部のフォームからどうぞ。