日本において、労働者が平均的に受け取る手取り給与は、大体25万円とされています。この金額は、一人暮らしから家族を持つまでの幅広い生活シナリオにおいて、どの程度の生活が可能か、多くの人々が疑問に思っています。結婚や子育て、マイホームの購入、さらには老後の安定した生活に向けて、この収入でどう対応できるか、はたまたパートナーの経済的協力が不可欠なのか、といった問いは、非常に重要です。
本稿では、手取り25万円という給与が現実の生活にどのように影響するかを詳細に掘り下げます。具体的には、この給与水準での額面年収や、それに伴う生活水準の具体例を紹介し、読者の皆様が将来の家計計画を立てる際の参考となる情報を提供します。この情報をもとに、経済的な独立やパートナーとの協力、ライフスタイルの調整など、各種の選択肢を検討する機会としていただければ幸いです。
手取り25万円収入の人の実際の給与と年間所得の詳細解説
ここでは、手取り25万円という収入を得るためには、どれくらいの額面給与が必要か、またその年収はどの程度になるのかを具体的に見ていきます。
手取り25万円の場合の額面給与は約32万円
多くの場合、手取り給与は額面給与の約80%となります。家族構成やその他の要因によって異なることもありますが、一般的な計算式としては以下のようになります。
- 手取り給与 ≒ 額面給与 × 80%
この計算に基づくと、手取り25万円の収入を得るためには、およそ32万円の額面給与が必要です。この差額は、税金や社会保険料の控除によるもので、以下のような項目が含まれます。
- 所得税:約10%(累進課税で、所得が330万円未満の場合。令和19年までは復興特別所得税が2.1%上乗せされる)
- 住民税:前年度所得の約10%(地方自治体によって異なる)
- 健康保険料:標準報酬月額の約5%(健康保険組合によって異なる)
- 介護保険料:標準報酬月額の0.82%(2022年3月から、40歳以上の人のみ対象)
- 厚生年金保険料:標準報酬月額の9.15%
- 雇用保険料:給与の約0.5%(2022年10月から。一般事業は0.5%、特定業種は0.6%)
これらの控除により、実際に手元に残る給与は額面から約20%減少します。また、税金が額面の5%という計算に基づいても、所得控除等により実際の課税対象額は更に少なくなります。
手取り25万円の年収は約380万円プラス賞与
月々の手取りが25万円で、額面給与が32万円と仮定すると、年収は賞与がなければ約380万円(=32万円 × 12ヶ月)となります。
賞与がある場合は、この基本の年収に賞与分を加えることで計算できます。
例えば、国税庁の「民間給与実態統計調査結果」によると、2020年の給与所得者の平均年収は433万円(男性532万円、女性293万円)で、その内訳は以下の通りです。
- 給与:平均369万円(男性449万円、女性254万円)
- 賞与:平均65万円(男性83万円、女性39万円)
このデータを踏まえると、毎月の手取りが25万円で、額面給与の約2ヶ月分が賞与として支払われる場合、その年収は給与所得者の平均に近い金額になります。
参考:国税庁「民間給与実態統計調査結果」(以下、同様)
見出し2h:手取り25万円の収入を得ている人々の背景:年齢と業種に焦点を当てて
このセクションでは、実際に手取り25万円の収入を得ている人々がどの年齢層や業種に多く見られるのかを、具体的なデータをもとに探っていきます。
見出し3h:年収約400万円を超える層は30代からが中心
国税庁の調査結果を参考にすると、年齢別で見た場合の平均年収は以下のようになります。ここでは、各年代ごとの平均年収に注目し、それに基づく分析を行います。
年齢 | 平均年収 | 年齢 | 平均年収 |
20歳以上25歳未満 | 260万円 | 45歳以上50歳未満 | 498万円 |
25歳以上30歳未満 | 362万円 | 50歳以上55歳未満 | 514万円 |
30歳以上35歳未満 | 400万円 | 55歳以上60歳未満 | 518万円 |
35歳以上40歳未満 | 437万円 | 60歳以上65歳未満 | 415万円 |
40歳以上45歳未満 | 470万円 | 65歳以上70歳未満 | 332万円 |
このデータから分かるのは、年収約400万円を超える層は、30代に入るとその割合が増える傾向にあるということです。
具体的には、30歳から35歳未満の年代で手取り25万円を超える人が多くなり、35歳から40歳未満の年代では、給与所得者の平均年収とほぼ同様の水準になることが見て取れます。
業種別平均年収は約430万円
業種別での平均年収にも注目してみると、国税庁の調査によると、各業種の平均年収は以下のようになっています。
業種 | 平均年収 | 業種 | 平均年収 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 715万円 | 製造業 | 501万円 |
金融・保険業 | 630万円 | 複合サービス事業 | 452万円 |
情報通信業 | 611万円 | 運輸業・郵便業 | 444万円 |
建設業 | 509万円 | 不動産業・物品賃貸業 | 423万円 |
学術研究,専門・技術サービス、教育,学習支援業 | 503万円 | 全業種平均 | 433万円 |
全体的に見て、全業種の平均年収は約433万円であり、多くの業種で平均年収が400万円を超えていることが分かります。特に、平均年収が400万円台の業種においては、手取り25万円の収入を得る人が比較的多いと予想されます。
これには、「複合サービス事業」「運輸業・郵便業」「不動産業・物品賃貸業」といった業種が含まれると考えられます。これらの業種においては、手取り25万円の収入を得る労働者が一定数存在することが推察されます。
手取り25万円の一人暮らし:快適な生活を目指して
手取り25万円の収入を得ている場合、一人暮らしをする上で十分な余裕を持って生活を送ることができるでしょう。このセクションでは、どのようにその余裕が生まれるのか、生活費の内訳を詳しく見ていきます。
一人暮らしの平均的な生活費の詳細
一人暮らしをしている勤労世帯の平均的な生活費は、約17万円です。この金額には、日々の生活に必要な様々な項目が含まれています。以下は、一人暮らしの平均生活費の内訳を示すものです。
生活費 | 費用 |
食料 | 3万9,884円 |
住居 | 2万9,637円 |
光熱・水道 | 1万0,225円 |
家具等 | 6,151円 |
被服など | 5,932円 |
保健医療 | 6,540円 |
交通・通信 | 2万3,734円 |
教育 | 14円 |
教養娯楽 | 1万9,710円 |
その他 | 2万9,988円 |
合計 | 17万1,816円 |
これらのデータは総務省統計局の「総務省統計局「家計調査 家計収支編 1世帯当たり1か月間の収入と支出(単身世帯)表番号1(2021年)」からのものです。
特に住居費に関しては、持ち家の場合と賃貸の場合で大きく異なる可能性があり、賃貸の場合は家賃が5~6万円以上となることも珍しくありません。このため、家賃によっては生活費が20万円近くになることも考えられます。
手取り25万円の場合の生活の余裕
手取り25万円の収入がある場合、一人暮らしの平均生活費から考えると、毎月5万円以上の余裕が生まれることになります。この余裕を活用して、しっかりとした貯蓄を行い、結婚やマイホームの取得などの将来の計画に備えることが可能です。
また、趣味やレジャー、自己研鑽などに投資することで、より充実した日々を送ることもできます。
どちらの選択をするかは個人によりますが、生活を楽しむことと将来への備えをバランスよく行うことが理想的です。余裕のある生活を送りつつ、一定額を貯蓄に回すことで、将来にわたって安定した生活を送る基盤を築くことができるでしょう。
家族を持つと手取り25万円では経済的に厳しい現実
家族を持つ場合、手取り25万円の収入では経済的に困難な状況になる可能性があります。ここでは、家族がいる場合の生活費とその生活水準について考えてみましょう。
家族構成による生活費の違い
家族を持つ人々(勤労世帯)の生活費は平均して約30万円程度となります。この金額は世帯人数によって異なり、以下にその内訳を示します。
生活費 | 2人 | 3人 | 4人 |
食料 | 6万7,170円 | 7万6,289円 | 8万6,019円 |
住居 | 2万4,273円 | 2万0,291円 | 1万7,432円 |
光熱・水道 | 1万8,476円 | 2万1,344円 | 2万2,773円 |
家具等 | 1万1,829円 | 1万2,455円 | 1万3,347円 |
被服など | 7,955円 | 9,959円 | 1万2,454円 |
保健医療 | 1万3,452円 | 1万3,815円 | 1万2,824円 |
交通・通信 | 4万8,715円 | 4万9,899円 | 4万9,962円 |
教育 | 1,023円 | 1万6,872円 | 3万2,931円 |
教養娯楽 | 2万3,424円 | 2万6,446円 | 3万0,713円 |
その他 | 6万6,492円 | 5万8,361円 | 5万0,546円 |
合計 | 28万2,807円 | 30万5,731円 | 32万8,999円 |
参考:総務省統計局「家計調査 家計収支編 世帯人員別1世帯当たり1か月間の収入と支出(表番号3ー1)(2021年)」
- 2人世帯:食料、住居、光熱水道などを含め約28万2,807円
- 3人世帯:同上で約30万5,731円
- 4人世帯:同上で約32万8,999円
これらのデータは、総務省統計局の「家計調査 家計収支編 世帯人員別1世帯当たり1か月間の収入と支出」からのものです。手取り25万円の場合、平均的な生活を維持するには、少なくとも5万円程度の不足が生じることがわかります。
この不足分を賞与で補うことも一つの手ではありますが、日々の生活費を抑えることが必要です。特に、マイホームの購入や貯蓄の計画にも影響が出る可能性があります。
子どもが増えると経済的なプレッシャーが高まる
家族が増えるにつれて、生活費は増加します。例えば、子どもが2人いて手取り25万円の場合、生活費は約33万円となり、毎月約8万円の赤字になります。
子どもの進学に伴い教育費も増加するため、この赤字を解消するためには、家計の見直しや節約などの対策が必要です。子供が成長するにつれて、生活費はさらに厳しくなる傾向にあります。したがって、長期的な視点で家計を管理し、経済的な安定を目指すことが重要になります。
手取り25万円での結婚生活:共働きが一般的な選択
家庭を持った場合、手取り25万円の収入だけでは生活が厳しい場合が多いですが、パートナーも働く共働き家庭では、より安定した生活を送ることが可能です。ここでは、共働き世帯の現状について解説します。
結婚後の夫婦の共働きが多数派
総務省の最新の調査(2021年度)によると、結婚している夫婦の就労状況は以下のようになっています。
- 夫婦共働き世帯:全体の約67%、平均月収は約68万円
- 夫のみ就労世帯:全体の約33%、平均月収は約55万円
これらのデータから、結婚後の夫婦において共働きが一般的な形態となっていることが明らかです。夫のみ就労の世帯が全体の約三分の一を占める中で、その平均月収が約55万円であることから、妻が専業主婦の家庭では、夫が比較的高収入であることが伺えます。
参考情報として、ここには参考:「総務省統計局「家計調査 家計収支編 世帯人員別1世帯当たり1か月間の収入と支出(表番号3ー11)(2021年)」のデータを基にしています。
共働きによる経済的な余裕
共働き世帯の手取り収入を月収の約8割と仮定すると、月々の収入は約54万円程度になると考えられます。
仮に家庭の生活費が月に30万円だとすると、約20万円以上の余裕が生じる計算になります。これには住宅ローンの支払いなどは含まれていませんが、月に20万円以上の余剰資金があれば、マイホームの購入や子どもの教育費、老後の資金のための貯蓄などを行うことが十分に可能です。
これらのデータを踏まえると、共働き世帯では一定の経済的安定と余裕を見込むことができると言えるでしょう。
まとめ:手取り25万円の場合、結婚後の共働きで家計を支える
勤労世帯の生活費に関する平均値を見ると、一人暮らしの場合は約17万円、家族がいる場合は約30万円となります。手取り25万円の収入がある場合、一人暮らしでは比較的余裕のある生活が可能ですが、家族がいると経済的に厳しい状況になることが考えられます。
収入を大幅に増やすことが難しい状況の中で、結婚後には共働きを検討することが望ましい選択肢となるでしょう。共働きによって家計の安定を図ることは、マイホームの購入、子どもの教育費用、さらには老後の資金準備などにも大きく寄与します。
一人暮らしの場合と比較して、家族がいる状況では、経済的な安定を維持するためには世帯収入を増やすことが重要であり、そのためには共働きが一つの有効な手段となります。このようにして、結婚後の生活において家計のバランスを保ちつつ、将来に向けての資金準備を行うことが肝要です。