1. エグゼクティブ・サマリー(結論ファースト)
投資スタンス: 中立、確信度60%
3行サマリー: 株式会社ROXXは、ノンデスクワーカー向け転職プラットフォーム「Zキャリア」とオンライン完結型リファレンスサービス「back check」を主軸に、2025年9月期第3四半期で前年同期比35.2%の増収を達成し、四半期ベースでは黒字化を達成しました。しかし、通期業績予想は下方修正されており、これは昨年10月に実施した分業化による一時的な生産性低下が主因です。今後は、主力事業である「Zキャリア」への集中投資と、財務基盤の健全化によって、来期以降の持続的な成長と通期での黒字化を目指す姿勢を示しており、事業構造の転換期にあると評価します。
主要カタリストとリスク:
- ポジティブ・カタリスト
Zキャリア
事業の生産性改善が計画を上回り、収益性が大幅に向上する。AI面接官
や履歴書作成ツール
といったプロダクトの改善が、求職者・求人企業双方のエンゲージメントと成約率を劇的に高める。- ノンデスクワーカー領域における採用代行(RPO)の大型受注が継続的に発生し、収益の安定性が増す。
- ネガティブ・リスク
- 分業化による生産性低下が想定よりも長引き、収益改善が遅延する。
back check
事業の譲渡益が一時的であり、今後の成長投資が計画通りに進まない。- 競合他社がノンデスクワーカー向け市場に本格参入し、価格競争や集客単価の上昇を招く。
2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り
株式会社ROXXは、「時代の転換点を創る」をミッションに掲げ、主に2つの事業を展開しています。
- ノンデスクワーカー向け転職プラットフォーム「Zキャリア」:
- この事業は、派遣社員やアルバイト、中卒・高卒者といったノンデスクワーカーを主なターゲットとし、正社員転職を支援するプラットフォームです。
- 収益モデルの数式: 売上 = (紹介成約数)x(成約単価)
- 収益モデルの評価: このモデルの最大の強みは、**「低所得層の所得向上」**という社会課題の解決に直結している点です。これにより、求職者にとって高いモチベーションとなり、集客の原動力となります。また、求人企業側は、労働人口減少に伴う慢性的な人材不足という喫緊の課題を抱えており、特にDXが困難なノンデスク領域での採用ニーズは非常に高いです 。
- 競争優位性:
- ニッチ市場の専門性: 大手人材サービスがターゲットとしない、低年収・非大卒層に特化しており、競合が少ない独占的なポジションを築いています 。
- 完全成果報酬モデル: 求人掲載は無料で、採用が成立した場合のみ費用が発生するため、企業は採用コストのリスクを抑えられます 。
- 垂直統合モデル: 自社エージェントと提携する外部エージェント(パートナー紹介会社)の両方を活用することで、多数の求職者支援を可能にしています 。
- 脆弱性:
- 生産性の課題: 求職者が履歴書作成や面接に不慣れであるため、個別のサポートが必要となり、従業員一人あたりの生産性向上に課題が残ります 。
- 成約単価の限界: ターゲット層の年収が比較的低いため、成果報酬モデルにおける成約単価(約61万円)には上限があります 。
- 競争優位性:
- オンライン完結型リファレンスサービス「back check」:
- この事業は、採用候補者の経歴や実績をオンラインでチェックするサービスで、主に高年収のホワイトカラー層をターゲットとしていました 。
- 事業譲渡の評価: 2025年9月期第4四半期にエン・ジャパンに約19.5億円で譲渡されることが決定しました 。この決断は、一見すると成長事業を切り離したように見えますが、主力事業である「Zキャリア」とのシナジーが限定的であり、リソースを集中させるという点で極めて合理的な経営判断です 。これにより、財務基盤が大幅に改善し、今後の成長投資の原資を確保できたことは高く評価できます 。
競争環境: Zキャリアがターゲットとするノンデスクワーカー領域は、大手人材紹介会社が主要な収益源とするハイクラス領域とは全く異なる市場構造を持っています 。
- ハイクラス領域の競合: パーソルキャリア、マイナビエージェントなど
- 違い: ハイクラス領域の転職は、現在の職種や業界を軸に探す傾向が強く、専門スキルを持つ人材が多いため、求人企業も採用人数が少なく、採用基準が厳しいです 。
- ノンデスク領域の競合: ハローワーク、アルバイト求人媒体など
- 違い: Zキャリアは、非正規雇用から正社員への転職を専門としており、特に建設、工場、飲食、介護といった業界に強みを持っています 。これに対し、ハローワークは公的なサービスであり、アルバイト求人媒体は非正規雇用が中心です。
Zキャリアのポジショニングは、人材紹介サービスとアルバイト求人媒体の間に位置し、独自の「ノンデスク正社員」市場を開拓しています。これにより、競合との直接的な競争を避け、高い市場参入障壁を築いていると言えます 。
3. 【最重要】業績ハイライトと徹底的な財務分析
P/L分析
項目 | 2024年9月期 3Q累計 (百万円) | 2025年9月期 3Q累計 (百万円) | 前年同期比増減率 (%) | 2025年9月期 3Q (百万円) |
売上高 | 2,423 | 3,275 | +35.2% | 1,295 |
売上総利益 | 2,090 | 2,706 | +29.5% | 1,113 |
営業利益 | △511 | △743 | – | 40 |
経常利益 | △514 | △768 | – | 31 |
四半期純利益 | △516 | △769 | – | 30 |
売上高: 売上高は前年同期比で大幅に増加しましたが、これは「Zキャリア」事業の堅調な成長(前年同期比39.6%増)と「back check」事業の安定成長(同14.3%増)によるものです 。四半期売上高は過去最高の1,295百万円を記録しており、成長の勢いは継続しています 。
営業利益のブリッジ分析(FY24 3Q → FY25 3Q): 前年同期の営業損失511百万円から、当期は743百万円の損失に悪化しました 。この損失拡大の主な要因は、売上総利益の増加を上回る販管費の増加です 。
- 売上総利益の増加: +615百万円(+29.5%)
- 販管費の増加: +847百万円(+32.5%)
- 営業利益の変動: +615 – 847 = -232百万円の損失拡大 この販管費増加の背景には、昨年10月からの分業化に伴う人件費の増加と、それに伴う一時的な生産性低下があります 。つまり、売上を伸ばすための組織再編と投資が先行し、その効果がまだ十分に利益に反映されていない状態です。ただし、四半期ベースでは営業利益が40百万円の黒字に転じており、生産性の回復傾向が見て取れます 。
収益性の深掘り:
- 売上総利益率: 前年同期の85.6%から85.9%へとわずかに上昇しました 。これは、R&D費用の一部が売上原価から販管費に振り替えられた影響も含まれますが 、基本的な収益構造は健全に保たれていることを示唆しています。
- 営業利益率: 前年同期の△7.9%から3.1%へ大幅に改善し、四半期ベースで黒字化を達成しました 。この改善は、分業化によるオペレーション最適化が功を奏し、面談実施率や内定獲得率が体制変更前よりも高い水準に回復したことが主な要因です 。
B/S分析
項目 | 2024年9月期末 (百万円) | 2025年9月期3Q末 (百万円) | 増減 (百万円) |
総資産 | 3,696 | 3,980 | +284 |
現金及び預金 | 2,594 | 2,602 | +8 |
売掛金 | 520 | 656 | +136 |
負債合計 | 2,792 | 3,845 | +1,053 |
有利子負債 | 1,557 | 2,544 | +987 |
純資産合計 | 904 | 134 | △770 |
自己資本比率 | 24.4% | 3.3% | △21.1pt |
運転資本の分析: Zキャリアは売上高の成長に伴い、売掛金が136百万円増加しています 。CCCを構成するDSO, DIO, DPOを分析します。
- 売上債権回転日数(DSO):
(売掛金 / 売上高) x 90日
- FY24 3Q累計: (520 / 2,423) * 270 = 58日
- FY25 3Q累計: (656 / 3,275) * 270 = 54日
- DSOはわずかに改善しており、売上高の急増にも関わらず、債権回収の効率性は維持されていると言えます。これは、採用成果報酬の請求が求職者の入社月に行われるというビジネスモデル上、売上高の増加がそのまま売掛金の増加に直結するためです 。
- 棚卸資産回転日数(DIO): 同社は人材サービス企業であり、実態としての棚卸資産はないため、この指標は適用できません。
- 仕入債務回転日数(DPO): 同社は人材紹介会社へのプラットフォーム利用料を支払うため、買掛金が発生します。詳細な内訳がないため計算は困難ですが、収益成長に比例して手数料支払いが増加していると考えられます。
売上高の増加とともに売掛金も増加するため、運転資本は増加傾向にあります。これは、営業活動がキャッシュを創出する一方で、その一部が売掛金として留保されることを意味します。利益の質を評価する上で、売掛金の増加が今後も継続するかどうかを注視する必要があります。
キャッシュフロー(C/F)分析
決算短信には四半期キャッシュフロー計算書が添付されていませんが、貸借対照表の変動からその傾向を読み解きます。
- 営業CF: 営業損失が拡大しているにもかかわらず、現金及び預金は微増しています 。これは、売上高の増加による営業未収入金(売掛金)の増加や、返金負債の増加といった、運転資本の変動が営業CFを圧迫する一方で、有利子負債の増加がそれを補っていることを示唆しています。
- 投資CF: 固定資産の増加、特に敷金及び保証金の増加(+122百万円)が見られ 、オフィス拡張や設備投資を行っている可能性があります。
- 財務CF: 長期借入金が大幅に増加しており(+987百万円)、キャッシュ流入の主要因となっていると考えられます 。
営業CFと純利益の乖離(アクルーアル): 当期は純損失を計上していますが、現金及び預金は微増しています。これは、純利益の計算に含まれない非現金費用(減価償却費など)が営業CFを押し上げているか、または借入金による財務活動によるキャッシュインが影響していると考えられます。利益の質という観点では、営業CFが純利益を恒常的に下回る状況は警戒が必要です。ただし、今回は
バックチェック事業の譲渡益という非継続的な収益が第4四半期に計上されるため、純利益は大きくプラスに転じます 。この一時的な利益を投資家はどのように評価するかが重要です。
資本効率性の評価
ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト): ROICはNOPAT(税引き後営業利益) / 投下資本
で算出されます。当期は営業損失を計上しているため、ROICはマイナスとなります。この状態は、事業活動が投下資本を効率的に活用して利益を生み出せていないことを示しており、企業価値を破壊している状態です。 しかし、これは分業化による一時的な生産性低下と先行投資によるものであり、経営陣もこれを認識しています 。重要なのは、今後の生産性改善と黒字化によって、ROICがWACC(ここでは仮に5-7%と想定)を上回る水準まで回復できるか、という点です。今回の決算で四半期黒字化を達成したことは、この点においてポジティブな兆候と言えます。
ROE(自己資本利益率)のデュポン分解: ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
- 純利益率: 当期は純損失のためマイナスです。
- 総資産回転率:
売上高 / 総資産
- FY24 3Q累計: 2,423 / 3,696 = 0.65
- FY25 3Q累計: 3,275 / 3,980 = 0.82
- 売上高が総資産の増加率を上回っており、資産効率は改善しています。
- 財務レバレッジ:
総資産 / 自己資本
- FY24 3Q末: 3,696 / 904 = 4.09倍
- FY25 3Q末: 3,980 / 134 = 29.7倍
- 純損失による純資産の減少と借入金による負債の増加により、財務レバレッジは異常な高水準となっています 。これは財務安定性の観点から非常に懸念される点です。ただし、バックチェック事業の譲渡益が計上されれば、純資産は大幅に増加し、自己資本比率も44.8%まで改善する見込みであり、このリスクは解消されます 。
4. 【核心】セグメント情報の徹底解剖
決算短信には「HR tech事業の単一セグメント」であるため、セグメント情報はないと記載されていますが 、決算説明資料では「Zキャリア」と「back check」の事業別売上高が開示されています 。
- Zキャリア: 2,790百万円(前年同期比39.6%増)
- back check: 484百万円(前年同期比14.3%増)
全社業績への貢献度と成長ドライバー:
Zキャリア
事業は全社売上高の約85%を占める中核事業であり、成長ドライバーです 。この事業の急成長は、労働人口減少に伴うノンデスク領域の採用需要の高まりを背景に、
求職者登録数の堅調な拡大(前年同期比+43.3%)と、成約単価の上昇(前年比+7.8%)によって実現されました 。特に、求職者登録数は順調に増加しており、集客単価も安定していることから、持続的な成長が見込めます 。
ポートフォリオ・マネジメントの評価: 経営陣は、成長の柱である
Zキャリア
事業にリソースを集中させるため、back check
事業の譲渡を決定しました 。この決断は、以下の点で高く評価できます。
- 非中核事業の売却:
back check
事業は、ホワイトカラーの高年収層をターゲットとしており、ノンデスクワーカー向けのZキャリア
事業との顧客層やビジネスモデルにシナジーが限定的でした 。 - 財務基盤の健全化: 売却によって得られる19.5億円の特別利益は、純資産を大幅に積み増し、自己資本比率を改善させます 。これにより、財務上のリスクが大幅に低減され、将来の成長投資に向けた資金調達余力も確保できます 。
- リソースの集中:
Zキャリア
事業に人員や資金といったリソースを集中させることで、成長スピードを加速させることが可能となります 。
経営陣は、事業の選択と集中を通じて、ポートフォリオのリスクを低減し、中核事業の成長を最大化する戦略を実行していると評価できます。
5. 経営計画の進捗と経営陣の評価
計画の進捗と下方修正の妥当性: 同社は、2025年9月期の通期業績予想を下方修正しました 。
- 売上高: 5,235百万円 → 4,520百万円(△715百万円)
- 営業損益: △195百万円 → △742百万円(△547百万円)
この下方修正の主な要因は、
昨年10月に開始した分業化に伴う生産性の低下が想定以上に進行したことです 。組織改編という大きな変革期において、一時的な生産性低下は避けられない側面があります。経営陣は、この低下が下期に改善傾向にあるものの、通期では当初想定した水準に届かないと判断し、
現実的な数値に修正したと言えます 。この判断は、投資家に対して誠実な姿勢を示すものであり、高く評価できます。
経営陣の需要予測能力と実行力: 経営陣は、マクロ環境(市場環境)の変化はないと評価しており、下方修正はあくまで社内要因、すなわち組織改編に伴う生産性低下が原因だと分析しています 。
- 需要予測能力: ノンデスク領域の採用市場は引き続き旺盛であり、求人企業側の需要トレンドに変化はないと判断しています 。この市場分析はデータに基づいたものであり、妥当性が高いと言えます。
- 実行力: 分業化の導入は、短期的な生産性低下を伴うリスクを承知の上での決断でした。しかし、第3四半期にはすでに生産性が回復し、四半期黒字化を達成していることから、オペレーション改善の実行力は高いと評価できます 。今後は、ハイパフォーマーのノウハウを体系化し、AIツールを導入することで、従業員一人あたりの生産性をさらに高める計画であり、その実行力に期待が持てます 。
6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク
3つの将来シナリオ
前提条件:
- マクロ経済: 日本の労働人口減少は継続し、ノンデスク領域の人材不足は今後も慢性的に続く 。
- 市場成長率: ノンデスクワーカー向け人材紹介市場は、今後も高水準で成長 。
- 為替レート等: 主に国内事業のため為替変動の影響は限定的。
1. 弱気シナリオ(蓋然性20%):
- 前提: 分業化による生産性改善が頓挫し、組織的な混乱が続く。広告宣伝費の投資対効果が低下し、集客コストが上昇。競合の参入により価格競争が激化する。
- 業績予測レンジ: 売上高 4,500-4,700百万円、営業損失 700-800百万円。
- カタリスト: 経営陣の辞任、組織再編の失敗、主要顧客の離脱。
- リスク: 生産性回復の遅延、集客コストの急騰、競合の本格参入。
2. 基本シナリオ(蓋然性60%):
- 前提: 第3四半期のトレンドが継続し、分業化による生産性改善が計画通りに進む。AI機能や履歴書作成ツールがユーザーに受け入れられ、LTV(顧客生涯価値)が向上する。
- 業績予測レンジ: 売上高 4,900-5,100百万円、営業損失 500-600百万円。
- カタリスト: 従業員あたりの成約人数の明確な改善、AI関連プロダクトのユーザー数増加。
- リスク: 外部環境の変化(景気後退など)による採用需要の鈍化、計画に対する進捗の遅れ。
3. 強気シナリオ(蓋然性20%):
- 前提: 生産性改善が想定を大幅に上回り、従業員あたりの成約人数が過去最高水準を更新する。AIツールが爆発的に普及し、集客コストを大幅に削減。採用代行(RPO)の大型受注が複数件成立する。
- 業績予測レンジ: 売上高 5,200-5,500百万円、営業損失 300-400百万円。
- カタリスト: 大手企業とのRPO契約締結、新規プロダクト(例:AI面接官)の大規模導入、政府の就労支援策との連携。
- リスク: 成長期待の過熱によるバリュエーションリスク、計画未達時の市場の失望売り。
7. バリュエーション(企業価値評価)
相対評価法: 同社は、人材紹介サービス業界の中でもノンデスク領域というニッチな市場に特化しているため、単純なPERやPBRでの比較は困難です。バックチェック
事業の譲渡が完了すると、同社は純粋なノンデスクワーカー向け人材紹介プラットフォーム企業となります。 一般的な人材サービス会社(パーソルキャリアなど)は、成熟した市場で安定した収益を上げていますが、ROXXは高成長が見込める未開拓市場のリーダーという点で、より高いバリュエーションが正当化される可能性があります。しかし、現状は赤字であり、PERは算出できません。EV/EBITDAも赤字のため適用できません。 投資家は、売上高成長率やZキャリア
のKPI(求職者登録数、成約率、成約単価)といった成長性指標を重視して評価するでしょう。
絶対評価法: 簡易的なDCF法を用いて理論株価を試算します。
- 前提:
- WACC: バックチェック事業譲渡後の財務健全性を考慮し、仮に8%と設定。
- 永久成長率:日本の労働人口減少を考慮し、市場規模の成長は限定的とみなし、1%と設定。
- 試算:
- 当期は赤字であり、将来キャッシュフローの予測が困難なため、現時点での正確な理論株価試算は保留します。しかし、将来の成長シナリオを織り込むと、現在の時価総額に対して大幅なアップサイドポテンシャルがあると考えられます。特に、
Zキャリア
事業が通期で黒字化し、その後も成長を維持できれば、企業価値は飛躍的に高まるでしょう。
- 当期は赤字であり、将来キャッシュフローの予測が困難なため、現時点での正確な理論株価試算は保留します。しかし、将来の成長シナリオを織り込むと、現在の時価総額に対して大幅なアップサイドポテンシャルがあると考えられます。特に、
8. 総括と投資家への提言
総括: 株式会社ROXXは、ノンデスクワーカーという巨大な未開拓市場で、独自の競争優位性を築いています。今回の決算で示された四半期での黒字化と、バックチェック事業の譲渡による財務基盤の健全化は、一時的な困難を乗り越え、成長軌道への回帰を強く示唆しています。経営陣は、組織再編という痛みを伴う改革を実行し、その成果を出し始めています。これは、単なる成長企業ではなく、戦略的な経営判断を下せる成熟した企業へと変貌を遂げつつある証拠です。
投資家への提言: 現時点の投資スタンスは中立を維持します。バックチェック事業の譲渡はポジティブなニュースですが、これは一時的なものであり、今後の持続的な成長を証明するためには、Zキャリア
事業の生産性改善が恒常的なものとなるかを注視する必要があります。
注視すべき最重要KPI:
- 従業員あたりの成約人数: これが生産性改善の最も重要な指標です。
- 求職者の集客コスト(CPA): 広告宣伝費の投資対効果が健全に保たれているかを監視します。
Zキャリア
事業の通期黒字化: 下方修正後の目標達成は、経営陣の実行力を測る重要な試金石となります。
これらの指標が改善し、来期以降の成長に確信が持てるようになれば、投資スタンスを強気に変更することを検討します。