1. エグゼクティブ・サマリー
投資スタンス: 中立からやや弱気、確信度 60% 3行サマリー: 長野計器の2026年3月期第1四半期は、主要事業である圧力計・圧力センサの国内および米国での売上減により、売上高が前年同期比で減少し、営業利益も大幅に減益となった 。
この減収減益の主因は、半導体業界の設備投資需要が依然として在庫調整局面にあること 。
一方で、ダイカスト事業や計測制御機器事業が成長を牽引しており、ポートフォリオの多様性が減速を緩和しているため、半導体サイクルの回復を見据えつつ、他事業の動向を注視する必要がある 。
主要カタリストとリスク:
- ポジティブ・カタリスト:
- 半導体製造装置関連の設備投資需要が底打ちし、急回復に転じる。
- 丸子電子機器工場へのダイアフラム加工棟の増設が予定通り稼働し、生産効率が大幅に向上する 。
- 米国子会社における圧力センサ事業の成長が加速し、収益を大きく牽引する 。
- ネガティブ・リスク:
- 半導体市場の回復がさらに遅延し、主要事業の不振が長期化する。
- 地政学的リスク(米国の関税政策など)が顕在化し、グローバル事業に深刻な影響を及ぼす 。
- 原材料価格の高騰や円安のさらなる進行が、コスト増として収益性を圧迫する。
2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り
長野計器は、圧力計、圧力センサ、計測制御機器、ダイカスト製品を主軸に事業を展開している 。
同社のビジネスモデルは、主に「BtoBの部品・機器メーカー」であり、多岐にわたる産業分野(半導体、産業機械、自動車、プロセス業界、空調管材など)に製品を供給することで収益を得ている 。
収益モデルは、シンプルに表現すると以下のようになる。 売上高 = Σ(Q_i × P_i) ここで、Q_iはセグメントi(圧力計、圧力センサ等)の販売数量、P_iは平均販売価格である。
このビジネスモデルの強みは、特定の産業に依存しすぎない事業ポートフォリオの分散にある 。
例えば、今期は半導体業界の不振が響いた一方で、計測制御機器事業やダイカスト事業が成長し、売上高の落ち込みを一定程度緩和している 。
これは、市場の景気変動リスクに対する耐久性を示唆している。また、圧力センサ素子のようなコア技術を持つことで、高い参入障壁を築いている点も強みである 。
一方、脆弱性としては、半導体業界や自動車業界といった特定の大口顧客向けの売上が業績を大きく左右する点が挙げられる 。
特に、半導体業界の設備投資サイクルは景気変動の影響を強く受けるため、このサイクルに業績が大きく左右されるリスクは依然として存在する。 また、為替変動リスクも無視できない 。
海外売上比率が高いため、為替の変動が営業外損益に影響を与える可能性がある。今期は為替差損が計上されており、その影響が明らかになっている 。
競争環境について見ると、長野計器は計測機器市場において、品質と技術力で差別化を図っている。 主要な競合他社としては、国内では横河電機や富士電機、海外ではハネウェルやエマソンといった巨大企業が存在する。 長野計器の相対的な強みは、ニッチな市場での高い技術力と顧客との強固な関係性にある。 しかし、巨大な競合他社に比べて、研究開発投資の規模やグローバルな販売チャネルの面では劣後する可能性がある。 今後は、特に圧力センサ素子といった高付加価値製品において、技術的優位性をいかに維持・拡大していくかが競争力の鍵となるだろう 。
3. 業績ハイライトと徹底的な財務分析
P/L分析: | 項目 | 2026年3月期 1Q (百万円) | 2025年3月期 1Q (百万円) | 前年同期比 (%) | 計画比 (%) | | :— | :— | :— | :— | :— |
| 売上高 | 15,879 | 16,921 | -6.2% | N/A |
| 営業利益 | 1,346 | 1,733 | -22.3% | N/A |
| 経常利益 | 1,303 | 1,852 | -29.6% | N/A |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 1,047 | 1,452 | -27.9% | N/A |
注: 計画値は提示されていないため、計画比は算出不可
営業利益のブリッジ分析: 前年同期の営業利益1,733百万円から、当期の1,346百万円への変動要因を定量的に分解する。
- 売上数量/ミックス変動: 売上高が16,921百万円から15,879百万円へ1,042百万円減少した 。 粗利率が横ばいと仮定すると、この減収は粗利を約330百万円減少させたと考えられる。
- 価格/原価率変動: 売上原価率が68.0%(前年同期)から69.3%(当期)へと悪化している 。 この原価率の悪化は、主に製品ミックスの変化(低採算製品の比率増加)や原材料価格の高騰、為替変動が要因として考えられる。 売上原価の絶対額は減少しているものの、売上高の減少率と比較して原価の減少率が小さいため、粗利率が悪化している。 この原価率悪化による利益へのマイナスインパクトは約210百万円と推定される。
- 販管費変動: 販売費及び一般管理費は、3,668百万円から3,520百万円へ148百万円減少した 。 このコスト削減は、利益に対してプラスに寄与した。
営業利益の変動要因(概算):
- 減収による粗利減: 約 -330百万円
- 原価率悪化による粗利減: 約 -210百万円
- 販管費削減による利益増: 約 +148百万円
- その他(為替差損など): 約 -45百万円 合計: -437百万円 注: 上記は概算であり、端数調整は行っていない。 この分析から、減収による影響が最も大きいものの、原価率の悪化も利益率を押し下げる重要な要因であることがわかる。
収益性の深掘り: 長野計器の粗利率は、前年同期の31.9%から当期は30.6%へと悪化している 。
これは、半導体業界向けの売上減少という高付加価値製品の販売減と、原材料費の高止まりが主な要因である 。
一方、営業利益率は、前年同期の10.2%から8.5%へ低下 。
これは売上高の減少幅(-6.2%)に対して、販管費の削減幅(-4.0%)が小さかったため、オペレーティングレバレッジがネガティブに作用したことを示唆している。
B/S分析: 総資産は前連結会計年度末に比べ8億37百万円増加し、752億43百万円となった 。
主な増加要因は、投資有価証券の時価評価増(11億90百万円)である 。
流動資産の増加は限定的であり、現預金は5億13百万円増加しているが、棚卸資産は減少傾向にある 。
負債は4億9百万円減少したが、これは未払法人税等の減少が主な要因である 。
短期借入金は5億49百万円増加しており、資金調達ニーズの存在を示唆している 。
純資産は12億46百万円増加し、459億2百万円となった 。
結果として、自己資本比率は前連結会計年度末から1.0ポイント改善し、59.8%となっている 。
財務安全性は高い水準を維持していると評価できる。
運転資本の分析(CCC): CCC = DSO + DIO – DPO
- 売上債権回転日数 (DSO): 2025年3月期末: (10,213,259千円 + 4,784,087千円) / (67,100,000千円 / 365日) = 81.6日 2026年3月期1Q末: (10,384,723千円 + 4,823,234千円) / (15,879,693千円 / 91日) = 87.1日 注: 年間売上高は通期予想を使用し、四半期は四半期売上高を使用。
- 棚卸資産回転日数 (DIO): 2025年3月期末: 17,617,168千円 / (44,705,790千円 / 365日) = 144.1日 2026年3月期1Q末: 17,255,169千円 / (11,012,726千円 / 91日) = 142.6日 注: 年間売上原価は通期売上原価を推定し、四半期は四半期売上原価を使用。
- 仕入債務回転日数 (DPO): 2025年3月期末: 4,225,157千円 / (44,705,790千円 / 365日) = 34.5日 2026年3月期1Q末: 4,500,030千円 / (11,012,726千円 / 91日) = 37.1日
CCC (キャッシュ・コンバージョン・サイクル): 2025年3月期末: 81.6日 + 144.1日 – 34.5日 = 191.2日 2026年3月期1Q末: 87.1日 + 142.6日 – 37.1日 = 192.6日 CCCはほぼ横ばいであり、運転資本の効率性に大きな変化は見られない。 DSOの微増は売掛金の回収サイトがわずかに長期化していることを示唆しており、景気減速の影響が一部出始めている可能性がある。 DIOはわずかに改善しているものの、棚卸資産の絶対額は依然として高水準であり、在庫の質や陳腐化リスクについては引き続き注視が必要である。 特に、半導体関連製品は技術サイクルが早いため、需要の低迷が長期化すると陳腐化リスクが高まる。
キャッシュフロー(C/F)分析: 本決算短信には四半期連結キャッシュ・フロー計算書が添付されていない 。
しかし、第1四半期連結累計期間の減価償却費が423,461千円であったことが開示されている 。
これは前年同期の476,027千円から減少しており、設備投資の抑制を示唆している可能性がある 。
一般的に、減収減益の局面では営業CFが減少する傾向にあるため、今期もその可能性が高いと推測される。 ただし、営業CFと純利益の乖離(アクルーアル)については、C/F計算書がないため詳細な分析は困難である。
資本効率性の評価:
- ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト): ROIC = NOPAT / 投下資本 NOPAT(税引後営業利益) = 営業利益 × (1 – 実効税率) 2026年3月期1QのNOPAT(年換算)= 1,346百万円 × (1 – 35%) × 4 = 約3,499百万円 投下資本 = 有形固定資産 + 無形固定資産 + 運転資本 投下資本 = 18,118百万円 + 647百万円 + (10,384百万円 + 4,823百万円 + 17,255百万円 – 4,500百万円) = 約46,727百万円 ROIC(年換算)= 3,499百万円 / 46,727百万円 = 7.5% 注: 実効税率は法人税等の合計額から四半期純利益を割り戻して推定。投下資本は期末時点の値を暫定的に使用。 WACCは市場データから推定する必要があるが、一般的に製造業のWACCは5-7%程度と仮定されることが多い。 ROIC 7.5%は、WACCをわずかに上回る水準であり、辛うじて企業価値を創造している段階にあると評価できる。 ただし、前期のROICが約10%だったことを考慮すると、収益性の悪化に伴い資本効率性も低下している。 今後、半導体関連の需要が回復し、営業利益率が改善すれば、ROICも再び上昇し、より明確な企業価値創造フェーズに戻ると期待される。
- ROE(自己資本利益率)のデュポン分解: ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ 2026年3月期1Q(年換算): 純利益率 = 1,047百万円 / 15,879百万円 = 6.6% 総資産回転率 = 15,879百万円 / 75,243百万円 = 21.1% 財務レバレッジ = 75,243百万円 / 45,902百万円 = 1.64倍 ROE = 6.6% × 21.1% × 1.64 = 2.3%(四半期ROE) 年換算ROE = 9.2% 前期(年換算): 純利益率 = 1,452百万円 / 16,921百万円 = 8.6% 総資産回転率 = 16,921百万円 / 74,406百万円 = 22.7% 財務レバレッジ = 74,406百万円 / 44,655百万円 = 1.67倍 ROE = 8.6% × 22.7% × 1.67 = 3.2%(四半期ROE) 年換算ROE = 12.8% 前期と比較して、純利益率と総資産回転率の低下がROEの悪化を招いていることが明らかである。 これは、減収減益と資産の増加が同時に発生した結果であり、収益性と資産活用の両面で効率性が低下していることを示唆している。
4. セグメント情報の徹底解剖
- 全社業績への貢献度: | セグメント
- | 売上高 (百万円) | 前年同期比 (%) | 営業利益 (百万円) | 前年同期比 (%) |
- | :— | :— | :— | :— | :— |
- | 圧力計事業 | 8,288 | -7.8% | 578 | -9.9% |
- | 圧力センサ事業 | 4,919 | -9.6% | 684 | -42.9% |
- | 計測制御機器事業 | 852 | +11.8% | 9 | 営業損失から転換 |
- | ダイカスト事業 | 1,332 | +7.6% | 45 | 営業損失から転換 | | その他事業 | 487 | -0.1% | 27 | +15.6% |
- | 合計 | 15,879 | -6.2% | 1,346 | -22.3% |
- 好調セグメントと不振セグメントの要因分析:
- 不振セグメント(圧力計事業、圧力センサ事業):
- 要因: 半導体業界の設備投資需要の減退が、両セグメントの国内売上を直撃している 。特に圧力センサ事業は、半導体業界向けの売上減少が響き、営業利益が前年同期比で42.9%もの大幅減益となっている 。米国子会社でも、圧力計の売上が減少している 。 この結果、両セグメントの売上高は全社売上の約83%を占める主力事業でありながら、減収減益となり、全社業績の足を引っ張った。
- 好調セグメント(計測制御機器事業、ダイカスト事業):
- 要因: 計測制御機器事業では、自動車・電子部品関連向けのエアリークテスタの売上は減少したものの、舌圧計や生産自動化用の空気圧機器の売上が増加し、前年同期の営業損失から黒字転換を果たした 。 これは、特定製品の需要が好調であったことと、コスト削減が進んだ結果と考えられる。 ダイカスト事業も、主要取引先である自動車業界が減産傾向にあるにもかかわらず、売上高が7.6%増加し、前年同期の営業損失から黒字転換している 。 これは、自動車業界内の特定の顧客や製品での需要が増加したか、あるいは新たな顧客を開拓できた可能性を示唆している。
- 不振セグメント(圧力計事業、圧力センサ事業):
- ポートフォリオ・マネジメントの評価: 長野計器の事業ポートフォリオは、主力事業が市況に左右されやすい「半導体関連」と、安定成長が見込める「非半導体関連」(産業機械、自動車、医療機器など)に分散されている 。 今期の決算は、このポートフォリオ戦略の有効性を証明したと言える。 半導体サイクルの谷間において主力事業が不振に陥る中でも、他事業の成長が業績の急激な悪化を防ぐ緩衝材として機能している。 しかし、主力である圧力センサ事業の利益率が大幅に低下している点は深刻であり、半導体市場の回復を待つだけでなく、他事業の高付加価値化や規模拡大を急ぐ必要性を再認識すべきであろう 。
5. 経営計画の進捗と経営陣の評価
長野計器は、2025年5月12日に公表した2026年3月期の連結業績予想について、第1四半期の実績を受けても修正は行わない方針である 。
通期予想は、売上高67,100百万円、営業利益6,800百万円である 。
第1四半期の実績は、売上高15,879百万円(通期進捗率23.7%)、営業利益1,346百万円(通期進捗率19.8%)であり 、通期目標に対してやや下振れて推移しているように見える。
しかし、同社は半導体市場の回復を織り込んでおり、下期にかけて業績が持ち直すというシナリオに基づいていると推測される。 経営陣は、足元の厳しい状況を認識しつつも、市場の回復トレンドに対する確信があるため、計画を据え置いたと判断できる 。
この判断の妥当性は、今後の半導体市場の動向に大きく左右される。 もし市場回復が遅延すれば、通期計画の未達は避けられず、経営陣の需要予測能力に疑問符がつくことになる。
また、経営陣は生産能力増強に積極的に投資している 。
丸子電子機器工場へのダイアフラム加工棟増設は、2025年9月の稼働開始を予定しており 、将来的な生産性向上と圧力センサ事業の成長に対応するための重要な戦略投資である。
さらに、圧力センサ素子の生産棟や圧力計の生産棟の新設も検討されており、長期的な成長戦略を着実に実行している姿勢は評価できる 。
6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク
基本シナリオ(確率60%):
- 前提条件: 半導体市場の在庫調整は下期にかけて緩やかに解消し、設備投資需要が回復する。米国経済は高金利の影響が残るものの、ソフトランディングする。為替は$1=¥155前後で推移。
- 業績予測:
- 売上高: 650~670億円
- 営業利益: 60~65億円
- カタリスト: 半導体業界の投資再開のニュース、丸子工場の新棟稼働による生産効率向上。
- リスク: 半導体市場の回復が予想より遅れること、地政学的リスクによるサプライチェーンの混乱。
強気シナリオ(確率25%):
- 前提条件: 半導体市場の回復が予想以上に加速し、特にAI関連の需要が急増する。米国経済が堅調に推移し、設備投資が活発化する。
- 業績予測:
- 売上高: 680~700億円
- 営業利益: 68~75億円
- カタリスト: 主要半導体メーカーからの大型受注、米国子会社の圧力センサ事業が大幅に成長。
- リスク: 成長戦略の実行に伴う過剰な設備投資やコスト増。
弱気シナリオ(確率15%):
- 前提条件: 半導体市場の在庫調整が長期化し、需要回復が2026年3月期中に見られない。グローバルな景気減速が顕在化し、自動車や産業機械業界の需要も停滞する。
- 業績予測:
- 売上高: 600~640億円
- 営業利益: 50~58億円
- カタリスト: なし
- リスク: 計画未達に伴う通期下方修正、株価の急落。
7. バリュエーション(企業価値評価)
相対評価法: 長野計器のPERは、通期予想EPS263.98円()に基づくと、執筆時点の株価から約10倍前後と推定される。
同様の計測機器メーカーや製造装置関連企業と比較すると、やや割安な水準にある。 これは、現在の業績悪化局面が一時的であること、そして将来的な半導体市場の回復期待がまだ十分に織り込まれていないためと考えられる。 一方で、半導体サイクルの影響を受けやすいビジネスモデルであること、および前期と比較して収益性・効率性が低下している点を考慮すると、同業他社に対して大きなプレミアムを乗せて評価することは難しい。 今後の株価は、半導体市場の回復の兆候が見え始めたタイミングで、PERが12~15倍程度まで上昇する可能性があると考える。
絶対評価法: 簡易DCF法による理論株価を試算する。
- 前提:
- WACC: 7.0%
- 永久成長率 (g): 1.5%
- FCF (フリー・キャッシュフロー): 営業利益 × (1 – 税率) + 減価償却費 – 設備投資 – 運転資本増減
- FCFは通期予想営業利益6,800百万円から逆算して、今後の投資計画等を考慮し年間約50億円と仮定。
- 試算:
- 継続価値 (Terminal Value) = FCF × (1 + g) / (WACC – g) = 50億円 × 1.015 / (0.07 – 0.015) = 922.7億円
- 企業価値 = 継続価値 + 割引後の将来FCFの合計 = 922.7億円
- 株主価値 = 企業価値 – 純有利子負債 = 922.7億円 – (短期借入金80億円 – 現金106億円) = 948.7億円
- 理論株価 = 948.7億円 / 1910万株() = 約4,967円
- 考察: この試算はあくまで簡略化されたものであり、WACCや永久成長率の仮定によって大きく変動する。 しかし、現在の株価は試算された理論株価を下回っており、今後業績が回復軌道に乗れば、株価は上昇余地があることを示唆している。
8. 総括と投資家への提言
長野計器の第1四半期決算は、主力事業である圧力計・圧力センサ事業が半導体市場の在庫調整局面の真っただ中にあることを再確認させるものであった 。
しかし、計測制御機器やダイカストといった他事業が堅調に推移しており、同社の事業ポートフォリオの耐久性は一定程度証明されたと言える 。
これは、半導体サイクルの谷間において、急激な業績悪化を回避する重要な要素となる。 現時点では、通期計画達成に向けた進捗は遅れているものの、経営陣は市場の回復を確信しており、計画を据え置いた 。
この戦略的な判断が奏功するか否かは、今後の半導体市場の動向に全てがかかっている。
明確な投資スタンス: 現時点では、業績の底打ちと回復の兆候がまだ明確ではないため、投資スタンスは中立を維持する。 ただし、半導体市場の回復期待は依然として高く、同社が計画通りに生産能力増強を進めていること は、回復期に業績が急加速する可能性を示唆している。
そのため、長期的な視点では投資魅力は高い。
投資家が注視すべき最重要KPI:
- 圧力センサ事業の売上高と営業利益率: 半導体市場回復の先行指標となる可能性が高く、特に注視すべき。
- 棚卸資産回転日数 (DIO) の推移: 在庫の積み上がりや陳腐化リスクを判断する上で重要。
- 丸子電子機器工場のダイアフラム加工棟の稼働状況と効果: 生産性向上と利益率改善に直結するため、動向を追う必要がある 。
- 連結業績予想の修正有無: 第2四半期決算時に、通期計画が維持されるか、あるいは下方修正されるかが、経営陣の市場に対する見解を測る重要なイベントとなる。