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福島印刷〈7870〉3Q決算を深掘り──地方印刷の“逆襲”は本物か?

投資はご自身の判断と責任で行ってください。本稿は情報提供を目的としています。


決算ハイライト【数字で読む速報】

2024/3Q2025/3Q増減率
売上高49.3億円55.5億円+12.6%
営業利益▲0.44億円+1.49億円黒字転換
四半期純利益▲0.41億円+0.97億円黒字転換
営業利益率▲0.9%2.7%+3.6pt

出典:決算短信

★アナリストの視点

  • 粗利率の拡大がサプライズ要因:紙・インキ高騰環境でも、原材料転嫁と高付加価値案件比率上昇で粗利率+1.7pt。営業利益率2.7%は過去5年で最高水準。
  • 販管費コントロールが奏功:SG&A比率▲1.9pt。裁量的コスト(広告・採用)を絞り込み、人員当たり売上高+9%に。
  • 営業外費用▲1.0百万円:借入金縮減とリース負担減により金利コストを圧縮。

セグメント別動向──DMが牽引、商業印刷は底打ち感

サービス売上高 (億円)YoYコメント
DMDP(DM発送)32.7+29.2%EC・通販向けのカタログ再開&ロイヤル顧客深耕が奏功。可変データ印刷(VDP)採用比率が前年20%→34%へ。
IPDP(商業印刷)17.7▲4.5%銀行・自治体など大量ページ案件は減少するも、価格競争一巡で単価は安定。
BF複合サービス4.6▲5.4%食品パッケージ系。原価転嫁のタイムラグで利益率圧迫。
企画商印0.6▲12.7%中小顧客向け。非戦略領域としてリソース削減中。

品目別売上高

★アナリストの視点

  • ハイブリッド需要の追い風:デジタル広告疲れ→「紙+QRコード+CDP」で反応率を測定する動きが定着。国内DM市場は24年度実績+6%成長。福島印刷はその4倍ペースで拡大。
  • VDP拡大の経済性:印刷単価が従来比+18%でも、クライアント側CVRが+30%と高ROI。値上げが受け入れられやすい構造。
  • 商業印刷は確実に下げ止まり:主要流通業B社との大型契約更新が決定(4Q開始分)。IPDPのマージンは下期から改善余地。

財務体質──自己資本比率75%・ネットキャッシュ6.8億円

指標2025/3Q末前期末比コメント
ネットキャッシュ+6.8億円+1.3億円実質無借金。
自己資本比率75.0%▲0.8pt自己株買いで純資産圧縮。
有利子負債6.5億円▲0.8億円借換え&返済で負担軽減。

貸借対照表より

★アナリストの視点

  • “キャッシュ=成長オプション”:減価償却費▲0.48億円(老朽機除却)でCF創出力UP。下期CAPEX予定は1.2億円のみ=追加自己株買いの余力大。
  • P/B0.42倍は土地含み益を無視:名古屋西部工場(取得80年代)の再評価でNAV+9億円(1株当たり200円)分の上乗せ余地。

株主還元&資本政策

区分2024/8期実績2025/8期予想コメント
年間配当10円10円EPS急増でも据置=増配余地大
自己株取得77百万円継続示唆自己株比率6.0% → 浮動株圧縮

配当・自社株状況

★アナリストの視点

  • 総還元性向の再設計が焦点:ネットキャッシュ比29%を踏まえると、DOE(株主資本配当率)1.5%→3%へ引上げても資金的に余裕。
  • 機動的Buybackの妙味:自己株取得→消却でROE+0.8pt押上げ試算。需給面でも出来高の薄い地方銘柄ゆえインパクト大。

バリュエーションを読む(2025/6/28 終値)

指標実績同業平均*乖離
PER26.3倍14.8倍+78%
PER(ネットキャッシュ調整)16.3倍14.8倍+10%
P/B0.42倍0.73倍▲42%

同業平均=TOPPAN、DNP、共同印刷など大手6社

★アナリストの視点

  • “利益は成長株・株価は資産バリュー”の二面性:利益モメンタムでPERは割高に映るが、P/Bでは約40%ディスカウント。
  • NAVギャップ取引が機能:浮動株20%の小型銘柄は、自己株消却やMBOシナリオで“P/B是正=株価2倍”の余地。

H2:今後12か月のカタリスト

時期イベントポジティブシナリオ
2025/094Q決算ガイダンス2期連続超過→ROE3%台へ回復
2025/11中計ローリングDM×データマーケSaaSを正式KPI化=成長株へリラティング
随時自己株買い拡大総還元利回り10%超→機関投資家の注目度向上

リスク要因とヘッジ策

リスク感応度ヘッジ策
原材料価格再騰紙+5%で営業利益▲40%原材料調達を四半期毎→月次更新へ短サイクル化
DM規制強化DM通数▲10%で売上▲6%個人情報管理SaaSを内製→法規制順守ソリューションとして外販
設備投資遅延D&A負担再増大リース導入比率を20%→35%に引上げキャッシュ確保

アナリスト視点 “取材で聞くべき4質問”

  1. データマーケ連携:トラッキングコード付きDM導入比率とアップセル単価は?
  2. 生成AI活用:可変データ印刷(VDP)に生成AIを組み込み単価を何%押し上げる計画か?
  3. 資本政策:自己株式6.0%をどのタイミングで消却 or M&A通貨化する方針か?
  4. ESG投資:CO₂30%削減に向けた想定CAPEXとIRRは?

まとめ──“純資産×成長” 二重アービトラージの妙味

  • ネットキャッシュ29%・自己資本比率75%——財務の厚いクッション
  • DM×データ活用で営業利益5倍シナリオ——利益成長ストーリーが明確
  • P/B0.4倍+土地含み益——バランスシート価値が市場に織り込まれず放置

結論:バリュー株的“資産の安全余裕”とグロース株的“利益成長ドライバー”が同居する希少銘柄。需給改善(自己株買い)とビジネスモデル転換(VDP×SaaS)の両輪が回れば、「時価総額25億円の宝探し」フェーズは近い将来終了する可能性が高い。

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