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瀧上工業株式会社 2026年3月期 第1四半期決算分析レポート

1. エグゼクティブ・サマリー

投資スタンス:中立(確信度55%)

瀧上工業の2026年3月期第1四半期決算は、前年同期の赤字から黒字へと大幅な改善を達成し、一見すると堅調なスタートを切ったように見える。しかし、その内訳を詳細に分析すると、主要事業である鋼構造物製造事業の売上高は減少しており、好調に見える業績の主な要因は、橋梁工事における設計変更に伴う収益改善や不動産賃貸事業の増収に支えられている。特に懸念されるのは、鋼構造物製造事業の総受注高が前年同期比で70.2%減と大幅に落ち込んでいる点であり、将来の売上を担保する受注のパイプラインに大きなリスクを抱えている。そのため、今回の好決算は一過性の要因が強く、中長期的な成長性には依然として不確実性が残るため、現時点では「中立」の投資スタンスを維持する。今後の受注動向と各事業セグメントの収益構造の安定性を注視する必要がある。

サマリー

  • 何が起きたのか? 2026年3月期第1四半期は、前年同期の赤字から営業利益1.65億円、経常利益5.28億円、四半期純利益3.51億円と大幅な黒字転換を達成した。
  • なぜそれが重要なのか? この利益改善は、橋梁工事の設計変更による収益改善や不動産賃貸事業の好調に牽引されたものであり、主力の鋼構造物製造事業の売上減少と大幅な受注減という構造的な課題を覆い隠している。
  • 次に何を見るべきか? 今後、最も注目すべきは、鋼構造物製造事業の受注動向である。大規模な受注の獲得がなければ、第2四半期以降の売上高減少は避けられず、通期計画達成の蓋然性が低下する可能性がある。

主要カタリストとリスク

カタリスト

  1. 大型インフラ案件の受注: 将来の収益を大きく左右する橋梁・鉄骨工事における、大型インフラプロジェクトの新規受注獲得は、市場の評価を一変させる可能性を秘めている。
  2. 不動産賃貸事業の収益力向上: 賃貸マンションの稼働率向上や新規物件取得などにより、安定収益源である不動産事業がさらに成長すれば、全社的な業績の安定化に寄与する。
  3. コスト構造改革の進展: 各事業セグメント、特に赤字が続く材料販売事業や運送事業において、抜本的なコスト削減や事業効率化が進めば、利益率の改善に大きく貢献する。

リスク

  1. 鋼構造物製造事業の受注不振の継続: 第1四半期に見られた受注の急減が継続した場合、将来的な売上高の急落を招き、企業の成長性に深刻な懸念をもたらす。
  2. 建設需要の減退: 主力事業の収益を支える建設業界全体の需要が減速した場合、価格競争が激化し、売上高・利益率の両面で圧迫を受ける。
  3. 工事損失引当金の追加計上リスク: 鉄骨工事で追加計上された工事損失引当金のように、今後の工事プロジェクトで想定外のコスト増や不採算工事が発生した場合、再び利益を圧迫する可能性がある。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

瀧上工業は、主に以下の5つの事業セグメントで構成されている

  • 鋼構造物製造事業: 橋梁や鉄骨の製造・設置を行う主力事業。
  • 不動産賃貸事業: 賃貸マンションなどの不動産を保有し、賃貸収益を得る事業。
  • 材料販売事業: 鋼材の販売を行う事業。
  • 運送事業: 主に自社製品の運送を担う事業。
  • 工作機械製造事業: 自動車用設備等の製造を行う事業。

ビジネスモデルの評価

瀧上工業の売上は、主に「完成工事高」として計上されるため、その収益モデルは単純化すると以下のようになる。

売上高 = 契約件数 × 1件あたりの平均契約金額

このモデルの強みは、大型の橋梁工事など、1件あたりの契約金額が大きく、利益貢献度が高い案件を受注できれば、短期間で大幅な業績向上を実現できる点にある。しかし、同時に、その脆弱性も明らかである。それは、大型案件の受注タイミングに業績が大きく左右されるという「プロジェクト型ビジネス」特有の不安定性である。安定収益源である不動産賃貸事業の成長はこれを補完する動きとして評価できるが、企業全体の収益を支えるには規模がまだ小さい

競争優位性としては、長年にわたる橋梁・鉄骨製造の実績と技術力、そして高い品質管理能力が挙げられる。これにより、公共事業など高い信頼性が求められる市場で一定の参入障壁を築いていると推測される。しかし、競合他社も同様の強みを持つ企業が多く、特に鉄骨工事においては価格競争が激しい

競争環境

鋼構造物製造市場は、複数の大手企業がシェアを争う成熟市場であり、瀧上工業は中堅の一角を占めている。主要な競合としては、宮地エンジニアリング、横河ブリッジ、川田テクノロジーズなどが挙げられる。

  • 相対的な強み: 瀧上工業は、橋梁だけでなく鉄骨やその他事業を組み合わせたポートフォリオを持つことで、特定の市場変動リスクを分散している。特に不動産賃貸事業は、不景気時でも安定したキャッシュフローを生み出す貴重な事業である。
  • 相対的な弱み: 競合他社と比較して、技術開発への大規模な投資や、海外市場への積極的な進出といった成長戦略の実行力に課題が見られる。また、第1四半期の受注動向が示すように、大型案件の受注競争においては、不利な立場に置かれるリスクがある。

3. 業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析

項目2026年3月期1Q (百万円)2025年3月期1Q (百万円)前年同期比 (増減率%)備考
売上高5,460 6,027 △9.4%主力の鋼構造物製造事業の減少が影響
営業利益165 △87 黒字転換橋梁工事の収益改善、不動産事業の増収
経常利益528 201 162.7%増営業外収益の増加が寄与
親会社株主に帰属する四半期純利益351 154 127.2%増特別利益の計上も貢献

営業利益のブリッジ分析

前年同期の営業損失87百万円から当期営業利益165百万円への変動要因を分解する。

  • 前年同期営業損失: △87百万円
  • 変動要因:
    • 売上数量/ミックス変動: 売上高が5.67億円減少したことによるマイナス影響。特に鉄骨工事の減少が大きかった。
    • 価格/原価率変動:
      • 鋼構造物製造事業では、橋梁工事の設計変更獲得および保全工事の収支改善が利益を押し上げた。
      • 一方で、鉄骨工事では工事損失引当金の追加計上が利益を低下させた。
      • 材料販売事業では、外注費や輸送費の上昇が利益を圧迫した。
      • これらの相殺の結果、完成工事総利益は2.55億円増加した。
    • 販管費変動: 販売費及び一般管理費は前年同期の5.01億円から5.03億円へほぼ横ばいで推移した。
  • 当期営業利益: 165百万円

この分析から、当期の黒字転換は、売上高の減少を上回る原価率の改善(完成工事総利益の増加)が最大の要因であることが明らかになる。特に橋梁工事の設計変更による一時的な収益獲得が寄与しており、この利益水準が恒常的に維持できるかには疑問が残る。

収益性の深掘り

  • 粗利率: 当期の完成工事総利益率は12.2% (6.68億円 ÷ 54.60億円) となり、前年同期の6.8% (4.13億円 ÷ 60.27億円) から大幅に改善している。これは、橋梁工事における収益改善が大きく影響している。
  • 営業利益率: 営業利益率は3.0% (1.65億円 ÷ 54.60億円) であり、前年同期の△1.4%から改善している。しかし、これは売上高の減少と原価率改善の組み合わせによるものであり、売上高が回復した場合にこの利益率が維持できるかは不透明である。

B/S分析

項目2026年3月期1Q末 (百万円)2025年3月期末 (百万円)前期末比 (増減率%)備考
総資産63,273 64,177 △1.4%
純資産43,599 43,265 0.8%増
自己資本比率68.9% 67.4% 1.5pt改善

自己資本比率が68.9%と非常に高く、財務の安全性は極めて高い水準にある。これは、多額の純資産と、借入金が少ない健全な財務体質を反映している

運転資本の分析

CCC (キャッシュ・コンバージョン・サイクル) を構成する指標を算出する。

  • 売上債権回転日数 (DSO):売上債権 ÷ (売上高 ÷ 91日)
    • 2025年3月期末: 16,632 ÷ (23,840 ÷ 365) = 255日 (参考値)
    • 2026年3月期1Q末: 15,891 ÷ (5,460 ÷ 91) = 265日 (概算)
  • 棚卸資産回転日数 (DIO):棚卸資産 ÷ (売上原価 ÷ 91日)
    • 2025年3月期末: (190+800+490) ÷ (17,998 ÷ 365) = 30.2日 (参考値)
    • 2026年3期1Q末: (130+694+546) ÷ (4,791 ÷ 91) = 25.8日 (概算)
  • 仕入債務回転日数 (DPO):仕入債務 ÷ (売上原価 ÷ 91日)
    • 2025年3月期末: 4,457 ÷ (17,998 ÷ 365) = 90.4日 (参考値)
    • 2026年3月期1Q末: 3,590 ÷ (4,791 ÷ 91) = 68.3日 (概算)
  • CCC:DSO + DIO - DPO
    • 2025年3月期末: 255 + 30.2 - 90.4 = 194.8日
    • 2026年3期1Q末: 265 + 25.8 - 68.3 = 222.5日

CCCは前期末から悪化している。これは、売上債権回転日数の長期化と、仕入債務回転日数の短期化が主な要因である。特に、売上債権の回収期間が長期化している点は懸念材料であり、今後のキャッシュフロー創出能力に影響を与える可能性がある。棚卸資産回転日数は改善しているが、これは売上高の減少と関連している可能性があり、在庫の質についてさらに踏み込んだ分析が必要となる。

キャッシュフロー(C/F)分析

決算短信に四半期連結キャッシュ・フロー計算書は含まれていないが、一部の注記から情報を読み取ることが可能である

  • 営業CFと純利益の乖離 (アクルーアル): 純利益3.51億円に対して、減価償却費が2.13億円計上されている。また、運転資本の変動もC/Fに影響を与える。特に、売上債権の長期化は営業CFを圧迫する要因となる。詳細なC/F計算書がないため断定はできないが、利益の質は改善しているものの、運転資本の悪化により営業キャッシュフローの創出は利益ほどには力強くない可能性がある。

資本効率性の評価

  • ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト): ROICはEBIT(1-実効税率) ÷ 投下資本で計算される。当期の営業利益(EBIT)は1.65億円。投下資本は、有利子負債と株主資本の合計と仮定する。有利子負債は短期借入金と長期借入金の合計で35.8億円。株主資本は435.99億円。投下資本は471.79億円。ROICは1.65億円 × (1-約30%) ÷ 471.79億円 = 約0.24%となる。これはWACC(一般的に数%)を大きく下回る水準であり、現状、企業価値を積極的に創造しているとは言えない。
  • ROE(自己資本利益率)のデュポン分解:
    • ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
    • 純利益率: 3.51億円 ÷ 54.60億円 = 6.4%
    • 総資産回転率: 54.60億円 ÷ 632.73億円 = 0.086回
    • 財務レバレッジ: 632.73億円 ÷ 435.99億円 = 1.45倍
    • ROE (概算): 6.4% × 0.086 × 1.45 = 0.8%

この分析から、当期のROEは、高い利益率が貢献しているものの、資産回転率が極めて低いことが全体のROEを押し下げている主要因であることがわかる。これは、多額の固定資産を抱えながら、それが十分に売上創出に繋がっていないことを示唆しており、資本効率の改善が喫緊の課題である。

4. 核心:セグメント情報の徹底解剖

セグメント名売上高 (百万円)前年同期比 (増減率%)利益/損失 (百万円)前年同期比 (増減率%)貢献度 (売上)
鋼構造物製造事業4,735 △9.1% 119 黒字転換86.7%
不動産賃貸事業271 21.7%増 136 5.6%増 5.0%
材料販売事業344 △9.9% △14 赤字転落6.3%
運送事業76 (計) △41.7% (外部) △4 赤字転落0.7% (外部)
工作機械製造事業62 417.3%増 △8 損失幅拡大1.1%

好調セグメント(不動産賃貸事業)

不動産賃貸事業は、昨年6月末に賃貸を開始したマンションが主な増収要因となり、売上高が21.7%増、営業利益が5.6%増と堅調に推移している。この事業は、主力事業とは異なる安定した収益源として、企業のポートフォリオにおいて重要な役割を果たしている。

不振セグメント(材料販売事業、運送事業、工作機械製造事業)

  • 材料販売事業: 厚板部門の外販数量減少や、レベラー部門における外注費・輸送費の上昇、鉄筋建材部門の建設需要減退により、売上高は減少し、営業赤字に転落した。
  • 運送事業: 主要顧客である自社製品の現場工程の延期により、グループ間取引が大幅に減少し、営業赤字に転落した。
  • 工作機械製造事業: 2025年6月30日をもって解散が決定しており、当第1四半期が最終事業期間となった。売上は増加したものの、営業利益の確保には至らなかった。

主力事業の評価(鋼構造物製造事業)

売上高は減少したものの、営業損失から黒字に転換した点は評価できる。しかし、最も懸念すべきは、総受注高が前年同期比で70.2%減の5.1億円に留まったことである。これは、将来の売上を担保する受注が大幅に細っていることを意味しており、今後、大型案件の受注がなければ、第2四半期以降の売上高の回復は困難である。また、工事損失引当金の追加計上があったことからも、依然として不採算工事のリスクを抱えていることが伺える

ポートフォリオ・マネジメントの評価

瀧上工業の事業ポートフォリオは、主力事業である鋼構造物製造事業の変動リスクを、安定収益源である不動産賃貸事業で一部補完するという構造になっている。しかし、材料販売事業や運送事業が赤字に転落しており、これらの非主力事業が全体としてシナジーを生み出すどころか、むしろ全体の収益性を圧迫している状況である。工作機械製造事業の解散は、不採算事業からの撤退として評価できるが、残る赤字事業に対する抜本的な構造改革が求められる。

5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

瀧上工業は、2026年3月期の連結業績予想を第2四半期累計期間および通期ともに修正していない

  • 第1四半期の実績:
    • 売上高: 54.60億円
    • 営業利益: 1.65億円
  • 通期計画:
    • 売上高: 230.00億円
    • 営業利益: 2.50億円

第1四半期の実績は、売上高が通期計画の約23.7%、営業利益が約66.0%の進捗率となっている。営業利益の進捗は非常に高く、一見すると通期計画達成は容易であるように見える。しかし、これは前述の通り、鋼構造物製造事業における一時的な収益改善が大きく寄与した結果であると推察される

懸念点は、主力事業である鋼構造物製造事業の受注が大幅に減少していることである。売上高は今後、受注残高の消化が進むにつれて減少していく可能性が高い。経営陣は、第1四半期の受注状況が通期計画に与える影響を十分に織り込んだ上で、計画を据え置いたと判断できる。これは、第2四半期以降に大型案件の受注を見込んでいるか、あるいは第1四半期の利益水準が恒常的に続くと楽観視しているかのいずれかである。しかし、後者の可能性は低いと考えるべきであり、今後の受注動向が通期計画達成の鍵を握っている。

経営陣の需要予測能力は、第1四半期の売上高減少と受注の急減を見る限り、必ずしも正確であったとは言えない。通期計画を据え置くという判断は、今後の受注見通しに強い自信を持っていることの表れとも取れるが、一方で、市場に対してリスクを過小評価している可能性も否定できない。

6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

基本シナリオ(蓋然性60%)

  • 前提条件: マクロ経済は横ばいで推移し、建設需要は緩やかに減速する。第2四半期以降に中規模の橋梁工事を受注するが、大型案件の獲得には至らない。不動産賃貸事業は安定的に収益を確保する。不採算事業の構造改革は緩やかに進む。
  • 売上・利益の予測レンジ:
    • 売上高: 210億~230億円
    • 営業利益: 1.5億~2.5億円
  • トリガー: 中規模案件のコンスタントな受注、不動産事業の安定成長。

強気シナリオ(蓋然性20%)

  • 前提条件: 政府のインフラ投資加速政策が具体化し、大型橋梁工事の新規発注が急増する。瀧上工業がそのうちの複数の大型案件を受注する。材料販売事業や運送事業の抜本的なコスト削減に成功する。
  • 売上・利益の予測レンジ:
    • 売上高: 240億~260億円
    • 営業利益: 3.0億~4.0億円
  • トリガー: 大規模インフラプロジェクトの受注、不採算事業からの撤退や事業売却、大幅なコスト削減策の実行。

弱気シナリオ(蓋然性20%)

  • 前提条件: 建設需要が想定以上に減速し、大型案件の受注が全くない状況が続く。主力の鋼構造物製造事業の売上高が大幅に減少し、収益性が悪化する。工事損失引当金の追加計上が発生し、利益を圧迫する。
  • 売上・利益の予測レンジ:
    • 売上高: 190億~210億円
    • 営業利益: 0億~1.0億円
  • トリガー: 新規受注の不振が継続すること、建設需要の急激な減退、原材料価格の高騰、不採算工事の発生。

7. バリュエーション(企業価値評価)

  • 相対評価法:
    • PER: 競合他社(宮地エンジニアリング、横河ブリッジ)のPERが概ね10倍~15倍で推移していることを考慮すると、瀧上工業の予想PERは、通期予想純利益6.00億円と発行済株式数2,697,600株から計算すると、一株当たり純利益は222.4円。仮にPER10倍とすれば、株価は2,224円。現在の株価がこれを上回るか下回るかで評価は分かれる。しかし、今回の純利益は一時的な要因が大きく、PER比較は慎重に行う必要がある。
    • PBR: 自己資本比率が68.9%と高水準であるため、PBRが1倍を下回る水準であれば割安と判断できる。競合他社と比較しても、財務の健全性は高い。
    • 結論: 健全なB/Sと安定事業を持つことから、PBRは競合他社と比較してプレミアムで評価される可能性がある一方で、主力事業の不安定性からPERはディスカウントされる可能性がある。
  • 絶対評価法:
    • 簡易的なDCF法を試算する。
    • WACC: 借入金が少ないため、株主資本コストが支配的。株主資本コストを仮に7%と仮定する。WACCも約7%と仮定。
    • 永久成長率: 日本のGDP成長率を参考に、1%と仮定。
    • FCF: 営業CFから投資CFを差し引いたFCFを予測するが、第1四半期C/Fデータがないため、今回は割愛する。しかし、前述のROICの低さから、企業価値はWACCを上回るリターンを創出できていない可能性が高い。

8. 総括と投資家への提言

瀧上工業の2026年3月期第1四半期決算は、前年同期比で大幅な利益改善を達成したものの、その背景にある構造的な課題を無視することはできない。核心的な投資魅力は、盤石な財務基盤と、安定収益源である不動産賃貸事業の存在である。しかし、最大の懸念事項は、企業の成長ドライバーである主力事業の受注が大幅に減少している点である。このまま受注不振が続けば、第2四半期以降の売上高に大きな影響を与え、通期計画の達成を困難にする可能性がある。

投資スタンス: 現状の不確実性を鑑み、中立を維持する。

今後の株価動向を監視する上で、投資家が注視すべき最重要KPIとイベント:

  1. 鋼構造物製造事業の総受注高: 特に第2四半期以降の四半期ごとの受注動向を注視する。通期計画の売上を達成するためには、大型案件の受注が不可欠である。
  2. 運転資本の変動(CCC): 特に売上債権回転日数と仕入債務回転日数の推移を監視し、キャッシュフロー創出能力に悪影響が出ていないかを確認する。
  3. 不採算事業の動向: 材料販売事業や運送事業における赤字が継続するか、または改善が見られるかを注視する。これらの事業に対する経営陣の具体的な構造改革策の発表も重要なイベントとなる。
  4. 通期業績予想の修正有無: 第2四半期決算発表時に、受注動向を踏まえた通期予想の修正が行われるかどうかに注目する。予想を下方修正した場合、株価にはネガティブな影響を与えるだろう。
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