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決算分析レポート:株式会社ユニリタ (3800) 2026年3月期 第1四半期

1. エグゼクティブ・サマリー(結論ファースト)

投資スタンス:中立(確信度:65%)

株式会社ユニリタの2026年3月期第1四半期決算は、増収増益を達成し、特に営業利益が前年同期比57.6%増と大幅な成長を見せました。しかし、この利益成長は、プロダクトサービス事業におけるメインフレーム向けライセンス販売の伸長や、プロフェッショナルサービス事業における高付加価値案件への転換による収益性向上といった一時的な要因に大きく依存している可能性があります。一方で、将来の成長を牽引すべきクラウドサービス事業では、期待される新サービスの受注が鈍く、売上が微増に留まるなど、事業間の成長性にばらつきが見られます。通期業績予想は据え置かれており、第1四半期の好調な滑り出しはポジティブですが、今後の利益成長の持続可能性と、成長事業への投資がどのように収益に結びつくかを慎重に見極める必要があります

3行サマリー:

  • 何が起きたのか: 第1四半期は増収増益を達成し、特に営業利益が大幅に伸長した。
  • なぜそれが重要なのか: 利益成長の主な要因は既存事業の好調と収益性改善であり、今後の成長ドライバーとなるはずのクラウド事業の新サービスは立ち上がりが鈍い。
  • 次に何を見るべきか: 通期計画に対する進捗度合いと、クラウド事業における「Waha! Transformer」や「DigitalWorkforce」などの新サービスの受注動向を注視する必要がある。

主要カタリストとリスク:

ポジティブ・カタリスト:

  1. クラウドサービス事業の成長加速: 「Waha! Transformer」の生成AI連携サービスや「DigitalWorkforce」の受注が本格的に増加し、クラウドサービス事業の収益性が改善した場合。
  2. 既存プロダクトの継続的な高収益性: メインフレーム向けライセンス販売が引き続き好調を維持し、高利益率を維持した場合。
  3. 高付加価値案件への転換成功: プロフェッショナルサービス事業において、Salesforceプラットフォームでの開発受託のような高付加価値案件への転換がさらに進み、全社的な利益率を押し上げた場合。

ネガティブ・リスク:

  1. クラウドサービス事業の不振継続: 新サービスの受注が依然として鈍く、競争激化によりクラウド事業全体の成長が停滞した場合。
  2. 既存事業の需要減速: 既存顧客のIT基盤増強需要が一巡し、プロダクトサービス事業のライセンス販売が減速した場合。
  3. 人件費増加による利益率圧迫: 高付加価値案件へのシフトに伴う人件費増や、DX人材確保のための採用コストが増加し、利益率を圧迫した場合。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

株式会社ユニリタは、情報システム基盤ソフトウェアの開発・販売・保守を行う「プロダクトサービス」、クラウド環境でのサービス提供を行う「クラウドサービス」、そしてシステム開発・コンサルティングを行う「プロフェッショナルサービス」の3つのセグメントを主軸としています

ビジネスモデルの評価:

  • プロダクトサービス事業: メインフレーム向けのソフトウェアライセンス販売が主たる収益源です。このモデルの強みは、一度導入されるとスイッチングコストが高く、安定した保守収益が見込める点にあります。売上は売上高 = ライセンス販売単価 x 顧客数 + 保守サービス料で表現でき、ライセンス販売は初期の大きな収益を、保守サービスは継続的な収益をもたらします。脆弱性は、メインフレーム市場の縮小傾向や、既存顧客のIT投資サイクルに業績が左右される点です。
  • クラウドサービス事業: IT部門向けクラウドサービスやデータ連携ツール「Waha! Transformer」、ワークフロー製品「DigitalWorkforce」などが中心です。これはSaaS(Software as a Service)に近いモデルで、月額・年額の利用料が収益の主体です。売上は売上高 = 月額利用料 x 顧客数となります。このモデルの強みは、収益の安定性とサブスクリプションモデルによるLTV(顧客生涯価値)の高さです。一方で、競争が激しく、新規顧客獲得コスト(CAC)が課題となるほか、解約率(チャーンレート)の管理が重要となります。
  • プロフェッショナルサービス事業: システム開発やコンサルティングサービスを提供しています。売上は売上高 = 開発・コンサルティング単価 x プロジェクト数となります。このモデルは顧客の課題解決に直接貢献するため単価が高くなりやすい一方で、収益はプロジェクトの受注動向に大きく左右され、景気変動の影響を受けやすいという脆弱性があります。

競争環境:

ユニリタの各事業セグメントは、それぞれ異なる競争環境に置かれています。プロダクトサービス事業は、メインフレーム市場のニッチな領域で、既存顧客基盤を背景に安定した地位を築いています。クラウドサービス事業では、国内外のSaaSベンダーが多数参入しており、競争は非常に激しいです。特に「LMIS」や「Waha! Transformer」などの製品は、類似の機能を持つ多くの競合と差別化を図る必要があります。プロフェッショナルサービス事業では、大手SIerやコンサルティングファーム、特定のプラットフォーム(Salesforceなど)に特化したベンダーとの競争に直面しています。ユニリタの強みは、長年にわたるIT基盤構築で培った技術力と顧客との信頼関係ですが、これをいかに新しいクラウド・プロフェッショナルサービスへ展開できるかが鍵となります。

3. 業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析:

項目2026年3月期1Q (百万円)2025年3月期1Q (百万円)対前年同期増減率 (%)
売上高2,9392,840+3.5%
営業利益229145+57.6%
経常利益362285+26.9%
四半期純利益219175+25.0%

売上高は前年同期比3.5%増と堅調に推移しました。特筆すべきは、売上高の伸びを大幅に上回る営業利益の伸び(+57.6%)です。これは、売上原価が減少したことや、販管費の伸びが売上高の伸びを下回ったことによる、収益構造の改善を示唆しています

営業利益のブリッジ分析(2025年3月期1Q → 2026年3月期1Q):

  • 2025年3月期1Q 営業利益:145百万円
  • ① 売上高増減要因: 売上高は99百万円増加しました。セグメント別の貢献度を見ると、プロダクトサービスが64百万円増、クラウドサービスが37百万円増、プロフェッショナルサービスが2百万円減となっています。
  • ② 売上原価・粗利率変動要因: 売上原価は1,263百万円から1,235百万円へと28百万円減少しており、売上総利益は1,577百万円から1,704百万円へと127百万円増加しました。売上総利益率を見ると、前年同期の55.5%から58.0%へと2.5pt改善しています。この改善は、主に高収益なプロダクトサービス事業の売上構成比が増加したことと、プロフェッショナルサービス事業での高付加価値案件への転換が進んだことに起因すると考えられます。
  • ③ 販管費変動要因: 販管費は1,431百万円から1,474百万円へと43百万円増加しました。この増加は主に給料及び手当が41百万円増加したことによるものです。しかし、売上高増加率(3.5%)と比較して、販管費増加率(3.0%)は低く抑えられており、増収効果が利益に貢献しています。
  • 2026年3月期1Q 営業利益:229百万円

B/S分析:

  • 総資産: 前期末比で5億20百万円増加し、158億87百万円となりました。主な増加要因は現金及び預金の5億29百万円増加と、流動資産その他の1億39百万円増加です。一方で、受取手形、売掛金及び契約資産は2億39百万円減少しました。
  • 負債: 前期末比で5億21百万円増加し、39億16百万円となりました。これは主に前受収益が5億65百万円増加したことによるものです。前受収益の増加は、将来の売上を約束する顧客からの先行的な支払いを意味し、今後の安定した収益源となることを示唆しており、非常にポジティブな兆候です。
  • 純資産: 前期末とほぼ同水準の119億70百万円で推移しました。配当金の支払い(2億65百万円)によって利益剰余金が減少したものの、四半期純利益の計上(2億19百万円)や、その他有価証券評価差額金の増加(50百万円)がこれを相殺しました。
  • 自己資本比率: 75.3%(前期末は77.9%)と依然として高い水準を維持しており、財務基盤の健全性を示しています。

運転資本の分析:

運転資本は売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務で計算されます。

  • 売上債権回転日数(DSO):売上債権 / (売上高 / 91日)
    • 2025年3月期1Q: 1,361,938千円 / (2,840,913千円 / 91日) = 43.6日
    • 2026年3月期1Q: 1,122,081千円 / (2,939,806千円 / 91日) = 34.8日 DSOは大幅に短縮しており、売上債権の回収効率が改善していることを示しています。これは、キャッシュフロー改善に大きく貢献します。
  • 棚卸資産回転日数(DIO):棚卸資産 / (売上原価 / 91日)
    • 2025年3月期1Q: 39,957千円 / (1,263,393千円 / 91日) = 2.9日
    • 2026年3月期1Q: 43,132千円 / (1,235,690千円 / 91日) = 3.2日 棚卸資産回転日数は微増ですが、元々非常に低い水準であり、大きな問題はありません。
  • 仕入債務回転日数(DPO):買掛金 / (売上原価 / 91日)
    • 2025年3月期1Q: 339,489千円 / (1,263,393千円 / 91日) = 24.5日
    • 2026年3月期1Q: 398,349千円 / (1,235,690千円 / 91日) = 29.3日 DPOは増加しており、支払サイトが延びていることを示しています。これは短期的なキャッシュフローを改善する要因となります。
  • キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC):DSO + DIO - DPO
    • 2025年3月期1Q: 43.6日 + 2.9日 - 24.5日 = 22.0日
    • 2026年3月期1Q: 34.8日 + 3.2日 - 29.3日 = 8.7日 CCCは大幅に短縮しており、現金を非常に効率的に回していることが分かります。これは、企業の短期的な資金繰りおよびキャッシュ創出力が大幅に改善したことを意味します。特にDSOの改善とDPOの増加がこの変化に大きく貢献しています。

キャッシュフロー(C/F)分析:

  • 当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていないため、詳細な分析は困難です。しかし、貸借対照表の現金及び預金の増減から、キャッシュフローの状況を推測することは可能です。現金及び預金は前期末から5億29百万円増加しており、営業活動によるキャッシュフローがプラスであったことが強く示唆されます。前受収益が大幅に増加していることから、質の高い営業キャッシュフローが創出されている可能性が高いと判断できます。

資本効率性の評価:

  • ROE(自己資本利益率)のデュポン分解:ROE = 純利益率 x 総資産回転率 x 財務レバレッジ
    • 2026年3月期1Q: (219百万円 / 2,939百万円) x (2,939百万円 / 15,887百万円) x (15,887百万円 / 11,970百万円) = 7.45% x 0.18 x 1.33 = 1.78% (年率換算: 7.12%)
    • 2025年3月期1Q: (175百万円 / 2,840百万円) x (2,840百万円 / 15,366百万円) x (15,366百万円 / 11,971百万円) = 6.16% x 0.18 x 1.28 = 1.42% (年率換算: 5.68%) ROEは前年同期から改善しています。これは主に純利益率の改善によるものであり、資産回転率と財務レバレッジはほぼ横ばいです。純利益率の改善は、売上高の増加率を上回る営業利益の増加と、受取利息・受取配当金といった営業外収益の貢献によるものです。
  • ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト)の評価:
    • ROIC = NOPAT / 投下資本。ここでは簡便的にROIC = 営業利益 x (1 - 税率) / (有利子負債 + 純資産)で計算します。
    • 2026年3月期1Qの年率換算営業利益は229百万円 x 4 = 916百万円、法人税率を仮に30%とすると、NOPAT = 916 x (1 - 0.3) = 641百万円
    • 有利子負債はB/S情報からは読み取れないため、仮にゼロとします。投下資本を純資産とすると、11,970百万円
    • ROIC ≈ 641百万円 / 11,970百万円 = 5.35%
    • WACCの計算には、詳細な株主資本コストや負債コストの前提が必要となりますが、現状の市場金利や企業の信用リスクを考慮すると、一般的にWACCは5%前後と推測されます。
    • ROIC(5.35%)はWACC(仮定値5%)をわずかに上回っていると推測され、現時点ではわずかながら企業価値を創造していると評価できます。しかし、このマージンは非常に薄く、今後の利益成長や資本効率の改善がなければ、WACCを下回るリスクも潜在しています。

4. セグメント情報の徹底解剖

株式会社ユニリタは、プロダクトサービス、クラウドサービス、プロフェッショナルサービスの3つのセグメントで構成されています

  • プロダクトサービス事業: 売上高は11億89百万円(前年同期比5.7%増)、営業利益は3億95百万円(同21.3%増)となりました。セグメント利益率は前年同期の29.0%から33.3%へと4.3pt改善しています。この好調は、既存顧客のIT基盤増強需要を受けたメインフレーム向けライセンス販売の伸長が主な要因です。この事業は高い利益率を誇り、全社利益を牽引する柱となっています。
  • クラウドサービス事業: 売上高は8億73百万円(前年同期比4.4%増)と微増に留まり、営業利益は1億43百万円の損失を計上しました。ただし、前年同期比では8百万円の損益改善となっています。主力製品である「LMIS」は受注増により売上が伸長したものの、「Waha! Transformer」の生成AI連携サービスは受注の立ち上がりが鈍く、「DigitalWorkforce」も売上が微増に留まりました。このセグメントは将来の成長ドライバーとして期待されていますが、投資先行の段階であり、収益貢献にはまだ時間を要すると考えられます。
  • プロフェッショナルサービス事業: 売上高は8億77百万円(前年同期比0.3%減)と微減しましたが、営業利益は52百万円(同180.1%増)と大幅な増益を達成しました。セグメント利益率は2.1%から6.0%へと3.9pt改善しています。これは、コンサルティングの好調に加えて、Salesforceプラットフォームでの開発受託など、高付加価値案件への転換が進んだことによるものです。売上高の減少を利益率の向上でカバーし、事業構造の転換が進んでいることが評価できます。

ポートフォリオ・マネジメントの評価:

ユニリタの事業ポートフォリオは、「高収益だが成長性が限定的なプロダクト事業」と、「投資先行で成長期待の高いクラウド事業」、そして「収益性が改善しつつあるプロフェッショナルサービス事業」という構成になっています。現在の全社的な利益は、依然としてプロダクトサービス事業が牽引しており、これをキャッシュカウとして、クラウドサービス事業への戦略的な投資を行っている構図が見て取れます。ただし、クラウド事業の新サービス(「Waha! Transformer」の生成AI連携など)の受注の立ち上がりが鈍い現状は懸念材料です。これは、市場の需要予測と製品開発のタイミングにズレが生じている可能性や、競争環境が想定以上に厳しい可能性を示唆しています。経営陣は、既存事業の収益性を維持しつつ、いかにクラウド事業を本格的な成長軌道に乗せるかという難しい舵取りを迫られています。

5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

2026年3月期の通期業績予想は、2025年5月13日に公表された第2四半期連結累計期間及び通期の連結業績予想から変更はありません

  • 売上高: 通期予想125億円に対して第1四半期実績は29.39億円、進捗率は23.5%です。
  • 営業利益: 通期予想10.5億円に対して第1四半期実績は2.29億円、進捗率は21.8%です。

第1四半期の進捗率は、売上高、営業利益ともに概ね順調と言えます。しかし、通期計画に対する進捗度合いだけで経営陣の需要予測能力を評価するのは早計です。特に、第1四半期はプロダクト事業のライセンス販売のような季節性を持つ可能性のある要因によって、一時的に利益率が高くなるケースも考慮する必要があります。経営陣は、クラウド事業の立ち上がり遅延を認識しつつも、既存事業の安定的な収益力と、下期以降の巻き返しを確信しているため、通期計画を据え置いたと考えられます。この判断の妥当性は、第2四半期以降のクラウド事業の受注動向、特に生成AI関連サービスが市場に浸透するかどうかにかかっています。もし下期もクラウド事業の不振が継続した場合、通期計画の未達リスクが高まり、経営陣の計画策定能力や実行力が市場から厳しく評価される可能性があります。

6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

強気シナリオ:

  • 前提条件:
    • 日本経済のDX投資需要が継続し、企業のIT基盤増強投資が活発化する。
    • クラウドサービス事業の「Waha! Transformer」生成AI連携サービスが市場で評価され、大型受注が複数件獲得される。
    • プロフェッショナルサービス事業の高付加価値案件への転換がさらに加速する。
  • 予測レンジ:
    • 売上高:130億円~135億円
    • 営業利益:12億円~14億円
  • カタリスト:
    • クラウド事業における戦略的パートナーシップの発表。
    • 生成AI関連サービスに関する大手企業からの導入事例のプレスリリース。
    • 既存プロダクトのライセンス販売が計画を上回るペースで継続。

基本シナリオ:

  • 前提条件:
    • 現在のマクロ環境が継続し、既存事業は安定成長、クラウド事業は緩やかに成長する。
    • 通期計画は達成されるが、クラウド事業の収益貢献は限定的。
  • 予測レンジ:
    • 売上高:125億円~130億円
    • 営業利益:10.5億円~12億円
  • カタリスト:
    • 第2四半期決算でクラウド事業の進捗に改善が見られる。
    • コスト削減策が奏功し、販管費の増加率が売上高増加率を下回り続ける。

弱気シナリオ:

  • 前提条件:
    • 景気減速により、企業のIT投資が抑制される。
    • クラウド事業の「Waha! Transformer」などの新サービスが市場に受け入れられず、競争に敗北する。
    • プロダクトサービス事業のライセンス販売が減速し、保守収益のみとなる。
  • 予測レンジ:
    • 売上高:115億円~120億円
    • 営業利益:8億円~9億円
  • リスク:
    • 競合他社によるクラウドサービスの大幅な価格攻勢。
    • 生成AI関連技術の陳腐化や、新技術への対応の遅れ。
    • 人件費や開発費の増加が、利益成長を上回るペースで進行。

7. バリュエーション(企業価値評価)

  • 相対評価法: ユニリタのPER(株価収益率)は、通期予想EPS(111.84円)と株価(仮に2,000円)から計算すると、2,000円 / 111.84円 = 17.8倍となります。PBR(株価純資産倍率)は、通期予想BPS(1,577.80円)から計算すると、2,000円 / 1,577.80円 = 1.27倍となります。 競合他社と比較すると、PERはITサービスセクターの平均(一般的に20~30倍)を下回っており、PBRも1.27倍と、特別に割高な水準ではありません。これは、既存事業への依存度が高く、成長性の不確実性(クラウド事業の立ち上がり遅延)がディスカウント要因となっている可能性があります。
  • 絶対評価法(簡易DCF法):
    • FCF(フリーキャッシュフロー)の試算: FCF = NOPAT - 投資
    • 基本シナリオに基づく来期(2027年3月期)のNOPATを、今期予想の10%増と仮定すると、10.5億円 x (1 - 0.3) x 1.1 = 8.08億円
    • 成長への投資額(CAPEX)を年間2億円と仮定すると、FCF = 8.08億円 - 2億円 = 6.08億円
    • WACC: 5.0%と仮定。
    • 永久成長率(g): 1.0%と仮定。
    • 継続価値(Terminal Value): FCF / (WACC - g) = 6.08億円 / (0.05 - 0.01) = 152億円
    • 企業価値: 来期FCF + 継続価値 = 6.08億円 + 152億円 = 158.08億円
    • 理論株価: (企業価値 - 有利子負債) / 発行済株式数 = (158.08億円 - 0) / 7,587,100株 = 2,083円
    この簡易的な試算では、理論株価は約2,083円となり、現在の株価水準(仮定2,000円)からわずかに上回る程度です。この結果は、市場が織り込んでいる成長シナリオと大きく乖離していないことを示唆しており、現状の株価は妥当な水準にあると判断できます。

8. 総括と投資家への提言

株式会社ユニリタの2026年3月期第1四半期決算は、既存事業の好調と収益性改善により、市場予想を上回る堅調な結果となりました。しかし、この利益成長は、将来の成長エンジンとなるべきクラウドサービス事業の立ち上がりの鈍さを覆い隠している可能性があります

現在の経営判断は、既存事業で稼いだキャッシュを成長領域に再投資するという堅実なものですが、その投資が具現化する兆候がまだ乏しい状況です。株価は、既存事業の安定性によって下支えされる一方で、クラウド事業の不確実性が上値を抑える展開が予想されます。

投資スタンス:中立

今後の株価動向を判断する上で、投資家が注視すべき最重要KPIやイベントは以下の通りです。

  1. クラウドサービス事業の受注動向: 「Waha! Transformer」や「DigitalWorkforce」といった主要製品の受注が本格的に増加し、セグメント売上高の成長率が加速するかどうか。特に、生成AI関連サービスが市場に浸透し、実績として示されるかが重要です。
  2. 前受収益の継続的な増加: 前受収益は今後の安定した売上を占う先行指標です。第2四半期以降も前受収益が増加し続けるか、その増加率が売上高増加率を上回るか否かを注視すべきです。
  3. 通期業績予想の修正有無: 第2四半期決算発表時に、経営陣が通期計画を上方修正するかどうかに注目します。特に、既存事業の好調が継続する場合、保守的な計画を上方修正する可能性があり、これがポジティブ・カタリストとなります。逆に、クラウド事業の不振が顕著となり、下方修正に踏み切った場合は、弱気シナリオの蓋然性が高まります。
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