株式投資の世界では、ある戦略として「損出し」が知られています。この手法は、実際に発生している含み損の銘柄を敢えて手放すことで、実損を確定し、その結果として支払うべき税金を戦略的に減少させることを目的としています。
損出しを利用することで、本来支払わなければならなかった税金をある程度削減することが可能となります。
ただ、この手法を上手に活用するためには、いくつかのキーとなるポイント、例えば「銘柄を再度購入するタイミング」や「損出しの期間」など、気を付けるべき点が存在します。
この解説では、「損出し」の背後にあるメカニズムやその正しい活用方法、さらには「損切り」との細かな違いや注意すべき点について詳しくお伝えします。
「損出し」の知識を深めることで、より賢い投資を行いましょう。
「損出し」の詳しいメカニズム 「損出し」の基礎を理解するため、その具体的なメカニズムや「損切り」との微妙な違いを見ていきましょう。
含み損を実際の損失として確定させ、税金の軽減を狙う 株式投資における「損出し」とは、実際の損失として含み損を確定することで、利益を減少させ、結果として支払う税金を削減する戦略です。
株式投資での売却益や配当には、一律で20.315%の税金が課せられます。
例を挙げると、もし利益として+50万円が確定しており、同時に-30万円の含み損を持つ銘柄があった場合、その年をそのまま終わらせると、確定利益の50万円に対しての税金、約10万円が発生します。
しかし、その-30万円の含み損を「損出し」すると、利益と損失を通算して「+50万円-30万円」の20万円となり、その結果、税金は約4万円にとどまります。この手法を用いなかった場合と比較すると、約6万円の税金の節約が見込めます。
売却後の銘柄を翌日以降に再度購入することで、新たな運用を開始することが可能です。このような取引のタイミングは、年の終わりが一般的とされています。
「損切り」との細かな違い 「損出し」と「損切り」、似たような言葉ですが、その目的は大きく異なります。
損出し:税金の節約を目的とし、一時的に含み損を確定する 損切り:銘柄の価格動向が期待通りでない場合、さらなる損失を回避する目的で、含み損を確定する 基本的に、損切りは銘柄の価格が予想外の動きを示した時に、さらなる損失を避けるために行う行動です。
すでに利益が上がっている場合には、どちらの手法を選ぶかに関わらず、税金の節約効果が期待できます。しかし、それぞれの手法が持つ目的の違いを理解することが、賢い投資をする上での鍵となります。
損出しの正しいやり方と注意点
1. 損出しの手順
- 銘柄の損失を確定させる: 含み損が発生している銘柄を売却し、損失を確定させます。利益確定している金額があることが前提です。
- 翌営業日以降に買い戻す: 損出しを行った後、その銘柄を翌営業日以降に買い戻すことで節税効果を最大限に発揮します。
2. 損出しの成功例と失敗例
- 成功例: 取得単価500円の銘柄を300円で売却し、翌営業日に同じ銘柄を300円で買い戻す。これにより、取得単価300円で運用を再開できる。
- 失敗例: 同一営業日に300円で銘柄を買い戻すと、取得単価は400円となり、節税効果が半減する。
3. 損出しのデメリット・注意点
- 株価の変動リスク: 売却後から買い戻すまでの間に株価が変動するリスクがあります。
- 売買手数料: 損出しを行うためには2度の売買手数料が発生します。
- NISA口座非対応: NISA口座での損出しは節税効果がなく、売買手数料のみが発生するため不適切です。
- 株主優待の保有期間リセット: 損出しを行うと、株主優待の保有期間がリセットされる可能性があります。
損出しは、節税効果を最大限に活かすための戦略の一つですが、上記の注意点をしっかりと理解し、適切に取引を行うことが求められます。適切な判断と計画に基づき、損出しを実行してください。
損出しの期限とそのタイミング
損出しを行う場合、最終取引日(大納会)の2営業日前までが期限となります。つまり、大納会が12月30日の場合、12月28日までに損出しの手続きを完了させる必要があるということです。具体的なタイミングとしては、11月下旬から12月上旬にかけて検討を開始するのがおすすめです。期限ギリギリでの損出しはリスクが高く、損益計算に手間取ったり、株価の変動によって損出しの最適なタイミングを逃してしまう可能性が高まります。
損出し後の確定申告について
損出しを行った後の確定申告に関しては、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、確定申告の必要はありません。特定口座では証券会社が損益計算や税金の計算、納税手続きを代行してくれるため、手間が省けます。源泉徴収ありの特定口座で損を出した場合、還付される税金も自動的に手続きされます。
一方、繰越控除や複数口座間の損益通算を行いたい場合は、確定申告が必要です。繰越控除は、損益がマイナスになった年の確定申告で行うことで、その損失を3年間繰り越して控除することが可能です。さらに、異なる証券会社間での損益通算も確定申告を通じて行う必要があります。自動的に損益通算はされないため、手続きを忘れずに行いましょう。
損出しの適切な活用で節税を実現
損出しは賢い投資戦略の一部として、節税効果を最大化するための重要な手段です。
売却した株を翌営業日に再度買い戻すアクションや、年内に損出しをする際は大納会の2営業日前までに完了させるなど、損出しを行う際のルールを確実に理解しておくことが必要です。
適切な損出し戦略を採用することで、納税額を数万円、場合によってはそれ以上の範囲で削減することが可能となります。
本文で触れた損出しの方法やポイントを活かし、賢い投資と節税の両立を目指していきましょう。