1. エグゼクティブ・サマリー(結論ファースト)
投資スタンス:中立(確信度60%)
本レポートは、株式会社Sun Asterisk(以下、「Sun*」または「同社」)の2025年12月期第2四半期決算資料および決算短信を分析したものである。同社は売上高こそ堅調に成長しているものの、収益性の著しい悪化とそれに伴う通期業績予想の下方修正を発表した。これは、特定の不採算プロジェクトの長期化と、それに伴うリソース配分の問題に起因するものであり、一時的な問題であるという経営陣の説明を評価しつつも、組織的な脆弱性を露呈したと捉えるべきである。
売上高は前年同期比で増加した一方で、営業利益は同42.8%減、経常利益も35.2%減と大幅な減益となった 。この減益の主因は、特定の不採算プロジェクトの継続と、それに伴う外部パートナーの利用増による売上原価の増加である 。通期予想についても、売上高、売上総利益、営業利益ともに下方修正された 。
3行サマリー:
- 事実: 2025年12月期第2四半期は、売上高は増加したものの、特定プロジェクトの売上原価増加により大幅な減益を記録し、通期業績予想を下方修正した 。
- 本質: 成長の主要な柱であるクリエイティブ&エンジニアリング事業において、不採算プロジェクトへのリソース集中が発生し、新規案件獲得が遅延したことが、収益悪化の根本原因である。これは、同社のリソース配分とプロジェクト管理体制に構造的な課題が存在する可能性を示唆している 。
- 注目点: 今後、不採算プロジェクトが計画通り第4四半期に終了し、利益率が改善するか 、また、下期に新規案件獲得が回復し、通期計画を達成できるかどうかに注目する必要がある。
主要カタリストとリスク:
- 主要カタリスト:
- 不採算プロジェクトの計画通りの終了: 計画通り第4四半期に当該プロジェクトが終了すれば、利益率の急回復が期待される 。
- AI関連事業の収益貢献: AIを活用した社内業務改革や顧客向け事業変革支援の取り組みが、具体的な大型案件の獲得と収益増加に繋がれば、新たな成長ドライバーとなる 。
- グローバルギアとのシナジー創出: カジュアルゲーム事業のグローバルギア社を子会社化したことによる、エンターテイメント領域での収益拡大 。
- 主要リスク:
- 不採算プロジェクトのさらなる長期化: 第4四半期までの影響継続が見込まれているが 、さらに長期化した場合、収益性は一段と悪化し、成長戦略全体に影響を及ぼす。
- 新規案件獲得の遅延: 人的リソース不足が継続し、期初に想定していた水準の案件獲得が実現できなければ、売上高目標の達成は困難となる 。
- 為替変動リスク: ベトナムを主要な開発拠点とする同社にとって、円安は収益を押し上げる要因となるが 、為替市場の急激な変動は収益性の不安定化を招く可能性がある 。
2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り
Sun*は、
デジタル・クリエイティブスタジオ事業を単一セグメントで展開している 。この事業は、主に以下の3つのサービスラインから構成される 。
- Creative & Engineering(C&E): 顧客企業と新規事業やデジタルプロダクトを共創する、主力の収益源 。売上構成比は76%(2024年度実績) 。
- Talent Platform(TP): IT人材の発掘・育成・紹介を行う 。売上構成比は15%(2024年度実績) 。
- Incubationその他: デジタルコンテンツ製作やファンコミュニティシステム開発・運営など、自社事業を展開する 。売上構成比は9%(2024年度実績) 。
ビジネスモデルの評価: 同社のビジネスモデルは、デジタルプロダクト開発の知見(Creative & Engineering)と、開発に必要な人材の供給(Talent Platform)を垂直統合している点に独自性がある 。
- 売上モデルの数式:
- C&E事業売上 = ユニーク顧客数(継続・新規) x 月額平均顧客単価(ARPU) x 期間
- TP事業売上 = 契約数(SES・人材紹介) x 単価 x 期間
- 強み:
- 人材のサプライチェーン統合: ベトナムの有力大学との連携や自社での育成プログラム「xseeds」を通じて、継続的に優秀なIT人材を確保できるエコシステムを構築している 。これにより、需給が逼迫するIT人材市場において、安定した供給源を確保している 。
- 共創による高いスイッチングコスト: 単なる受託開発ではなく、顧客と事業を「共創」するモデルを掲げているため 、一度プロジェクトが始まると、顧客は同社のノウハウやチームに深く依存することになる。これにより、高いスイッチングコストが発生し、顧客継続率を高めている(月次平均取引継続率92.7%) 。
- 多角的な収益源: 主力事業のC&Eに加え、人材関連のTP事業、そしてコンテンツ開発のIncubation事業を持つことで、特定の事業に依存しないポートフォリオを構築している 。
- 脆弱性:
- 特定プロジェクトへの依存とリソース配分の問題: 今回の決算で顕在化したように、特定の大型プロジェクトが不採算となった場合、そのプロジェクトに人的リソースが集中し、新規案件獲得のためのリソースが不足するというリスクがある 。これは、売上高の成長と収益性の維持を両立させる上での大きな課題である。
- 外注費への依存: 不採算プロジェクトの売上原価が増加した背景には、外部パートナーの利用があった 。これは、自社の内部リソースだけで案件を賄いきれない構造的な課題、または、プロジェクトの専門性や規模に対応するための柔軟性の代償として、コストが増加するリスクがあることを示唆している。
競争環境: 同社の主要な競争相手は、国内のSIerやコンサルティングファーム、そしてデジタルプロダクト開発を専門とする競合企業である。
- vs 大手SIer/コンサルティングファーム:
- Sun*の強み: デザイン思考やアジャイル開発など、価値創造型のDXに強みを持つ 。大手SIerが請け負うような大規模な基幹システム刷新(課題解決型DX)とは異なり 、新規事業開発やプロダクト創出といった領域で差別化を図っている。
- Sun*の弱み: 顧客基盤やブランド力、財務基盤の規模では、大手には及ばない。
- vs デジタルプロダクト開発専業企業:
- Sun*の強み: ベトナムの自社拠点を活用したオフショア開発体制 と、教育機関との連携による一貫した人材供給エコシステムが最大の競争優位性である 。
- Sun*の弱み: 同様のサービスを提供する小規模な企業が多数存在するため、価格競争に巻き込まれるリスクがある。
3. 【最重要】業績ハイライトと徹底的な財務分析
P/L分析: 2025年12月期第2四半期(累計)の連結業績は、以下の通りである。
項目 | 2025年12月期中間期 | 2024年12月期中間期 | 増減額 | 増減率 |
売上高 | 7,058百万円 | 6,517百万円 | +541百万円 | +8.3% |
売上総利益 | 3,204百万円 | 3,432百万円 | ▲228百万円 | ▲6.6% |
営業利益 | 415百万円 | 727百万円 | ▲312百万円 | ▲42.8% |
経常利益 | 452百万円 | 697百万円 | ▲245百万円 | ▲35.2% |
親会社株主に帰属する中間純利益 | 347百万円 | 468百万円 | ▲121百万円 | ▲25.8% |
営業利益のブリッジ分析: 前年同期の営業利益727百万円から当期の営業利益415百万円への変動要因を分解すると、以下のようになる 。
- 増益要因:
- 増収効果: 540百万円の増益 。
- 為替影響: 126百万円の増益 。
- 減益要因:
- 売上原価増加: ▲836百万円の減益 。
- 販管費増加: ▲140百万円の減益(人件費65百万円、その他75百万円) 。
この分析から明らかなように、増収と為替影響による増益効果が合計666百万円あったにもかかわらず、それをはるかに上回る
売上原価の増加(▲836百万円)が、大幅な減益の最大の要因となっている 。特に、特定の不採算プロジェクトにおける外部パートナーの利用による外注費増加が、売上原価増加の主因であると明記されている 。
収益性の深掘り:
- 売上総利益率(粗利率): 前年同期の52.7%から、当期は45.4%へと7.3%ポイントも大幅に悪化した 。これは、前述の不採算プロジェクトにおける外部パートナーの利用により、売上原価率が著しく上昇したためである 。
- 営業利益率: 前年同期の11.2%から、当期は5.9%へと5.3%ポイント悪化した 。売上総利益率の悪化が、営業利益率の急落に直結している。
B/S分析:
- 総資産: 前連結会計年度末から298百万円減少し、13,677百万円となった 。主な減少要因は現金および預金の減少である 。
- 流動資産: 現金および預金が779百万円減少したが 、受取手形・売掛金・契約資産は1,670百万円から1,842百万円に増加している 。これは売上増に伴う正常な増加と解釈できる。
- 固定資産: 投資有価証券の取得などで419百万円増加している 。
- 自己資本比率: 73.6%から72.2%とわずかに低下したが、依然として高水準を維持しており、強固な財務基盤は変わらない 。
運転資本の分析(CCC): 今回の資料では売上債権・仕入債務・在庫の期末残高のみが記載されており、厳密なDSO、DIO、DPOの計算は困難だが、以下の前提でCCCの傾向を分析する。
- 売上債権回転日数(DSO): 売上債権(受取手形、売掛金、契約資産)は増加しているものの、売上高も増加しているため、DSOは前年同期並み、あるいはわずかに長期化している可能性が考えられる。
- 棚卸資産回転日数(DIO): 仕掛品は前年同期の66百万円から67百万円とほぼ横ばい 。在庫の滞留や陳腐化リスクは現状では見られない。
- 仕入債務回転日数(DPO): 支払手形・買掛金は前年同期の371百万円から426百万円に増加している 。これは外注費の増加に伴う仕入増加を示唆しており、DPOは長期化していると考えられる。
CCCはキャッシュの出入りを示す重要な指標である。DPOの長期化は、仕入代金の支払いを遅らせることでキャッシュを社内に留保するため、営業CFにとってはプラスに働く。今回の決算でも、営業活動によるキャッシュ・フローは291百万円の収入となっている 。
キャッシュフロー(C/F)分析:
- 営業CF: 291百万円の収入(前年同期は507百万円の収入) 。税金等調整前中間純利益420百万円に対し、営業CFは291百万円と、利益の計上に対してキャッシュの流入が少ない 。これは、主に売上債権の増加(▲213百万円)が影響している 。
- 投資CF: 2,891百万円の支出 。定期預金(2,364百万円)および投資有価証券(511百万円)の取得によるものであり、積極的な投資が行われている 。
- 財務CF: 210百万円の支出 。自己株式の取得(155百万円)が主な要因である 。
資本効率性の評価:
- ROICとWACC:
- ROIC (Return on Invested Capital): 営業利益 / 投下資本。
- WACC (Weighted Average Cost of Capital): 加重平均資本コスト。
- 同社の営業利益率は5.9%に急落しており、このままでは投下資本利益率(ROIC)も大きく低下していると見られる。
- 同社のWACCが具体的な数値として開示されていないため、厳密な比較はできないが、営業利益率の急落は、企業が投下した資本に対して十分な利益を生み出せていない状態、すなわち企業価値を毀損している可能性を示唆している。経営陣が不採算プロジェクトの収益性改善に失敗すれば、この状況はさらに悪化する。
- ROE(自己資本利益率): 2024年12月期中間期の実績は4.5%程度、2025年12月期中間期の実績は3.5%程度と低下傾向にある。
- デュポン分解:
- 純利益率: 4.9%(468百万円 ÷ 9,517百万円)から3.7%(347百万円 ÷ 9,458百万円)へと悪化。
- 総資産回転率: 9,517百万円 / 13,976百万円 = 0.68回転
- 財務レバレッジ: 13,976百万円 / 10,294百万円 = 1.36倍
- ROEの低下は、利益率の悪化に直接起因していることがわかる。
- デュポン分解:
4. 【核心】セグメント情報の徹底解剖
同社は単一セグメント(デジタル・クリエイティブスタジオ事業)のため、詳細なセグメント分析はできない。しかし、サービスライン別の売上高は開示されており、以下の通りである。
- Creative & Engineering(C&E): 売上高5,472百万円(前年同期比+7.5%)。売上総利益率の悪化は、主にこの事業内の特定プロジェクトが不採算となったことに起因する 。同社の売上高の7割以上を占める主力事業であり、この事業の収益性の改善が、全社的な業績回復の鍵となる 。
- Talent Platform(TP): 売上高994百万円(前年同期比+17.1%)。SES事業が堅調に推移しており、同社の成長ドライバーの一つとなっている 。
- Incubationその他: 売上高591百万円(前年同期比+2.5%)。成長率は鈍化しているものの、安定的な収益貢献が見込まれる。
ポートフォリオ・マネジメントの評価: 同社は、Creative & Engineering事業が成長の柱でありながら、その不採算プロジェクトが全体の収益性を著しく圧迫するという、事業ポートフォリオの脆弱性を露呈した。本来、Talent PlatformやIncubation事業が、C&E事業の不振をカバーする役割を果たすべきであるが、今回はその効果が限定的であった。
経営陣は、特定プロジェクトへのリソース集中を課題として認識しており、解決策として「受注率を向上させるための最適な人員配置」や「採用活動への継続的な注力」を挙げている 。不採算プロジェクトが第4四半期に終了すれば、下期から新規案件獲得のためのリソース配分を改善できる可能性はあるが、これまでのリソース不足により、新規案件の仕込みが遅れている可能性があり、下期での急な回復は楽観的すぎると評価せざるを得ない。
5. 経営計画の進捗と経営陣の評価
進捗状況: 通期業績予想に対する第2四半期までの進捗率は以下の通りである 。
- 売上高: 46.0%
- 売上総利益: 41.6%
- 営業利益: 27.6%
- 経常利益: 28.2%
売上高は順調な進捗に見える一方で、利益の進捗率が著しく低い。特に営業利益の進捗率27.6%は、期初予想1,504百万円に対して415百万円の実績であり、計画未達は明らかである。このため、同社は通期業績予想を下方修正する判断を下した 。
経営陣の評価: 経営陣は、期初予想において特定の不採算プロジェクトの終了時期を第2四半期と想定していた 。しかし、実際には第4四半期まで影響が継続する見込みとなり 、これが今回の下方修正の直接的な原因となった 。このことから、以下の点が指摘できる。
- 需要予測能力: 不採算プロジェクトの長期化を期初に予測できなかったことは、需要予測やプロジェクト管理体制の甘さを示している。
- リソース配分と実行力: 不採算プロジェクトに人的リソースを集中させた結果、新規顧客・新規案件へのリソースが不足し、案件獲得が遅れたことは、経営資源の配分判断に問題があったと言える 。
今回の決算を受けての修正判断は妥当であった。下方修正をせずに楽観的な見通しを維持した場合、投資家からの信頼をさらに損なうリスクがあった。下方修正を速やかに発表し、今後の課題(最適な人員配置、採用活動への注力など)を明確にしたことは評価できる 。
6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク
今後12~24ヶ月の業績シナリオ:
- 強気シナリオ(蓋然性20%):
- 前提条件:
- 不採算プロジェクトが計画通り第4四半期に終了する。
- リソース再配分が成功し、第3四半期以降に新規案件獲得が急回復する。
- AI関連事業の大型案件が獲得でき、収益に大きく貢献する。
- 売上・利益予測レンジ:
- 売上高:150.5億円~155億円
- 営業利益:10.1億円~12億円
- 前提条件:
- 基本シナリオ(蓋然性60%):
- 前提条件:
- 不採算プロジェクトは第4四半期まで影響が継続するものの、計画通りに終了する。
- 新規案件獲得は徐々に回復するが、リソース不足の影響が残る。
- AIやグローバルギアとのシナジーは徐々に発現する。
- 売上・利益予測レンジ:
- 売上高:145億円~150.5億円(修正予想レンジ内)
- 営業利益:9億円~10.1億円(修正予想レンジ内)
- 前提条件:
- 弱気シナリオ(蓋然性20%):
- 前提条件:
- 不採算プロジェクトが第4四半期以降も長期化し、追加コストが発生する。
- 新規案件獲得の遅れが深刻化し、売上高が鈍化する。
- 人材不足が解消されず、収益性の低い外部リソースへの依存が続く。
- 売上・利益予測レンジ:
- 売上高:140億円以下
- 営業利益:8億円以下
- 前提条件:
カタリストとリスクのリストアップ:
- カタリスト:
- AI関連事業の進捗: AIを活用した社内ツール「Morpheus」や顧客向けサービス「AI*Agent Base」が、既存事業の生産性向上や大型受注に繋がれば、収益性の改善と売上拡大の両面でプラスに働く 。
- 人材採用の成功: 計画通りシニアクラスの人材採用が進み 、新規案件獲得のためのリソースが確保できれば、受注増加のペースが加速する。
- グローバルギアの子会社化: カジュアルゲーム事業への参入による、エンターテイメント領域での収益拡大が、新たな成長ドライバーとなる 。
- リスク:
- 不採算プロジェクトの再延長: 計画通りに終了しない場合、収益悪化に歯止めがかからず、投資家の信頼をさらに失う。
- 景気後退: マクロ経済の悪化が、顧客企業のIT投資意欲を減退させ、新規案件の減少や既存プロジェクトの予算削減を招く可能性がある。
- 競争激化: デジタルプロダクト開発市場への参入企業が増加し、価格競争が激化した場合、同社の収益性がさらに圧迫される。
7. バリュエーション(企業価値評価)
相対評価法: 同社は成長フェーズにあるため、PERやPBRといった指標だけでなく、EV/EBITDAなどの指標も併せて評価する必要がある。現時点では、通期業績予想の下方修正により、PERは一時的に上昇する可能性がある。競合他社との比較においては、同社のビジネスモデルが持つ垂直統合型の強みと、今回露呈したプロジェクト管理上の弱点を考慮する必要がある。
- プレミアム評価の可能性: ベトナムの開発拠点を活用した人材供給エコシステムという独自の競争優位性、高い顧客継続率 、そしてAIを活用した新たな成長戦略 が評価されれば、競合に対してプレミアムで評価される可能性がある。
- ディスカウント評価の可能性: 不採算プロジェクトの長期化という実績は、経営陣のプロジェクト管理能力に対する市場の信頼を揺るがす。また、収益性の不安定化が続けば、ディスカウントされる要因となる。
絶対評価法: 修正後の通期営業利益10.1億円(EBITDA 12.88億円)を基に、簡易的なDCF法を試算する。
- 前提条件:
- 営業利益成長率: 今後の業績回復を見込み、向こう5年間で年率15%成長と仮定。
- WACC: 7.0%と仮定。
- 永久成長率: 2.0%と仮定。
- 税率: 30%と仮定。
- 試算結果:
- 上記の前提で試算すると、事業価値は概算で約150億円となる。
- 現時点の時価総額がこれに近い水準であれば、株価は適正と判断される。ただし、PERなどの市場指標は、今回の下方修正で変動しており、市場の評価が収益性の改善をどれだけ織り込むかによって、株価は大きく変動する可能性がある。
8. 総括と投資家への提言
Sun*は、成長ドライバーであるCreative & Engineering事業において、リソース配分の問題という構造的な脆弱性を露呈した。不採算プロジェクトの長期化は、売上総利益率および営業利益率の急落を招き、経営計画の下方修正という結果に至った。
しかし、同社が掲げるAIを活用した業務改革や、グローバルギアの子会社化による新たな成長戦略は、将来的な収益性改善と事業拡大の可能性を秘めている 。また、強固な財務基盤と現金・預金も維持されており 、積極的な投資を継続する余地は十分にある 。
結論として、今回の下方修正は、同社の事業運営におけるリスクを再認識させるものであったが、根本的なビジネスモデルの優位性や将来的な成長戦略の蓋然性が失われたわけではない。したがって、**投資スタンスは「中立」**とする。
今後の株価動向を監視する上で、投資家が注視すべき最重要KPIは、不採算プロジェクトの進捗と、新規案件獲得のペースである。
- 不採算プロジェクトの進捗: 第4四半期に予定通り終了するかが、今後の利益率改善を占う上で最も重要である 。
- 新規案件獲得のペース: 営業人員の採用やリソース配分改善策がどれだけ早く効果を発揮し、新規案件の獲得に繋がるか 。特に、売上高の継続的な成長を維持できるか、次四半期の受注動向に注目すべきである。
これらの動向に関する追加情報が、今後の投資判断を左右する鍵となる。