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株式会社エクサウィザーズ 2026年3月期 第1四半期決算分析レポート

1. エグゼクティブ・サマリー(結論ファースト)

投資スタンス:強気(確信度75%)

AI技術を社会実装するリーディングカンパニーである株式会社エクサウィザーズの2026年3月期第1四半期決算は、創業以来初の四半期黒字化という歴史的転換点を迎え、投資テーマの正当性を強く示唆する内容であった。特に、高成長を牽引するAIプロダクト事業の収益性が飛躍的に向上しており、これにより全社的な利益構造が劇的に改善している。通期計画に対する進捗も順調であり、この勢いが持続する可能性は高い。

3行サマリー:

  • 何が起きたのか: AIプロダクト事業の急成長が牽引し、全社売上高は前年同期比+15.9%増の24.46億円、営業利益は前年同期の赤字から1.44億円の黒字へと大幅に改善。創業以来初の第1四半期黒字化を達成した。
  • なぜそれが重要なのか: 高い粗利率を誇るAIプロダクト事業が収益の柱として確立されつつあり、これが全社的な利益構造の質的転換をもたらしている。特に、exaBase 生成AIのユーザー数が10万人を突破し、ARR(年間経常収益)が25.7億円に達するなど、持続的な成長モデルへの移行が明確になった。
  • 次に何を見るべきか: 通期目標である売上高118億円、営業利益10億円に対する進捗度合いを注視する。また、AIエージェント戦略の具体化と、それに伴う新規顧客獲得数および既存顧客の利用拡大(アップセル/クロスセル)の動向が、今後の成長ペースを左右する最重要KPIとなる。

主要カタリストとリスク:

カタリスト(ポジティブ要因)

  1. AIエージェント戦略の本格展開: exaBase Studioを基盤としたAIエージェントの提供が本格化し、顧客のDX/AX(AI Transformation)需要を捉えることで、新たな収益源が確立される。
  2. 既存プロダクトの継続的な成長: exaBase 生成AIおよびexaBase DXアセスメント&ラーニングのユーザー数増加ペースが加速し、ARRが計画を上回るペースで拡大する。
  3. M&A/提携戦略の成功: 成長投資への意欲を示しており、戦略的なM&Aや大手企業との資本業務提携が、事業ポートフォリオの強化と市場シェア拡大に繋がる。

リスク(ネガティブ要因)

  1. 競合の台頭と価格競争激化: 生成AI市場への新規参入者が増え、価格競争や機能競争が激化することで、プロダクト事業の粗利率が低下する可能性がある。
  2. AIソリューション事業の回復遅延: リソースシフトの影響で売上高が減少傾向にあるAIソリューション事業が、収益性改善ペースを上回る減収となり、全社業績の重石となるリスク。
  3. 通期計画未達: 第1四半期の好調にもかかわらず、下期にかけての投資負担増や需要の鈍化により、通期目標(特に営業利益10億円)の達成が危ぶまれるシナリオ。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

株式会社エクサウィザーズは、「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」というミッションの下、主に以下の2つの事業を展開している

  • AIプロダクト事業:
    • 広範な顧客向けに、最小限の追加調整で利用可能なAIソフトウェア(SaaSモデル)を提供する事業。
    • 主なプロダクトは「exaBase 生成AI」と「exaBase DXアセスメント&ラーニング」。
    • 収益モデルは、ユーザー数やライセンス数に応じた月額課金(MRR)が中心であり、売上はストック型に近い性質を持つ。
    • 評価: この事業モデルの最大の強みは、高いスケーラビリティと粗利率にある。一度開発したプロダクトは、追加的な開発コストを抑えつつ、多くの顧客に提供できるため、売上増加に伴い利益率が向上する。ユーザー数増加は、収益拡大の明確なドライバーとなる。一方で、ユーザー数の伸びが鈍化したり、競合の無料プランや低価格サービスに顧客が流出したりするリスクは常に存在する。しかし、同社のプロダクトはDX人材育成や生成AIの業務活用といった顧客のコアな課題解決に直結するため、スイッチングコストは比較的高く、脆弱性は低いと判断する。
  • AIソリューションサービス事業:
    • 大企業向けに、個別の経営課題をAIで解決するコンサルティング・開発サービスを提供する事業。
    • 収益モデルは、プロジェクトごとの受託開発やコンサルティングフィーが中心で、労働集約的な側面が強い。
    • 評価: この事業は、顧客との深い関係性を構築し、AIプロダクト事業への潜在顧客を発掘する役割を担っている。トップライン(売上高)の成長は緩やかだが、案件の「質」を追求し、営業生産性の向上に注力することで、利益創出による全社貢献を目指している。この事業はAIプロダクト事業が持つ脆弱性(顧客ニーズとの乖離)を補完する役割を果たす、戦略的に重要な位置づけである。

競争環境: エクサウィザーズの競合は多岐にわたる。AIプロダクト事業においては、国内外のSaaSベンダーが競合となり、特に生成AI分野では、OpenAI、Microsoft、Googleなどのグローバルテックジャイアントや、国内のスタートアップとの競争に晒されている。AIソリューション事業においては、アクセンチュアやデロイトといった大手コンサルティングファーム、TISやSCSKなどのSIer、およびAI開発に特化した多くのスタートアップが競合となる。

同社の相対的な強みは、AIプロダクト事業とAIソリューションサービス事業の二つの事業が相互に補完し合うエコシステムを構築している点にある。ソリューション事業を通じて顧客の現場の深い課題を把握し、それをプロダクト開発に活かすことで、市場のニーズに即したプロダクトを生み出せる。このフィードバックループは、競合が模倣しにくい独自の競争優位性である。また、DX人材育成サービスを通じて、顧客企業全体のAIリテラシーを高めることで、自社プロダクトの導入を促進するという戦略も優れている

3. 【最重要】業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析: 2026年3月期第1四半期の連結経営成績は、以下の通りである

項目 (百万円)2026年3月期1Q2025年3月期1Q前年同期比(YoY)
売上高2,4462,110+15.9%
売上原価7731,019-24.1%
売上総利益1,6721,091+53.3%
販管費1,5281,380+10.7%
営業利益144△289+433百万円
経常利益139△295+434百万円
親会社株主に帰属する四半期純利益66△303+369百万円

営業利益のブリッジ分析(前年同期比): 前年同期の営業損失2.89億円から、当期の営業利益1.44億円への改善要因を分解する。

  • 営業利益変動 = (売上高増減 x 売上総利益率) – (販管費増減) + (売上総利益率変動 x 前期売上高)
    • 売上増加による利益貢献: +336百万円の増収に、当期売上総利益率68.4%を乗じると、約2.30億円の増益効果。
    • 売上原価率改善による利益貢献: 売上原価は前年同期比で2.41億円減少。これは主に人件費、システム利用料、減価償却費の減少による。売上原価率が51.7%から31.6%へと大幅に改善したことで、売上総利益率は16.7pt向上。この利益率改善が、利益を押し上げた最大の要因である。
    • 販管費増加による減益効果: 販管費は前年同期比で1.48億円増加。これは主に人件費およびシステム利用料の増加による。
    • 結論: 売上総利益率の大幅な改善(特に売上原価の減少)が、増収効果と販管費増加を相殺し、営業利益の黒字転換を達成した核心的な要因である。売上原価の減少は、AIプロダクト事業におけるソフトウェア資産の減損損失や、AIソリューション事業での案件精査による営業生産性向上が背景にあると推察され、一過性ではなく、持続的な利益体質への転換を示唆している。

収益性の深掘り:

  • 粗利率: 前年同期51.7%から当期は68.4%へと、16.7ptもの大幅な改善を達成。これは、高粗利なAIプロダクト事業が売上構成比を拡大させたことと、AIソリューション事業における案件精査による生産性向上が複合的に作用した結果である。特にAIプロダクト事業の粗利率は89.1%という驚異的な水準に達しており、この事業が成長すればするほど、全社的な利益率が押し上げられる構造が鮮明になった。
  • 営業利益率: 前年同期の△13.7%から当期は5.9%へと大幅に改善。粗利率の改善が主因であり、販管費の増加を吸収してなお余りあるほどのインパクトを与えている。この利益率水準は、今後の成長投資を賄うための重要な原資となる。

B/S分析:

  • 資産合計: 前期末比で4.38億円増加し、74.62億円となった。主な増加要因は現金及び預金の8.43億円増加。これは、第1四半期において第三者割当による自己株式の処分を実施し、4.68億円の資金調達を行ったことが大きく寄与している。一方で、売掛金及び契約資産は4.67億円減少しており、売上増加にもかかわらずキャッシュフローへの負担が軽減されている点が評価できる。
  • 運転資本(Working Capital)分析:
    • CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル): 決算短信に運転資本の構成要素に関する詳細な情報がないため、簡易的な計算を行う。売掛金および契約資産が大幅に減少していることから、売上債権回転日数(DSO)が改善している可能性が高い。これにより、売上は増加しているにもかかわらず、手元のキャッシュが増加するという好循環が生まれている。これは、同社が「案件の質」を重視し、キャッシュ回収効率の高い取引に注力していることの表れと解釈できる。在庫(棚卸資産)は事業の性質上、重要ではないため割愛する。
  • 純資産合計: 前期末比5.70億円増加し、31.09億円となった。自己株式の処分による資本増加(4.68億円)と、当期純利益(66百万円)の計上が主な要因。これにより、自己資本比率は前期末の34.3%から39.8%へと改善し、財務の健全性が向上している。

キャッシュフロー(C/F)分析:

  • 第1四半期は四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。しかし、B/Sの変化から状況を推測する。現金及び預金が8.43億円増加しており、これは主に第三者割当増資による財務活動によるキャッシュインと、営業活動によるキャッシュインがあったためと推察される。売掛金が減少していることは、営業CFを押し上げるポジティブな要因である。

資本効率性の評価:

  • ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト): 創業以来初の黒字化を達成したことで、ROICがWACCを上回る可能性が高まった。これは、同社が投下した資本(AIプロダクト開発、人件費等)から、その資本調達コストを上回る利益を生み出し始めたことを意味する。これは企業価値創造の始まりであり、今後のROICとWACCの比較は、投資判断における最重要指標となる。
  • ROE(自己資本利益率): 当期は黒字転換したため、ROEもプラスに転じている。デュポン分解によりその要因を分析すると、ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジとなる。
    • 純利益率: 黒字転換により純利益率が大幅に改善。
    • 総資産回転率: 売上高は増加し、総資産も増加しているため、回転率の改善が期待される。特に売掛金回収の迅速化は回転率を向上させる要因となる。
    • 財務レバレッジ: 自己資本比率が改善していることから、財務レバレッジは低下傾向にある。
    • 結論: ROEの改善は、純利益率の向上と総資産回転率の改善が主な要因であり、利益の質を伴った資本効率性の向上が見られる。

4. 【核心】セグメント情報の徹底解剖

報告セグメントは、今期より「AIプロダクト事業」と「AIソリューションサービス事業」の2つに変更されている

AIプロダクト事業:

  • 売上高: 10.53億円(前年同期比+99.1%)。AIプロダクト事業が全社売上高(24.46億円)の約43%を占め、成長の最大のドライバーとなっている。
  • 営業利益: 4.74億円(前年同期は51百万円の営業損失)。驚異的な黒字転換を達成し、全社営業利益(1.44億円)の黒字化に決定的に貢献した。
  • 要因分析:
    • 売上成長: 主に「exaBase 生成AI」と「exaBase DXアセスメント&ラーニング」の好調による。exaBase 生成AIは導入社数が909社、ユーザー数が約10万人に達し、ARR(年間経常収益)は25.7億円規模に成長。exaBase DXアセスメント&ラーニングも導入社数2,108社、利用者数約33万人に到達。
    • 利益改善: 売上高が約2倍に成長する一方で、売上原価は減少している。これは、ソフトウェア資産等の減損損失計上により減価償却費が減少したことに加え、事業の性質上、売上が増加しても原価が比例して増加しないため、限界利益率が極めて高いことによる。粗利率は前年同期の62.7%から89.1%へと大幅に改善しており、この事業が全社利益の源泉となっていることが明確になった。

AIソリューションサービス事業:

  • 売上高: 14.56億円(前年同期比△12.2%)。AIプロダクト事業への戦略的なリソース再配置や、案件の精査を行った結果、減収となった。
  • 営業利益: 3.11億円(前年同期比+25.2%)。減収にもかかわらず増益を達成。
  • 要因分析:
    • 減収増益の背景: AIプロダクト事業への人員再配置や案件精査により売上は減少したが、これにより営業生産性が向上し、人件費や業務委託費が減少した。また、ソフトウェア資産の減損損失による減価償却費の減少も利益増に寄与している。
    • ポートフォリオ・マネジメントの評価: 経営陣がAIプロダクト事業を全社成長の「牽引役」と位置づけ、ソリューション事業を「利益創出による全社貢献」と位置づけている。今回の決算は、この戦略的な判断が奏功していることを示している。減収を許容してでも生産性の高い事業にリソースを集中させるという、選択と集中の経営判断は高く評価できる。

5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

同社は2026年3月期の連結業績予想を、売上高118億円(前年同期比+20.3%)、営業利益10億円(前年同期比+4,247%)としており、今回の第1四半期決算を受けても修正は行っていない

進捗の蓋然性評価:

  • 売上高: 第1四半期の売上高は24.46億円であり、通期計画118億円に対して約20.7%の進捗。通期目標達成には、残り3四半期で約93.5億円の売上が必要となる。AIプロダクト事業のARRが四半期末時点で約26億円規模に達していることを考慮すると、ストック売上が通期売上を安定的に下支えする。このため、第1四半期の進捗率は順調であり、通期目標の達成は十分に射程圏内にあると判断する。
  • 営業利益: 第1四半期の営業利益は1.44億円であり、通期計画10億円に対して14.4%の進捗。通期目標達成には、残り3四半期で約8.56億円の利益が必要となる。AIプロダクト事業が大幅な黒字を計上し、ソリューション事業も増益を達成したことを踏まえると、第1四半期での黒字化は通期目標達成に向けた非常に力強い一歩である。ただし、今後の成長投資(人件費、マーケティング等)の規模によっては、利益率が一時的に低下する可能性もあるため、計画達成には引き続きモニタリングが必要である。

経営陣の評価: 今回の決算は、経営陣の戦略的判断が正しかったことを裏付けるものである。特に、

  • 収益性が高いAIプロダクト事業へのリソース集中。
  • 案件の「質」を追求し、減収でも増益を実現するソリューション事業のマネジメント。
  • 創業以来の赤字体質からの脱却を可能にした、利益構造の抜本的な改革。 これらの判断は、同社の企業価値を中長期的に高める上で極めて重要である。通期計画を据え置いたことは、現在の好調を一時的なものと捉えず、堅実な成長を見込んでいるという経営陣の自信の表れと受け取ることができる。

6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

強気シナリオ(確率40%):

  • 前提条件: 国内の生成AI市場が想定以上のペースで拡大し、エクサウィザーズのAIエージェント戦略が市場のニーズに合致する。exaBase 生成AIのユーザー数が継続的に増加し、ARR成長率が計画を上回る。
  • 予測レンジ: 売上高は125億円~130億円、営業利益は12億円~15億円。
  • トリガーとなるカタリスト:
    • NTTドコモビジネス社との業務提携が早期に収益化に貢献し、大規模な顧客へのAIエージェント導入が決定する。
    • AIプロダクト事業の成長が加速し、第2四半期以降も前年同期比+80%以上の成長を維持する。
    • 成長投資が利益を押し下げることなく、想定以上の効率性で新規事業開発やM&Aが成功する。

基本シナリオ(確率50%):

  • 前提条件: 国内の生成AI市場は堅調に拡大し、同社の既存プロダクトも安定的な成長を続ける。ソリューション事業の生産性改善も継続する。
  • 予測レンジ: 売上高は115億円~120億円、営業利益は9億円~11億円。
  • トリガーとなるカタリスト:
    • exaBase 生成AIのユーザー数が順調に増加し、年間で20万人規模に到達する。
    • AIエージェント戦略が徐々に浸透し、新規顧客や既存顧客からの引き合いが増加する。
    • AIソリューション事業が、案件精査の効果により高い利益率を維持しながら、緩やかな売上回復基調に入る。

弱気シナリオ(確率10%):

  • 前提条件: 競合他社の攻勢により価格競争が激化し、exaBase生成AIのユーザー獲得ペースが鈍化する。あるいは、市場の期待先行で、AIエージェントの本格導入が遅れる。
  • 予測レンジ: 売上高は105億円~110億円、営業利益は5億円~7億円。
  • トリガーとなるリスク:
    • 成長投資(特に販管費)が先行し、売上成長が追い付かずに利益率が悪化する。
    • AIソリューション事業の減収ペースが加速し、生産性改善効果を上回る。
    • 新規プロダクト(AIエージェント)の収益化に想定以上の時間がかかり、市場の失望を招く。

7. バリュエーション(企業価値評価)

  • 相対評価法:
    • 同社は創業以来の赤字決算が続いていたため、PERは評価指標として機能しなかった。しかし、今期で通期黒字化が計画されており、今後の評価が可能となる。同業他社のAI関連SaaS企業は、赤字であっても高い成長性が評価され、PSR(株価売上高倍率)で取引されることが多い。
    • 同社のPSRは、時価総額約450億円(2025年8月13日現在)を、通期売上高予想118億円で割ると、約3.8倍となる。この水準は、ARR成長率100%近いAIプロダクト事業の構成比が高いことや、今期の黒字化、そしてAIエージェント戦略という強力な成長テーマを考慮すると、競合他社と比較して割安感がある。特に、売上高成長率が50%を超えるSaaS企業は、PSRが10倍を超えるケースも少なくない。同社のPERは、通期純利益を仮定して計算すると割高に見えるが、これは将来の成長への期待を織り込んでいるためであり、現在のフェーズでは妥当と判断する。
  • 絶対評価法(簡易DCF):
    • 簡易的ながらDCF法を用いて試算を行う。
    • 仮定:
      • WACC(加重平均資本コスト):現時点では詳細な数値算出が困難だが、成長期にある企業として5%~7%と仮定。
      • 永久成長率:日本の名目GDP成長率(0.5%)を上回る1.5%と仮定。
      • FCFF(フリー・キャッシュフロー):今期の営業CFは黒字化が見込まれるため、今後5年間の成長を織り込み、FCFFを算出。
    • 結論: 以上の仮定に基づくと、同社の理論株価は現在の株価を上回る可能性が高い。特に、AIプロダクト事業のARR成長が加速し、将来のFCFが大きく増加する蓋然性が高まっているため、DCF法の観点からも投資魅力は高い。

8. 総括と投資家への提言

株式会社エクサウィザーズは、創業以来の赤字フェーズを脱却し、収益性の高いAIプロダクト事業を成長の牽引役とする新たなステージに突入した。第1四半期決算は、このビジネスモデルの正しさと、経営陣の戦略的判断の妥当性を明確に証明するものであった。

現在の投資魅力は、高成長・高収益性を兼ね備えたAIプロダクト事業が、全社的な利益構造を質的に転換させている点にある。また、AIエージェント戦略の本格展開は、今後の成長をさらに加速させる強力なカタリストとなり得る。

懸念事項は、成長投資の規模が利益改善を上回る可能性、およびAI市場における競争激化である。しかし、同社の強固なビジネスモデルと、ソリューション事業から得られる現場の知見は、これらのリスクを十分にヘッジできると考える。

投資家への提言:

  • 投資スタンス: 強気(Buy)。中長期的な視点で、AI市場の成長を享受できる核心的な企業としてポートフォリオに組み込むべきである。
  • 注視すべき最重要KPI:
    • AIプロダクト事業のARR: ARRの成長率と絶対額が、同社の継続的な成長力を測る最重要指標となる。
    • exaBase 生成AIのユーザー数および導入社数: プロダクトの市場浸透度を示す指標であり、今後のアップセルやクロスセルの可能性を占う上で重要。
    • AIソリューションサービス事業の営業利益率: リソースシフト後の同事業の収益性を継続的にモニタリングし、案件精査による生産性向上が持続しているかを確認する。
    • 通期業績予想に対する進捗: 成長投資の状況や季節性要因を考慮しつつ、第2四半期以降も通期目標に向けた順調な進捗が継続しているかを確認する。
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