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株式会社アトラエ(6194)2025年9月期 第3四半期決算分析レポート

1. エグゼクティブ・サマリー

投資スタンス:中立(確信度60%)

株式会社アトラエの2025年9月期第3四半期決算は、People Tech事業における二極化が顕著となった。主力サービスである「Green」の成長鈍化が継続する一方、「Wevox」は高成長を維持し、全社の収益性を下支えしている 。通期業績予想の下方修正はGreenの不振を反映したものであり、経営陣がGreen事業の構造的課題を認識し、AIを活用した抜本的なプロダクト改善を試みている点は評価できる 。しかし、この戦略が業績に貢献するまでのタイムラインは不透明であり、Greenの再成長が確認されるまでは、Wevoxの成長性だけで企業価値の持続的な向上を確信するには至らない

3行サマリー

  1. 何が起きたか(事実): 第3四半期累計期間の売上高は前年同期比で減少し、通期業績予想が下方修正された 。これは、Green事業が前期比減収となる一方、Wevox事業が高い成長を続けたことによる 。
  2. なぜ重要か(本質): Greenの不振は、単なる市場環境の悪化ではなく、競合に対するプロダクトの競争力低下という構造的な問題を示唆する 。AIを活用したマッチング改善策は期待されるが、その効果と費用対効果はまだ実証されていない 。
  3. 次に何を見るべきか(注目点): 今後GreenのAI機能(「Quol」を含む)が、応募率や書類選考通過率、ひいては入社人数といった主要KPIにどのような具体的な改善効果をもたらすか 。また、WevoxがSMBCグループとの連携により、いかに顧客基盤を拡大し、収益貢献を加速させるか 。

主要カタリストとリスク

  • カタリスト(ポジティブ要因)
    1. Green AIによる再成長: 「Quol」を含むAI機能の導入が、Greenの主要KPI(応募率、書類選考通過率、入社人数)を大幅に改善し、再成長軌道に乗せることに成功した場合 。
    2. Wevoxの顧客獲得加速: SMBCグループとの合弁事業「SMBC Wevox」が、想定以上に早く全国5万社のクライアントへのアプローチを成功させ、売上高を非連続的に成長させた場合 。
    3. ARPA(1アカウントあたりの平均収益)向上: Wevoxのプロダクト付加価値向上に伴い、ARPAが上昇し、利益成長に大きく貢献した場合 。
  • リスク(ネガティブ要因)
    1. Greenの構造的停滞: GreenのAI機能が期待した効果を上げられず、競合サービスに対する劣位が解消されないまま、事業が長期的な停滞に陥るリスク 。
    2. 市場競争の激化: Wevoxが属するエンゲージメントサーベイ市場に有力な競合が台頭し、価格競争や顧客獲得コストの上昇に直面するリスク 。
    3. Wevoxへの過度な依存: Greenの不振が継続し、全社業績がWevox単独の成長に依存する状態が続く場合、Wevox事業に何らかの問題が発生した際の企業価値毀損リスク 。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

株式会社アトラエは、「People Tech Company」を自認し、テクノロジーを通じて人々の可能性を広げる事業を展開している 。主要事業は、成功報酬型求人メディア「Green」と、組織力向上プラットフォーム「Wevox」の2つ

ビジネスモデルの評価

  1. Green(成功報酬型求人メディア):
    • ビジネスモデルの数式: 売上 = 入社人数 × 平均成功報酬単価
    • 強み:
      • 先行優位性とビッグデータ: 19年以上の運営実績により、147万人超の登録ユーザーと10,600社超の累計登録企業を抱え、多岐にわたる独自のビッグデータ(アクションデータ、選考データなど)を蓄積している 。これにより、高精度のマッチングを実現する競争優位性を確立している 。
      • 低コスト構造: 人材紹介会社と異なり、専門のアドバイザーやカウンセリング施設が不要なため、圧倒的なコスト競争力を持つ 。
      • ダイレクトリクルーティング: 企業と求職者が直接コミュニケーションできるプラットフォーム型サービスであり、双方にとって自発的かつ効率的な採用・転職活動を可能にする 。
    • 脆弱性:
      • 入社人数への依存度: 売上は入社人数に直接的に連動するため、市場の転職意欲や企業の採用意欲の変動に収益が左右される 。直近では応募人数が減少し、入社人数も前年同期比で10.7%減少しており、この脆弱性が顕在化している 。
      • プロダクト改善の遅延: 転職意欲の高いユーザーを集めているにもかかわらず、自己応募の増加が書類選考通過率の微減を招いており、マッチングの質に課題がある 。
  2. Wevox(組織力向上プラットフォーム):
    • ビジネスモデルの数式: 売上 = 導入企業数 × 従業員数 × ARPA(アカウントあたりの平均収益)
    • 強み:
      • SaaSモデルによる安定収益: 月額利用料のサブスクリプションモデルであり、月次チャーンレートを1.0%未満に抑えているため、安定的かつ継続的な収益が見込める 。
      • SMBCグループとのシナジー: 合弁会社「SMBC Wevox」を通じて、SMBCグループの営業網を活用した全国規模でのアウトバウンドセールスを展開できる 。これにより、従来のインバウンド中心の販路に加え、非連続的な顧客獲得が可能となる 。
      • 学術的裏付けとデータ優位性: 慶應義塾大学島津教授などの専門家をアドバイザーに迎え、エンゲージメント研究に基づいたサービスを提供 。3億7,000万件を超えるユーザー回答データを蓄積しており、これを機械学習に応用することで、組織課題の分析・予測精度を高めている 。
    • 脆弱性:
      • 市場の過熱: 人的資本開示への関心の高まりから、エンゲージメントサーベイ市場は今後競争が激化する可能性がある。

競争環境

Green事業の競合は、同じく成功報酬型の求人メディアや、従来型の人材紹介会社である 。GreenはIT人材に強みを持つが、市場が拡大する中で、IT業界以外の多様な企業もIT人材を求めるようになっており、利用企業の裾野が拡大している 。しかし、書類選考通過率の低下や入社人数の伸び悩みは、競合とのプロダクト比較においてGreenが劣勢に立たされている可能性を示唆している

Wevox事業は、エンゲージメント・サーベイ市場において、学術的裏付けとSMBCグループという強固な販売チャネルを武器に独自のポジションを築いている 。この市場は潜在的な市場規模が年間2,400〜4,800億円超と大きく、今後の成長余地は大きい 。しかし、市場の拡大に伴い、類似サービスや大手企業による新規参入リスクも高まっており、プロダクトの差別化と顧客獲得効率の維持が重要となる。


3. 業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析

(百万円)2025年9月期3Q累計2024年9月期3Q累計増減額増減率
売上高5,6435,792-149-2.6%
People Tech5,6435,792-149-2.6%
Sports Tech550-550
営業利益1,3391,017+322+31.7%
経常利益1,330
四半期純利益881

注:FY2025より非連結決算に移行しているため、売上高の対前年同期増減率はPeople Tech事業同士を比較。営業利益の対前年同期増減率はFY2024の連結営業利益とFY2025の単体営業利益を比較

売上高は前年同期比で$2.6%

減と停滞している[cite:1,2,17,21][cites​tart]。これはGreenの売上高が15.1%減と大きく落ち込んだことが主因であり、Wevoxの25.8%増という高成長でもカバーしきれなかったことを示している[cite:1,2,17,21][cites​tart]。一方で、営業利益は前年同期比で31.7%$増と大幅な増益を達成しており、これは後述の費用構造の変化によるものと分析できる

営業利益のブリッジ分析(FY2024 3Q累計 → FY2025 3Q累計)

要因影響額 (百万円)内訳
FY2024 3Q累計 営業利益1,017
①売上変動要因-149Green売上減 (-600)、Wevox売上増 (+459)
②費用変動要因+471人件費増 (+92)、売上原価増 (+77)、販管費減 (-530)
FY2025 3Q累計 営業利益1,339

注:上記は資料に基づく概算値。People Tech事業の売上高および営業費用の増減額をベースに算出

営業利益の増加は、売上高の減少を販管費の抑制が上回ったことによる 。販管費の中でも特に広告宣伝費の減少が顕著であり、GreenのWeb広告費用は前年同期の累計2,126百万円から1,967百万円に減少、TV広告等は108百万円から37百万円に大幅に削減されている 。これは、経営陣がGreen事業のプロダクト改善を優先し、ROI(投資収益率)を意識した広告投資に戦略を転換した結果である 。この戦略は、短期的には収益性を高めるが、中長期的には成長の源泉となるユーザー獲得のペースを鈍化させるリスクを伴う。

収益性の深掘り

粗利率は、売上原価の増加(前年同期比$+113.2%)にもかかわらず、売上総利益が微減に留まったことで、ほぼ横ばいと推測される[cite:1,2,17,21][cites​tart]。一方で、営業利益率は前年同期の16.0%から23.7%$へと大幅に改善している 。この改善は、主にGreen事業における広告宣伝費の抑制によるものである 。Wevox事業の堅調な成長が利益率の高いSaaSモデルであることも、全社の収益性向上に寄与している 。しかし、この高い利益率は、成長投資の抑制という一時的な要因に支えられている側面が強く、Green事業の再成長に向けた広告投資が再開されれば、再び変動する可能性がある点には注意が必要である 。

B/S分析

総資産は前事業年度末比で約232百万円増加し、流動資産は減少、固定資産は増加した 。特に、投資有価証券が約199百万円、有形固定資産が約85百万円増加している 。負債は契約負債の増加が目立つ一方、純資産は四半期純利益の計上と新株予約権の増加により約183百万円増加している 。自己資本比率は前事業年度末の$64.6%

から63.1%$へと微減しているが、依然として健全な財務体質を維持している

運転資本の分析

添付資料からはDSO、DIO、DPOを正確に算出することは困難だが、売掛金が減少していることはキャッシュフローへのポジティブな影響が期待される 。契約負債が大幅に増加していることは、Wevox事業の年間契約など、顧客からの前受金が増加していることを示唆しており、これもまたキャッシュフローの観点からは非常にポジティブな兆候と捉えられる

キャッシュフロー(C/F)分析

第3四半期累計期間のキャッシュフロー計算書は開示されていない 。しかし、営業利益の大幅な増加と、運転資本の変化(売掛金減少、契約負債増加)から、営業CFは前年同期比で大幅な改善が期待される。一方で、投資有価証券や有形固定資産の増加から、投資CFは依然としてマイナスとなる可能性が高い 。これは、事業の将来的な成長に向けた投資を積極的に行っていることの証左と見なせる。

資本効率性の評価

注:開示資料からNOPATを正確に算出することは困難なため、ここでは簡便的に税引後営業利益(営業利益 × (1 – 法定実効税率30.62%))を使用し、ROICを試算する

  • FY2024 (実績): ROE 15.0%、ROIC 20.7%
  • FY2025 (修正予算): ROE 26.6%、ROIC 25.3%

アトラエのROEおよびROICは、プライム市場の全産業平均(ROE 9.26%、非製造業平均10.45%)を大きく上回る水準であり 、資本効率の高い経営ができていると評価できる。特にFY2025の修正予算では、Green事業の不振にもかかわらず、Wevox事業の高収益性とGreen事業における広告投資の抑制により、ROE/ROICがさらに向上する見込みである 。これは、同社が投下資本に対して、WACCを大幅に上回るリターンを生み出していることを意味し、企業価値創造に成功していると判断できる。

ROEのデュポン分解(FY2024 → FY2025(修正予算))

  • FY2024:
    • 純利益率: 不明
    • 総資産回転率: 不明
    • 財務レバレッジ: 不明
  • FY2025(修正予算):
    • 純利益率: 1,179百万円/7,700百万円=15.3%
    • 総資産回転率: 1.03回転 (7,700百万円 / 7,467,742千円)
    • 財務レバレッジ: 1.35倍 (7,467,742千円 / 5,508,790千円)
    • ROE: 15.3% × 1.03 × 1.35 = 21.2% (概算)

修正予算におけるROE 26.6%の達成には、当期純利益率のさらなる改善が不可欠となる 。デュポン分解から、同社の高ROEは、高収益性(高い純利益率)に支えられていると推測される。


4. 核心:セグメント情報の徹底解剖

FY2025からPeople Tech事業の単一セグメントに移行しているため、詳細なセグメント情報は開示されていない 。しかし、開示資料からPeople Tech事業を構成するGreenとWevoxの状況を個別に分析できる。

  • Green:
    • 業績: 売上高は前年同期比で$10.8%減少し、入社人数も10.7%$減と不振が続く 。この背景には、プロダクトの機能性やマッチング精度に関する競合サービスとの比較劣位があるとの経営陣の認識がある 。
    • 戦略: 広告宣伝投資を抑制し、AIを活用したプロダクト改善に注力している 。具体的には、求職者へのマッチング解説AIや面接対策AIを導入し、書類選考通過率の向上と、ユーザーの転職体験価値を高めることを目指している 。
    • 評価: 経営陣が問題の本質を理解し、短期的な成長よりもプロダクトの競争力回復を優先している点は評価できる 。しかし、この戦略転換が成果を出すまでには時間を要し、その間の売上停滞は避けられない 。
  • Wevox:
    • 業績: 売上高は前年同期比で$31.4%$増と高い成長を維持している 。導入企業数は3,950社を超え、ユーザー回答データも加速度的に蓄積されている 。
    • 戦略: SMBCグループとの合弁会社を通じて、日本全国の顧客へのアウトバウンドセールスを強化し、Web広告による顧客獲得にも力を入れている 。また、プロダクトの付加価値を高めることで、ARPAの向上も目指している 。
    • 評価: WevoxはSaaSモデルとして理想的な成長サイクルを確立しており、今後も安定的な高成長が期待できる 。特に、SMBCグループとの連携は、従来の販路を補完し、非連続的な成長を実現する強力なドライバーとなる 。

ポートフォリオ・マネジメントの評価

アトラエの事業ポートフォリオは、Greenという変動性の高い成果報酬型モデルと、Wevoxという安定的かつ継続的なSaaSモデルの組み合わせである 。Greenの不振が続く中でもWevoxが全体を牽引し、高い利益率を維持している現状は、このポートフォリオがリスク分散の役割をある程度果たしていることを示している 。しかし、Greenの再成長が実現しなければ、ポートフォリオとしてのシナジーは限定的となり、Wevox事業に過度な負担がかかる可能性がある。経営陣は、Greenの再成長戦略とWevoxの成長加速を両立させることが、今後の最大の課題となる。


5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

アトラエは、2025年9月期の通期業績予想を下方修正した 。売上高は84億1000万円から77億円へ、営業利益は21億円から18億円へと引き下げられた 。この修正の主な要因は、Green事業における入社人数の伸び悩みであり、Greenの売上高が当初計画より6億9000万円下振れする見込みである

経営陣の評価

今回の下方修正は、Green事業の不振を早期に認識し、戦略転換(プロダクト改善と広告投資抑制)を決断した結果であると解釈できる 。しかし、そもそも当初の計画策定段階で、Greenの市場環境やプロダクトの競争力低下を過小評価していた可能性も否定できない。

経営陣は、Greenのプロダクト改善が「道半ば」であると認識しており、改善が完了したタイミングで再び広告投資を強化する方針を示している 。この判断は、短期的な売上よりも持続的な競争力回復を優先するものであり、長期的な企業価値向上を目指す姿勢としては妥当と評価できる

一方で、Wevoxの売上成長予想(約30%)は達成見込みであり、SMBCグループとの協業やWeb広告強化が功を奏している 。この点においては、経営陣の戦略実行力は高いと評価できる。


6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

今後12~24ヶ月の業績について、以下の3つのシナリオを提示する。

  1. 強気シナリオ(蓋然性30%):
    • 前提条件: Green AI(Quolを含む)が早期にプロダクト改善効果を発揮し、ユーザー体験が大幅に向上 。書類選考通過率や応募率が回復し、入社人数が再びプラス成長に転じる 。WevoxはSMBC Wevoxの営業が軌道に乗り、導入企業数が急増 。ARPA向上も進み、収益貢献が加速する 。
    • 売上・利益予測: 売上高はFY2026に100億円を超え、営業利益も25億円を突破する。
    • カタリスト:
      • Greenの主要KPI(入社人数)が前年同期比でプラスに転じる決算発表 。
      • Wevox事業におけるSMBCグループからの大型案件受注の公表 。
  2. 基本シナリオ(蓋然性60%):
    • 前提条件: Greenのプロダクト改善には時間を要し、FY2026も売上は横ばいか微減が続く 。Wevoxは堅調な成長を続けるが、SMBC Wevoxの本格的な収益貢献はFY2026後半からとなる 。
    • 売上・利益予測: Wevoxの成長がGreenの減収を補い、全社売上高はFY2026に80~90億円、営業利益は18~22億円で推移する。
    • リスク:
      • Greenの売上高が予想以上に減少し、全社成長の足かせとなる 。
      • Wevox市場の競争激化により、顧客獲得コストが上昇する。
  3. 弱気シナリオ(蓋然性10%):
    • 前提条件: Greenのプロダクト改善策が奏功せず、競合との差が拡大 。IT人材市場の需要が冷え込み、入社人数がさらに減少する 。Wevoxも成長鈍化し、全社の売上・利益が減少に転じる 。
    • 売上・利益予測: 全社売上高は70億円を下回り、営業利益も15億円を下回る。
    • リスク:
      • Greenの広告投資再開が失敗し、ROIが改善しない 。
      • Wevoxの月次チャーンレートが1.0%を上回る。

7. バリュエーション(企業価値評価)

相対評価法

注:比較対象企業は公開情報に基づく。2025年8月13日時点のデータを使用。

企業名株価時価総額PER(予)PBR(予)
株式会社アトラエ¥XXXX¥XXXXXX.X倍X.X倍
競合A(人材サービス)¥YYYY¥YYYYYY.Y倍Y.Y倍
競合B(SaaS)¥ZZZZ¥ZZZZZZ.Z倍Z.Z倍

アトラエの株価は、成長性に対する市場の評価が分かれるため、類似企業と比較してPERは割高にも割安にも見える可能性がある。Green事業の成長停滞が懸念される一方、WevoxのSaaSモデルは高い成長性と安定性を評価され、SaaSセクターのプレミアムが適用される可能性がある。Greenの再成長が確認されれば、現在の株価は割安と判断される余地があるが、不確実性が払拭されるまでは、市場はWevox単独の成長性を評価するに留まり、バリュエーションは中庸な水準で推移するだろう。

絶対評価法

簡易DCF法による理論株価試算

  • 仮定:
    • WACC:6.0% (リスクフリーレート1.0%、市場リスクプレミアム5.0%、β1.0と仮定)
    • 永久成長率:2.0% (Wevoxの安定成長とGreenの再成長を期待して設定)
  • 試算:
    • FY2025のFCFは、営業利益(1,800百万円)から税金・投資を差し引いて概算する。
    • FY2026以降の成長率を想定し、FCFを予測する。
    • 将来のFCFの現在価値合計を算出する。

現在の事業ポートフォリオと成長戦略の蓋然性を考慮すると、この簡易的なDCF法による理論株価は、現在の株価水準を大きく上回る可能性は低いと推測される。特に、Green事業の成長再開が不確実なため、永久成長率2.0%という仮定は楽観的すぎる可能性もある。


8. 総括と投資家への提言

今回の決算は、アトラエの事業ポートフォリオにおける「光と影」を明確に示した 。WevoxはSaaSビジネスとして理想的な成長を遂げている一方、Greenはプロダクトの競争力低下という構造的な課題に直面している 。経営陣はGreenの課題を認識し、AIを活用した抜本的な改善に乗り出しているが、その成果が業績に反映されるまでにはまだ時間がかかると予想される

投資スタンス:中立(継続)

Green事業の成長鈍化が継続する限り、企業価値の持続的な向上に対する確信度は高まらない。Wevoxの成長性には大きな期待が持てるものの、Greenの不振を完全に相殺するまでのインパクトには至っておらず、全社としての成長性はまだ限定的である 。投資家は、Greenの再成長が確認されるまで、様子見の姿勢を維持することが賢明である。

投資家が注視すべき最重要KPIとイベント

  1. Greenの主要KPI: 応募人数、書類選考通過率、そして最も重要な入社人数の動向 。これらの指標が前年同期比でプラスに転じることが、Green再成長の最初のシグナルとなる。
  2. Wevoxの顧客獲得状況: SMBCグループとの連携によるアウトバウンドセールスの具体的な成果。特に、新規導入企業数のペースと、大口顧客の獲得状況に注目すべきである 。
  3. WevoxのARPA(アカウントあたりの平均収益): Wevoxのプロダクト付加価値向上に伴い、月額料金が上昇するかどうか 。ARPAの上昇は、収益性のさらなる改善に繋がる。
  4. Green AI(Quol)の進捗: 「Quol」の具体的なリリース時期と、その機能がGreenの主要KPIに与える影響に関する経営陣からの追加情報 。

これらのKPIの改善が確認され、Green事業の再成長への道筋が明確になった時点で、初めて強気スタンスへの転換を検討すべきであろう。

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