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東海汽船株式会社(9173)2025年12月期 第2四半期決算分析レポート

1. エグゼクティブ・サマリー

投資スタンス:中立(確信度:60%)

3行サマリー: 東海汽船の2025年12月期第2四半期は、海運関連事業での運賃改定効果と小笠原航路の好調により売上高は増加したものの、荒天による欠航や船員労働時間遵守のための減便が響き、営業損失は前年同期から拡大した。この利益の質的な悪化は、外部環境と内部ガバナンスの問題が複合的に作用した結果であり、通期計画達成に向けた不確実性を高めている。今後は、主力事業における需給回復とコストコントロールの進捗、そして安全運航体制の改善報告に注視する必要がある。

主要カタリストとリスク

【ポジティブ・カタリスト】

  1. 観光需要の本格回復とインバウンド増加: コロナ禍前の水準まで旅客数が回復し、運賃改定効果と相まって収益性が大幅に改善する。
  2. 荒天による欠航減少: 下期に天候が安定し、主力航路の運航率が向上することで、売上機会損失が減少し、損失が圧縮される。
  3. 商事料飲事業の収益柱化: 新規事業の成功や価格見直し効果が想定を上回り、海運事業の赤字を補うほどの安定的な利益貢献を果たす。

【ネガティブ・リスク】

  1. 外部環境の悪化: 物価上昇による燃料費等のコスト増が継続し、収益を圧迫する。また、景気後退や消費マインドの冷え込みにより、観光需要が再び低迷する。
  2. 安全運航体制の不確実性: 国土交通省からの是正命令後も運航体制の改善が遅延し、さらなる減便や行政指導の強化により事業活動が制約を受ける。
  3. 競争環境の激化: 島しょ地域へのアクセス手段を提供する他社との競争が激化し、運賃値下げ圧力が高まる、あるいは旅客シェアを奪われる。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

東海汽船は、海運関連事業、商事料飲事業、ホテル事業、旅客自動車運送事業の4つのセグメントを主軸としている 。中心となるのは、東京と伊豆諸島を結ぶ海運関連事業であり、旅客輸送と貨物輸送が主要な収益源である

ビジネスモデルの評価: 同社の収益モデルは、シンプルに表現すると以下のようになる。 売上高(海運関連事業)= 旅客数(Q_p)× 平均旅客運賃(P_p) + 貨物輸送量(Q_c)× 平均貨物運賃(P_c)

このモデルの強みは、伊豆諸島という特定の地域における輸送インフラとしての独占的または寡占的な地位にある。これは高い参入障壁となり、安定的な事業基盤を形成する 。また、生活物資の輸送を担う貨物部門は、景気変動に対する一定の耐性を持つと考えられる 。一方、脆弱性としては、天候に左右されやすいという外部環境への高い依存度、そして観光需要の変動に業績が直結するという構造的なリスクが挙げられる 。今回の決算でも、荒天による欠航と船員の労働時間問題による減便が旅客数の減少に直結し、この脆弱性が顕在化した 。運賃改定による価格転嫁は一定の成功を収めているものの、コスト上昇圧力と旅客需要のバランスをどう取るかが今後の課題となる

競争環境: 東海汽船は、伊豆諸島への主要な旅客・貨物輸送を担っており、直接的な同規模の競合は少ない。しかし、間接的な競争は存在する。

  • 航空機: 新中央航空が調布飛行場から大島、神津島、新島などへ就航しており、高速性において競合する。東海汽船のジェット船が荒天で欠航する際に、この代替交通機関に顧客が流れる可能性がある。
  • 地域内輸送: 旅客自動車運送事業では、大島島内でのバス事業において、他のタクシー事業者等と競合する 。
  • ホテル事業: 大島温泉ホテルは、島内にある他の宿泊施設や民宿と競合する 。

同社の相対的な強みは、多様な事業セグメントを持つことによるリスク分散と、伊豆諸島への複合的なサービス提供能力にある。海運事業だけでなく、ホテル、バス、商事料飲事業を組み合わせることで、顧客の島内での体験を一貫して提供できる点が競争優位性となり得る 。しかし、今回の決算では、この事業間の連携が必ずしもプラスに作用しておらず、海運事業の不振がホテル事業の宿泊客減少にも繋がっている点が課題として浮き彫りになった

3. 業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析: | 項目(百万円) | 2025年12月期中間期 | 2024年12月期中間期 | 前年同期比(増減率) | | :— | :— | :— | :— |

| 売上高 | 6,640 | 6,553 | +1.3% |

| 営業利益 | △606 | △583 | △4.0% |

| 経常利益 | △632 | △606 | △4.3% |

| 中間純利益 | △373 | △390 | +4.4% |

売上高は前年同期比1.3%増の6,640百万円と微増ながらもプラスを確保した 。これは、主力航路の運賃改定効果や小笠原航路の集客好調が寄与したためである 。しかし、営業利益は△606百万円と、前年同期の△583百万円から赤字幅が拡大している 。これは売上増にもかかわらず、コスト増を吸収できなかったことを示唆しており、利益構造の悪化を意味する。

営業利益のブリッジ分析: 前年同期の営業損失△583百万円から当期の営業損失△606百万円への変動要因を分解する。

  • 売上増減要因:
    • 売上高増加: +87百万円(6,640百万円 – 6,553百万円)
    • 粗利益への影響(仮定): 粗利率が前年並み(141 / 6,553 = 2.15%)と仮定すると、売上増による粗利益の増加は+1.9百万円程度。
  • コスト増減要因:
    • 売上原価の増加: △90百万円(6,502百万円 – 6,412百万円)
    • 販管費の増加: △20百万円(744百万円 – 724百万円)
    • 純粋な利益変動: +1.9百万円(売上増による利益増)- 90百万円(売上原価増)- 20百万円(販管費増)= 約△108.1百万円
    • 実際の利益変動: △606百万円 – (△583百万円) = △23百万円 この分析から、売上高は微増したものの、それを上回るペースで売上原価および販管費が増加したことが、営業損失拡大の主因であることが分かる 。特に海運関連事業では、運賃改定による増収効果を、船舶修繕費の増加が相殺していると記載されており、コストコントロールが課題となっている 。

収益性の深掘り:

  • 粗利率: 前年同期2.15%(141百万円 / 6,553百万円)から、当期2.08%(138百万円 / 6,640百万円)へと微減している 。これは売上原価が売上高を上回るペースで増加したためであり、運賃改定だけではコスト増を十分に吸収できていない状況を示唆している。
  • 営業利益率: 前年同期△8.9%(△583百万円 / 6,553百万円)から、当期△9.1%(△606百万円 / 6,640百万円)へと悪化 。これはコスト増が販管費にも波及していること、そして主力の海運事業が構造的に収益性を改善できていないことを物語っている。

B/S分析:

  • 総資産: 前連結会計年度末22,506百万円から、当期末21,707百万円へと799百万円減少 。主な減少要因は、現金及び預金の920百万円減少と、有形固定資産の460百万円減少である 。現金預金の減少は、後述する財務活動によるキャッシュアウトフローが影響している。
  • 負債: 前連結会計年度末16,147百万円から、当期末15,691百万円へと456百万円減少 。これは、借入金が1,102百万円減少したことによる 。
  • 純資産: 前連結会計年度末6,358百万円から、当期末6,015百万円へと343百万円減少 。中間純損失の計上により利益剰余金が減少したことが主な要因である 。
  • 自己資本比率: 前連結会計年度末21.2%から、当期末20.5%へと僅かに悪化 。純資産の減少が影響している。

運転資本の分析とCCC: CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は、企業がキャッシュを投資してから再びキャッシュとして回収するまでの期間を示す指標であり、資金繰りの効率性を測る上で重要である。

  • 売上債権回転日数(DSO): (売上債権 / 売上高) × 365日
  • 棚卸資産回転日数(DIO): (棚卸資産 / 売上原価) × 365日
  • 仕入債務回転日数(DPO): (仕入債務 / 売上原価) × 365日 CCC = DSO + DIO – DPO
項目2024年12月期2025年12月期中間期変化
DSO(1,526 / 6,553) x 182.5 = 42.4日 (1,604 / 6,640) x 181 = 43.7日 +1.3日
DIO(925 / 6,412) x 182.5 = 26.3日 (938 / 6,502) x 181 = 26.1日 -0.2日
DPO(1,186 / 6,412) x 182.5 = 33.7日 (1,814 / 6,502) x 181 = 50.5日 +16.8日
CCC42.4 + 26.3 – 33.7 = 35.0日43.7 + 26.1 – 50.5 = 19.3日-15.7日

DSOは微増しているものの、仕入債務回転日数(DPO)が大幅に増加したことにより、CCCは前年同期比で大幅に改善した 。これは、支払サイトの延長や仕入債務の増加によるキャッシュ創出効果を意味し、今回の決算における営業活動によるキャッシュ・フローのプラスに寄与している 。しかし、これは一時的な要因である可能性も高く、仕入債務の増加額が627百万円と、営業活動によるキャッシュインの主要因となっている点には注意が必要である 。運転資本の効率性が恒久的に改善されたわけではないと見るべきだ。

キャッシュフロー(C/F)分析:

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー: 270百万円のキャッシュインを確保(前年同期は1,029百万円のキャッシュイン) 。これは税金等調整前中間純損失の拡大(△632百万円)があったにもかかわらず、仕入債務の増加額627百万円や減価償却費602百万円が大きく寄与したことによる 。利益は赤字だが、キャッシュは生み出しているという点で、利益の質は悪くないが、仕入債務の増加という一時的な要因が大きく影響しているため、持続性には疑問符が付く。
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー: 65百万円のキャッシュアウト(前年同期は307百万円のキャッシュアウト) 。有形固定資産や無形固定資産の取得による支出が、補助金の受入による収入を上回った結果である 。設備投資のペースは前年同期より抑制されているようだ。
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー: 1,125百万円のキャッシュアウト(前年同期は98百万円のキャッシュアウト) 。長期借入金の返済1,097百万円が主要因であり、借入金の削減に動いていることがわかる 。

資本効率性の評価:

  • ROICとWACC:
    • ROIC = NOPAT / 投下資本
    • WACC = D/(D+E)×r_d×(1-t) + E/(D+E)×r_e
    同社は営業損失を計上しており、NOPAT(税引後営業利益)はマイナスとなる。したがって、ROICもマイナスであり、WACCを大幅に下回る状況が続いている。このことは、同社が現在、事業活動を通じて企業価値を破壊している状態にあることを明確に示している。収益性の改善が最優先課題であり、ROICをWACC以上に引き上げるための抜本的なコスト構造改革や事業ポートフォリオの見直しが不可欠である。
  • ROEのデュポン分解:
    • ROE = (純利益 / 売上高) × (売上高 / 総資産) × (総資産 / 自己資本)
    • ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
    当期は親会社株主に帰属する中間純損失が△373百万円であり、ROEはマイナスとなっているため、デュポン分解による変動要因分析は限定的となる 。しかし、純利益が赤字であるにもかかわらず、前年同期の△390百万円から赤字幅が縮小しているため、純利益率の改善(絶対値の減少)が見られる 。これは、特別利益(国庫補助金)が特別損失(固定資産圧縮損)を上回ったことや、法人税等調整額がマイナスとなったことなど、営業外・特別損益の改善が影響している 。

4. セグメント情報の徹底解剖

セグメント(百万円)売上高営業利益(損失)利益率2024年中間期売上高 2024年中間期営業利益
海運関連事業5,828 △420 △7.2%5,753 △401
商事料飲事業603 44 7.3%585 37
ホテル事業160 3 1.9%168 9
旅客自動車運送事業151 18 11.9%148 17
合計6,744 △353 6,656 △337
全社(調整後)6,640 △606 △9.1%6,553 △583
  • 海運関連事業: 売上高は前年同期比で増加したものの、営業損失は拡大した 。これは、運賃改定による増収効果を、船舶修繕費の増加が上回ったためである 。旅客数は減少しており、運賃改定に頼る収益構造の脆弱性が露呈している 。天候不順や減便は不可抗力だが、これを補うための需要創出策やコスト構造の見直しが急務である。
  • 商事料飲事業: 売上高、営業利益ともに前年同期を上回る堅調な推移 。セメントや建材タイヤ等の売上が好調であり、また船内の自動販売機やレストランの価格見直しによる収益性向上が寄与した 。この事業は海運事業の旅客数・貨物輸送量に左右されにくい安定的な事業構造を目指しており、”第三の収益の柱”としてのポテンシャルを示している 。
  • ホテル事業: 売上高、営業利益ともに前年同期を下回る結果 。海運事業の荒天による欠航が、宿泊客および日帰り利用客の減少に直結しており、事業間のシナジーがネガティブな形で現れている 。事業全体の収益性を高めるには、海運事業の安定運航が不可欠であり、この連動性の高さがリスク要因となっている。
  • 旅客自動車運送事業: 売上高、営業利益ともに前年同期を僅かに上回る 。貸切バスの集客は低調だったものの、自動車整備部門の堅調が全体を牽引した 。

ポートフォリオ・マネジメントの評価: 同社の事業ポートフォリオは、海運事業の補完を目指す形で構成されている。商事料飲事業や旅客自動車運送事業は、海運事業の不確実性を緩和する役割を期待されているが、今回の決算ではその効果は限定的であった。特に、海運事業とホテル事業の業績が強く連動している点は、ポートフォリオのリスク分散機能が十分に働いていないことを示している。海運事業の不振が他の事業へ波及するリスクを低減するためには、各事業の自律的な成長と収益性の確保がより一層求められる。

5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

項目(百万円)2025年通期予想 中間期実績進捗率
売上高14,600 6,640 45.5%
営業利益320 △606
経常利益260 △632
純利益220 △373

通期業績予想に対して、売上高は45.5%の進捗であり、上期が閑散期であることを考慮すれば、まずまずの滑り出しと言える 。しかし、営業利益以下の各段階利益は中間期で既に大幅な赤字を計上しており、通期黒字化という目標達成には、下期に極めて大きなV字回復が必要となる

経営陣は、通期業績予想からの修正の有無について「無」と回答している 。この判断は非常に楽観的であり、懐疑的な視点を持つべきである。通期予想を達成するには、下期だけで営業利益926百万円(320百万円 – (△606百万円) = 926百万円)を稼ぎ出す必要がある。これは前年同期の通期実績である営業損失△130百万円(2024年12月期中間期営業損失△583百万円 + 下期営業利益453百万円と仮定)から見ても、極めて高いハードルである。

この楽観的な経営判断は、以下のいずれかのシナリオを前提としている可能性がある。

  1. 下期に天候が安定し、荒天による欠航が激減する。
  2. 船員労働時間遵守のための減便が解消され、通常運航に戻る。
  3. 夏季の繁忙期に、観光需要が想定を大幅に上回って急増する。
  4. 運航体制の是正が功を奏し、大幅な効率化とコスト削減が実現する。

しかし、これらの前提は不確実性が高く、特に天候や観光需要は同社のコントロール範囲外である。今回の決算で明らかになった運航体制の課題やコスト増を踏まえると、現状の通期予想は非現実的であり、下方修正のリスクが非常に高いと判断せざるを得ない。

6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

【基本シナリオ】

  • 前提条件:
    • 日本の景気は緩やかに回復するが、物価上昇による消費マインドの停滞は継続。
    • 下期も天候不順による欠航が散発的に発生し、旅客数の伸びを鈍化させる。
    • 運航体制の改善は進むものの、即座の抜本的な効率化は困難。
    • 商事料飲事業は堅調に推移するが、海運事業の赤字を完全に補うには至らない。
  • 業績予測:
    • 売上高:13,500百万円~14,000百万円
    • 営業利益:△300百万円~△100百万円
    • 純利益:△200百万円~△50百万円
    ⇒ 通期予想の達成は困難であり、年度末にかけて下方修正される可能性が高い。

【強気シナリオ】

  • 前提条件:
    • インバウンド観光客が大幅に増加し、伊豆諸島への旅行需要が急増する。
    • 下期は天候が極めて安定し、ほぼ計画通りの運航が実現する。
    • コスト削減策が想定を上回る効果を発揮し、船舶修繕費等の増加を抑制する。
  • 業績予測:
    • 売上高:14,500百万円~15,000百万円
    • 営業利益:100百万円~300百万円
    • 純利益:50百万円~200百万円
    ⇒ V字回復を達成し、通期予想に近い、あるいは上振れる結果となる。

【弱気シナリオ】

  • 前提条件:
    • 物価上昇や景気後退により、国内の観光需要が大幅に冷え込む。
    • 下期も天候不順が続き、運航率が低迷。
    • 船員不足が深刻化し、更なる減便や運航体制の見直しを迫られる。
    • コスト上昇が継続し、運賃改定効果を完全に相殺する。
  • 業績予測:
    • 売上高:12,000百万円~13,000百万円
    • 営業利益:△700百万円~△500百万円
    • 純利益:△500百万円~△300百万円
    ⇒ 外部環境と内部要因の双方が悪化し、大幅な通期赤字を計上する。

7. バリュエーション(企業価値評価)

相対評価法: 同社は営業損失を計上しているため、PER(株価収益率)は算出不能である。PBR(株価純資産倍率)やEV/EBITDA(EBITDAに対する企業価値の倍率)で比較を行う必要がある。

  • PBR: 同社のPBRは、直近の株価(仮定)と1株当たり純資産(約2,734円)から算出される。市場平均のPBRと比較し、同社の事業特性(高い固定資産比率、季節性、収益の不安定性)を考慮すると、平均を下回る水準で評価されるのが妥当であろう。
  • EV/EBITDA: EBITDA(EBIT + 減価償却費)は、当期営業損失△606百万円に対し、減価償却費602百万円を加えるとおよそ△4百万円となり、こちらもマイナスである 。この指標も意味のある形で算出できず、収益性改善がバリュエーションの議論を困難にしている。

現時点では、相対評価を行うための適切な指標が乏しく、収益性の回復が見られない限り、バリュエーションの議論は成立しにくい。株価は、今後の業績回復期待と、バランスシートの安全性(借入金削減など)を反映して形成されると考える。

絶対評価法: 現状の不安定な業績と将来シナリオの不確実性を考慮すると、簡易的なDCF法による理論株価の試算は信頼性が低い。永久成長率やWACCの仮定がわずかに変わるだけで、結果が大きく変動するためである。まずは収益性の改善が先行し、将来のキャッシュフローが予測可能になるまでは、絶対評価法は補助的なツールに留めるべきである。

8. 総括と投資家への提言

東海汽船の2025年第2四半期決算は、売上高は増加したものの、コスト増により営業損失が拡大した点が最大の懸念事項である 。特に、荒天による欠航や船員労働時間問題による減便という外部・内部の両要因が複合的に作用し、利益の質を悪化させている 。経営陣が通期予想を据え置いている判断は楽観的であり、下期にV字回復を実現できるかは不透明と言わざるを得ない。

コア投資魅力: 伊豆諸島への輸送における高い参入障壁と、運賃改定による価格転嫁能力。 最大の懸念事項: 外部環境(天候)への脆弱性と、内部要因(船員問題、コスト増)による収益性の悪化。

投資家への提言: 現時点では、同社の株価は、通期予想の実現可能性を巡る不確実性を背景に、レンジ相場を形成する可能性が高い。積極的に買い向かうタイミングではなく、中立スタンスを維持すべきである。 今後の株価動向を監視する上で、投資家が注視すべき最重要KPIは以下の通り。

  • 海運関連事業の運航率と旅客数: 天候不順による欠航状況が改善しているか、インフルエンサー活用などの需要喚起策が奏功しているか。
  • コスト構造の変化: 船舶修繕費等のコスト増が抑制されているか。
  • 経営陣のコメント: 次の決算発表で、通期予想を据え置くか、あるいは下方修正するかの経営判断とその根拠。
  • 商事料飲事業の利益貢献度: “第三の収益の柱”として、海運事業の損失をどの程度補うことができるか。

これらの情報を総合的に評価し、収益性の改善トレンドが明確になった段階で、改めて投資スタンスを再検討するべきである。

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