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東京製綱株式会社(5981)2026年3月期 第1四半期決算分析レポート

分析対象資料: 2026年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)


記事タイトル:価格転嫁とコスト低減は奏功も、市場の逆風は強まる—東京製綱、第1四半期決算の裏側を読み解く


1. エグゼクティブ・サマリー

投資スタンス: 中立(確信度60%)

第1四半期決算は、売上高は減少したものの、コスト低減努力と製品価格改定の進捗により、営業利益・経常利益は増益を達成しました。この点だけを見ればポジティブな印象を受けますが、セグメント別の詳細を深掘りすると、主力事業の市場環境に明確な逆風が吹いていることが見て取れます。特に、スチールコード関連事業における販売数量の減少は、一過性のものではなく、構造的な市場変化を示唆している可能性があります。利益率改善は評価できるものの、トップラインの成長鈍化は中期的な懸念材料です。したがって、現時点では「中立」と判断し、経営陣がこの逆風にいかに対応していくか、その進捗を注視する必要があります。

3行サマリー:

  • 何が起きたのか(事実): 第1四半期は、売上高が前年同期比3.3%減少したものの、営業利益は同22.5%増加した 。特に、鋼索鋼線関連や開発製品関連事業が利益を牽引した 。
  • なぜそれが重要なのか(本質): 売上減少は、スチールコード事業での販売数量減少など市場環境の厳しさを反映している 。一方で、コスト低減と製品価格改定が進み、利益率の改善に成功していることが明らかになった 。これは、経営のコントロール能力が一定程度機能していることを示唆する。
  • 次に何を見るべきか(注目点): 今後、価格転嫁効果の持続性、およびスチールコード事業の販売数量減少が他の事業に波及しないかどうかに注目する必要がある。また、減少した純利益の背景にある投資有価証券売却益の有無も重要である 。

主要カタリストとリスク:

カタリスト(ポジティブ要因):

  1. 製品価格改定のさらなる進捗: 価格転嫁が引き続き順調に進み、原材料コスト上昇を吸収し、利益率がさらに改善する。
  2. 海外防災・CFCC事業の大型受注: 開発製品関連事業において、海外のインフラ投資需要を取り込み、大型案件を獲得することで売上・利益のドライバーとなる 。
  3. スチールコード事業における新市場開拓: タイヤ用以外の用途(例:コンベアベルト、ホース補強材)などでの新規需要を創出し、販売数量の減少を食い止める。

リスク(ネガティブ要因):

  1. スチールコード事業の構造的市場縮小: 海外製品の競争激化により販売数量の減少がさらに加速し、採算が悪化する 。
  2. マクロ経済の減速による需要減: 建設・自動車産業など主要顧客業界の投資意欲が減退し、全セグメントで需要が落ち込む。
  3. 原材料価格の再上昇と価格転嫁の限界: 鉄鋼などの原材料価格が再び高騰した場合、製品価格への転嫁が市場環境から困難になり、利益率が悪化する。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

東京製綱は、主に鋼索鋼線、スチールコード、開発製品、産業機械、エネルギー不動産の5つのセグメントで事業を展開している

ビジネスモデルの評価: 同社のビジネスモデルは、主に「Q(数量)×P(価格)」で売上を構成している。

  • 鋼索鋼線関連: 漁業・建設・土木用のロープ製品や、鉄道関連製品などを供給する、比較的安定した需要を持つ事業 。
  • スチールコード関連: タイヤ用スチールコードが主要製品であり、自動車産業の動向に大きく左右される事業 。
  • 開発製品関連: 防災関連や橋梁事業、新素材CFCC(カーボンファイバー複合ケーブル)など、技術力を活かした高付加価値製品・サービスを提供する事業 。
  • 産業機械関連: 粉末冶金事業などが含まれる 。
  • エネルギー不動産関連: 不動産賃貸収入や石油・ガス販売が収益源 。

強み(競争優位性):

  • 長年の実績と技術力: 100年以上の歴史を持つ老舗であり、鋼索製品に関する高い技術力と品質で顧客からの信頼を築いている。
  • 製品ポートフォリオの分散: 複数の事業セグメントを持つことで、特定の産業や市場の変動リスクを分散している。開発製品関連事業のような高付加価値領域へのシフトもその一環である。

脆弱性(リスク):

  • 景気変動への感応度: 主要セグメントである鋼索鋼線やスチールコードは、建設業、自動車産業といった景気循環に敏感な業界に依存している。
  • 価格競争の激化: 特にスチールコード事業では、海外製品の参入により販売数量が減少しており、価格競争に巻き込まれている可能性が高い 。
  • 原材料コストの変動リスク: 鉄鋼製品を主原料とするため、市況による原材料価格の変動が利益率に直接的な影響を与える。

競争環境: 同社の主要セグメントである鋼索・スチールコードの分野では、国内では競合他社が存在するほか、グローバルな市場では中国や韓国、欧州企業との競争に直面している。特にスチールコード事業で海外製品の参入が言及されており、これは単なる一時的な要因ではなく、コスト競争力を持つ海外メーカーの攻勢が強まっていることを示唆している 。同社の相対的な強みは、品質と信頼性、国内での確立された顧客基盤にあるが、この強みが価格競争の激化によって侵食されるリスクがある。


3. 業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析: | 項目 | 2026年3月期 1Q (百万円) | 2025年3月期 1Q (百万円) | 前年同期比 増減額 (百万円) | 前年同期比 増減率 (%) | | :— | :— | :— | :— | :— |

| 売上高 | 14,418 | 14,917 | △499 | △3.3% |

| 営業利益 | 748 | 610 | +138 | +22.5% |

| 経常利益 | 863 | 774 | +89 | +11.4% |

| 四半期純利益 | 673 | 793 | △120 | △15.1% |

営業利益のブリッジ分析(前年同期610百万円 → 当期748百万円):

  • 当期の営業利益増加要因(+138百万円)は、主に以下の3点に分解できる。
    1. 売上数量/ミックス変動: 売上高は499百万円減少しており、数量減が利益を圧迫する方向に作用した。特に、スチールコード関連事業で販売数量が減少し、売上高が438百万円減少した影響が大きい 。このマイナス影響は、複数の好調セグメント(開発製品、エネルギー不動産など)の増収分を上回った 。
    2. 価格/原価率変動: 操業コストの低減努力に加え、諸資材や人件費等の物価上昇に対応した製品価格改定が進んだことが、粗利率の改善に大きく寄与した 。売上総利益は3,179百万円から3,328百万円に増加しており、この増益分が数量減を相殺し、営業利益を押し上げた主因と推測される 。
    3. 販管費変動: 販売費及び一般管理費は2,568百万円から2,579百万円へと微増しているが、売上高に対する比率は改善しており、費用コントロールは一定程度行われていると評価できる 。

収益性の深掘り:

  • 売上高減少にもかかわらず、売上総利益が増加した事実は、同社が価格転嫁に成功していることを明確に示している。これは、価格決定権を持つ製品群が存在すること、あるいは交渉力があることを意味し、短期的にはポジティブな兆候である。
  • しかし、四半期純利益が減少した点には注意が必要である。これは、前年同期に計上された「投資有価証券売却益」が当期にはなかったためである 。これは、本業以外の要因による一時的な利益であり、実態の収益力を判断する上では、営業利益と経常利益の動向を重視すべきである。

B/S分析:

  • 総資産は前連結会計年度末から596百万円減少し、86,773百万円となった 。 これは主に、前期末に積み上がった売上債権の減少による 。
  • 負債合計は117百万円減少し、50,566百万円となった 。
  • 純資産は478百万円減少し、36,207百万円となった 。 これは、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上による利益剰余金の増加があったものの、前連結会計年度に係る株主配当金の支払いなどによる減少が上回ったためである 。
  • 自己資本比率は、42.0%から41.7%へとわずかに低下している 。 財務の安全性は依然として健全な水準を維持している。

運転資本の分析: 運転資本の効率性を評価するため、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を構成する各指標を概算する。

  • 売上債権回転日数(DSO) = (売上債権 / 売上高) × 90日
  • 棚卸資産回転日数(DIO) = (棚卸資産 / 売上原価) × 90日
  • 仕入債務回転日数(DPO) = (仕入債務 / 売上原価) × 90日

2025年3月期 1Q:

  • 売上債権:13,212百万円
  • 棚卸資産:17,665百万円(商品及び製品7,781 + 仕掛品4,573 + 原材料及び貯蔵品5,311)
  • 仕入債務:9,625百万円(支払手形及び買掛金6,989 + 電子記録債務2,636)
  • 売上高:14,917百万円
  • 売上原価:11,738百万円
  • DSO: (13,212 / 14,917) × 90 ≈ 79.6日
  • DIO: (17,665 / 11,738) × 90 ≈ 135.2日
  • DPO: (9,625 / 11,738) × 90 ≈ 73.6日
  • CCC: 79.6 + 135.2 – 73.6 ≈ 141.2日

2026年3月期 1Q:

  • 売上債権:11,931百万円
  • 棚卸資産:17,721百万円(商品及び製品7,413 + 仕掛品4,997 + 原材料及び貯蔵品5,371)
  • 仕入債務:9,250百万円(支払手形及び買掛金6,695 + 電子記録債務2,555)
  • 売上高:14,418百万円
  • 売上原価:11,090百万円
  • DSO: (11,931 / 14,418) × 90 ≈ 74.4日
  • DIO: (17,721 / 11,090) × 90 ≈ 143.7日
  • DPO: (9,250 / 11,090) × 90 ≈ 75.1日
  • CCC: 74.4 + 143.7 – 75.1 ≈ 143.0日

CCCはわずかに悪化している。特に、棚卸資産回転日数(DIO)が約8.5日増加している点が注目される。これは、売上原価が減少しているにもかかわらず、棚卸資産の金額が微増したことによる。スチールコード事業での販売数量減少が指摘されていることを踏まえると、一部の製品が滞留している可能性が考えられる。在庫の質が悪化していないか、陳腐化リスクがないか、次四半期以降の動向を注視する必要がある。

キャッシュフロー(C/F)分析: 第1四半期連結累計期間に係るキャッシュ・フロー計算書は開示されていないが、B/Sの変化から概算を試みる。

  • 営業CF: 運転資本の減少(売上債権減)はプラス要因だが、棚卸資産増はマイナス要因。純利益減少や減損損失(61百万円) などの影響を考慮すると、前年同期と比べて営業CFはやや弱含んだ可能性がある。
  • 投資CF: 投資有価証券の評価額が増加しており、投資活動は活発であった可能性がある 。
  • 財務CF: 配当金支払いが財務CFのマイナス要因として作用したと考えられる 。

資本効率性の評価:

  • ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト): ROICを評価するためには、NOPAT(税引後営業利益)と投下資本を計算する必要がある。
    • NOPAT ≈ 営業利益 × (1 – 実効税率)
    • 投下資本 ≈ 有利子負債 + 純資産 – 現金
    • 当期の営業利益748百万円を単純に年換算すると約30億円。実効税率を仮に30%とすると、NOPATは約21億円。
    • 投下資本は概算で、有利子負債(短期借入金18,530 + 長期借入金5,086)と純資産36,207から現金5,936を引くと、約538億円。
    • 概算ROIC ≈ 21億円 / 538億円 ≈ 3.9%
    • 一般的にWACCは5%前後と見積もられることが多い。同社のROICはWACCを大きく下回る水準であり、現時点では企業価値を破壊している状態にあると評価せざるを得ない。利益率改善は評価できるが、投下資本を有効活用できているかという点では大きな課題が残る。
  • ROE(自己資本利益率)のデュポン分解:
    • ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
    • 純利益率: 673百万円 / 14,418百万円 = 4.7%
    • 総資産回転率: 14,418百万円 / 86,773百万円 = 0.17回
    • 財務レバレッジ: 86,773百万円 / 36,207百万円 = 2.4倍
    • ROE: 4.7% × 0.17 × 2.4 ≈ 1.9%(四半期換算)
    • 純利益率の改善は営業利益率の改善から期待できるが、売上高が減少しているため総資産回転率が伸びず、ROEの向上には課題がある。

4. セグメント情報の徹底解剖

セグメント売上高 (2026年3月期 1Q) 前年同期比 増減率営業利益/損失 (2026年3月期 1Q) 前年同期比 増減率
鋼索鋼線関連7,099百万円△3.1%693百万円+9.8%
スチールコード関連1,113百万円△28.2%△77百万円営業損失継続
開発製品関連3,579百万円+2.2%5百万円営業損失から黒字化
産業機械関連929百万円△0.3%29百万円△8.1%
エネルギー不動産関連1,696百万円+5.4%96百万円△8.6%

全社業績への貢献度と成長ドライバー:

  • 鋼索鋼線関連: 売上高の減少にもかかわらず、利益は増加しており、全社営業利益の大部分を稼ぎ出す主力事業である 。価格改定とコスト低減が奏功しており、利益体質改善の進捗がうかがえる。
  • スチールコード関連: 売上高の減少率が最も高く(△28.2%)、営業損失も拡大している、最も深刻な課題を抱えるセグメント 。海外製品との競争激化が主因であり、構造的な対策が急務である。
  • 開発製品関連: 売上高は増加し、前年同期の154百万円の営業損失から5百万円の黒字に転換した、将来の成長ドライバー 。橋梁事業や海外での防災・CFCC事業が好調であり、経営陣が注力する高付加価値分野の成果が出始めている。
  • エネルギー不動産関連: 売上は増加したものの、修繕費増加により利益は減少した 。安定収益源としての役割は大きいが、利益率には課題がある。

ポートフォリオ・マネジメントの評価: 同社は、成熟市場である鋼索鋼線やスチールコード事業でキャッシュを創出しつつ、成長性の高い開発製品関連事業に投資していくというポートフォリオ戦略を志向していると考えられる。開発製品関連事業が黒字化したことは、この戦略が一定の成果を上げ始めていることを示唆する。しかし、スチールコード事業の不振は看過できない。海外製品の攻勢に対する抜本的な対策を講じなければ、ポートフォリオ全体のリスクとなりうる。事業再編や撤退も視野に入れるべきか、経営陣の判断が問われる。


5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

同社は2026年3月期の通期連結業績予想を公表しており、売上高64,000百万円、営業利益4,000百万円、経常利益3,900百万円、純利益3,200百万円としている 。今回の第1四半期の実績(売上高14,418百万円、営業利益748百万円)は、通期計画に対する進捗率が売上高で約22.5%、営業利益で約18.7%となる

  • 売上高の進捗率は例年並みだが、営業利益の進捗率はやや低い水準にある。
  • しかし、今回の決算短信では、通期業績予想からの修正は行われていない 。これは、経営陣が「第1四半期は想定通りの範囲内で推移した」と判断していることを意味する。
  • 営業利益の進捗率が計画を下回っているにもかかわらず、通期予想を据え置いた背景には、第2四半期以降に販売数量の回復や、価格改定の効果がさらに発現すると見込んでいる可能性がある。
  • 経営陣の需要予測能力については、特にスチールコード事業での需要減をどの程度織り込んでいたかが不透明である。通期予想には、このセグメントの厳しい環境を考慮した上での数値が含まれていると信じたいが、もしそうでない場合、今後の下方修正リスクがある。

6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

強気シナリオ:

  • 前提条件: 世界経済は緩やかに回復し、インフラ投資が活発化する。スチールコード事業の需要が、中国経済の回復などを背景に持ち直し、価格競争が収束に向かう。為替は円安基調を維持する。
  • 売上・利益予測: 開発製品関連事業の大型案件が複数受注でき、鋼索鋼線事業の価格転嫁がさらに進む。スチールコード事業の減収幅が縮小し、全社売上高は通期予想を上振れ。営業利益は4,200百万円~4,500百万円を達成。
  • カタリスト: 開発製品関連での海外大型インフラ案件の受注発表。スチールコード事業における新たな用途開発の成功。

基本シナリオ(会社予想ベース):

  • 前提条件: マクロ経済は現状維持。スチールコード事業の販売数量減少は続くが、鋼索鋼線事業での価格改定効果が下支えする。開発製品関連は堅調に推移する。
  • 売上・利益予測: 通期売上高は64,000百万円。営業利益は価格転嫁効果で目標の4,000百万円は達成可能。
  • カタリスト: 鋼索鋼線事業における特定の製品の好調。コスト削減によるさらなる利益率改善。

弱気シナリオ:

  • 前提条件: 世界的な景気後退が現実化し、建設・自動車産業の需要が大幅に減退。スチールコード事業の販売数量減少が加速し、他のセグメントにも波及する。為替が円高に振れる。
  • 売上・利益予測: 全セグメントで需要が落ち込み、売上高は60,000百万円を下回る。価格改定効果も需要減で相殺され、営業利益は3,000百万円を下回り、通期計画を大幅に未達となる。
  • リスク: 海外競合他社によるスチールコード市場での価格攻勢の激化。原材料価格の変動。需要減少による稼働率低下と固定費負担増。

7. バリュエーション(企業価値評価)

相対評価法: 同社の現在の株価水準を評価するため、競合他社と比較する。

  • PER(株価収益率): 同社の予想PERは約6.6倍(株価1,340円 / 予想EPS 202.76円)。これは、同業他社と比較してやや割安な水準にある。市場は、同社の将来の成長性や収益安定性に対して慎重な見方をしている可能性を示唆する。
  • PBR(株価純資産倍率): PBRは約0.4倍。これは、解散価値である1倍を大幅に下回っており、市場が同社の保有する資産を正しく評価していないか、あるいは将来の収益性を悲観的に見ていることを示す。

なぜ割安に評価されているか:

  • 成長性の懸念: 主力事業である鋼索鋼線やスチールコードが成熟市場にあり、特にスチールコード事業では構造的な逆風に直面していることが、将来の成長性を懐疑的にさせている。
  • 資本効率の低さ: 前述のROIC分析からもわかるように、投下資本を効率的に活用して利益を生み出す力が弱いと見なされている。

8. 総括と投資家への提言

今回の決算は、経営陣がコスト削減と価格改定を通じて利益体質改善に努めている姿勢が明確に示されたポジティブな側面と、主要事業の市場環境の厳しさが改めて浮き彫りになったネガティブな側面が混在している。利益率は改善しているものの、トップラインの成長鈍化は中期的な課題であり、現時点では「中立」という投資スタンスが妥当であると考える。

核心的な投資魅力:

  • 開発製品関連事業の成長による事業ポートフォリオの進化。
  • 成熟事業における利益率改善への着実な取り組み。

最大の懸念事項:

  • スチールコード事業における販売数量の構造的な減少と、それに伴う収益性悪化。
  • ROICがWACCを下回る状況が続き、資本効率改善の兆しが見えないこと。

投資家への提言: 株価動向を監視する上で、投資家が今後注視すべき最重要KPIは以下の通りである。

  1. スチールコード事業の売上高・営業利益の動向: 販売数量の減少が底を打つ兆候が見られるか、あるいは新たな対策が発表されるか。
  2. 開発製品関連事業の進捗: 橋梁事業やCFCC事業で、通期計画達成を確信させるような具体的な受注実績が発表されるか。
  3. 運転資本の改善: DIO(棚卸資産回転日数)が悪化傾向にあるため、在庫の健全性を示す指標の改善が見られるか。

これらのKPIの改善が見られた場合、投資スタンスを強気に転じる可能性を探るべきである。逆に、スチールコード事業の不振が継続し、他のセグメントにも悪影響が波及するようであれば、弱気への転換も検討すべきだ。

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