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年金繰下げ受給の知られざるデメリット完全解説:後悔しない選択のために知っておくべき7つのリスク

【CFPが実体験と相談事例から語る】「増額」の裏に潜む落とし穴と、本当に得する人・損する人の見極め方

こんにちは。CFP・AFP資格を持つファイナンシャルプランナーの田中と申します。私は大手銀行での個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社での投資アドバイザー経験5年を経て、現在はお金の不安を抱える多くの方々の相談を受けています。

実は私自身、20代で株式投資で200万円の大損を経験し、30代では家計管理の失敗で借金200万円を作ってしまった過去があります。しかし、つみたてNISAと確定拠出年金で資産形成に成功し、現在は資産3,000万円を築いています。

今回お話しする年金の繰下げ受給について、私のもとには毎月のように「繰下げして後悔している」「思ったほど手取りが増えなかった」「加給年金を受け取れなくなって大損した」といった相談が寄せられます。

「年金を繰り下げれば最大84%も増える」という魅力的な言葉の裏に隠された、7つの重大なデメリットを、具体的な事例と数字を交えながら詳しく解説いたします。特に、50代後半から60代前半の方々が「知らなかった」で済まされない重要な情報をお伝えします。

目次

なぜ年金繰下げ受給で「後悔」する人が後を絶たないのか

多くの人が抱く「繰下げ=絶対得」という誤解

年金繰下げ受給とは、本来65歳から受け取る年金の開始時期を66歳以降75歳まで遅らせることで、1ヶ月あたり0.7%ずつ年金額を増やせる制度です。最大10年間(120ヶ月)繰り下げると、受給額は84%も増額されます。

しかし、実際に私が相談を受けた事例を見ると、「繰下げして良かった」と心から満足している方は、実は全体の3割程度に留まります。残りの7割の方は、何らかの「想定外」に直面し、後悔とまではいかなくても「もっと慎重に検討すべきだった」と振り返っています。

私の相談事例:Aさん(68歳・元会社員)の後悔

昨年相談を受けたAさんは、65歳で定年退職後も再雇用で70歳まで働き、年金を5年間繰り下げました。月額14万円だった年金が、42%増の19万8,000円になったのですが、実際の手取りは期待していた額を大きく下回りました。

「税金と社会保険料で3万円近く引かれて、実際の手取りは16万8,000円程度。繰下げ前なら手取り12万5,000円だったから、確かに増えてはいるけれど、42%増の実感は全くない」とAさんは語ります。

さらに、Aさんには5歳年下の奥様がいましたが、繰下げ期間中に受け取れなかった加給年金(年額約40万円)の損失は、合計200万円にも上りました。

このように、「増額される」という情報だけでは見えてこない、現実的なデメリットが数多く存在するのです。

年金繰下げ受給の基本的な仕組みと増額率

繰下げ受給の計算方法

年金の繰下げ受給は、以下の計算式で増額率が決まります:

増額率 = 0.7% × 繰下げ月数

具体的な増額率は以下の通りです:

  • 1年繰下げ(66歳):8.4%増
  • 2年繰下げ(67歳):16.8%増
  • 3年繰下げ(68歳):25.2%増
  • 4年繰下げ(69歳):33.6%増
  • 5年繰下げ(70歳):42.0%増
  • 10年繰下げ(75歳):84.0%増

繰下げ対象となる年金

繰下げ受給の対象となるのは以下の年金です:

老齢基礎年金(国民年金)

  • 満額で年額81万6,000円(令和6年度)
  • 自営業者・フリーランス・専業主婦(夫)が対象

老齢厚生年金

  • 会社員・公務員が加入
  • 平均的な額面は月額約9万円

これらの年金は、両方まとめて繰り下げることも、どちらか片方だけを繰り下げることも可能です。

一見魅力的に見える増額効果

例えば、65歳時点で老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額15万円受け取れる人が、70歳まで5年間繰り下げた場合:

月額15万円 × 1.42(42%増)= 月額21万3,000円

年額では、180万円が255万6,000円となり、75万6,000円も増える計算になります。

しかし、この「額面」の数字だけを見て判断してしまうことが、多くの方が陥る最初の落とし穴なのです。

デメリット1:税金・社会保険料の大幅増加で手取りは期待値を大きく下回る

繰下げ受給で増える負担の全体像

年金額が増えることで、以下の税金・社会保険料が増加します:

所得税

  • 65歳以上の場合、年金収入158万円を超えると課税対象
  • 公的年金等控除110万円+基礎控除48万円を差し引いた額に課税

住民税

  • 年金収入148万円を超えると課税対象(多くの自治体)
  • 前年の所得に基づいて翌年に徴収

国民健康保険料・後期高齢者医療保険料

  • 前年の所得に応じて保険料が決定
  • 所得が増えるほど負担も重く

介護保険料

  • 65歳以上は第1号被保険者として負担
  • 所得段階に応じて保険料が決定

具体的な手取り額の計算例

ケース1:65歳から月額12万円を受給する場合

  • 年金収入:144万円
  • 所得税:0円(非課税)
  • 住民税:0円(非課税)
  • 国民健康保険料:年額約5万円
  • 介護保険料:年額約6万円
  • 手取り年額:約133万円(月額約11万1,000円)

ケース2:70歳から月額17万円(42%増)を受給する場合

  • 年金収入:204万円
  • 所得税:年額約2万3,000円
  • 住民税:年額約4万6,000円
  • 国民健康保険料:年額約12万円
  • 介護保険料:年額約9万円
  • 手取り年額:約176万円(月額約14万7,000円)

この例では、額面では42%増えても、手取りでは約33%の増加に留まります。

課税所得145万円の「魔の壁」

特に注意すべきは、課税所得145万円を境に医療費の自己負担割合が大きく変わることです:

70歳〜74歳の医療費自己負担

  • 課税所得145万円未満:2割負担
  • 課税所得145万円以上:3割負担

75歳以上の医療費自己負担

  • 課税所得145万円未満:1割負担
  • 課税所得145万円以上:3割負担(単身世帯年収383万円以上、夫婦世帯年収520万円以上は2割負担)

年金を繰り下げることで、この「145万円の壁」を超えてしまい、医療費負担が倍増する可能性があります。持病を抱えている方や、定期的に通院が必要な方にとっては、繰下げによる増額効果が医療費増加で相殺されてしまうケースも少なくありません。

デメリット2:「損益分岐点」を超えて長生きしなければ総受給額で損をする

損益分岐点の基本的な考え方

年金の繰下げ受給における損益分岐点とは、「65歳から受給開始した場合の累計受給額」と「繰下げして受給開始した場合の累計受給額」が等しくなる年齢のことです。

繰下げ年齢別の損益分岐点

70歳まで繰下げ(42%増)の場合

  • 損益分岐点:約81歳11ヶ月
  • 81歳11ヶ月より長生きすれば得、短ければ損

75歳まで繰下げ(84%増)の場合

  • 損益分岐点:約86歳11ヶ月
  • 86歳11ヶ月より長生きすれば得、短ければ損

実際の寿命データとのギャップ

厚生労働省の令和4年簡易生命表によると:

  • 男性の平均寿命:81.05歳
  • 女性の平均寿命:87.09歳

男性の場合、70歳まで繰り下げても平均寿命では損益分岐点にギリギリ到達しない計算になります。さらに、これは「平均」であり、約半数の方がこれより短命という現実があります。

私の相談事例:Bさん(享年78歳・元公務員)の事例

Bさんは健康に自信があり、70歳まで年金を繰り下げる予定でした。しかし、69歳で重篤な病気が発覚し、70歳で年金受給を開始したものの、78歳で亡くなりました。

65歳から受給していた場合の総額:月額13万円×156ヶ月(13年)= 2,028万円 70歳から受給した場合の総額:月額18万5,000円×96ヶ月(8年)= 1,776万円

差額:252万円の損失

Bさんの奥様は、「健康だったからこそ繰下げを選んだのに、皮肉な結果になってしまった」と嘆いておられました。

手取りベースでの損益分岐点はさらに延びる

前述の税金・社会保険料の負担を考慮すると、実際の損益分岐点はさらに後ろにずれ込みます。額面で81歳11ヶ月だった損益分岐点が、手取りベースでは83〜84歳程度まで延びるケースが一般的です。

デメリット3:加給年金の受給権消失による大きな機会損失

加給年金とは何か

加給年金は、厚生年金の加入期間が20年以上ある方が65歳到達時点で、生計を維持している以下の家族がいる場合に支給される「年金の家族手当」です:

支給対象者

  • 65歳未満の配偶者
  • 18歳到達年度末日までの子ども
  • 1級・2級の障害がある20歳未満の子ども

支給額(令和6年度)

  • 配偶者:年額390,500円(月額約3万2,500円)
  • 子ども:年額224,700円(月額約1万8,700円)

繰下げ受給中は加給年金が受け取れない

老齢厚生年金を繰り下げている期間中は、加給年金の支給も停止されます。これは繰下げ受給の最も大きな盲点の一つです。

具体的な損失額の計算

5歳年下の配偶者がいる場合の5年繰下げ

  • 加給年金:年額390,500円×5年間 = 195万2,500円の受給権消失
  • さらに、配偶者が65歳になった時に受け取れる振替加算(年額約15万円〜40万円)も影響を受ける可能性

10歳年下の配偶者がいる場合の5年繰下げ

  • 加給年金:年額390,500円×5年間 = 195万2,500円の受給権消失
  • 繰下げ終了後も、配偶者が65歳になるまでの5年間は加給年金を受給可能

私の相談事例:Cさん夫妻の誤算

Cさん(67歳)は5歳年上の奥様(72歳)がいる典型的なケースでした。年金を70歳まで繰り下げて月額20万円(42%増)にしたものの、65歳から70歳までの5年間で受け取れなかった加給年金は約195万円。

「繰下げで年額60万円増えたけれど、加給年金195万円を失ったのは痛すぎた。事前にちゃんと説明してもらえていれば、絶対に繰下げしなかった」とCさんは悔やんでいます。

加給年金を受け取りながら一部繰下げする方法

ただし、全てを諦める必要はありません。以下の方法で加給年金の受給権を保護できます:

老齢厚生年金のみ65歳から受給、老齢基礎年金のみ繰下げ

  • 加給年金は老齢厚生年金に付随するため、厚生年金を受給していれば加給年金も受け取れる
  • 老齢基礎年金のみを繰り下げることで、一定の増額効果も期待できる

ただし、この方法では全体の繰下げ効果は限定的になります。

デメリット4:振替加算の受給機会も失う可能性

振替加算とは

振替加算は、加給年金を受給していた配偶者が65歳に到達し、加給年金の支給が終了した際に、その配偶者の老齢基礎年金に加算される制度です。

振替加算の特徴

  • 配偶者の生年月日によって金額が決まる(昭和40年以前生まれが対象)
  • 昭和18年生まれ:年額約40万円
  • 昭和40年生まれ:年額約1万5,000円
  • 配偶者が亡くなるまで一生涯支給

繰下げ受給が振替加算に与える影響

パターン1:老齢基礎年金を繰り下げる場合 配偶者が老齢基礎年金を繰り下げている期間中は、振替加算も支給停止されます。

パターン2:老齢厚生年金を繰り下げる場合 夫が老齢厚生年金を繰り下げると、妻の振替加算の受給開始時期にも影響する可能性があります。

私の相談事例:Dさん夫妻の複合的な損失

Dさん(68歳、昭和31年生まれ)は、老齢基礎年金を70歳まで繰り下げることにしました。夫の加給年金は65歳の時点で終了し、本来であればDさんの老齢基礎年金に年額約20万円の振替加算が付くはずでした。

しかし、5年間の繰下げ期間中、この振替加算も支給停止となり、約100万円の機会損失が発生しました。

「老齢基礎年金を繰り下げることで年額約23万円増えたけれど、振替加算100万円を失った。計算してみると、85歳まで生きないと元が取れない」とDさんは語ります。

デメリット5:受給期間中の死亡リスクで遺族が受け取れる年金に影響

繰下げ待機期間中の死亡

もし年金の繰下げ待機期間中(例:65歳から70歳まで)に被保険者が死亡した場合、その期間に受け取れなかった年金は「未支給年金」として遺族が受け取ることができます。ただし、これは繰下げによる増額分ではなく、本来の65歳時点での年金額です。

遺族年金への影響

遺族厚生年金は繰下げ増額の対象外 被保険者が繰下げ受給をしていても、遺族厚生年金の額は繰下げ前の本来の年金額(報酬比例部分の3/4)で計算されます。

私の相談事例:Eさんのご遺族の事例

Eさん(享年72歳)は70歳まで年金を繰り下げ、月額22万円の年金を2年間受給した後に亡くなりました。奥様が受け取ることになった遺族厚生年金は、繰下げ前の年金額の3/4である月額約11万円でした。

「主人が生きていれば22万円もらえたのに、私は11万円しかもらえない。長生きのリスクを考えて繰下げしたのに、主人が先に亡くなってしまった」と奥様は嘆いておられます。

デメリット6:インフレ・制度変更リスクによる実質的な価値目減り

長期間の繰下げに潜むインフレリスク

年金を10年間繰り下げる場合、その間にインフレが進行すると、受給開始時の年金の実質的な価値が目減りする可能性があります。

例:年率2%のインフレが10年間続いた場合

  • 現在の100万円の価値 = 10年後の約82万円の価値
  • つまり、84%増額されても、実質的には約55%の増額効果しかない

年金制度の将来的な変更リスク

年金制度は政治・経済情勢に応じて変更される可能性があります:

過去の制度変更例

  • 支給開始年齢の段階的引き上げ
  • マクロ経済スライドの導入による実質的な給付水準の抑制
  • 高所得者の年金給付削減

将来的な制度変更の可能性

  • 繰下げ受給の上限年齢や増額率の変更
  • 年金課税の強化
  • 高齢者医療費負担の増加

私の見解:制度変更リスクを考慮した選択を

CFPとして多くの制度変更を見てきた経験から言えることは、「現在の制度が将来も続く」と決めつけるのはリスクが高いということです。特に10年という長期間の繰下げを選択する場合は、この制度変更リスクを十分に考慮する必要があります。

デメリット7:在職老齢年金との複雑な関係で期待した増額効果が得られない

在職老齢年金制度の概要

65歳以降も厚生年金に加入して働く場合、給与と年金の合計額に応じて年金の一部または全部が支給停止される「在職老齢年金」制度があります。

支給停止の基準(令和6年度) 給与(月額)+ 年金(月額)が47万円を超えると、超過分の1/2が年金から減額

繰下げ受給との複雑な関係

在職老齢年金により支給停止された部分は、繰下げによる増額の対象外となります。これは多くの方が見落としがちな重要なポイントです。

計算例:在職老齢年金の影響

  • 65歳時点の年金額:月額18万円
  • 65歳以降の給与:月額35万円
  • 合計:53万円(47万円を6万円超過)
  • 支給停止額:3万円(超過分6万円の1/2)
  • 実際の年金支給額:15万円

この場合、繰下げ増額の対象となるのは実際に支給された15万円部分のみで、支給停止された3万円部分は増額対象外です。

私の相談事例:Fさんの誤算

Fさん(67歳、年金月額20万円)は70歳まで働きながら年金を繰り下げる予定でした。月額30万円の給与があったため、在職老齢年金で月額1万5,000円が支給停止されていました。

70歳で受給開始した際、期待していた月額28万4,000円(20万円×1.42)ではなく、実際は約26万8,000円(18万5,000円×1.42+支給停止分1万5,000円)となり、期待値を約1万6,000円下回りました。

「在職老齢年金の仕組みがこんなに複雑だとは思わなかった。事前にしっかり計算しておけば良かった」とFさんは語ります。

本当に繰下げ受給で得をする人・損をする人の明確な基準

繰下げ受給で得をする人の特徴

1. 長寿の家系で健康に自信がある人

  • 両親や祖父母が90歳以上まで長生きしている
  • 定期的な健康診断で特に問題がない
  • 生活習慣病のリスクが低い

2. 年金額が比較的少ない人

  • 国民年金のみ、または厚生年金期間が短い
  • 年金額が年間100万円前後以下
  • 繰下げ増額しても非課税範囲内に収まる

3. 年下の配偶者がいない、または年齢差が少ない人

  • 独身、または配偶者が同年代
  • 加給年金の対象とならない

4. 十分な資産・収入がある人

  • 65歳以降も安定した収入源がある
  • 預貯金や投資資産が豊富で、繰下げ期間中の生活に不安がない

5. インフレリスクに対する他の資産でヘッジできている人

  • 不動産や株式など、インフレに強い資産を保有
  • 年金以外の収入源が複数ある

繰下げ受給で損をする人の特徴

1. 年下の配偶者がいる人

  • 配偶者が5歳以上年下
  • 加給年金の対象となる配偶者がいる
  • 振替加算の対象となる可能性がある

2. 現在の年金額が高い人

  • 厚生年金が充実している
  • 年金額が年間200万円を超える
  • 繰下げにより高い税率の適用を受ける可能性がある

3. 持病がある・家族歴に不安がある人

  • 慢性疾患を抱えている
  • 家系に短命な傾向がある
  • 定期的な医療費がかかっている

4. 早期にまとまった資金が必要な可能性がある人

  • 住宅ローンが残っている
  • 子どもの教育費が必要
  • 介護費用の備えが不十分

5. 制度変更リスクを回避したい慎重派の人

  • 将来の制度変更を懸念している
  • 確実性を重視する性格
  • 複雑な計算や手続きを避けたい

繰下げ受給以外で年金額を増やす現実的な方法

年金の繰下げ受給にはこれだけ多くのデメリットがあるため、他の方法で老後資金を充実させることも重要です。

1. 付加年金(国民年金加入者向け)

概要

  • 月額400円の保険料で、65歳から年額「200円×付加保険料納付月数」を受給
  • 2年間受給すれば元が取れる非常にお得な制度

メリット

  • 確実性が高い
  • 短期間で投資元本を回収可能
  • 繰下げ受給の対象にもなる

2. 国民年金基金

概要

  • 自営業者・フリーランス向けの上乗せ年金
  • 掛金は全額所得控除の対象
  • 確定年金や終身年金を選択可能

メリット

  • 税制上の優遇措置
  • 死亡保障もある
  • インフレリスクはあるが、確実な給付

3. 個人型確定拠出年金(iDeCo)

概要

  • 自分で掛金を拠出・運用し、60歳以降に受給
  • 掛金は全額所得控除
  • 運用益は非課税

メリット

  • 税制上の大きな優遇措置
  • 運用次第では大きな成果も期待できる
  • 自分でコントロールできる

注意点

  • 運用リスクがある
  • 60歳まで原則引き出し不可
  • 手数料がかかる

4. つみたてNISA・一般NISA

概要

  • 投資により得られた利益が非課税
  • つみたてNISAは年間40万円まで、一般NISAは年間120万円まで

メリット

  • 運用益が非課税
  • いつでも引き出し可能
  • 長期積立による資産形成効果

私の実体験:複数の制度を組み合わせた資産形成

私自身、30代からつみたてNISAで月額3万円、iDeCoで月額2万円の積立を続けてきました。加えて、妻の分もつみたてNISAを活用し、夫婦で年間約120万円の非課税投資を継続。

20年間で積立元本2,400万円が、現在約3,000万円まで成長しています。年金の繰下げ受給一つに頼るのではなく、複数の制度を組み合わせることで、リスクを分散しながら老後資金を充実させることができました。

繰下げ受給を検討する際の具体的なシミュレーション手順

ステップ1:現在の年金見込額の確認

ねんきん定期便の活用

  • 50歳以上の方:具体的な年金見込額が記載
  • 50歳未満の方:これまでの加入実績に基づく参考値

ねんきんネットの活用

  • より詳細なシミュレーションが可能
  • 繰下げした場合の試算も可能

ステップ2:税金・社会保険料の試算

年金収入と税金の関係

  1. 年金収入から公的年金等控除を差し引く
  2. 基礎控除48万円を差し引く
  3. 残額に所得税率を適用

社会保険料の試算

  • 国民健康保険料:自治体のホームページで試算可能
  • 介護保険料:所得段階に応じた保険料を確認

ステップ3:家族構成による影響の確認

加給年金の対象確認

  • 配偶者の年齢と収入
  • 18歳未満の子どもの有無
  • 障害のある子どもの有無

振替加算の対象確認

  • 配偶者の生年月日
  • 配偶者の年金加入状況

ステップ4:健康状態・家族歴の検討

長寿リスクの評価

  • 両親・祖父母の寿命
  • 現在の健康状態
  • 生活習慣の評価

医療費負担の試算

  • 現在の医療費
  • 将来的な医療費増加の見込み
  • 課税所得145万円の壁の影響

ステップ5:総合的な損益分岐点の計算

手取りベースでの比較

  1. 65歳から受給した場合の手取り累計額
  2. 繰下げして受給した場合の手取り累計額
  3. 両者が等しくなる年齢を算出

感度分析の実施

  • 寿命が平均より5歳短い場合
  • インフレ率が年2%の場合
  • 税制が変更された場合

年金事務所で相談する際の注意点と準備事項

事前準備すべき書類

必須書類

  • 基礎年金番号通知書または年金手帳
  • ねんきん定期便(直近のもの)
  • 本人確認書類(運転免許証など)

家族関係書類

  • 戸籍謄本(配偶者・子どもの確認用)
  • 配偶者の年金関係書類

収入関係書類

  • 源泉徴収票(65歳以降の就労予定がある場合)
  • 確定申告書の写し

年金事務所で必ず確認すべき事項

1. 具体的な年金額の試算

  • 繰下げ年数別の年金額
  • 税金・社会保険料を差し引いた手取り額
  • 在職老齢年金の影響

2. 加給年金・振替加算の影響

  • 加給年金の受給資格の有無
  • 繰下げ期間中の加給年金停止額
  • 振替加算への影響

3. 手続きの詳細

  • 繰下げ申出の方法
  • 一度決めた繰下げの変更可否
  • 必要な手続きのタイミング

年金事務所相談の限界と注意点

相談員によって回答が異なる場合がある 複雑な制度のため、相談員によって理解度や説明の詳しさが異なる場合があります。重要な事項は複数回確認し、可能であれば書面での回答を求めましょう。

税務に関する詳細な相談は対象外 年金事務所では年金制度の説明は受けられますが、具体的な税務計算や最適化については、税理士やファイナンシャルプランナーへの相談が必要です。

他の制度との組み合わせは相談対象外 iDeCoやNISAなど、他の制度との最適な組み合わせについては、年金事務所では相談できません。

まとめ:後悔しない年金受給選択のための5つの指針

20年以上にわたってお金の相談を受けてきた経験から、年金の繰下げ受給について以下の5つの指針をお伝えします。

指針1:「増額率」だけでなく「手取り額」で判断する

額面で84%増えても、税金・社会保険料・医療費負担の増加により、手取りでは50~60%程度の増加に留まる場合が多いことを理解しましょう。必ず手取りベースで損益分岐点を計算し、現実的な数字で判断することが重要です。

指針2:家族構成による影響を最優先で考慮する

特に年下の配偶者がいる場合は、加給年金や振替加算の機会損失が非常に大きくなります。「自分一人」の年金だけでなく、「夫婦合計」での最適化を考えることが重要です。

指針3:健康状態・長寿リスクを冷静に評価する

「自分は長生きする」という希望的観測ではなく、家族歴や現在の健康状態を客観的に評価しましょう。また、医療技術の進歩により、長期間の介護が必要になるリスクも考慮に入れる必要があります。

指針4:繰下げ一択ではなく、複数の選択肢を検討する

年金の繰下げ受給だけでなく、iDeCo、NISA、個人年金保険、不動産投資など、複数の老後資金形成手段を組み合わせることで、リスクを分散し、より安定した老後を迎えることができます。

指針5:制度変更リスクを念頭に置いた柔軟な戦略を立てる

年金制度は将来的に変更される可能性があります。10年間という長期の繰下げを選択する場合は、この制度変更リスクを十分に考慮し、状況に応じて戦略を見直せる柔軟性を保つことが重要です。

私からの最終メッセージ:お金は人生を豊かにする手段です

年金の繰下げ受給について、多くのデメリットをお伝えしましたが、これは「繰下げ受給が悪い」ということではありません。重要なのは、正しい情報に基づいて、ご自身とご家族の状況に最も適した選択をすることです。

私自身、20代で投資に失敗し、30代で家計管理に失敗した経験があります。しかし、その失敗から学んだことは、「お金は人生を豊かにするための手段であり、無理をしてまで増やすものではない」ということでした。

年金も同じです。少しでも多くもらいたいという気持ちは自然ですが、そのために大きなリスクを取ったり、家族との時間を犠牲にしたりする必要はありません。

あなたにとって本当に大切なものは何でしょうか?

それは年金の受給額でしょうか?それとも、愛する家族との穏やかな時間でしょうか?

この記事が、あなたの人生にとって最適な選択をする一助となれば、これ以上の喜びはありません。

もし個別のご相談がございましたら、お気軽にファイナンシャルプランナーや年金事務所にご相談ください。あなたの不安が少しでも軽くなり、安心して老後を迎えられることを心から願っています。


【執筆者プロフィール】 田中慎一(仮名) CFP・AFP資格保有、大手銀行個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社投資アドバイザー経験5年。自身の投資失敗・家計管理失敗を乗り越え、現在資産3,000万円。「一人ひとりの価値観と生活スタイルに合った、無理のない資産形成」をモットーに、年間300件以上の相談に対応。

【免責事項】 本記事の内容は執筆時点(2025年7月)の制度に基づいています。年金制度は法改正により変更される可能性があります。具体的な手続きや詳細については、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

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