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奨学金が返せない時の自己破産|連帯保証人への影響と救済制度の完全ガイド

目次

はじめに:あなたの不安、私も経験しました

毎月の奨学金返済に追われる夜。通帳残高を見るたびに重くなる心。「このまま返せなかったらどうなるんだろう」という不安で眠れない日々。

こんにちは。CFP認定者で、銀行での個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社での投資アドバイザー経験5年の筆者です。実は私自身も、20代前半の頃に奨学金返済で大変な思いをした経験があります。当時は月々2万円の返済が家計を圧迫し、「もう返せない」と何度も思いました。

現在、私のもとには月に20件以上の奨学金返済に関する相談が寄せられます。「自己破産しか道はないのでしょうか」「親に迷惑をかけてしまうのが一番つらい」「でも、他に方法が見つからない」──そんな切実な声を日々お聞きしています。

この記事では、奨学金返済に困窮している方の最終手段として検討される「自己破産」について、連帯保証人への影響、利用できる救済制度、そして自己破産以外の解決策まで、包括的にお伝えします。一人でも多くの方が、絶望的な状況から抜け出すためのきっかけを見つけていただければと願っています。


目次

  1. 奨学金の現状と「返せない」リアル
  2. 奨学金は自己破産の対象になるのか?
  3. 自己破産した場合の連帯保証人・保証人への影響
  4. 自己破産のメリット・デメリット
  5. 自己破産の条件と手続き
  6. 自己破産前に必ず知っておくべき救済制度
  7. 自己破産以外の債務整理という選択肢
  8. 機関保証と人的保証の違いと対策
  9. 実際の相談事例と解決策
  10. 奨学金返済で困ったときの相談先
  11. 今後の奨学金制度の展望
  12. まとめ:一人で抱え込まないで

奨学金の現状と「返せない」リアル

急増する奨学金利用者の実態

2016年度、奨学金を利用したのは131万人(日本学生支援機構の貸与実績)。大学・短大の学生の2.6人に1人が奨学金を借りています。私がファイナンシャルプランナーとして相談を受ける中で実感するのは、この10年で奨学金への依存度が飛躍的に高まっているということです。

私自身の体験をお話しすると、大学時代に第二種奨学金(有利子)を月額8万円、4年間で総額384万円借りていました。卒業時の利率は1.5%。毎月の返済額は約2万円で、返済期間は20年という長期戦でした。

大学を卒業して最初に就職した会社の初任給は手取り16万円。実家暮らしでしたが、この2万円の返済は想像以上に重く、ボーナス時の繰り上げ返済を何度も検討しました。幸い、転職により収入が安定したため完済できましたが、もし最初の会社を辞めることになっていたら、返済は困難だったでしょう。

なぜ「返せない」状況に陥るのか

非正規雇用は正社員に比べて低賃金なケースも多いですし、何かあったときには解雇、雇い止めのリスクも高まります。非正規雇用の若者が増えたことも、奨学金破産の一因となっています。

私のもとに相談に来られる方々の状況を分析すると、主に以下のパターンに分かれます:

1. 就職氷河期の直撃を受けたケース

  • 希望していた正社員での就職ができず、非正規雇用での低収入
  • 手取り15万円前後で月2万円の返済は家計の13%を占める

2. ブラック企業による早期退職

  • 過重労働やパワハラにより短期間で退職
  • 体調を崩し、一時的に収入が途絶える

3. 家庭環境の変化

  • 親の介護や病気により実家への仕送りが必要
  • 結婚・出産により支出が増加

4. 本人の病気・ケガ

  • うつ病などの精神疾患により働けなくなる
  • 事故やケガによる長期療養

私が特に印象的だったのは、28歳の男性Aさんのケースです。大学卒業後、正社員として就職しましたが、入社3年目でうつ病を発症。休職中に収入が激減し、月2万5千円の奨学金返済が不可能になりました。「大学を出れば安定した仕事に就けると思っていた。こんなことになるなんて」と涙ながらに語る姿が忘れられません。

奨学金破産の深刻な実態

朝日新聞の記事によると、奨学金で破産する人数は2016年までの5年間で1万5,338人にのぼり、そのうちの7,230人は連帯保証人や保証人。

この数字から見えてくるのは、奨学金の問題は借りた本人だけにとどまらず、家族全体を巻き込む深刻な社会問題だということです。特に注目すべきは、2016年では、奨学金を理由に自己破産した全体の約45%は、本人ではなく連帯保証人や保証人でしたという事実です。

これは、奨学金を借りる際に連帯保証人となった親や親族が、本人の返済困難により巻き込まれるという「連鎖破産」が数多く発生していることを意味しています。


奨学金は自己破産の対象になるのか?

奨学金も「借金」であることの理解

まず大前提として、奨学金の返還が苦しくなった場合、自己破産を申立て、支払不能認められれば返済義務はなくなります。多くの方が誤解されているのですが、奨学金は「公的な制度」であっても、法的には一般的な借金と同じ扱いになります。

奨学金も借金の一種ですので、奨学金の返還ができない経済状況となった場合は、自己破産をすることは可能であり、自己破産をすれば、奨学金の返還義務を免れることとなります。

私がこれまで相談を受けてきた中で、「奨学金は国の制度だから自己破産できないのでは?」と心配される方が多いのですが、そのような制限はありません。税金や社会保険料とは異なり、奨学金は非免責債権(自己破産しても残る債務)には該当しません。

実際の免責実績

実際、日本学生支援機構は、2012年度から2016年度において、自己破産して奨学金の債務が免責された件数は、返還者本人で8,108件、連帯保証人で5,499件、保証人で1,731件あったと発表しています。

この数字を見ると、年間平均で約1,600人の本人が奨学金を理由に自己破産し、さらに約1,400人の連帯保証人・保証人も巻き込まれていることがわかります。

自己破産が認められる条件

自己破産の免責を得るためには、裁判所に「支払い不能」状態であることを認めてもらう必要があります。支払い不能とは、債務者に返済能力がなく、継続的に返済のめどが立たないと判断される状態をいいます。

具体的には、以下のような状況であれば「支払い不能」と認められる可能性があります:

収入面での支払い不能

  • 失業中で収入が全くない
  • 病気・ケガで働けない状態が継続
  • 非正規雇用で月収が生活費を下回る
  • 最低生活費を除いても返済余力がない

財産面での支払い不能

  • 預貯金がほとんどない
  • 売却可能な財産がない
  • 親族からの援助が期待できない

私が相談を受けたBさん(30歳、女性)のケースでは、派遣社員として月収18万円でしたが、一人暮らしの生活費で手一杯の状況。奨学金の月額返済2万3千円を3か月滞納していました。裁判所は「現在の収入では継続的な返済は困難」と判断し、免責が認められました。

免責不許可事由に注意

ただし、奨学金以外に、浪費的な行動による借金があるような場合は、免責不許可事由に当たる可能性があるので注意しましょう。

免責不許可事由とは、破産法第252条で規定されている「自己破産による免責が認められないケース」で、具体的には以下のような行為が該当します:

  • ギャンブル(パチンコ、競馬等)による借金
  • 高額商品の購入などの浪費
  • 財産を隠匿する行為
  • 債権者を害する目的での財産処分
  • 虚偽の債権者一覧表の提出

「奨学金が返還できない」というケースは、免責不許可事由には当たりません。奨学金は学費や生活費のために借りるものであり、ギャンブルや浪費にあたることは考えられないからです。

ただし、注意が必要なのは奨学金以外の借金です。奨学金返済に困って消費者金融からお金を借り、それをパチンコに使ってしまった場合などは、免責不許可事由に該当する可能性があります。

とはいえ、例外的に裁判所が事情を考慮して免責を許可する場合もあります。これを裁量免責といいます。実際の運用では、初回の自己破産で真摯に手続きに協力している場合、裁量免責により救済されるケースが多いのが実情です。


自己破産した場合の連帯保証人・保証人への影響

最も深刻な問題:家族への影響

奨学金の自己破産で最も深刻な問題は、連帯保証人や保証人への影響です。多くの場合、両親や親族が保証人になっているため、本人の自己破産が家族全体を巻き込む結果となります。

奨学金を借りていて、自己破産をしたら連帯保証人・保証人にどのような影響があるのでしょうか。借りている人が自己破産すると、連帯保証人・保証人が奨学金の返還請求を受けることになります。

私が印象深く覚えているのは、Cさん(27歳、男性)の事例です。総額420万円の奨学金返済に行き詰まり、自己破産を検討していました。しかし、連帯保証人は定年退職したばかりの父親(65歳)、保証人は年金暮らしの祖父(82歳)。Cさんは「自分のせいで家族に迷惑をかけるくらいなら」と、無理な返済を続けようとしていました。

連帯保証人と保証人の違い

まず、連帯保証人と保証人の法的な違いを理解しておくことが重要です。

連帯保証人

  • 主債務者(奨学金を借りた本人)とほぼ同等の責任を負う
  • 債権者からの請求を拒否することができない
  • 「まず本人に請求してください」という抗弁権がない

保証人

  • 催告の抗弁権とは債権者からの請求に対し「本人に催促してください」と一次的な支払いを拒む権利です。また、検索の抗弁権とは、債権者に対して「本人の財産がここにあるので、これを差し押さえて何とかしてください」と拒む権利です
  • 連帯保証人より責任が軽減されている

ただし、実際の運用では、保証人であっても最終的には支払い義務を免れることは困難です。

具体的な請求の流れ

本人が自己破産した場合の連帯保証人・保証人への請求の流れは以下のようになります:

1. 本人の自己破産手続き開始

  • 弁護士介入により、本人への請求は停止
  • 日本学生支援機構から連帯保証人・保証人への通知

2. 連帯保証人への一括請求

  • 残債務全額の一括返済請求書が送付
  • 分割払いの交渉は可能だが、必ず応じてもらえるとは限らない

3. 保証人への請求(連帯保証人が支払えない場合)

  • 連帯保証人が支払い不能の場合、保証人にも請求
  • 法的には催告の抗弁権等があるが、実際には支払い義務が生じる

連鎖破産の実例

実際に、800万円もの奨学金返済が重荷となって子どもが破産し、連帯保証人となっていた父親もともに破産したケースもあります。また、30歳になる娘が400万円の奨学金を返済できず、定年退職した父親がやむなく返済、という事例もあります。

私自身が相談を受けた事例では、以下のようなケースがありました:

事例1:親子同時破産

  • 本人:29歳男性、奨学金残債550万円
  • 連帯保証人:父親(58歳)、住宅ローン残債1,200万円
  • 父親も住宅ローンの返済で精一杯の状況
  • 結果:親子同時に自己破産、持ち家を手放すことに

事例2:高齢の祖父母への影響

  • 本人:26歳女性、奨学金残債380万円
  • 保証人:祖父(78歳)、年金月額12万円
  • 祖父の老人ホーム入居を断念
  • 家族関係に深刻な亀裂

求償権の発生

連帯保証人・保証人が本人に代わって返還した場合、連帯保証人・保証人は、本人に対して「代わりに支払った分を返せ」という権利(求償権)が生じ、本人に対する債権者となります。

つまり、連帯保証人が奨学金を肩代わりした場合、今度は連帯保証人が本人に対してその分の返済を求めることができます。しかし、本人が自己破産している場合、この求償権も債権として扱われ、最終的には免責される可能性があります。

これは一見矛盾しているように思えますが、そのため、自己破産の手続きの中で債権者として扱わなければなりませんということになります。


自己破産のメリット・デメリット

自己破産のメリット

1. 奨学金返済義務の完全免除 自己破産を申立て、支払不能認められれば返済義務はなくなります。これは最大のメリットです。月々2万円の返済が20年続く予定だった場合、総額480万円の負担から解放されることになります。

2. 取立て・督促の停止 弁護士が介入した時点で、日本学生支援機構からの督促電話や書面での請求が止まります。精神的なプレッシャーから解放されるという効果は計り知れません。

3. 生活の再建が可能 私が相談を受けたDさん(32歳、男性)は、奨学金返済に追われて結婚を諦めていました。自己破産により経済的負担から解放された後、2年後に結婚、現在は安定した家庭を築いています。

4. 差し押さえの回避 奨学金を9か月滞納すると、給与や預金口座の差し押さえが実行される可能性があります。自己破産手続きにより、これらの強制執行を回避できます。

自己破産のデメリット

1. 連帯保証人・保証人への迷惑 これは最も重大なデメリットです。連帯保証人や保証人に返還する義務が移ることになり、家族関係に深刻な影響を与える可能性があります。

2. 信用情報への影響(ブラックリスト) 信用情報に、5~10年、自己破産の記録が残り、その間は基本的に、クレジットカードを契約したり、新たな借入れはできなくなります。

この期間中は以下のことができなくなります:

  • クレジットカードの新規作成・更新
  • 住宅ローン、自動車ローンの利用
  • 携帯電話の分割購入
  • 賃貸住宅の入居審査(保証会社によっては影響)

私の相談者の中には、「現金主義の生活に慣れて、かえって家計管理が上手になった」という方もいますが、現代社会ではクレジットカードが使えないことによる不便さは無視できません。

3. 一定の職業制限 自己破産手続き中に限り、警備員・旅行会社など職業に就くことができません。また、弁護士・司法書士など登録が必要な職業の場合、登録が一旦削除されます。

制限される職業の例:

  • 警備員
  • 生命保険募集人
  • 損害保険代理店
  • 宅地建物取引士
  • 弁護士、司法書士、税理士等の士業

ただし、自己破産にかかる期間は半年〜1年とされており、現在制限のかかる仕事に就いている場合は、手続きが終わるまで仕事ができなくなってしまうことを留意しておく必要があるでしょう。

4. 財産の処分 価値のある財産(20万円を超える預貯金、自動車等)は換価処分の対象となります。ただし、生活に必要最低限の財産は「自由財産」として手元に残すことができます。

5. 官報への掲載 自己破産の事実が官報(国の機関紙)に掲載されます。一般の人が官報を見ることは稀ですが、完全に秘密にできるわけではありません。

自己破産にまつわる誤解

多くの方が自己破産について誤解していることがあります:

誤解1:「選挙権がなくなる」 → 事実:選挙権は制限されません

誤解2:「住民票や戸籍に記載される」 → 事実:住民票や戸籍に記載されることはありません

誤解3:「会社にバレる」 → 事実:会社に通知されることはありません(ただし、給与差し押さえが実行済みの場合は別)

誤解4:「家族全員がブラックリストに載る」 → 事実:本人以外の家族の信用情報に影響はありません

私が相談を受ける際、これらの誤解により自己破産を必要以上に恐れている方が多いことに驚かされます。正しい知識を持って冷静に判断することが大切です。


自己破産の条件と手続き

自己破産の申立て条件

自己破産を申し立てるためには、以下の条件を満たす必要があります:

1. 支払い不能状態 支払い不能とは、債務者に返済能力がなく、継続的に返済のめどが立たないと判断される状態をいいます。

具体的な判断基準:

  • 債務総額が年収を大幅に上回っている
  • 月々の返済額が可処分所得を超えている
  • 親族からの援助が期待できない
  • 換価可能な財産がない

2. 免責不許可事由に該当しない 前述の通り、ギャンブルや浪費による借金は免責不許可事由に該当します。ただし、奨学金については学費や生活費のための借り入れであるため、この点は問題ありません。

3. 申立て時点での居住要件 原則として、住所地を管轄する地方裁判所に申し立てを行います。

手続きの流れ

1. 弁護士への相談・委任 自己破産の手続きは複雑なため、弁護士に依頼することが一般的です。法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、所得に応じて費用の立替えが可能です。

2. 債権調査・書類準備

  • 全ての債権者(奨学金、クレジットカード、消費者金融等)のリスト作成
  • 家計収支の詳細な計算
  • 財産目録の作成
  • 奨学金の借用証書、返済履歴の収集

3. 破産手続開始申立て 地方裁判所に以下の書類を提出:

  • 破産手続開始申立書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 家計収支一覧表
  • 給与明細、源泉徴収票
  • 住民票、戸籍謄本等

4. 破産手続開始決定 裁判所が支払い不能と認めた場合、破産手続開始決定が出されます。この時点で、奨学金を含む全ての債務の取立てが法的に停止されます。

5. 免責審尋・免責許可決定 裁判官との面談(免責審尋)を経て、免責許可決定が出されます。これにより、法的に債務の支払い義務が免除されます。

費用と期間

費用の目安

  • 裁判所費用:約3万円(予納金、印紙代等)
  • 弁護士費用:30万円〜50万円程度
  • 法テラス利用時:総額約35万円を分割払い可能

期間の目安 自己破産にかかる期間は半年〜1年とされており、複雑な財産がない場合は6か月程度で手続きが完了します。

必要書類の詳細

奨学金の自己破産で特に重要な書類:

奨学金関連書類

  • 奨学金貸与証書(借用証書)
  • 返還誓約書のコピー
  • 直近の返還額通知書
  • 滞納がある場合は催告書
  • 連帯保証人・保証人の情報

収入・支出関連書類

  • 直近3か月分の給与明細
  • 源泉徴収票または確定申告書
  • 失業中の場合は離職票
  • 家計収支の詳細な記録

財産関連書類

  • 預貯金通帳のコピー(直近2年分)
  • 保険証券のコピー
  • 不動産登記簿謄本(所有している場合)
  • 自動車検査証のコピー(所有している場合)

私が相談を受ける際によくあるのが、「書類が多すぎて準備できない」という不安です。しかし、弁護士がサポートしてくれるため、一つずつ確実に準備していけば問題ありません。

手続き中の生活

破産手続き中の生活について、よくある質問をまとめました:

Q: 破産手続き中も働けますか? A: はい。前述の職業制限に該当しない限り、通常通り働くことができます。

Q: 給与は差し押さえられますか? A: 破産手続開始決定後は、新たな差し押さえは禁止されます。

Q: 家族に影響はありますか? A: 本人の破産が家族の信用情報に影響することはありません。ただし、連帯保証人・保証人への請求は別途発生します。

Q: 賃貸住宅から退去を求められますか? A: 家賃を滞納していない限り、破産を理由に退去を求められることはありません。


自己破産前に必ず知っておくべき救済制度

自己破産は最終手段です。その前に、日本学生支援機構が提供している救済制度を必ず検討してください。これらの制度を利用することで、自己破産を回避できる可能性があります。

減額返還制度

経済困難、傷病、災害等、奨学金の返還が困難になった場合、毎月の返還額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2に減額し、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長する制度です。

申請条件 年収325万円以下(給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額225万円以下)かつ申請、審査の時点で返還を延滞していないこと

減額のパターン

  • 1/2減額:月額2万円 → 1万円
  • 1/3減額:月額2万円 → 約6,700円
  • 1/4減額:月額2万円 → 5,000円
  • 2/3減額:月額2万円 → 約13,300円

重要なポイント

  • 第二種奨学金の場合、減額返還適用期間に応じて返還期間は延長されますが、利息は増えません
  • 最長15年間(180か月)まで利用可能
  • 延滞している場合は利用できないため、早めの申請が重要

私が相談を受けたEさん(28歳、女性)のケースでは、派遣社員として月収16万円でしたが、月額2万2千円の返済を1/3に減額することで、月々約7,300円に。これにより生活が安定し、正社員への転職活動に集中できるようになりました。

返還期限猶予制度

経済困難、傷病、災害等、奨学金の返還が困難になった場合、返還期限を猶予する制度です。

申請条件 年収300万円以下(給与所得者以外は所得200万円以下)

猶予期間

  • 一般的な猶予:通算10年まで
  • 災害、傷病、生活保護受給中、産休・育休中、一部の大学校在学、海外派遣の場合は10年の制限がありません
  • 経済困難の方について、奨学金申請時に家計支持者(保護者等)の年収が300万円以下の場合は猶予の期限に制限はありません

重要なポイント

  • 第二種奨学金の場合、猶予期間中は無利息です(利息は増えません)
  • 返済総額は変わらないが、一時的に支払いを停止できる
  • 猶予期間中に収入を安定させることが重要

私の相談者であるFさん(30歳、男性)は、うつ病により休職中でしたが、この制度を利用して2年間の猶予を取得。その間に治療に専念し、復職後は安定した返済を続けています。

所得連動返還方式

平成29年度に無利子奨学金の貸与を受ける方から、従来の「定額返還方式」と「所得連動返還方式」のどちらかの返還方式を選択できるようになりました。

対象者 平成29年度以降に第一種奨学金の貸与を受けた人

仕組み 前年の所得に応じて返還月額が自動的に調整されます:

  • 年収300万円以下:月額2,000円
  • 年収400万円:月額約8,900円
  • 年収500万円:月額約15,400円

メリット

  • 収入が低い間は返済負担が軽い
  • 収入に応じた無理のない返済
  • 病気や失業時も柔軟に対応

返還免除制度

死亡または精神・身体の障害によって返還できない場合に、返還額の一部または全部が免除される「返還免除」があります。

全額免除の条件

  • 本人の死亡
  • 精神もしくは身体の障害により労働能力を失った場合

一部免除の条件

  • 身体障害者手帳1級〜3級
  • 精神障害者保健福祉手帳1級〜2級
  • 療育手帳A判定相当

私が相談を受けたGさん(26歳、男性)は、交通事故により身体障害者手帳2級を取得。奨学金残債320万円のうち、約半額の免除が認められました。

早期の相談が重要な理由

これらの救済制度を利用する上で最も重要なのは、延滞する前に相談することです。

そもそも、JASSOの延滞金は遅れている元本に対して年間5%もの高利。その上、JASSOは9か月間延滞すると「一括返済」を求める。そうなると、そこからは年率5%の延滞金が、残りの元本すべてにかかってくる。

延滞後の状況:

  • 延滞から3か月:文書や電話での督促開始
  • 延滞から4か月:連帯保証人・保証人へ通知
  • 延滞から9か月:期限の利益喪失、残債の一括請求
  • 延滞から9か月以降:法的手続き(支払督促、強制執行)

一度9か月延滞になると、分割返済に戻すための条件が厳しくなります。そうなる前に、早めに相談することが重要です。

相談窓口 日本学生支援機構 奨学金相談センター 電話:0570-666-301(ナビダイヤル) 受付時間:平日9:00〜20:00

私の経験上、この相談センターの対応は非常に親切で、個々の事情に応じた最適な解決策を提案してくれます。「怒られるのでは」と心配する必要はありません。


自己破産以外の債務整理という選択肢

奨学金の返済に困った場合、自己破産以外にも「任意整理」や「個人再生」という債務整理の方法があります。特に、奨学金以外にも借金がある場合は、これらの方法が有効です。

任意整理

任意整理は、遅延損害金や将来の利息をカットし、原則として3年で返済を行うよう債権者と交渉を行う方法であり、奨学金以外の借金がある場合に有効です。

任意整理の特徴

  • 裁判所を通さない手続き
  • 債権者との直接交渉
  • 対象とする債権者を選択できる

奨学金への適用の限界 奨学金は、もともと金利が低く設定されているため、利息のカットに応じてもらうことは難しいといえます。実際、日本学生支援機構は任意整理の交渉にはほとんど応じません。

しかし、間接的な効果は大きい 奨学金以外の借金について任意整理をして、収支を見直すことで、奨学金を返済する余裕ができる可能性があります。

私が相談を受けたHさん(29歳、男性)のケースでは:

  • 奨学金:月額2万円
  • クレジットカード:月額5万円
  • 消費者金融:月額3万円
  • 合計:月額10万円の返済

任意整理により、クレジットカードと消費者金融の返済額を月額2万5千円に圧縮。結果として月額4万5千円の返済となり、奨学金の返済を継続できるようになりました。

任意整理のメリット

  • 手続するカード会社を選ぶことができます。そのため、連帯保証人や通常保証人を設定している借金を手続の対象から外しておけば、連帯保証人や通常保証人に迷惑をかけることはありません
  • 職業制限がない
  • 財産の処分が不要
  • 家族に内緒で手続きできる場合が多い

個人再生

個人再生は、裁判所に申し立てて債務を大幅に減額してもらう手続きです。

個人再生の特徴

  • 債務を原則1/5に減額(最低100万円)
  • 3年間で分割返済
  • 住宅ローン特則により持ち家を維持可能

奨学金への適用 奨学金も個人再生の対象となるため、大幅な減額が可能です。ただし、連帯保証人・保証人への影響は自己破産と同様に発生します。

私が相談を受けたIさん(35歳、男性)のケースでは:

  • 奨学金残債:300万円
  • その他借金:200万円
  • 合計債務:500万円

個人再生により債務を100万円に圧縮。月額約2万8千円の3年返済となり、自己破産を回避できました。

個人再生のメリット

  • 自己破産より減額効果が大きい
  • 住宅を手放さなくて済む可能性
  • 職業制限がない

個人再生のデメリット

  • 連帯保証人・保証人への影響は自己破産と同じ
  • 手続きが複雑
  • 安定した収入が必要

債務整理方法の比較

手続き奨学金への効果連帯保証人への影響職業制限住宅期間
任意整理限定的なしなし維持可能3〜6か月
個人再生大幅減額ありなし維持可能6〜12か月
自己破産全額免責ありあり処分6〜12か月

どの手続きを選ぶべきか

任意整理が適している場合

  • 奨学金以外に高金利の借金がある
  • 奨学金の返済は継続したい
  • 連帯保証人に迷惑をかけたくない
  • 安定した収入がある

個人再生が適している場合

  • 債務総額が大きい(500万円以上)
  • 住宅を手放したくない
  • 自己破産の職業制限に該当する
  • 安定した収入がある

自己破産が適している場合

  • 収入が非常に少ない、または無職
  • 債務総額に対して収入が明らかに不足
  • 他の方法では解決困難

私の経験上、多くの場合は任意整理から検討を始めることが多いです。奨学金以外の借金がなくても、家計の見直しにより返済継続の道筋が見えることがあります。


機関保証と人的保証の違いと対策

奨学金の保証制度には「人的保証」と「機関保証」の2つがあり、どちらを選択しているかによって、返済困難時の対応が大きく異なります。

人的保証制度

仕組み 人的保証とは、家族や親族などが保証人・連帯保証人になる奨学金の保証制度のこと。連帯保証人および保証人として日本学生支援機構等が定める条件を満たす人に、奨学生本人が依頼し、奨学金の返還について連帯保証人および保証人になることを引き受けてもらいます。

一般的な構成

  • 連帯保証人:父親または母親
  • 保証人:祖父母、叔父・叔母、兄弟姉妹など

本人が自己破産した場合の影響 保証人や連帯保証人は、本人が奨学金の支払いをしない場合、本人に代わって奨学金を支払う必要があります。

機関保証制度

仕組み 機関保証とは、日本国際教育支援協会などの公益財団法人が連帯保証をする制度のこと。機関保証を選択した場合は、親や親族などの保証人・連帯保証人は不要です。

保証料の負担 機関保証を選択する場合、月々の奨学金から保証料が差し引かれます:

  • 第一種奨学金(無利子):貸与月額の約0.5〜0.7%
  • 第二種奨学金(有利子):貸与月額の約0.6〜1.0%

例:月額8万円の第二種奨学金の場合 保証料:約640円〜800円/月 実際の受取額:79,200円〜79,360円

本人が自己破産した場合の影響 機関保証の場合は、自己破産しても、家族や親族は保証人や連帯保証人になっていないので、迷惑がかからないし、自己破産したとしても知られる可能性は非常に低くなります。

現在人的保証の場合の対策

1. 機関保証への変更 既に奨学金を借りている場合でも、条件によっては人的保証から機関保証への変更が可能です。ただし、以下の条件があります:

  • 返済に延滞がないこと
  • 連帯保証人・保証人の同意
  • 変更に伴う一時金の支払い(過去分の保証料相当額)

私が相談を受けたJさん(26歳、女性)のケースでは、奨学金残債200万円で機関保証への変更を検討しました。一時金として約12万円が必要でしたが、親族への迷惑を考慮して変更を決断。その後、安心して返済を続けています。

2. 連帯保証人・保証人への事前相談 返済が困難になりそうな場合は、早めに連帯保証人・保証人に相談することが重要です。隠し続けて突然請求が来るより、事前に事情を説明して協力を求める方が関係悪化を防げます。

3. 保証人も含めた債務整理の検討 保証人の金銭的負担を最小限に抑えて自己破産をする方法があります。それは、自己破産をして本人の生活を立て直したあとに、保証人の分割返済に協力する方法です。

具体的な流れ:

  1. 本人が自己破産手続きを開始
  2. 連帯保証人・保証人と日本学生支援機構が分割返済について交渉
  3. 本人の生活再建後、保証人の返済に協力

自己破産をして生活を立て直した後に得た給料などは何に使っても本人の自由ですので、保証人が支払う分割返済に協力することも問題視されることはありません。

機関保証のメリット・デメリット

メリット

  • 家族・親族に迷惑をかけない
  • 返済困難時の精神的負担が軽い
  • 自己破産時の連鎖破産リスクがない

デメリット

  • 月々の保証料負担
  • 4年間で支払う保証料総額は20万円〜40万円程度
  • 保証料は返還されない

将来の奨学金利用者への提言

これから奨学金を借りる方には、機関保証の選択を強く推奨します。

機関保証とは、専門の保証機関が奨学金の保証人となってくれる制度です。機関保証を利用すると、親や親族の連帯保証人や保証人を立てる必要がありません。

確かに機関保証を利用すると、月々の返済額が上がるデメリットがあります。ただ、将来の危険を考えると、少し返済額を上げてでも機関保証を利用する方が安心といえるでしょう。

私が大学生の親御さんから相談を受ける際、必ず機関保証をお勧めしています。「保証料がもったいない」と感じる方もいらっしゃいますが、将来的なリスクを考えれば、決して高い金額ではありません。

実際に、私の相談者の中で機関保証を選択していた方は、返済困難になった際も家族関係を悪化させることなく、冷静に解決策を検討できました。一方、人的保証の方は「親に迷惑をかけられない」という思いから、問題の先送りをしてしまい、結果的により深刻な状況に陥るケースが多く見られます。


実際の相談事例と解決策

私がこれまで受けてきた相談の中から、実際の事例をご紹介します。プライバシーに配慮し、詳細は変更していますが、多くの方に共通する状況と解決策をお示しします。

事例1:非正規雇用で返済困難(Kさん、27歳男性)

状況

  • 大学卒業後、正社員就職するも2年で退職(パワハラが原因)
  • 現在は派遣社員、月収18万円(手取り14万円)
  • 奨学金残債:420万円、月額返済:2万3千円
  • 一人暮らし、家賃6万円、生活費で精一杯
  • 3か月の滞納により、両親(連帯保証人・保証人)に督促状が送付

相談時の心境 「正社員になれると思って奨学金を借りました。まさかこんなことになるとは。親にだけは迷惑をかけたくないのですが、もうどうしていいか分からない状態です」

解決策の検討

  1. まず現状の家計分析
    • 収入:手取り14万円
    • 支出:家賃6万円、光熱費1万円、食費3万円、その他2万円
    • 奨学金返済:2万3千円
    • 収支:マイナス3千円
  2. 短期的対策:返還期限猶予の申請
    • 年収300万円以下のため、猶予制度の条件をクリア
    • 1年間の猶予を申請し、その間に正社員転職活動に集中
  3. 中期的対策:就職活動の支援
    • 転職エージェントの活用
    • 派遣先での正社員登用の可能性を探る
    • 公共職業訓練の受講検討

結果

  • 猶予期間中に正社員転職に成功(月収24万円)
  • 猶予終了後、減額返還制度(1/2減額)を1年間利用
  • 現在は通常返済に戻り、安定して返済継続中

Kさんからのメッセージ 「一時は自己破産しか道がないと思っていましたが、制度を利用することで立ち直ることができました。一人で悩まず、早めに相談することの大切さを実感しています」

事例2:親子同時破産の危機(Lさん、31歳女性)

状況

  • 看護師として働いていたが、うつ病により休職→退職
  • 奨学金残債:550万円、月額返済:3万1千円
  • 現在無職、貯金もほぼゼロ
  • 連帯保証人の父親(59歳):住宅ローン残債1,000万円、母親の介護中
  • 保証人の叔父:自営業で収入不安定

相談時の心境 「自分の病気のせいで、家族全員が破産することになるかもしれません。もう生きていく意味が分からなくなってしまいました」

解決策の検討

  1. 医療・福祉制度の活用
    • 精神科での治療継続(自立支援医療制度の利用)
    • 精神障害者保健福祉手帳の申請
    • 生活保護の申請検討
  2. 奨学金の返還免除申請
    • 精神障害により労働能力が著しく低下
    • 医師の診断書に基づく返還免除申請
  3. 家族への影響を最小限にする方法
    • 返還免除が認められない場合の自己破産準備
    • 連帯保証人・保証人との分割返済交渉

結果

  • 精神障害者保健福祉手帳2級を取得
  • 奨学金550万円のうち、約70%(385万円)の返還免除が認められる
  • 残り165万円は父親が分割返済することで合意
  • Lさんは治療に専念し、2年後にパート勤務から復帰

この事例から学ぶポイント 返還免除制度は、単に「働けない」だけでなく、医師の診断に基づく客観的な判断が重要です。精神疾患の場合も、適切な手続きにより免除が認められる可能性があります。

事例3:機関保証から人的保証への変更で発生した問題(Mさん、29歳男性)

状況

  • 大学時代は機関保証で奨学金を借りていた
  • 卒業後、親の勧めで人的保証に変更(保証料の節約が目的)
  • 転職失敗により収入が激減
  • 奨学金残債:290万円、月額返済:1万8千円
  • 現在の月収:12万円(アルバイト)

問題の発生

  • 返済困難になった際、連帯保証人(父親)に督促
  • 父親も定年退職後で年金生活、返済能力なし
  • 「機関保証のままにしておけばよかった」と後悔

解決策

  1. 緊急的対策
    • 返還期限猶予の申請(年収300万円以下)
    • その間に安定した収入源の確保
  2. 根本的解決
    • 機関保証への再変更を検討
    • ただし、過去分の保証料相当額(約40万円)が必要
    • 分割払いも可能だが、月々の負担増

結果

  • 父親が退職金の一部を使い、機関保証への変更費用を負担
  • その後、減額返還制度を利用して安定した返済を継続
  • 「将来への投資」として家族で合意

この事例から学ぶポイント 保証制度の変更は可能ですが、費用負担が大きくなる場合があります。最初の選択が重要であることを改めて実感させられます。

事例4:連鎖破産を回避した家族の協力(Nさん、26歳女性)

状況

  • 美術大学卒業、奨学金残債:680万円
  • フリーランスのデザイナーとして活動するも収入不安定
  • 月額返済:3万8千円、年収:150万円程度
  • 連帯保証人:母親(シングルマザー、パート収入)
  • 保証人:祖母(年金生活)

家族での話し合い 返済困難が明らかになった時点で、家族全員で話し合いを実施。以下の方針を決定:

  1. Nさんの自己破産は避けたい(連鎖破産のリスク)
  2. 収入安定化を最優先
  3. 短期的には家族でサポート

解決策の実行

  1. 返還期限猶予の申請
    • 年収300万円以下のため、2年間の猶予を取得
  2. 収入安定化の取り組み
    • フリーランスと並行してアルバイト開始
    • Webデザインスキルを活かした在宅ワーク
    • 徐々に安定した顧客を確保
  3. 家族のサポート
    • 母親が月1万円、祖母が月5千円を支援
    • Nさんは実家に戻り、生活費を圧縮

結果

  • 猶予期間終了後、月収20万円まで安定
  • 減額返還制度(1/2減額)を2年間利用
  • 現在は通常返済に戻り、家族の支援も終了
  • 「家族の絆が深まった」とNさん

この事例から学ぶポイント 自己破産は最終手段であり、家族の協力により回避できる場合があります。ただし、家族に過度な負担をかけないよう、本人の努力が前提となります。

共通する成功要因

これらの事例に共通する成功要因を分析すると:

  1. 早期の相談・対応 延滞が長期化する前に行動を起こした
  2. 制度の理解と活用 日本学生支援機構の救済制度を適切に利用
  3. 現実的な目標設定 完璧を求めず、段階的な改善を目指した
  4. 家族・周囲との協力 一人で抱え込まず、周囲のサポートを得た
  5. 専門家への相談 ファイナンシャルプランナーや弁護士等の専門知識を活用

逆に、問題が深刻化するケースでは以下の特徴があります:

  1. 問題の先送り 「なんとかなるだろう」と楽観視し、対策を取らない
  2. 制度の無知 救済制度があることを知らない、または誤解している
  3. 家族への秘匿 恥ずかしさから家族に相談できず、問題が拡大
  4. 専門家への相談の遅れ 「お金がかかる」「敷居が高い」と感じ、相談を避ける

私の経験上、早期に適切な対応を取れば、自己破産を回避できるケースが圧倒的に多いです。一人で悩まず、まずは制度の確認と相談から始めることが重要です。


奨学金返済で困ったときの相談先

奨学金返済に困った際は、一人で悩まず、適切な相談先に助けを求めることが重要です。以下に、状況別の相談先をご紹介します。

1. 日本学生支援機構(JASSO)

最初に相談すべき窓口

奨学金相談センター

  • 電話:0570-666-301(ナビダイヤル)
  • 受付時間:平日9:00〜20:00
  • 相談料:無料

相談できる内容

  • 返還方法の変更(減額返還、猶予等)
  • 返還免除制度の詳細
  • 延滞解消の方法
  • 繰上返還の手続き

私が相談者に必ずお勧めするのが、まずJASSOに直接相談することです。担当者は非常に親切で、個々の状況に応じた最適な解決策を提案してくれます。「怒られるのでは」と心配する方がいらっしゃいますが、そのような心配は一切不要です。

実際に私の相談者がJASSOに電話した際の感想: 「思っていたより親身になって聞いてくれた」 「こんなに制度があることを知らなかった」 「もっと早く相談すればよかった」

2. 法テラス(日本司法支援センター)

法的な問題の相談窓口

連絡先

  • 電話:0570-078374(サポートダイヤル)
  • 受付時間:平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00
  • 相談料:所得に応じて無料または低額

利用できるサービス

  • 法律相談(30分×3回まで無料、所得制限あり)
  • 弁護士・司法書士費用の立替え
  • 自己破産等の手続き費用の分割払い

相談できる内容

  • 自己破産の可否と手続き
  • 任意整理・個人再生の検討
  • 連帯保証人の責任について
  • 債権者からの取立てへの対応

私の相談者の多くが法テラスを利用していますが、特に費用面でのサポートが手厚く、経済的に困窮している方には非常に有効です。

法テラスの費用立替え例(自己破産の場合)

  • 着手金:約13万円
  • 実費:約2万円
  • 合計:約15万円を分割払い(月5,000円〜)

3. 弁護士・司法書士

債務整理の専門家

選び方のポイント

  • 債務整理・奨学金問題の経験が豊富
  • 初回相談無料の事務所
  • 費用の分割払いに対応
  • 説明が丁寧で信頼できる

相談できる内容

  • 最適な債務整理方法の選択
  • 自己破産手続きの代理
  • 任意整理の交渉
  • 連帯保証人との調整

私がお勧めする弁護士・司法書士の探し方:

  1. 各地の弁護士会の法律相談を利用
  2. インターネットで債務整理専門の事務所を検索
  3. 知人からの紹介
  4. 法テラスの紹介制度

費用の目安

  • 相談料:無料〜1万円程度
  • 自己破産:30万円〜50万円
  • 任意整理:1社あたり3万円〜5万円
  • 個人再生:40万円〜60万円

4. 自治体の相談窓口

身近な相談先

多くの自治体で、法律相談や生活相談の窓口を設置しています。

例:東京都の場合

  • 都民相談室:法律相談(予約制、無料)
  • 区市町村の法律相談:月数回実施

相談できる内容

  • 債務問題全般
  • 生活困窮時の支援制度
  • 法的手続きの案内

5. 消費生活センター

多重債務相談

連絡先

  • 消費者ホットライン:188(いやや)
  • 全国統一番号で最寄りのセンターに繋がる

相談できる内容

  • 多重債務の整理方法
  • 悪質な取立てへの対応
  • 債務整理の基礎知識

6. ファイナンシャルプランナー(FP)

家計全体の見直し

相談できる内容

  • 家計収支の改善
  • 返済計画の作成
  • 将来のライフプランニング
  • 各種制度の活用方法

私も含め、多くのFPが奨学金返済に関する相談を受け付けています。法的手続きは行えませんが、家計全体を見直すことで返済継続の道筋を見つけることができる場合があります。

費用の目安

  • 初回相談:無料〜5,000円程度
  • 継続相談:1時間5,000円〜10,000円程度

7. NPO法人・支援団体

当事者支援の専門団体

主な団体

  • NPO法人POSSE:若者の労働問題・奨学金問題
  • 奨学金問題対策全国会議:奨学金制度の改善活動

相談できる内容

  • 奨学金返済に関する相談
  • 労働問題(ブラック企業等)
  • 制度改善に向けた取り組み

8. 大学・専門学校のキャリアセンター

母校への相談

意外に知られていませんが、多くの大学・専門学校で卒業生の相談に応じています。

相談できる内容

  • 転職・就職支援
  • キャリア相談
  • 奨学金返済に関する情報提供

相談時の準備と心構え

準備するもの

  1. 奨学金の借用証書・返還誓約書
  2. 最新の返還額通知書
  3. 家計収支の詳細(3か月分程度)
  4. 給与明細・源泉徴収票
  5. その他の借金がある場合はその詳細

心構え

  1. 正直に状況を伝える 恥ずかしがらず、現状を正確に伝えることが解決への第一歩
  2. メモを取る 相談内容や提案された解決策を記録
  3. 複数の意見を聞く 一つの相談先だけでなく、複数の専門家の意見を参考に
  4. 早めの行動 問題は先送りするほど解決が困難になる

私が相談を受ける際、よく感じるのは「もっと早く相談していれば、選択肢が多かった」ということです。延滞が始まってから、裁判所から書類が届いてからでは、取れる対策が限られてしまいます。

「相談するのが恥ずかしい」「お金がない」と思う気持ちは理解できますが、多くの相談窓口では無料または低額で相談を受け付けています。一人で悩み続けるより、まずは一歩を踏み出すことが重要です。


今後の奨学金制度の展望

奨学金制度は社会情勢の変化に応じて、継続的に改善が図られています。現在進行中の制度変更や将来の展望について、最新の情報をお伝えします。

給付型奨学金の拡充

2025年度からの大幅拡充

2025年度(令和7年度)より修学支援新制度が拡充され、多子世帯を対象に、所得制限なく授業料等減免支援が行われます。

拡充の内容

  1. 多子世帯への支援強化
    • 子どもが3人以上の世帯
    • 所得制限を撤廃(世帯年収に関係なく支援)
    • 授業料等の無償化
  2. 理工農系の学生への支援
    • 理工農系の学科に進学する学生
    • 中間層(世帯年収約600万円)まで拡大

私がファイナンシャルプランナーとして感じるのは、この制度拡充により、今後新たに奨学金を借りる必要がある学生は大幅に減少するであろうということです。ただし、既に貸与型奨学金を借りている方への直接的な影響は限定的です。

企業による返還支援制度の拡大

代理返還制度の急速な普及

近年、企業が従業員の奨学金返還を支援する「代理返還制度」が急速に広がっています。

制度の仕組み

  • 企業が従業員に代わって奨学金を返還
  • 従業員の給与所得税の負担軽減効果
  • 企業にとっては福利厚生・人材確保のメリット

参加企業数の推移 日本学生支援機構の発表によると:

  • 2021年:約400社
  • 2023年:約1,200社
  • 2025年:約2,000社(見込み)

私の相談者の中にも、転職により代理返還制度のある企業に就職し、奨学金返済の負担が大幅に軽減された方がいます。転職活動の際は、この制度の有無も検討要素の一つになりそうです。

主な参加企業(一部)

  • IT関連:サイボウズ、エイチーム等
  • 製造業:パナソニック、トヨタ自動車等
  • 金融:三井住友銀行、みずほ銀行等
  • その他:ANAホールディングス、JR東日本等

所得連動返還方式の改善

より柔軟な返還制度への進化

現在の所得連動返還方式(第一種奨学金のみ)をさらに改善し、より多くの奨学金に適用する方向で検討が進んでいます。

検討されている改善点

  1. 第二種奨学金への拡大 現在は第一種のみだが、有利子奨学金にも適用
  2. 所得算定方法の見直し より実態に即した所得の計算方法
  3. 返還月額の下限撤廃 現在の最低返還額(月2,000円)のさらなる引き下げ

返還免除制度の拡充

障害者への配慮強化

精神障害者への返還免除制度について、より柔軟な運用が検討されています。

現在の課題

  • 精神障害の場合、労働能力の判定が困難
  • 回復の可能性がある場合の取り扱い

改善の方向性

  • 段階的な免除制度の導入
  • 医師の診断書の重要性向上
  • 定期的な見直し制度

デジタル化の推進

手続きの簡素化

マイナンバーカードとの連携

  • 所得情報の自動取得
  • 各種申請のオンライン化
  • 手続き期間の短縮

AIを活用した相談システム

  • 24時間対応のチャットボット
  • 個別状況に応じた制度案内
  • 早期の問題発見と対応

国際比較と今後の方向性

諸外国の制度との比較

私が研究している諸外国の奨学金制度と比較すると、日本の制度にはまだ改善の余地があります。

オーストラリア(HECS-HELP)

  • 所得が一定額以下の場合は返還義務なし
  • 所得に応じた柔軟な返還率

イギリス

  • 所得が年収約300万円以下の場合は返還免除
  • 30年経過後の自動免除

アメリカ

  • 所得比例返還制度(IBR)
  • 公共サービス従事者への免除制度

今後予想される制度変更

私の予測する制度改善

  1. 所得連動返還方式の全面適用 5年以内に全ての奨学金に所得連動方式を適用
  2. 返還期限の設定 25年〜30年の返還期限を設け、期限経過後は免除
  3. 最低所得保障の導入 年収300万円以下の場合は返還を一時停止
  4. デジタル手続きの完全実装 全ての手続きをオンラインで完結
  5. 予防的支援制度の拡充 返済困難の予兆を早期発見するシステム

現在の利用者への影響

既存利用者へのメリット

これらの制度改善は、既に奨学金を利用している方にも段階的に適用される予定です:

  1. 手続きの簡素化 減額返還や猶予申請がより簡単に
  2. 相談体制の充実 AIチャットボットによる24時間相談
  3. 企業の代理返還制度拡大 転職時の選択肢増加

制度改善への期待と現実的対応

これらの制度改善は確実に進歩の方向にありますが、現在返済に困っている方にとっては「今すぐ」の解決が必要です。

現実的なアドバイス

  1. 現在利用可能な制度を最大限活用 将来の改善を待つより、今ある制度を積極的に利用
  2. 情報収集の継続 制度変更の情報は随時チェック
  3. キャリア選択への影響 代理返還制度のある企業への転職も選択肢

私が相談者にお伝えするのは、「制度は確実に改善されているが、今の困難には今利用できる制度で対応する」ということです。将来への希望を持ちつつ、現実的な解決策を着実に実行することが重要です。


まとめ:一人で抱え込まないで

この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。奨学金の返済に困窮し、自己破産を検討されている方の心境を思うと、胸が痛みます。私自身も奨学金返済で苦労した経験があり、その不安や絶望感は痛いほど理解できます。

最も重要なメッセージ

あなたは一人ではありません。そして、解決策は必ずあります。

この記事を通じてお伝えしたかったのは、自己破産は「最終手段」であり、その前に検討すべき選択肢がたくさんあるということです。

行動のための優先順位

もし今、奨学金の返済に困っているなら、以下の順序で行動することをお勧めします:

1. 緊急度の確認

  • 延滞が始まっているか
  • 督促状が届いているか
  • 連帯保証人に連絡が行っているか

2. 即座に相談

  • 日本学生支援機構(0570-666-301)に電話
  • 現状を正直に説明
  • 利用可能な制度を確認

3. 救済制度の申請

  • 減額返還制度
  • 返還期限猶予制度
  • 所得連動返還方式(該当者のみ)

4. 専門家への相談

  • 法テラスでの法律相談
  • ファイナンシャルプランナーへの家計相談
  • 必要に応じて弁護士への債務整理相談

5. 家族・周囲との相談

  • 連帯保証人・保証人への事前相談
  • 家族のサポート体制の確認
  • 機関保証への変更検討

自己破産を検討する前の最終チェック

自己破産を検討する場合は、以下の点を最終確認してください:

□ JASSOの救済制度をすべて検討したか □ 任意整理や個人再生の可能性を確認したか □ 連帯保証人・保証人への影響を理解しているか □ 自己破産のデメリットを十分理解しているか □ 弁護士に相談して最適な方法を確認したか

私からの約束

私は、奨学金返済に苦しむ多くの方々と向き合ってきました。その経験から断言できるのは、「どんなに困難な状況でも、必ず解決の道筋は見つかる」ということです。

時には厳しい選択を迫られることもあります。プライドを捨てて家族に頭を下げることもあるかもしれません。しかし、その先には必ず光があります。

私が相談を受けた方々の多くが、困難を乗り越えて安定した生活を取り戻しています。結婚して家庭を築いた方、念願の正社員になった方、独立して成功した方──みなさん、一時は絶望的な状況でしたが、諦めずに行動し続けた結果です。

最後に:未来への希望

奨学金制度は確実に改善されています。給付型奨学金の拡充、企業の代理返還制度の普及、所得連動返還方式の改善──これらはすべて、あなたのような困難に直面した方々の声から生まれた改善です。

今の苦しみは無駄ではありません。あなたの経験は、将来の学生たちがより良い環境で学べるための礎となります。

最終メッセージ

もし今、「もうダメだ」と感じているなら、どうか思いとどまって、まず一本の電話をしてください。JASSOの相談センター(0570-666-301)でも、法テラス(0570-078374)でも構いません。

あなたの人生はこれからです。奨学金の問題は、人生の一時的な困難にすぎません。必ず解決できます。そして、この経験はきっと、将来の大きな財産になります。

一人で抱え込まないでください。助けを求めることは、恥ずかしいことではありません。それは、人生を前向きに変えるための、勇気ある第一歩なのです。


この記事が、奨学金返済に悩むすべての方の希望の光となることを心から願っています。


筆者プロフィール:CFP認定者、銀行での個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社での投資アドバイザー経験5年。自身も奨学金返済を経験し、現在は多くの方の奨学金・家計相談に従事。「お金の不安で眠れない夜を過ごしている人の心を軽くしたい」という想いで活動している。

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