お子様を持つ家庭にとって、税金や社会保険料は重い負担となることがあります。特に、両親が共に働いている家庭では、お子様をどちらの親の扶養に入れるかで得られるメリットが異なり、どの選択が最適か迷われることもあるでしょう。
そこで、この度は、扶養制度に関して初心者の方でも理解できるように、基本的な情報から詳細にわたる解説を行いたいと思います。お子様を夫の扶養に入れるのか、それとも妻の扶養に入れるのか、その判断の基準や具体的なシミュレーション、さらには制度を上手に活用する際のポイントもお伝えいたします。
この記事を通して、皆様のご家庭において、お子様をどちらの親の扶養に入れるのが適しているのか、一緒に考えていきましょう。
「扶養控除」の正確な理解とは?
年末が近づくと、我々の耳にちょくちょくと入ってくる言葉が「扶養控除」です。多くの人はこの言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、「具体的に何か」と問われると、はっきりと説明できない方も少なくないのではないでしょうか。そして、驚くことに、「扶養控除」という言葉が、一般的に用いられる際の意味と、実際の税法における定義とでは、少しニュアンスが異なっていることをご存知でしょうか。
このセクションでは、「扶養控除」という言葉の正確な定義や、それに関連する情報について、詳しくご説明いたします。
扶養控除とは、簡単に言えば、自分が家族を養育しているという状況を考慮して、税金を少し軽減してもらえるという制度の一部です。自分が家族を扶養しているということは、それだけで生活費が増えることを意味します。このことを考慮し、税法では、家族を扶養している人に対して、一定の所得控除を許しているのです。
一方で、「扶養内で働く」というフレーズをよく聞くかもしれません。これは、所得控除の一環として「配偶者控除」や「扶養控除」があり、これらの控除を受けるためには、ある一定の収入以下である必要がある、ということを指しています。ここで注意すべきなのは、「扶養控除」と「配偶者控除」は、実際には異なる控除であるにも関わらず、一般的にはこれらが混同されて使われることが多いという点です。
この記事においては、これらの点を踏まえ、扶養控除と配偶者控除の両方を含めて「扶養制度」と総称して説明していきます。それぞれの違いや特徴を理解することで、より正確な知識を身につけ、生活に活かしていただければと思います。
扶養には2つのカテゴリが存在
扶養控除というのは、所得控除の一部であり、日常で聞かれる「扶養」という言葉の意味とは少し違います。この点を理解して、扶養の実態を把握するために、少し深堀りしてみましょう。驚くかもしれませんが、扶養は2つの大きなカテゴリに区分されているのです。
- 税法上の扶養
- 健康保険上の扶養
これらはそれぞれ異なる条件が設定されているため、両方を順番に詳しく見ていきたいと思います。
税法に基づく扶養
税法に基づく扶養とは、具体的には所得税や住民税の計算において考慮される扶養のことを指します。このカテゴリにおける被扶養者は、「扶養親族」という名称で呼ばれています。
扶養の対象となる人を抱えている者は、特定の所得控除を受けることが可能で、その結果として所得税や住民税の負担額が軽減されるのです。税法に基づく扶養で考慮される主な所得控除には次の3つが挙げられます。
- 基礎控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
基礎控除について
基礎控除とは、所得が一定の金額以下であるすべての人が対象となる所得控除のことを指します。
この基礎控除の金額は、住民税と所得税では異なるので、混同しないように注意が必要です。
納税者の年間所得と、その際に適用される基礎控除の金額を以下の表で整理しました。
納税者の合計所得 | 住民税の基礎控除 | 所得税の基礎控除 |
---|---|---|
2,400万円以下 | 43万円 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 29万円 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 15万円 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 | 0円 |
扶養控除の詳細
扶養控除とは、税金の計算の際に、扶養親族がいると認められる場合に、その扶養者が利用できる所得控除のことを指します。この扶養控除は、いくつかの特定の条件をクリアした扶養親族に対して適用されます。その際、一緒に住んでいるかどうかは問われませんが、生計を共にしている必要があります。
具体的な条件は以下の通りです:
- (1) 配偶者以外の親族(具体的には6親等以内の血族や3親等以内の姻族)であること。また、都道府県知事からの里子縁組や市町村長からの養護依頼を受けている子供や高齢者も含まれます。
- (2) 納税者と生計を共にしていること。
- (3) 年間の総所得が48万円以下であること(以前は38万円以下)。ただし、給与だけを収入源とする場合は、年収が103万円以下であること。
- (4) 青色申告者の事業専従者として年間を通して給与を一度も受けていないか、白色申告者の事業専従者ではないこと。
これらの情報は、初めて聞く方にとっては少し複雑に感じるかもしれません。そこで、もう少しわかりやすく言い換えてみます。条件を確認して、一つ一つ当てはまるかどうかを見てみましょう。
・配偶者でない近い親族や、里子や養護を頼まれた高齢者。
・その人の生活費をサポートしている。
・年収が48万円以下、もしくは給与だけで年収103万円以下。
・自分の事業での所得がないこと。
また、扶養控除の額は、被扶養者の年齢によって異なります。被扶養者の年齢ごとの扶養控除額の対応表は以下のとおりです。
被扶養者の年齢 | 住民税の扶養控除額 | 所得税の扶養控除額 |
---|---|---|
15歳以下 | 0円 | 0円 |
16〜18歳 | 33万円 | 38万円 |
19〜22歳(特定扶養親族) | 45万円 | 63万円 |
70歳以上(同居老親等) | 45万円 | 58万円 |
70歳以上(同居老親等以外) | 38万円 | 48万円 |
上記以外の扶養親族 | 33万円 | 38万円 |
重要なのは、扶養控除が適用されるのは16歳以上からだという点です。16歳未満の子どもには児童手当が支給されるため、扶養控除の対象からは外れます。
配偶者に対する控除
配偶者控除は、特定の条件を満たす配偶者に対して適用される所得控除のことです。配偶者控除を受けるための条件は以下のようになっています。
・法律上の配偶者であること。
・納税者と同じ生計を営んでいること。
・年収が38万円以下であること(給与だけなら103万円以下)。
・個人事業主の配偶者で、家族従業員として給与をもらっていないこと。
この控除額は、納税者の所得額によって変動します。所得と配偶者控除額の関係を以下にまとめています。
納税者の合計所得 | 配偶者控除額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
特に注意しておきたいのは、配偶者が70歳以上の場合、「老人控除対象配偶者」として、最大で48万円の控除が受けられることです。
参考文献:国税庁「配偶者控除」
また、配偶者の年収が103万円を超え、201万円までの範囲にある場合、配偶者特別控除が適用されます。配偶者特別控除に関する詳細な情報は、ここでは省略しますが、、国税庁「配偶者特別控除」のページで詳しく説明されていますので、興味のある方はそちらをご参照ください。
健康保険を通じた扶養の仕組み
健康保険における扶養とは、ある個人が保険料を支払っている健康保険の対象となることで、その個人自身だけでなく、その扶養家族も健康保険のメリットを享受できる制度です。具体的には、扶養されている方は、自ら健康保険料を支払わなくても、保険証を持ち、医療機関での治療費の一部を補助してもらうことができます。
この健康保険上の扶養の条件は、税法に基づく扶養の条件とは異なる点がいくつかあります。税法に基づく扶養では、生活の基盤を共にしているかどうかが重要ですが、健康保険上の扶養では、家族の続柄によって同居しているか否かが問われることがあります。
具体的な条件は、加入している健康保険の種類によって異なりますが、以下に、一般的に知られている基準についてご紹介します。
認定される基準
健康保険上の扶養で同居が必要ではないとされているのは、主に直系の親族です。このカテゴリに含まれるのは、以下のような家族構成です。
・配偶者
・兄弟姉妹
・父母
・祖父母
・曽祖父母
・子供
・孫
これに対して、これらの親族以外は、原則として同居が求められます。また、税法上の扶養と同様、3親等以内の親族が対象とされるのが一般的です。
被扶養者として認定されるための条件
被扶養者として認定されるための条件は、同居しているかどうかにより異なります。具体的な条件については、以下の表に示されています。
被扶養者になるための条件 | ||
---|---|---|
同居している場合 | 収入が130万円未満(高齢者や障害者の場合は180万円未満) | 被保険者の収入の2分の1未満であること |
同居していない場合 | 収入が130万円未満(高齢者や障害者の場合は180万円未満) | 被保険者からの援助よりも収入が少ないこと |
被扶養者として認定されるためには、その人自身の収入だけでなく、被保険者(保険料を支払っている人)との収入の差も考慮されます。ですので、単に収入が少なければ扶養に入ることができるわけではありませんので、留意が必要です。
扶養のカテゴリに応じて、扶養者の選定ができるかどうか
扶養という制度には、税法に基づく扶養と健康保険に基づく扶養の2種類が存在します。この二つの扶養の中で、例えば夫と妻がそれぞれ異なる扶養者として設定することは可能なのでしょうか。
その疑問の答えは、「可能」です。例えば、子供を扶養する際に、税法上では妻の側の扶養親族として設定し、一方で健康保険上では夫の側の被扶養者として設定することができます。
ただし、健康保険上の扶養についてはいくつか留意点があります。通常、健康保険の被扶養者は収入の多い方に加入することが基本となっています。しかし、特別な事情がある場合に限り、収入が少ない方の被扶養者として設定することも認められています。そのため、基本的には収入の高い方を被扶養者として設定するように心掛けるべきです。
もし、何らかの理由で収入の低い方を被扶養者に設定したい場合には、具体的にどのような手続きが必要かを、加入している健康保険に直接問い合わせてみましょう。
扶養者を適切に選ぶことで、税金の控除を多く受けられ、それが家計の助けとなります。具体的な控除額の計算方法については後ほどご紹介いたします。また、扶養に入れることで受けられる各種の手当についても注意が必要です。
夫婦の中でどちらを扶養者として設定することが最も経済的に有利か、慎重に見極めることが重要です。手当の詳細についても後ほど解説いたしますので、ぜひ参考にしてください。
住民税において、扶養控除以外に利用可能な非課税限度額制度
税法に基づく扶養と健康保険に基づく扶養の条件は、微細に異なるため、それぞれの条件が適切に満たされているかを確かめることが重要です。これによって、最も経済的に有利な控除額を得ることができ、家計を支える手助けとなります。
16歳未満の子供には控除が適用されないという理由で、「どちらの扶養に入れても差がない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、非課税限度額制度の利用の有無によって、節税効果に違いが生じます。この制度は住民税においてのみ利用可能ですが、適切に活用することで、一定の節税効果を期待することができます。以下では、非課税限度額制度についての3つのポイントを詳しくご紹介いたします。
・非課税限度額制度の概要
・非課税限度額は自治体ごとに異なる
・必ずしも非課税がお得ではない
これらのポイントを把握し、非課税限度額制度を適切に活用するための知識を身につけましょう。
非課税限度額制度って何?
非課税限度額制度とは、前年度の所得が特定の金額以下であれば住民税が免除されるという制度です。この制度には2つの特徴があります。
1,16歳未満の子供も扶養親族としてカウントされる
2,扶養親族の人数が増えれば、非課税になる所得上限も増加する
たとえば、非正規の雇用形態で所得が限られている場合など、非課税限度額制度が適用されるかどうかを調べてみると良いでしょう。
非課税限度額は自治体により異なる
非課税限度額制度の適用可否は、所得が特定の基準金額以内かどうかで判断されます。
自治体によって、住民税が非課税となる所得の基準は異なります。例として、東京都23区における基準を以下に示します。
【生計をともにしている配偶者または扶養親族がいる場合】
35万円×(本人・同居配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円以下
【生計をともにしている配偶者や扶養親族がいない場合】
35万円以下
詳細な基準額は、各自治体の役所や公式Webサイトで確認できます。
非課税が必ずしもお得とは言えない
住民税が非課税となるメリットを考えて、「子供を収入の少ない方の扶養にしよう」と思うかもしれません。しかし、非課税限度額制度を利用することが常にお得とは限りません。例えば、年収の高い方の職場に扶養家族向けの手当が存在
共働き且つお子様がいるご家庭における控除額の詳細な解析
税金の控除は、その複雑な規則から「どのような選択が最も有益か」を判断するのが難しいと感じる方も少なくないかと思います。そんな方々のために、今回は住民税や所得税における控除額に焦点を当て、具体的なシミュレーションを通して、そのイメージを具体的に捉える手助けをしたいと思います。
ここでは、共に働いている夫婦がお子様を1人持つというケースを考えます。夫婦それぞれの年収に基づいて、どちらの扶養親族としてお子様を計上すれば税金が節約できるのか、2つのケースに分けて詳しく計算してみましょう。年収から様々な項目を引いて税金を計算する際、細かいポイントが多いため、今回のシミュレーションでは基礎控除、扶養控除、そして配偶者控除のみを取り扱いたいと思います。対象とする家族の詳細は以下の通りです。
・夫(正社員):年収400万円
・妻(アルバイト):年収100万円
・子:17歳
このケースにおいて、所得控除額は以下の表にまとめられます。
住民税 | 所得税 | |
---|---|---|
基礎控除 | 43万円 | 48万円 |
扶養控除 | 33万円 | 38万円 |
配偶者控除 | 38万円 |
税金の計算方法は、次のようになります。税額=収入ー(基礎控除+扶養控除+配偶者控除)×税率。税率は所得の範囲によって異なるため、計算時にはその点に注意が必要です。それでは、お子様を夫の扶養親族とする場合と、妻の扶養親族とする場合の2つのシナリオでシミュレーションを進めてみましょう。
お子様を夫の扶養親族とした場合の分析
まず初めに、17歳のお子様を夫の扶養親族とした場合の税金について詳細にシミュレーションしてみます。
【夫の住民税】
計算式は、収入400万円から(基礎控除43万円、扶養控除33万円、配偶者控除38万円を引いた後)に税率10%を適用した結果、286,000円となります。
【夫の所得税】
こちらも、収入400万円から(基礎控除48万円、扶養控除38万円、配偶者控除38万円を引いた後)に税率20%を適用すると、552,000円となります。
【妻の住民税】
【妻の所得税】
妻の収入は非課税対象のため、住民税も所得税も0円です。
【合計税額】
夫の住民税286,000円と所得税552,000円を合計すると、838,000円となります。
これにより、住民税と所得税の合計は838,000円であることが分かります。
お子様を妻の扶養親族にした場合のケース
次に、お子様を妻の扶養親族にした場合の税額のシミュレーションを考察してみましょう。
【夫の住民税】
収入400万円から(基礎控除43万円+配偶者控除38万円を引いた後)に税率10%を適用すると、319,000円です。
【夫の所得税】
同様に、収入400万円から(基礎控除48万円+配偶者控除38万円を引いた後)に税率20%を適用すると、628,000円となります。
【妻の住民税】【妻の所得税】
妻の収入は引き続き非課税対象なので、両方とも0円です。
【合計税額】
夫の住民税319,000円と所得税628,000円を合算すると、合計947,000円となります。
このシミュレーション例では、妻が非課税対象であるため、お子様を妻の扶養親族にすると合計税額が増加してしまいます。
ただし、妻の年収が上がり課税対象となる場合、お子様を妻の扶養親族にすることで税額が減少する可能性もあります。扶養人数の増加により、住民税の非課税限度額が上がるため、妻の住民税が免除される可能性があるからです。
つまり、個々の家庭の状況によって、どちらの選択が有利かは変わります。ぜひ、ご自身の状況をもとにシミュレーションして、最適な選択を見つけてください。
共働きで子供がいないご夫婦の場合の税金の計算
ご家庭にお子様がいらっしゃる場合の税金の計算例を以前ご紹介しましたが、いくつかのパターンがあり、計算が少々複雑に感じられたかもしれませんね。今回は、お子様がいらっしゃらない共働きのご夫婦に焦点を当て、所得税と住民税の控除額について具体的にご説明します。お子様がいらっしゃる場合の計算が難しく感じた方も、この機会に扶養制度についてより理解を深めていただけると嬉しいです。以下の2つのケースを取り上げてみましょう。
・配偶者控除を適用する場合
・配偶者特別控除を適用する場合
これらの控除を利用するかどうかによって、最終的に支払う税金の額は大きく異なることがあります。また、税金の仕組みを理解しておくことで、例えばパートの収入をうまく調整して、手取りを増やす工夫もできます。ぜひ、あなたの現在の収入状況に照らし合わせて、どの方法が最も経済的にお得かを考察してみてください。
配偶者控除を適用する場合
まずは、配偶者控除を利用する場合の税金の計算例を見ていきましょう。ここでは以下のような条件を仮定して計算します。
・夫の年収:400万円
・妻の年収:100万円
基礎控除に関する詳細な金額は、先に紹介した章を参照してください。
- 【夫の住民税】〈400万円ー(基礎控除43万円+配偶者控除38万円)〉×税率10%=319,000円
- 【夫の所得税】〈400万円ー(基礎控除48万円+配偶者控除38万円)〉×税率20%=628,000円
- 【妻の住民税】非課税のため0円
- 【妻の所得税】非課税のため0円
夫の住民税額319,000円+夫の所得税額628,000円=947,000円 お子様がいらっしゃらないため、計算は直感的でわかりやすいです。扶養控除がない分、子供を妻の扶養親族にした場合と同じ税額になりました。
配偶者特別控除を適用する場合
次に、配偶者特別控除を利用する場合の税金の計算例を見ていきましょう。こちらは以下の条件で計算します。
・夫の年収:400万円
・妻の年収:200万円
配偶者特別控除が適用できる範囲内である、妻の年収200万円を仮定して計算を進めます。
- 【夫の住民税】〈400万円ー(基礎控除43万円+配偶者特別控除3万円)〉×税率10%=354,000円
- 【夫の所得税】〈400万円ー(基礎控除48万円+配偶者特別控除3万円)〉×税率20%=698,000円
- 【妻の住民税】(200万円ー基礎控除43万円)×税率10%=157,000円
- 【妻の所得税】(200万円ー基礎控除48万円)×税率10%=152,000円
【夫の住民税】354,000円+【夫の所得税】698,000円+【妻の住民税】157,000円+【妻の所得税】152,000円=1,361,000円
妻の収入が200万円で配偶者特別控除を適用すると、配偶者控除を用いた場合に比べて、合計で414,000円も税金が増加しました。配偶者特別控除は、配偶者の所得によって控除額が変わる特性があります。
収入が同じくらいの夫婦の場合、扶養の選び方は?
これまで、夫婦間で収入に大きな差があるケースでの税制の控除の仕組みについて解説してきました。それぞれの家庭の状況に応じて、どの選択が最も経済的に有利になるかが変わってきます。
では、もし夫婦の収入がほぼ同額である場合、子供をどちらの扶養に入れるのが適切なのでしょうか。収入がほぼ同じであれば、控除額もほぼ同じになるため、どちらを選んでも大きな違いはないのです。
しかし、「どちらでも良い」とだけ言われても、具体的な基準がほしいですよね。そこで、2つのポイントを挙げて、参考にしていただければと思います。
- わずかに収入が多い方はどちらか?
- 世帯主はどちらか?
これらの基準は非常にわかりやすいものです。確認して、どちらの扶養にするかを決めてみましょう。
少しでも収入が上回っているのはどちらか?
「同程度の収入」と言っても、具体的に1円単位で完全に同じというケースは稀です。健康保険における扶養の選び方については、前述の通り、少しでも収入が多い方を被扶養者に設定するのが一般的な選択となります。たとえ微々たる差であっても、少しでも収入が多い方を扶養者として指定しましょう。
家庭の世帯主はどちらか?
一般的には、世帯主を扶養者とすることが多いです。これは、基本的に世帯主の方が収入が多いことが多いため、また法的な手続きを行う際に世帯主が中心となって行動することが多いからです。
ただし、転職や収入の変動などによって、世帯主の収入が減少する可能性も考えられます。そのような状況下では、収入の多い方が扶養者となることもあります。厳密に言えば、必ずしも世帯主が扶養者である必要はありません。迷った際は、通常の状況を考慮して世帯主を扶養者とする選択をおすすめします。
扶養の選択を行う際に心掛けたい重要なポイント
これまでに、税金の減額や、夫婦のどちらが扶養者となるべきかについて、詳しくご説明してまいりました。扶養制度に関する基本的な内容は、皆様にしっかりと理解していただけたかと思います。ここで、実際に扶養の選択をする際に忘れてはならないいくつかの重要なポイントをお伝えしたいと思います。
- 企業からの支給:扶養手当がある場合、その額と控除額を比べてみましょう
- 配偶者の税制優遇措置:子供の扶養者を選ぶ際や、収入の額にも注意が必要です
これらのポイントを押さえておかないと、手元に残る額が思ったよりも少なくなってしまうこともありますので、慎重に確認しておくことが大切です。それぞれの注意点や、特に注意が必要な状況について詳しくお伝えしますので、あなたの状況に合致していないか、よく確認してみてください。
企業からの支給:扶養手当の有無とその額を控除額と照らし合わせる
家族を扶養している場合、勤務先の企業が独自に扶養手当を支給していることもあります。この扶養手当ですが、扶養者が勤務先の従業員でないと受け取ることができないのです。したがって、税制上の控除額だけを見て判断するのではなく、企業が支給している扶養手当も合わせて検討することが大切です。
例えば、住民税を非課税にしたいと考えて収入の少ない方を扶養にする場合や、夫婦双方がほぼ同じ収入を持つ場合などは、特に注意が必要です。企業の扶養手当と税法上の控除額をしっかりと比較し、最も経済的に有利な選択を行うよう心がけましょう。
配偶者の税制優遇措置:子供の扶養者の選択と収入の管理に留意する
既に触れたように、配偶者控除や配偶者特別控除は、共働きの家庭でも、配偶者の年収が一定の範囲内であれば利用することができる制度です。
しかし、収入が一定の基準を超えたり、配偶者が子供の扶養者として選ばれた場合には、この控除を利用できなくなってしまいます。
配偶者が扶養者に適しているかどうかを判断する際や、配偶者の収入が制限額に近い場合などは、十分な注意が必要です。控除の恩恵を受けたいと思うならば、収入が多い方が子供を扶養にし、配偶者が受ける控除が減らないよう、収入を適切に管理することが重要です。
総括:共働きのご夫婦は、各自の状況を踏まえて扶養者の選択を検証しましょう
ここまで、共働きをされているご夫婦に向けて、扶養制度について詳しくご紹介してきました。
夫と妻、どちらの扶養に子供を入れるかという選択が、支払うべき税金の額に影響を与えることを、ご理解いただけたのではないでしょうか。
収入の状況や受けている手当など、様々な要素を基に、どちらを扶養にすべきかという重要な判断を行う必要があります。それぞれのケースを慎重に検討し、最適な選択を行うことが求められます。
この記事で触れたポイントを整理してみると、以下のようにまとめられます。
- 扶養制度には、税法に基づく扶養と、健康保険における扶養の二種類が存在します。
- 基本的には、収入が多い方を扶養者として選ぶことが一般的です。
- それだけではなく、企業からの手当や、配偶者控除・配偶者特別控除も考慮に入れる必要があります。
これらの3つの要素を念頭に置いて、自分たちの生活状況や収入を考慮に入れながら、適切な選択を行えば、節税の効果や家計の安定に繋がることでしょう。ぜひ、あなたの家庭にとって最も適した選択ができるよう、この情報を活用してください。