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保険営業マンのしつこい勧誘を上手に断る方法完全ガイド【元銀行員FPが教える角の立たない断り方】

目次

はじめに:あなたの悩み、私も同じでした

「保険の見直しいかがですか?」「今なら特別プランがあります」――。

街角で、職場で、時には自宅にまで訪問してくる保険営業マンの勧誘に、心を痛めていませんか?

私は、ファイナンシャルプランナー(CFP資格保有)として、これまで12年間にわたって個人の資産運用相談に携わってきました。大手銀行での個人向け資産運用コンサルタント経験10年、証券会社での投資アドバイザー経験5年を経て、現在は独立系FPとして活動しています。

しかし、専門家である私でも、実は保険営業マンの勧誘に困った経験があります。

30代前半のこと、当時勤務していた銀行の取引先保険会社から、「特別な商品をご紹介したい」と連日のように電話がかかってきました。金融のプロとして知識はあっても、人間関係を重視する日本のビジネス文化の中で、きっぱりと断ることの難しさを痛感したのです。

「断ったら失礼になるのでは?」 「相手も仕事だから、少しは話を聞いてあげるべき?」 「でも、必要ない保険に入るつもりはない…」

このような葛藤を抱えながら、結果的に2時間近くも話を聞いてしまい、最終的に「検討します」と言って延々と引き延ばしてしまった苦い記憶があります。

あの時の私のように、保険営業マンの勧誘に困っている方に向けて、この記事では以下の内容をお伝えします:

  • なぜ保険営業マンはしつこく勧誘するのかその背景とメカニズム
  • 相手の心を傷つけずに断る具体的な言い回しと実践方法
  • 二度と勧誘されないための予防策
  • 本当に保険が必要な場合の適切な相談先の選び方

最後まで読んでいただければ、保険営業マンとの関係で悩むことなく、あなた自身のペースで、本当に必要な保険選びができるようになります。

第1章:保険営業マンがしつこい理由を知ろう

1-1. 保険営業の厳しい現実

保険営業マンが時として「しつこい」と感じられる勧誘を行う背景には、業界特有の厳しい現実があります。

私が銀行時代に接してきた保険営業マンの多くは、決して悪意を持って行動しているわけではありません。むしろ、以下のような厳しいノルマと競争環境の中で必死に働いているのが実情です。

月次・四半期のノルマ設定 大手保険会社の営業マンの場合、月間で新規契約5〜10件、四半期で数千万円の契約額といった厳しいノルマが設定されていることが一般的です。これを達成できないと、昇進はおろか、給与の減額や配置転換といった処分を受ける可能性があります。

成果主義の給与体系 保険営業の給与は、基本給に加えて契約実績に応じた歩合給(コミッション)が大きな割合を占めます。1件の契約で得られるコミッションは数万円から数十万円に及ぶこともあり、営業マンにとっては「生活がかかっている」状況なのです。

顧客リストの枯渇問題 新人の保険営業マンは、まず家族や友人に保険を販売することから始めます。しかし、これらの「温かいリスト」はすぐに枯渇してしまい、その後は飛び込み営業やテレアポといった「冷たいリスト」での営業を強いられます。

1-2. 「しつこさ」の心理学的メカニズム

営業心理学では、「フット・イン・ザ・ドア技法」や「ドア・イン・ザ・フェイス技法」といった、相手に「Yes」と言わせるための様々な手法が研究されています。

段階的コミットメント戦略 最初は資料請求や無料相談といった小さなお願いから始めて、徐々に大きなお願い(契約)に繋げていく手法です。「まずはお話だけでも」という誘い文句の背景には、このような戦略があります。

希少性の演出 「今月末までの限定商品」「あと2名様のみ」といった表現で緊急性や希少性を演出し、契約を急がせる手法です。実際には、同様の商品は翌月以降も販売されていることがほとんどです。

権威性の活用 「○○大学教授推奨」「金融庁認可」といった権威を示すことで、商品の信頼性を高めようとする手法です。しかし、これらの権威が実際の商品の優劣を保証するものではありません。

1-3. 私が見てきた営業マンのタイプ別特徴

銀行時代、私は数百名の保険営業マンと接してきました。その経験から、営業マンを以下の4つのタイプに分類できることが分かりました。

熱心すぎるタイプ お客様のためを思って、本当に良いと信じている商品を熱心に勧める営業マン。悪気はないのですが、お客様の事情や気持ちを汲み取ることが苦手で、結果的に「しつこい」と感じられてしまいます。

ノルマに追われるタイプ 月末や四半期末が近づくと、普段は穏やかな営業マンも必死になって契約を取りに来ます。「今月中でないとこの条件では無理です」といった発言が多くなるのが特徴です。

テクニック重視タイプ 営業マニュアルや研修で学んだテクニックを駆使して、巧妙に契約に導こうとする営業マン。話し方は上手ですが、お客様の真の利益よりも自分の成績を優先する傾向があります。

誠実なプロフェッショナルタイプ お客様の状況を丁寧にヒアリングし、本当に必要な場合のみ提案を行う営業マン。無理な勧誘はせず、時には「今は保険よりも貯金を優先したほうが良い」とアドバイスすることもあります。

残念ながら、最後のタイプの営業マンは全体の2〜3割程度というのが私の実感です。

第2章:効果的な断り方の基本原則

2-1. 「相手を尊重しながら断る」という考え方

保険営業マンも一人の人間であり、生活をかけて真剣に働いています。そのため、頭ごなしに拒否したり、相手の人格を否定するような断り方は避けるべきです。

私がおすすめするのは、「相手の立場を理解しつつ、自分の意思をはっきりと伝える」というアプローチです。

良い断り方の例: 「お忙しい中、ご提案いただきありがとうございます。ただ、現在は保険の見直しを考えておりませんので、今回はお断りさせていただきます。」

悪い断り方の例: 「保険なんて必要ないから、もう電話してこないで!」

同じ「断る」という結果でも、相手への配慮があるかないかで、その後の関係性や相手の受け取り方が大きく変わります。

2-2. 曖昧な表現は避ける

日本人特有の「察する文化」から、断る際についつい曖昧な表現を使ってしまいがちです。しかし、営業マンは「可能性がある」と判断した相手には繰り返しアプローチを行うため、曖昧な断り方は逆効果になることが多いのです。

曖昧で効果の薄い断り方:

  • 「ちょっと忙しくて…」
  • 「今は時期が悪くて…」
  • 「検討してみます…」
  • 「また今度で…」

これらの表現は、営業マンにとっては「時期を変えれば可能性がある」というメッセージとして受け取られてしまいます。

明確で効果的な断り方:

  • 「必要ありません」
  • 「興味がありません」
  • 「契約する予定はありません」
  • 「他で十分カバーできています」

少し冷たく感じるかもしれませんが、お互いの時間を無駄にしないためには、このような明確な表現が重要です。

2-3. 理由は詳しく説明しない

断る理由を詳しく説明すると、営業マンはその理由を覆そうとしてさらなる提案を行ってきます。これは営業のプロとして当然の行動です。

詳しい理由を言ってしまった失敗例:

お客様:「今は住宅ローンがあって、保険にかける余裕がないんです」 営業マン:「それでしたら、住宅ローンをカバーできる団体信用生命保険付きの商品があります。月々3,000円からでも…」

お客様:「既に他社で保険に入っているので」 営業マン:「他社の保険だと、この部分がカバーされていないのでは?一度、証券を拝見させていただければ…」

このように、理由を詳しく説明すると、それを覆すための新たな営業トークが始まってしまいます。

効果的な対応: 理由を求められても、「総合的に判断した結果です」「現在は必要性を感じておりません」といった、反論しにくい一般的な表現にとどめることが重要です。

2-4. 感情的にならず、冷静に対応する

しつこい勧誘を受けると、ついつい感情的になってしまいがちです。しかし、感情的な対応は相手にも感情的な反応を引き起こし、結果的に状況を悪化させることが多いのです。

私のFP事務所に相談に来られた35歳の女性、田中さん(仮名)の体験談をご紹介します。

田中さんは、職場に頻繁に訪問してくる保険営業マンに困っていました。何度断っても諦めてくれず、ついに感情的になって「うるさい!もう来ないで!」と大声で断ってしまったそうです。

その結果、周囲の同僚からは「ちょっと言い方がきつすぎるのでは?」という視線を向けられ、営業マン自身も感情的になって「せっかくお客様のためを思って提案しているのに…」と反論されてしまいました。

最終的に、職場の人間関係にまで影響が出てしまい、田中さんは非常に後悔されていました。

このような状況を避けるためには、どんなにしつこい勧誘を受けても、冷静さを保ち、礼儀正しく、しかし毅然とした態度で断ることが重要です。

第3章:場面別・相手別の具体的な断り方

3-1. 電話での勧誘を断る方法

電話での保険勧誘は、最も頻繁に遭遇するケースの一つです。相手の顔が見えない分、断りやすい一方で、電話を切るタイミングが難しいという特徴があります。

基本の断り方(所要時間:30秒以内)

営業マン:「お忙しい中失礼いたします。○○生命の××と申します。保険の見直しについてご提案が…」

あなた:「申し訳ございませんが、保険の勧誘はお断りしております。失礼いたします。」

この時点で電話を切ってしまって構いません。相手がまだ話そうとしても、「失礼いたします」と言って切ることに何の問題もありません。

相手が食い下がってきた場合

営業マン:「ちょっとお待ちください。今回は無料の相談だけでも…」

あなた:「ご提案いただく内容に関係なく、お断りいたします。今後もお電話はご遠慮ください。」

録音していることを伝える方法

法的に問題のない範囲で、以下のような伝え方も効果的です:

「申し訳ございませんが、当方では営業のお電話はすべてお断りしております。なお、この通話は記録として残させていただいておりますので、ご了承ください。」

多くの営業マンは、録音されている可能性があると知ると、無理な勧誘は控えるようになります。

3-2. 職場への訪問営業を断る方法

職場への訪問営業は、周囲の目があるため特に断りにくいシチュエーションです。しかし、業務時間中の営業活動は多くの会社で禁止されているため、毅然とした対応が求められます。

第一段階:受付での対応

受付の方や同僚に営業マンが来ていることを伝えられた場合:

「申し訳ございませんが、業務時間中のため、営業の方とはお会いできません。お帰りいただくようお伝えください。」

第二段階:直接対面してしまった場合

営業マン:「お忙しい中失礼いたします。○○生命の××です。少しお時間をいただけないでしょうか」

あなた:「申し訳ございませんが、職場では営業の方とのお話はお断りしております。また、業務時間中でもありますので、今回はお帰りいただけますでしょうか。」

同僚や上司が同席している場合

周囲に人がいる状況では、相手のメンツも考慮しつつ、しかし明確に断ることが重要です:

「ご足労いただきありがとうございます。ただ、申し訳ございませんが、職場での営業活動は控えさせていただいております。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。」

3-3. 自宅訪問を断る方法

自宅への突然の訪問は、最もプライベートな空間への侵入であり、毅然とした対応が必要です。

ドア越しでの対応(推奨)

ピンポン→「どちら様ですか?」 営業マン:「○○生命の××と申します。保険のご案内で…」 あなた:「営業の方はお断りしております。お帰りください。」

この時点で、ドアを開ける必要はありません。インターホンがある場合は、インターホン越しで完結させることが重要です。

相手が粘る場合

営業マン:「ちょっとだけでもお話を聞いていただけませんか?」 あなた:「お断りと申し上げております。これ以上続けられるようでしたら、迷惑行為として対処いたします。」

法的根拠を示す方法

特定商取引法では、訪問販売における「再勧誘の禁止」が明確に定められています:

「特定商取引法により、一度お断りした後の再勧誘は禁止されております。お帰りください。」

3-4. 知り合いからの紹介を断る方法

最も断りにくいのが、友人や親族、職場の先輩などからの紹介による保険勧誘です。人間関係への影響を考えると、特に慎重な対応が求められます。

紹介者への事前対応

可能であれば、紹介される前に紹介者に対して以下のように伝えておくことが効果的です:

「○○さん、いつもお世話になっております。実は、現在保険は十分に加入しており、新たな契約は考えておりません。もし営業の方をご紹介いただく予定がございましたら、ご遠慮いただければと思います。」

営業マンとの面談時の対応

既に面談の約束をしてしまった場合は、以下のような断り方が効果的です:

「○○さんからのご紹介ということで、お時間をいただきありがとうございます。ただ、現在の保険で十分にカバーできており、新たな契約は考えておりません。○○さんには申し訳ないのですが、今回はお断りさせていただきます。」

紹介者へのフォロー

断った後は、必ず紹介者に対してフォローを行うことが重要です:

「○○さん、先日はご紹介いただきありがとうございました。営業の方とお話しさせていただきましたが、現在の保険で十分であることを確認できました。ご配慮いただいたにも関わらず、お断りすることになり申し訳ございませんでした。」

このようなフォローにより、人間関係への悪影響を最小限に抑えることができます。

3-5. しつこい営業マンへの最終手段

上記の方法でも諦めない営業マンに対しては、以下の段階的な対応を行います。

第一段階:書面での意思表示

以下の内容を書面(メールまたは郵送)で送付します:

「○○生命 ××様 これまで何度も口頭でお断りしておりますが、改めて書面にて意思表示いたします。 私は、貴社の保険商品に一切興味がなく、今後一切のご連絡、ご訪問をお断りいたします。 特定商取引法第17条により、この書面による意思表示以降の勧誘行為は法的に禁止されておりますので、厳格に遵守いただくようお願いいたします。 ○年○月○日 ○○○○(署名)」

第二段階:会社への苦情申し立て

営業マン個人への対応で解決しない場合は、保険会社のお客様相談室や苦情処理窓口に連絡します。大手保険会社では、苦情の内容が詳細に記録され、該当営業マンの上司に情報が共有されます。

第三段階:外部機関への相談

それでも改善されない場合は、以下の機関に相談することができます:

  • 消費生活センター(消費者ホットライン:188)
  • 生命保険協会の苦情処理窓口
  • 金融庁の金融サービス利用者相談室

これらの機関からの指導により、ほとんどの場合は勧誘が停止されます。

第4章:営業トークの見抜き方と対処法

4-1. よくある営業トークとその裏側

保険営業マンは、契約を取るために様々な営業トークを使用します。これらのトークの裏側を理解することで、冷静に対処できるようになります。

「今だけ特別にご案内できる商品があります」

→**実態:**特別でも何でもない通常商品であることがほとんどです。保険商品は金融庁の認可を受けて販売されるため、特定の人にだけ特別な条件で販売することは原則的にありません。

対処法:「特別な商品でしたら、まずは商品パンフレットや約款をいただいて、じっくり検討させていただきます」と伝え、その場での契約は避けます。

「このままだと老後に2,000万円不足します」

→**実態:**金融庁の報告書「老後2,000万円問題」を悪用した不安煽り営業です。この2,000万円は平均的な試算であり、個人の状況によって大きく異なります。

対処法:「具体的にどのような根拠で計算されたのか、詳細な資料をいただけますか?」と質問し、その場での判断は避けます。

「税金対策になります」

→**実態:**生命保険料控除の年間控除額は最大12万円、住民税と合わせても実際の節税効果は年間数千円程度です。「税金対策」というほどの効果はありません。

対処法:「具体的にいくらの節税効果があるのか、計算式を教えてください」と詳細を求めます。

4-2. 契約を急かすトークへの対処

営業マンは、相手に考える時間を与えないよう、様々な理由で契約を急かしてきます。

「今月末までの限定商品です」

私の経験では、「限定」と言われた商品の9割以上が、翌月以降も同じ条件で販売されていました。本当に商品が終了する場合は、金融庁への届け出や既契約者への通知が必要なため、そう簡単に商品を終了することはできません。

対処法:「それでしたら縁がなかったということで結構です。急いで決めるような大きな買い物ではありませんので」ときっぱりと断ります。

「今決めていただければ、特別な割引があります」

保険料は保険数理に基づいて厳密に計算されており、営業マンの裁量で割引できるものではありません。もし本当に割引があるとすれば、それは最初から織り込まれた価格設定である可能性が高いです。

対処法:「割引前の正規料金と割引内容を詳しく説明してください。また、この割引は他の方にも適用されているのでしょうか?」と質問します。

4-3. 感情に訴えるトークへの対処

営業のプロは、論理だけでなく感情にも巧みに訴えかけてきます。

「ご家族のために」「愛する人のために」

確かに保険は家族のためのものですが、必要以上の保険は家計を圧迫し、結果的に家族の生活を苦しくしてしまいます。

対処法:「家族のためにこそ、慎重に検討したいと思います。今すぐ決められません」と冷静に対応します。

「私も家族がいるのでお気持ちがよく分かります」

営業マンは、お客様との距離を縮めるために、自分の家族の話をすることがあります。しかし、これは親近感を演出するテクニックの一つです。

**対処法:**話は聞いても、それを契約の判断材料にはしません。「お話はよく分かりますが、我が家の状況とは異なりますので」と明確に線引きします。

4-4. 専門用語を使った説明への対処

営業マンが専門用語を多用する場合、それは相手を煙に巻いて契約に導こうとしている可能性があります。

分からない用語は必ず確認する

「解約返戻金」「予定利率」「定期保険」「終身保険」「特約」など、分からない用語が出てきたら、必ずその場で意味を確認します。

「申し訳ありませんが、○○という用語の意味がよく分からないのですが、分かりやすく説明していただけますか?」

複雑な商品設計に注意する

「主契約+7つの特約」のような複雑な商品設計の保険は、営業マンでさえ完全に理解していない場合があります。

「商品が複雑すぎて理解できません。もっとシンプルな商品はありませんか?それとも、やはり必要ないということでしょうか?」

第5章:法的権利と相談先

5-1. 特定商取引法による保護

保険の訪問販売や電話勧誘は、特定商取引法の適用を受けます。この法律により、消費者は以下の権利を持っています。

再勧誘の禁止(法第17条)

一度「契約しない」旨の意思表示をした消費者に対して、同一の契約について再び勧誘することは法的に禁止されています。

実際の条文:「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。」

クーリング・オフ制度(法第9条)

契約から8日以内であれば、理由を問わず契約を解除することができます。これは、営業マンに押し切られて契約してしまった場合の重要な救済手段です。

不実告知・重要事項不告知の禁止(法第6条)

営業マンは、契約の重要事項について、事実と異なることを告げたり、重要な事項を故意に告げなかったりしてはいけません。

5-2. 保険業法による規制

保険業法では、保険会社と営業職員に対してより厳格な規制が設けられています。

適合性の原則(保険業法第294条の2)

保険会社は、顧客の知識、経験、財産の状況及び契約目的に照らして不適当と認められる勧誘を行ってはならないとされています。

例えば、年収300万円の方に月額保険料5万円の保険を勧めることは、この原則に反する可能性があります。

情報提供義務(保険業法第294条)

保険会社は、契約前に以下の情報を提供する義務があります:

  • 保険商品の内容
  • 保険料の額及び支払方法
  • 保険金の支払条件
  • 解約に関する事項
  • その他重要な事項

この情報提供が不十分な場合は、法律違反となります。

5-3. 相談先一覧

しつこい保険勧誘に困った場合の相談先をご紹介します。

消費生活センター

  • 電話:188(消費者ホットライン)
  • 全国共通の番号で、最寄りの消費生活センターに繋がります
  • 相談料:無料
  • 受付時間:各センターにより異なる(多くは平日9:00-17:00)

生命保険協会

  • 電話:03-3286-2648
  • 生命保険相談所
  • 相談料:無料
  • 受付時間:月〜金 9:00-17:00(祝日・年末年始を除く)

金融庁金融サービス利用者相談室

  • 電話:0570-016811(IP電話:03-5251-6811)
  • 相談料:無料
  • 受付時間:平日 10:00-17:00

弁護士会法律相談センター

  • 各都道府県の弁護士会で実施
  • 相談料:30分5,000円程度(地域により異なる)
  • 法的な対応が必要な場合に利用

5-4. 相談時に準備する資料

効果的な相談を行うために、以下の資料を準備しておくことをお勧めします。

時系列の記録

  • いつ、誰から、どのような勧誘を受けたか
  • どのように断ったか
  • 相手の反応はどうだったか

録音データ(可能な場合)

  • 電話での会話
  • 対面での会話(相手の同意がある場合)

書面やメール

  • 営業マンからもらった名刺
  • 商品パンフレット
  • やり取りしたメール

契約関連書類(契約してしまった場合)

  • 契約書
  • 約款
  • 保険証券

これらの資料があることで、相談機関はより具体的で効果的なアドバイスを提供できます。

第6章:断った後の予防策

6-1. 個人情報の管理を見直す

保険営業マンが勧誘の対象を見つける方法は、主に以下の通りです。これらの経路を遮断することで、将来的な勧誘を予防できます。

名簿業者からの情報漏洩対策

電話帳に掲載を避ける、インターネットでの個人情報開示を最小限にする、などの対策が効果的です。私のFP事務所に相談に来られた方の中には、電話帳への掲載を停止した途端に営業電話が激減したという事例もあります。

既存契約からの情報管理

既に保険に加入している場合、その保険会社から関連会社に情報が共有される可能性があります。契約時の書面で情報共有の可否を選択できる場合が多いので、必要のない共有は拒否しましょう。

インターネットでの資料請求に注意

保険の一括見積サイトや資料請求サイトを利用すると、複数の保険会社に個人情報が提供され、後日営業電話やメールが殺到することがあります。本当に必要な場合以外は、このようなサイトの利用は控えることをお勧めします。

6-2. 効果的な拒否リスト作成

しつこい営業を受けた場合は、以下の情報を記録に残し、「個人的な拒否リスト」を作成することをお勧めします。

記録すべき項目

  • 営業マンの氏名・所属会社
  • 連絡を受けた日時・方法
  • 断った方法と相手の反応
  • その後の対応

この記録は、同じ営業マンから再度連絡があった場合に「○月○日に明確にお断りした通りです」と具体的に伝えるために役立ちます。

6-3. 職場での営業活動への対策

会社の規則を確認する

多くの会社では、業務時間中の外部営業活動を禁止しています。この規則を確認し、必要に応じて人事部や総務部に相談することで、会社レベルでの対策を講じることができます。

同僚への情報共有

一人の営業マンが複数の同僚にアプローチしている場合があります。被害を最小限に抑えるため、同僚間で情報を共有し、統一した対応を取ることが効果的です。

6-4. 家族・友人への対策

家族への事前説明

自宅への訪問営業に備えて、家族全員に対応方法を説明しておくことが重要です。特に、在宅時間の長い配偶者や高齢の家族には、「営業の人が来ても話を聞かないで」と明確に伝えておきましょう。

友人・知人への予防的コミュニケーション

保険営業を行っている友人・知人がいる場合は、事前に「現在は保険の新規契約は考えていない」ということを伝えておくことで、後々の気まずい状況を避けることができます。

第7章:本当に保険が必要な場合の適切な選び方

7-1. 保険が本当に必要なケースとは

ここまで保険営業の断り方をお伝えしてきましたが、もちろん保険が本当に必要なケースもあります。FPとして、以下のような状況の方には保険の検討をお勧めしています。

生命保険が必要なケース

収入の主たる担い手に万一のことがあった場合の遺族保障 特に、配偶者が専業主婦(主夫)で小さなお子さんがいる家庭では、収入の柱となる人に万一のことがあった場合の経済的影響は深刻です。

私が相談を受けた32歳の会社員、山田さん(仮名)のケースをご紹介します。山田さんは年収450万円、奥様は専業主婦、3歳と1歳のお子さんがいらっしゃいました。

万一の場合の必要保障額を計算したところ:

  • 遺族年金:月額約11万円
  • 最低生活費:月額約25万円
  • 不足分:月額約14万円
  • お子さんが独立するまでの期間:約20年
  • 必要保障額:14万円×12ヶ月×20年=約3,360万円

この場合、3,000万円程度の定期保険への加入を検討していただきました。

医療保険が必要なケース

貯蓄が十分でない場合の医療費保障 日本では高額療養費制度があるため、月額の医療費負担には上限があります。しかし、差額ベッド代や先進医療費などは対象外のため、貯蓄が少ない場合は医療保険で備える意味があります。

一般的に、貯蓄額が100万円を下回る場合は医療保険の検討をお勧めしています。

7-2. 信頼できる相談先の選び方

保険が必要と判断した場合、どこに相談すれば良いのでしょうか。営業マンの勧誘を断った後だからこそ、より慎重に相談先を選ぶ必要があります。

独立系ファイナンシャルプランナー

特定の保険会社に所属せず、中立的な立場からアドバイスを提供するFPです。相談料は有料(1時間5,000円〜10,000円程度)ですが、商品の販売が目的ではないため、客観的な判断を期待できます。

選び方のポイント:

  • CFPやAFPなどの資格を保有している
  • 特定の保険会社との専属契約がない
  • 相談料金が明確に提示されている
  • 相談者の状況に応じて「保険は不要」と言える

保険ショップ(乗合代理店)

複数の保険会社の商品を扱う代理店です。1社の営業マンと比べて選択肢が多く、比較検討しやすいというメリットがあります。

注意点:

  • 手数料の高い商品を優先的に勧める場合がある
  • 相談員の知識レベルにばらつきがある
  • 結果的に複雑な商品を勧められる場合がある

銀行の保険窓販

銀行でも保険商品を販売していますが、取り扱い商品が限定的で、銀行員の保険知識が十分でない場合もあります。

インターネット保険の直接契約

営業マンを介さずに、インターネットで直接保険会社と契約する方法です。人件費がかからない分、保険料が安く設定されています。

メリット:

  • 営業マンからの勧誘がない
  • 保険料が安い
  • 自分のペースで検討できる

デメリット:

  • 専門的なアドバイスが受けられない
  • 商品の比較検討が困難
  • 請求時の手続きが複雑な場合がある

7-3. 適切な保険選びの原則

保険を検討する際は、以下の原則を念頭に置くことが重要です。

必要保障額の精密な計算

感情や営業トークではなく、具体的な数字に基づいて必要保障額を計算します。

計算の手順:

  1. 万一の場合の収入減少額を把握
  2. 遺族年金などの社会保障給付額を確認
  3. 生活費の変化を考慮
  4. 既存の貯蓄・資産を勘案
  5. 真の必要保障額を算出

シンプルな商品の選択

複雑な商品ほど手数料が高く、内容も理解しにくくなります。基本的には、以下のようなシンプルな商品を組み合わせることをお勧めします:

  • 定期保険:一定期間の死亡保障
  • 終身保険:一生涯の死亡保障
  • 医療保険:入院・手術費用の保障

定期的な見直し

保険は「入ったら終わり」ではありません。ライフステージの変化に応じて、定期的に見直しを行うことが重要です。

見直しのタイミング:

  • 結婚時
  • 出産時
  • 住宅購入時
  • 転職時
  • 子どもの独立時
  • 退職時

第8章:私の体験談と学んだこと

8-1. 20代の失敗体験:押し切られて契約してしまった苦い経験

私自身も、現在は保険の専門家として活動していますが、20代の頃は保険営業マンの巧妙な営業トークに翻弄された経験があります。

当時25歳、銀行に入行して3年目の頃のことです。取引先の保険会社から「若手行員向けの特別プラン」として、生命保険の提案を受けました。

営業マンは私よりも少し年上の30代前半の男性で、非常に話が上手く、「銀行員として将来は独立も考えているでしょうから、万一の保障と資産形成を兼ねた商品が良いですよ」と、私の将来への不安を巧みに刺激してきました。

その時の営業トーク: 「山田さん(私の仮名)のような優秀な方でしたら、将来は独立してコンサルタント業を営まれるかもしれませんね。でも、独立する時に一番心配なのは、収入が安定しない間の生活保障ですよね。この商品でしたら、万一の保障を確保しながら、10年後には解約返戻金で独立資金も準備できるんです。」

私の心理状態:

  • 将来への漠然とした不安
  • 「特別プラン」という言葉への優越感
  • 断ったら人間関係に影響するかもしれない心配
  • 保険のプロから見ると明らかに不適切な提案だったが、当時は判断できなかった

結果的に、月額2万5千円の終身保険に加入してしまいました。当時の私の月収は約20万円でしたから、実に収入の12.5%を保険料に充てることになったのです。

3年後に気づいた問題点:

  • 保険料が収入に対して過大
  • 解約返戻金の利回りが極めて低い(年利約1%)
  • 同じ保障内容なら定期保険で月額3,000円程度で済んだ
  • 資産形成なら投資信託の方が効率的だった

この契約は結局5年後に解約し、約30万円の損失を被りました。しかし、この経験があったからこそ、現在は「お客様にとって本当に必要な保険は何か」を真剣に考えられるようになったと思います。

8-2. 30代の転機:正しい知識を身につけて断れるようになった

CFP資格を取得し、保険の仕組みを深く理解できるようになってからは、不適切な営業に対してきっぱりと断れるようになりました。

35歳の時、新築マンションを購入した際に、不動産業者からの紹介で保険営業マンが自宅を訪問してきました。

営業マンの提案: 「住宅ローンをお組みになったということは、万一の時のご家族の負担が心配ですよね。団体信用生命保険では、ローンは完済されますが、その後の生活費や教育費は別途準備が必要です。月額4万円の保険で、3,000万円の保障を確保しませんか?」

私の対応: 「ご提案いただきありがとうございます。ただ、住宅ローンの団信に加えて、既に2,000万円の定期保険に加入しており、遺族年金と合わせて十分な保障があることを確認済みです。また、お子さんの教育費については、学資保険ではなくつみたてNISAで準備することに決めています。今回はお断りさせていただきます。」

営業マンは「でも、つみたてNISAだと元本保証がありませんよ」と反論してきましたが、私は冷静に以下のように応答しました:

「元本保証がない代わりに、長期投資によるリターンが期待できます。過去20年間のデータを見ると、分散投資を行った場合の年平均リターンは4-6%程度であり、学資保険の1-2%を大幅に上回ります。リスクとリターンを理解した上での判断です。」

この時の営業マンは、それ以上は強く勧誘せず、「勉強になりました」と言って帰っていきました。知識があることを示すことで、無理な勧誘を避けることができたのです。

8-3. 現在のFPとしての活動から学んだこと

独立系FPとして活動する中で、保険営業マンの勧誘に困っている多くの方の相談を受けてきました。その経験から学んだことをお伝えします。

ケース1:断り切れずに不適切な保険に複数加入してしまった主婦の方

43歳の専業主婦、佐藤さん(仮名)は、様々な営業マンの勧誘を断り切れず、気がつくと月額8万円もの保険料を支払う状況になっていました。

加入していた保険:

  • 終身保険(死亡保障1,000万円):月額3万円
  • 医療保険(入院日額1万円):月額1万5千円
  • がん保険(診断給付金300万円):月額1万2千円
  • 個人年金保険:月額2万円
  • 学資保険:月額3千円

ご主人の年収は500万円、お子さんは中学生と小学生の2人。家計における保険料の割合は実に19%に達していました。

見直し後:

  • 収入保障保険(月額15万円×20年):月額4千円
  • 医療保険(入院日額5千円):月額3千円
  • 個人年金保険は解約してつみたてNISA:月額2万円

月額保険料を2万7千円に削減し、年間約60万円の家計改善を実現しました。

佐藤さんは「どの営業マンも良い人で、断るのが申し訳なくて…」とおっしゃっていましたが、結果的に家計を大幅に圧迫していたのです。

ケース2:適切な断り方を身につけて営業ストレスから解放された会社員の方

29歳の会社員、田中さん(仮名)は、職場に頻繁に訪問してくる保険営業マンに悩んでいました。一度話を聞いてしまったために、その後も継続的にアプローチを受け、業務に支障をきたすほどでした。

私がアドバイスした断り方:

  1. 「業務時間中のため、営業の方とはお会いできません」
  2. 「既に十分な保障があります」
  3. 「今後一切の営業はお断りします」

この3段階の断り方を実践していただいたところ、その後の営業は完全に止まり、田中さんは「仕事に集中できるようになった」と非常に喜ばれていました。

ケース3:知識をつけることで的確な保険選びができるようになった若手夫婦

28歳と26歳のご夫婦、鈴木さん(仮名)ご夫妻は、結婚を機に保険を検討されていましたが、複数の営業マンから全く異なる提案を受けて混乱していました。

**営業マンAの提案:**終身保険中心で月額保険料6万円 **営業マンBの提案:**定期保険+医療保険で月額保険料2万円
**営業マンCの提案:**外貨建て保険で月額保険料4万円

私は、まず鈴木さんご夫妻に保険の基本的な仕組みと必要保障額の計算方法をお教えしました。その結果、ご夫妻自身で以下の判断をされました:

  • 現段階では高額な終身保険は不要
  • 定期保険で必要最小限の保障を確保
  • 医療保険は貯蓄が増えるまでの暫定的な加入
  • 資産形成は保険ではなくつみたてNISAで実行

最終的に月額保険料8千円の保険に加入し、浮いた保険料を投資に回すことで、効率的な資産形成を実現されました。

8-4. 保険営業マンとの適切な関係性について

これまでの経験を通じて、私は保険営業マンとの関係について以下のように考えるようになりました。

営業マンも人間であることを忘れずに

保険営業マンも、家族を養うために必死に働いている一人の人間です。頭ごなしに否定したり、人格を攻撃したりすることは適切ではありません。

ただし、相手が人間だからといって、自分の財産や家計を犠牲にしてまで付き合う必要はありません。礼儀を保ちつつ、毅然とした態度で断ることが重要です。

本当に優秀な営業マンの見分け方

私がこれまで出会った営業マンの中で、本当に顧客のことを考えている優秀な方には、以下のような共通点がありました:

  • 顧客の話を最後まで聞く
  • 不必要な保険は「必要ない」とはっきり言う
  • 複雑な商品よりもシンプルな商品を勧める
  • 社会保障制度について詳しい知識がある
  • 他の金融商品(預金、投資信託等)との比較ができる
  • 契約を急かさない

このような営業マンでしたら、話を聞く価値があるかもしれません。

断ることで得られるメリット

適切に断ることで、以下のようなメリットが得られます:

  • 不必要な保険料の支出を避けられる
  • 営業ストレスから解放される
  • 自分のペースで保険を検討できる
  • 本当に必要な時に適切な判断ができる

短期的には気まずい思いをするかもしれませんが、長期的には大きなメリットがあることを理解していただきたいと思います。

終章:あなたの人生を守るために

最後に伝えたいこと

この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

保険営業マンの勧誘を断ることは、決して悪いことではありません。それは、あなた自身とあなたの家族の財産と幸せを守るための、正当で必要な行為です。

私がファイナンシャルプランナーとして12年間の活動を通じて確信していることは、「保険は必要な分だけ、適切な時期に、適正な価格で加入する」ことの重要性です。

営業マンの都合で決める保険ではなく、あなたの人生設計に基づいた保険選びをしてください。

そして、もし本当に保険が必要になった時は、信頼できる専門家に相談し、納得のいく選択をしてください。

今日から実践できること

この記事を読み終えた今日から、以下のことを実践していただければと思います:

  1. 明確な断りの言葉を準備する 「申し訳ございませんが、保険の勧誘はお断りしております」という言葉を、はっきりと言えるよう練習してみてください。
  2. 家族と対応方針を共有する この記事の内容を家族と共有し、統一した対応を取れるようにしてください。
  3. 現在の保険を見直す 既に加入している保険が本当に必要かどうか、冷静に検討してみてください。
  4. 保険の基礎知識を身につける 保険の仕組みを理解することで、不適切な営業を見抜けるようになります。

私からの約束

私は、このメディアを通じて、保険を含む金融商品について正しい情報をお伝えし続けることをお約束します。

特定の商品を売るためではなく、読者の皆様が適切な判断をできるよう支援することが、私の使命だと考えています。

もし保険についてご質問やご相談がございましたら、いつでもお気軽にお声かけください。営業目的ではなく、純粋にアドバイザーとして、皆様のお役に立てれば幸いです。

あなたの人生が、保険営業の勧誘に振り回されることなく、あなた自身の意思と判断によって、より豊かで安心なものになることを心から願っています。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


この記事は、ファイナンシャルプランナー(CFP・AFP認定)の資格を持つ筆者が、12年間の実務経験と豊富な相談事例に基づいて執筆しました。記載内容は2025年8月時点の法律・制度に基づいており、将来的な法改正等により内容が変更となる可能性があります。個別の事案については、専門家にご相談されることをお勧めします。

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