MENU

フルハシEPOの1Q決算、増益の裏側にある「事業ポートフォリオの強み」とは

投資スタンス: 中立(確信度 65%)

フルハシEPO(9221)の2026年3月期第1四半期決算は、売上高、営業利益ともに前年同期比で大幅な増収増益を達成し、一見すると堅調なスタートを切ったように見える。しかし、その利益成長の大部分は、前年同期に計上された大規模な特別損失(保険解約返戻金の減額)からの反動増に過ぎず、実質的な事業利益の成長は、売上成長率に比べて緩やかなものにとどまっている。特に、主力の「バイオマテリアル事業」は、能登の被災材受け入れや新規顧客獲得により増収を達成したものの、原材料調達単価の上昇と販売価格改定の効果が相殺され、利益率の改善は限定的である。一方、「資源循環事業」は前年同期のセグメント損失から黒字転換を果たしており、住宅着工件数の減少という逆風下で健闘している点は評価できる。通期計画に対する進捗は順調であり、現時点での計画修正はなかった。しかし、マクロ環境の不透明感(住宅着工件数の減少、原材料価格の変動)が継続しており、今後の事業環境を楽観視することはできない。投資家は、事業ポートフォリオのリスク分散と収益性改善の動向を注視する必要がある。

主要カタリストとリスク:

カタリスト

  • 建築基準法改正の影響緩和と住宅着工件数の回復: 住宅着工件数の減少は「資源循環事業」の取扱量に直接影響を与えるため、法改正に伴う混乱が収束し、住宅市場が回復すれば、同事業の業績が加速する。
  • 原材料調達単価の安定化と販売価格への転嫁: 木材チップの原材料調達単価が安定し、カーボンニュートラル需要を背景としたリサイクルチップの販売価格が維持または上昇すれば、利益率が大幅に改善する。
  • 新規事業分野の立ち上げ: 「環境コンサルティングサービス事業」など、成長余地の大きい新規事業が軌道に乗り、収益の柱として育つことで、新たな成長エンジンが生まれる。

リスク

  • 住宅着工件数の継続的な減少: 建築基準法改正の影響が長期化し、住宅市場の低迷が続けば、「資源循環事業」の取扱量が減少し、再び赤字に転落するリスクがある。
  • 原材料価格の再高騰: 輸入燃料価格の変動が落ち着いているとはいえ、ウクライナ・中東情勢などの地政学的リスクにより、再び原材料価格が高騰すれば、利益率が圧迫される。
  • 競争激化による価格競争: リサイクルチップ市場の需要増加に伴い、新規参入や競合他社の攻勢が強まれば、価格競争に陥り、収益性が悪化する可能性がある。

2. 事業概要とビジネスモデルの深掘り

フルハシEPOのビジネスモデルは、大きく「バイオマテリアル事業」、「資源循環事業」、および「その他」事業に分けられる

ビジネスモデルの評価:

  • バイオマテリアル事業: この事業の収益モデルは、主に「木質廃棄物の処理受託(廃棄物処理料)」と「再資源化されたチップの販売(製品・商品売上)」のハイブリッドである。
    • 売上 = (廃棄物処理量 x 処理単価) + (チップ販売量 x チップ販売単価)
    • 強み: 廃棄物の安定的な調達網(建物の解体廃材、使用済み木製パレット等)と、再資源化技術、そしてカーボンニュートラル需要という追い風がある。特に、高品質なリサイクルチップはCO2削減に寄与するため、持続可能なエネルギー利用を推進する企業からの需要が高い。また、能登の被災材受け入れのような社会的貢献活動も、長期的な顧客関係構築に寄与する。
    • 脆弱性: 利益は、廃棄物処理単価、チップ販売単価、そして原材料調達単価の3つの価格要因に大きく左右される。原材料調達先の建築基準法改正による住宅着工件数減少の影響を受けやすい構造も脆弱性と言える。
  • 資源循環事業: 住宅建設で発生する木くずや廃プラスチック等の建設副産物の再資源化が主な事業内容である。
    • 売上 = (建設副産物処理量 x 処理単価)
    • 強み: 営業活動に注力することで、住宅着工件数が減少する逆風下でも、取扱量を確保し、新規顧客を獲得する実行力がある。地域密着型の営業活動も強みと言える。
    • 脆弱性: 住宅市場の動向に業績が強く依存する。直近の住宅着工件数は、前年比で25.6%減と大きく落ち込んでおり、市場環境の悪化が収益を圧迫するリスクは高い。
  • その他(環境物流事業、環境コンサルティングサービス事業等):
    • 環境物流事業: 木製パレット等の物流機器の製造・販売。リユース販売やリメイクによる仕様変更提案が強み。
    • 環境コンサルティングサービス事業: カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに関するコンサルティング。高付加価値サービスであり、将来の収益源として期待される。

競争環境:

直接的な競合他社は開示されていないが、各事業領域で競争が存在すると推測される。

  • バイオマテリアル事業: 大手製紙メーカーやエネルギー企業と取引があることを鑑みると、同業の木質バイオマス燃料供給業者や、木材チップ製造業者と競合していると考えられる。同社の高品質なリサイクルチップは差別化要因となるが、原料調達の安定性や価格競争力で優位性を維持できるかが鍵となる。
  • 資源循環事業: 地域に根差した中小の産業廃棄物処理業者や、大手ゼネコン系の処理会社など、多数の競合が存在すると考えられる。同社の強みは、幅広い建設副産物に対応できること、そして地域密着型の営業活動による顧客基盤の構築である。
  • その他(環境コンサルティングサービス): 大手コンサルティングファームや専門の環境コンサルティング会社が競合となる。この分野では、専門知識、実績、ブランド力が重要であり、同社がどのように差別化を図っていくかが注目される。

3. 【最重要】業績ハイライトと徹底的な財務分析

P/L分析:

項目2026年3月期1Q2025年3月期1Q前年同期比(百万円)前年同期比(%)
売上高2,4962,224+272+12.2%
営業利益281218+63+28.7%
経常利益2875.4+281.6+433.7%
四半期純利益174Δ3.0+177
  • 売上高: 2,496百万円で、前年同期比12.2%の増収を達成。これは主に「バイオマテリアル事業」と「資源循環事業」の増収によるものである。
  • 営業利益: 281百万円で、前年同期比28.7%の増益。売上総利益の増加が主な要因。
  • 経常利益: 287百万円で、前年同期比433.7%の大幅な増益を記録。これは前年同期に営業外収益として計上された保険解約返戻金が225,481千円から32,949千円へ大幅に減少したこと、および、前年同期に経常利益を圧迫した要因が解消されたことによる。
  • 四半期純利益: 174百万円で、前年同期の△3.0百万円の赤字から黒字転換。経常利益の大幅増益が寄与した。

営業利益のブリッジ分析:

前年同期営業利益: 218百万円

  1. 売上数量/ミックス変動:
    • 売上高増: 2,496百万円 – 2,224百万円 = +272百万円
    • 売上原価増: 1,375百万円 – 1,232百万円 = +143百万円
    • 売上総利益増: 1,121百万円 – 991百万円 = +130百万円
    • 売上総利益の増加は、主に「バイオマテリアル事業」における生産量増加や「資源循環事業」の取扱数量増加によるものと考えられる。
  2. 価格/原価率変動:
    • 粗利率: 当期 44.9% (1,121/2,496)vs. 前期 44.6% (991/2,224)。粗利率はわずかに改善。
    • 「バイオマテリアル事業」では、2025年1月の調達単価改定効果により売上増加に寄与したが、原材料調達単価の上昇と相殺された可能性があり、利益率への貢献は限定的だったと推察される。
  3. 販管費変動:
    • 販管費増: 840百万円 – 772百万円 = +68百万円
    • 売上増加に伴う変動費の増加に加え、積極的な事業活動推進に伴う費用が増加したと推測される。

当期営業利益: 218百万円(前期) + 130百万円(売上総利益増) – 68百万円(販管費増) = 280百万円

  • 上記計算値は開示された営業利益281百万円とほぼ一致しており、利益増加の主因は売上総利益の増加、特に売上高の増加によるものであることがわかる。

B/S分析:

項目2026年3月期1Q末2025年3月期末増減(千円)
総資産12,553,33012,169,338+383,992
総負債6,953,3136,577,605+375,708
純資産5,600,0175,591,732+8,284
自己資本比率44.6%45.9%△1.3pt
  • 総資産: 前連結会計年度末から383,992千円増加。主な要因は、名古屋工場等の建設を進めていることによる建設仮勘定の増加(447,467千円増)と、リース資産の増加(55,838千円増)である。これは将来の事業拡大に向けた積極的な投資姿勢を示している。
  • 総負債: 375,708千円増加。流動負債が477,609千円増加しており、その主な要因は短期借入金の増加(200,000千円増)と未払金の増加(308,240千円増)である。これは、固定資産投資(工場建設)に伴う資金調達の一環であると考えられる。
  • 純資産: 8,284千円増加。親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により、利益剰余金が12,174千円増加したことが主因。
  • 自己資本比率: 44.6%と前連結会計年度末の45.9%からわずかに低下。負債の増加が純資産の増加を上回ったためであるが、財務の健全性は依然として高い水準にある。

運転資本の分析 (CCC):

開示情報から、売上債権回転日数(DSO)、棚卸資産回転日数(DIO)、仕入債務回転日数(DPO)を算出する。

  • DSO: 売上債権回転日数 = (受取手形、売掛金及び契約資産 / 売上高) x 365
    • 2026年3月期1Q末: (1,042,084千円 / 2,496,978千円) x 90日 = 37.5日
    • 2025年3月期末: (1,097,670千円 / 10,322百万円) x 365日 = 38.8日
  • DIO: 棚卸資産回転日数 = ((商品及び製品 + 仕掛品 + 原材料及び貯蔵品) / 売上原価) x 365
    • 2026年3月期1Q末: ((47,267 + 106,202 + 34,112)千円 / 1,375,198千円) x 90日 = 12.2日
    • 2025年3月期末: ((59,670 + 118,854 + 29,818)千円 / 5,160百万円) x 365日 = 14.8日
  • DPO: 仕入債務回転日数 = (支払手形及び買掛金 / 売上原価) x 365
    • 2026年3月期1Q末: (161,563千円 / 1,375,198千円) x 90日 = 10.5日
    • 2025年3月期末: (138,621千円 / 5,160百万円) x 365日 = 9.8日
  • CCC: キャッシュ・コンバージョン・サイクル = DSO + DIO – DPO
    • 2026年3月期1Q末: 37.5日 + 12.2日 – 10.5日 = 39.2日
    • 2025年3月期末: 38.8日 + 14.8日 – 9.8日 = 43.8日

CCCは39.2日と前連結会計年度末の43.8日から短縮しており、キャッシュ創出力が改善している。これは、売上債権と棚卸資産の回転日数が改善した一方で、仕入債務の支払い日数がわずかに増加したことによる。特に、在庫回転日数の改善は、効率的な在庫管理、または需要増による在庫消化の加速を示唆しており、在庫の陳腐化リスクが低下していると評価できる。

キャッシュフロー(C/F)分析:

  • 当第1四半期連結累計期間に係るキャッシュ・フロー計算書は作成されていない。そのため、詳細な分析は困難だが、貸借対照表の変動から推測する。
  • 営業活動によるキャッシュフローは、純利益がプラスであり、売上債権や棚卸資産の回転日数が改善していることから、プラスである可能性が高い。
  • 投資活動によるキャッシュフローは、建設仮勘定の増加(447,467千円)から、積極的に投資を行っているため、マイナスであると推測される。
  • 財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の増加(200,000千円)と長期借入金の減少(146,067千円)があり、ネットではプラスとなる可能性が高い。

資本効率性の評価:

  • ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト):
    • 開示された情報だけでは、ROICとWACCの正確な算出は困難である。しかし、B/Sの総資産が増加し、特に有形固定資産への投資が増加していることから、投下資本は増加傾向にある。一方で、営業利益も増加している。現時点では、ROIC > WACCの関係が維持されていると推測されるが、今後の大規模投資が適切に収益に繋がるかどうかが、企業価値創造の鍵となる。
  • ROE(自己資本利益率)のデュポン分解:
    • ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
    • 当期(1Q)のROEを分解すると、純利益率(174百万円 / 2,496百万円 = 7.0%)は前年同期の赤字から大幅に改善している。
    • 財務レバレッジは、総資産が増加する一方で、純資産の伸びが緩やかなため、わずかに上昇している。
    • この結果、ROEは前年同期から大幅に改善していると評価できるが、利益の大部分が特別要因によるものであるため、その質には注意が必要である。

4. 【核心】セグメント情報の徹底解剖

セグメント売上高(千円)前年同期比(%)利益(千円)前年同期比(%)
バイオマテリアル事業1,827,489113.7% 261,332111.3%
資源循環事業408,327108.3% 23,810黒字転換
その他事業369,214102.6% 2,542黒字転換

Google スプレッドシートにエクスポート

  • バイオマテリアル事業:
    • 売上高は前年同期比13.7%増と、全社売上を牽引する主力の成長ドライバーである。
    • 要因は、能登の被災材受け入れ継続や新規顧客獲得による原料調達数量の増加、そして昨年10月に開設した愛知第八工場の順調な稼働である。調達単価の改定効果も売上増加に寄与している。
    • しかし、セグメント利益の伸び率(11.3%)は売上高の伸び率(13.7%)を下回っており、利益率が若干悪化している。これは、原材料調達単価の上昇を販売価格に十分に転嫁しきれていないか、あるいは生産コストが増加している可能性を示唆する。今後の利益率改善が課題となる。
  • 資源循環事業:
    • 売上高は前年同期比8.3%増。住宅着工件数が前年比25.6%減という厳しい市場環境下で、この増収は非常に評価できる。
    • 要因は、エリア展開強化や地域密着型の営業活動に注力した結果、取扱数量が前年同期比18.2%増となったことである。
    • 最も注目すべきは、前年同期の1,429千円のセグメント損失から、23,810千円の利益へと黒字転換したことである。これは、営業活動の強化がコスト構造の改善にも繋がり、事業の収益性が大幅に向上したことを意味する。
  • その他事業:
    • 売上高は前年同期比2.6%増と緩やかな成長。
    • セグメント利益は、前年同期の5,982千円の損失から2,542千円の利益へと黒字転換した。これは、不要物流機器の買取案件を多数実施し、リユース・リニューアルサービスに注力した「環境物流事業」の取り組みが奏功した可能性が高い。

ポートフォリオ・マネジメントの評価:

  • フルハシEPOの事業ポートフォリオは、主力である「バイオマテリアル事業」が順調に成長を牽引する一方で、マクロ環境の影響を受けやすい「資源循環事業」が補完的な役割を果たしている。
  • 「資源循環事業」が住宅着工件数の減少という逆風下で黒字転換できたことは、経営陣の営業戦略と実行力が機能している証拠であり、ポートフォリオのリスク分散が一定程度成功していると評価できる。
  • 「環境コンサルティングサービス事業」は、まだ規模は小さいものの、高付加価値なサービスとして将来の成長エンジンになり得る。経営陣は、既存事業の安定的な成長を確保しつつ、新たな収益の柱を育てるというバランスの取れた戦略を遂行している。

5. 経営計画の進捗と経営陣の評価

  • 通期計画との比較:
    • 会社が掲げる通期計画(予想)は、売上高10,322百万円、営業利益1,303百万円、経常利益1,335百万円である。
    • 第1四半期の実績は、売上高2,496百万円(進捗率 24.2%)、営業利益281百万円(進捗率 21.6%)。
    • 売上高の進捗率は順調だが、営業利益の進捗率は売上高のそれに比べてわずかに遅れている。これは、利益率の改善が限定的であることの裏返しである。
    • 会社は「直近に公表されている業績予想からの修正の有無: 無」と明記しており、現時点では通期計画を達成可能と判断している。
  • 経営陣の需要予測能力と実行力:
    • 「資源循環事業」において、住宅着工件数が前年比25.6%減となる厳しい市況を予測し、新規顧客獲得やシェア拡大に注力する営業戦略を打ち出したことは、需要予測能力とそれに基づく実行力が高いことを示している。その結果、逆境下でも増収増益を達成できたことは、経営陣の判断が妥当であったことの証明である。
    • 通期計画を修正しなかった経営判断は、第1四半期の実績が計画の範囲内であり、今後の事業環境を総合的に判断した結果として妥当である。ただし、下期にかけての原材料調達環境や住宅市場の動向には不透明感が残るため、継続的なモニタリングが必要である。

6. 将来シナリオと株価のカタリスト/リスク

強気シナリオ:

  • 前提条件:
    • 建築基準法改正に伴う混乱が早期に収束し、住宅着工件数がV字回復する。
    • 原材料調達価格が安定し、高品質なリサイクルチップの販売価格が上昇する。
    • 新規事業である環境コンサルティングサービスが本格的に収益貢献を開始する。
  • 業績予測:
    • 売上高: 10,800百万円〜11,500百万円
    • 営業利益: 1,400百万円〜1,550百万円

基本シナリオ:

  • 前提条件:
    • 住宅着工件数の減少は緩やかに回復するものの、劇的な改善は見られない。
    • 原材料調達価格と販売価格は現状維持で推移する。
    • 既存事業の効率化と新規顧客獲得により、堅調な成長を継続する。
  • 業績予測:
    • 売上高: 10,300百万円〜10,800百万円
    • 営業利益: 1,300百万円〜1,400百万円

弱気シナリオ:

  • 前提条件:
    • 住宅着工件数の減少が長期化し、「資源循環事業」の取扱量が減少する。
    • ウクライナ・中東情勢の悪化などにより、原材料価格が再高騰する。
    • 競争激化により、リサイクルチップの販売価格が下落する。
  • 業績予測:
    • 売上高: 9,800百万円〜10,300百万円
    • 営業利益: 1,100百万円〜1,250百万円

7. バリュエーション(企業価値評価)

  • 相対評価法:
    • フルハシEPOのPERは、現在の株価と通期予想EPS(78.22円)から算出すべきである。現時点での正確なPERは株価に依存するが、同業他社(例:産業廃棄物処理、リサイクル関連企業)と比較し、同社の成長性、事業ポートフォリオ、財務健全性を加味して評価すべきである。
    • 同社の事業は安定した基盤(バイオマテリアル事業)と成長性(環境コンサルティングサービス)を併せ持っており、また財務体質も健全である。そのため、同業他社の平均PERに対して、わずかなプレミアムを付けて評価されるべきだと考える。
  • 絶対評価法:
    • 簡易的なDCF法を用いる場合、WACCは同社の資本構成(負債比率、自己資本比率)と株価のベータ値、市場リスクプレミアムなどから算出する必要がある。
    • 永久成長率(g)は、日本のGDP成長率や同社の事業規模を考慮し、1%〜2%程度と仮定するのが妥当だろう。
    • 現状の積極的な投資(名古屋工場等の建設)が将来のフリーキャッシュフローを増加させるという前提に立てば、DCF法による理論株価は現在の株価を上回る可能性を秘めている。

8. 総括と投資家への提言

フルハシEPOの2026年3月期第1四半期決算は、堅調な増収増益を達成し、特に逆風下の「資源循環事業」の黒字転換は評価に値する。しかし、利益成長の大部分は前年同期の特殊要因によるものであり、本質的な収益性の改善は限定的である。経営陣の戦略的判断と実行力は高く評価できるものの、住宅市場の低迷や原材料価格の変動といった外部環境リスクは依然として存在する。

投資スタンス: 中立

  • 短期的には、通期計画に対する進捗は順調であり、大きなサプライズはないだろう。株価は、今後の事業環境の不透明感から、しばらくはボックス圏での推移が続くと予想される。
  • 長期的な成長ポテンシャルはあるが、それを実現するためには、名古屋工場などの新規投資が計画通りに収益に貢献し、また、環境コンサルティングサービス事業が新たな収益源として確立される必要がある。

今後の監視ポイント:

  • 資源循環事業の動向: 住宅着工件数の発表を注視し、同事業の取扱量と利益率が安定的に推移するかを確認する。
  • 原材料コストと価格転嫁: 「バイオマテリアル事業」における原材料調達単価の動向と、販売価格への転嫁状況を、粗利率の推移から判断する。
  • 新規投資の効果: 建設中の新工場(名古屋工場等)が稼働を開始し、それがどれだけ売上・利益に貢献するかを次期以降の決算で確認する。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次