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【2026年2月期1Q】あさひ〈3333〉決算分析|電動アシスト好調で“筋肉質化”進む自転車株

目次

1. 会社概要とビジネスモデル

  • 東証プライム上場、国内最大の自転車専門チェーン「サイクルベースあさひ」を直営+FCで547店展開(1Q末)。
  • SPA × OMO:自社企画商品(粗利高)、EC・店舗一体運営でLTV最大化。

Expert Insight

都市型小型店を「EC受取ハブ」兼「修理拠点」に据える戦略は、アフターサービス収益を伸ばしながら物流費を圧縮できるのがミソ。業界平均がECと実店舗を個別最適で回しているのに対し、あさひは 「お客様導線ごとに原価を最適化」 しており、中期的に粗利率を2〜3pt底上げできる構造を持つ。


2. 1Q決算ハイライト

1Q FY251Q FY26YoYCheck Point
売上高269.3億円271.0億円+0.6%電動アシスト構成31.3%へ上昇
営業利益36.7億円32.7億円▲10.8%賃上げ・DX投資で販管費率+1.2pt
営業利益率13.6%12.1%▲1.5pt依然として同業平均(7〜8%)超
上期計画進捗72%例年より高い前倒し進捗

Expert Insight

減益の主因は「費用先行」だが、粗利率45%台を維持したまま物流・人件費を吸収している点に注目。1QでDX関連費用の約4分の1を計上済みで、2Q以降は費用増加ペースが鈍化する可能性が高い。結果として通期ガイダンス(営業利益+2.4%)の上振れ余地が見える。


3. PL:数字の裏側を読む

3.1 販管費ブレイクダウン

費目YoY増減要因
人件費+1.9%2期連続ベースアップ+店舗スタッフ教育強化
運送保管料+10.2%EC比率上昇による配送量増加
減価償却費+14.5%基幹システム稼働によるランニングコスト増

Expert Insight

運送保管料の“膨張”はネガティブに映るが、売上1円あたりの配送コストは前年並みに抑制。基幹システム投資も**在庫回転日数の短縮(▲13.7億円)**を生み、キャッシュ創出力向上へ寄与している。


4. BS/CF:財務健全性を検証

  • ネットキャッシュ企業:有利子負債ゼロ、現金等136億円(+36.5億円)。
  • 商品在庫▲13.7億円で3期ぶり減少、在庫回転日数を約8日短縮。
  • 自己資本比率70.8%で依然安全域。

Expert Insight

家計向け耐久財セクターは景気後退局面で在庫がキャッシュを食い尽くすリスクが高いが、あさひは「ICT化+リユース拡販」で在庫を圧縮。ネットキャッシュを厚く保ち、不況局面での攻め(M&A・出店加速)オプションを確保している。


5. 業界トレンドとポジショニング

  1. エレクトリックシフト:電動アシスト台数はJEMA統計で年+9.4%。あさひの電動売上は+8.6%で市場並みを確保。
  2. メンテナンス志向:買替サイクル長期化 → 購入後サービス市場(粗利率50%超)が拡大。
  3. OMO深耕:EC化率19.1%は業界トップクラス、公式アプリDL+12%でCRM基盤強化。

Expert Insight

自転車小売は**「製品売り切り型」から「サブスク・サービス型」へ転換期。あさひは全国修理ネットワークと中古買取を抑え、“二次流通+定期交換パーツ”でサブスクに近い継続課金モデル**を構築しつつある。


6. 中期計画「VISION 2025」進捗

KPI目標1Q実績評価コメント
EC化率16.9%19.1%目標超過達成、物流稼働率80%へ上昇
都市型小型店年+4店+1店ハブ網12→15店ペースは射程圏
リユース整備能力+25%西日本SC稼働商品化リードタイム▲20%
DX/物流投資実行35億円26%消化進捗前倒しで来期費用減に寄与

Expert Insight

OMO完成度が高まるほど既存店の坪効率が改善し、新規出店の投資回収期間が短くなる(都市型店は従来6.5年→5年弱へ)。これはROICを中期で+1.5pt押し上げる潜在力を持つ。


7. バリュエーションとシナリオ分析

シナリオEPS(円)PER想定株価レンジ(円)ドライバー
Base14015倍2,100ガイダンス通り、利益+2.6%
Bull15017倍2,550EC25%、営業利益率7%回復
Bear12513倍1,625電動需要鈍化+販管費高止まり

Expert Insight

現在株価が想定レンジ下限に近い場合、“EC KPI”と“販管費率”が月次で改善確認できればリレーティング余地が大きい。逆に原油高・円高局面で値下げ圧力が強まると粗利率が2pt縮小するシナリオがBearケース。


8. リスクとチェックポイント

発生確率影響度リスクモニタリング指標
円高 ⇒ 売価下落圧力四半期粗利率、為替感応度▲0.7pt/10円
賃上げトレンド長期化売上高人件費率(現15.5%)
バッテリー火災など安全事故BAA適合率・自主回収件数

Expert Insight

“安全リスク”はブランド毀損に直結。決算説明資料13ページの「安全サポート月間」施策のように、自主点検をリコール前に仕掛ける姿勢がESG・IR双方で評価されやすい。


9. まとめ

  1. 費用先行の減益は織り込み済みで、上期進捗72%とむしろ前倒し。
  2. EC・サービス収益化が進み、**「利益成長の二段ロケット」**発射準備完了。
  3. 投資判断の鍵は、粗利率の死守と人件費生産性の向上——この2指標を四半期ごとにチェックしたい。

DYOR(Do Your Own Research) — 市場の潮目を見極めるのは、常にあなた自身です。

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