目次
1. ハローズとは?—地域密着スーパーのビジネスモデル
- 中四国を中心に 24 時間営業+ミッドサイズ店舗を展開。
- 長期ビジョン「西日本 5000 億円構想」:250 店舗・売上 5,000 億円(29/2 期目標)。
- 中計「瀬戸内 2814 計画」:140 店舗・売上 2,800 億円・営業利益率 5%台維持(30/2 期目標)。
専門家の視点
競合が強い関東・関西を避け、ドミナント出店で物流・広告効率を極限まで高める「ローコスト・オペレーター」。24h 営業のコストは高いが深夜帯売上 5〜6%で固定費を薄める構造が特徴です。
2. 1Q 決算ハイライトと専門家の第一印象
指標 | 1Q 実績 | YoY | プロ目線での評価 |
---|---|---|---|
営業収益 | 539.9 億円 | +8.6% | 物価高+新店 2 店フル寄与で想定線。数量ではなく単価主導 |
営業利益 | 30.5 億円 | +3.3% | 粗利悪化を SG&A で吸収。利益成長は“薄氷” |
営業利益率 | 5.64% | ▲0.29pt | 5%台キープだが盛夏の電力費上振れが今後の焦点 |
EPS | 99.65 円 | +3.8% | 期末 401 円ガイダンス達成へ“順当な滑り出し” |
第一印象まとめ
「売上は強いが質に陰り」。粗利率悪化が長期化すれば EPS 成長は鈍化。次のドライバーは PB 利益貢献と物流最適化に絞られる。
3. 数字の真意を読み解く 3 つのレンズ
3‑1. ストアネットワーク:既存店は真に伸びているか
店舗数 | 年換算売上/店 | YoY | |
---|---|---|---|
2025/2 期末 | 105 店 | 19.2 億円 | — |
2026/1Q 期末 | 107 店 | 19.9 億円 (推定) | +3.6% |
専門家の解釈
- 既存店伸長は「客単価>客数」。インフレが落ち着けば失速リスク。
- セルフレジ化率 55%:人件費抑制に効き始めるのは 2H 以降。
- 地理的限界:岡山・広島のストア密度が高く飽和シグナルも。今後の成長は四国・兵庫の深耕次第。
3‑2. 粗利率低下の背景:PB 強化は「毒か薬か」
要因 | 粗利インパクト | コメント |
---|---|---|
冷凍 PB「Hello’s Fresh」導入 | ▲0.10pt | 初期販促で値引き圧力 |
生活防衛チラシ比率増 | ▲0.25pt | “客数維持のコスト”が顕在化 |
NB 原材料高+円安 | ▲0.25pt | 価格転嫁しきれず |
専門家の解釈
短期的には痛み、長期的には妙味。PB 比率が 25% に達すれば “値入れ率+2〜3pt” の余地。痛み止めとして物流コスト削減を同時進行させる必要があります。
3‑3. 販管費コントロール:人件費・電力費に勝てるか
費目 | YoY | 専門家コメント |
---|---|---|
人件費 | +9.8% | ベア実施でコスト上振れ。生産性改善が遅れれば EBIT マージン圧迫 |
電力費 | ▲7.0% | 燃料調整単価下落+ LED 化率 74% が奏功 |
減価償却費 | +7.0% | セルフレジ・自動発注投資増。初年度は費用先行 |
考察
- 24h 営業モデルは深夜帯停止で電力費を削れるが、差別化が消える葛藤。
- 自動発注で**残業▲12%**は定量的成果。労務コストは 2H に減速可能。
4. 財務体質:実はキャッシュが膨らんでいる理由
2025/2 期末 | 2026/1Q 期末 | コメント | |
---|---|---|---|
現金 & 預金 | 138.5 億円 | 228.9 億円 | 買掛金繰延 107 億円による“瞬間風速” |
有利子負債 | 102.7 億円 | 93.9 億円 | 設備投資自己資金化で減少 |
Net D/E | 0.13 倍 | 0.09 倍 | 超低レバレッジ=自社株買い余力大 |
専門家の解釈
手元資金の増加は一過性。ただしネットキャッシュ企業ゆえ、株主還元の強化は時間の問題。CAPEX ピークが過ぎれば D/E 低下→還元フェーズへ。
5. 中長期計画を評価する 3 つの論点
KPI | 目標 (30/2) | 進捗 | 論点 |
---|---|---|---|
売上高 | 2,800 億円 | 80% | 出店ペース維持 vs 人口減 |
店舗数 | 140 店 | 107 店 | 新規立地余地は? |
EBIT マージン | 5% 台 | 5.6% | 粗利 < SG&A バランス維持 |
専門家の視点
- 出店余地:中四国は可住地比で飽和。兵庫・山口シフトが鍵。
- 労務プール:24h 方式は最低賃金上昇と対立。自動発注で**ピーク要員▲12%**がどこまで広がるか。
- 新 DC(27 年稼働):会社試算 粗利+0.2pt ⇒ 成功すればPER 1 回転の re‑ratingも視野。
6. バリュエーション比較とシナリオ分析
PER | PBR | EV/EBITDA | モデルシナリオ & 目標株価* | |
---|---|---|---|---|
ハローズ | 13.2x | 1.3x | 7.1x | ベース:2,800 円 |
ライフ | 14.8x | 1.4x | 7.6x | — |
トライアル HD | 16.5x | 2.0x | 8.9x | — |
*DCF ベース、WACC 6.0%、中期計画達成前提
専門家コメント
- ディスカウント要因:成長率 3% 台、エリア分散リスク。
- アップサイド:PB 比率 25% → EBIT+15 億円 ⇒ PER 15x なら株価 3,200 円。
- ダウンサイド:人件費再高騰で EBIT▲20 億円 ⇒ PER 11x、株価 2,200 円。
7. 投資家視点での 6 つのウォッチポイント
- 月次 PB シェア:公式 IR で開示。右肩上がりならブルシナリオ強化
- 客数 × 客単価:特に 日配・惣菜の単価 が早期に下落するか
- 新 DC 建設進捗:CAPEX 増加 vs スケジュール遅延リスク
- 電力・原材料相場:ダブルインフレ再来で粗利+ SG&A を直撃
- 競合の 24h 戦略:イズミ・フジが本格参入なら“深夜プレミアム”剥落
- 株主還元ポリシー:自社株買い or 増配タイミング
8. まとめ & FAQ
要約:ハローズは「インフレ勝ち組」から「ニュートラル優等生」へ移行中。物流最適化+ PB 拡大が成功すれば EBIT マージンの 5% 台死守も可能。粗利率が底打ちするかが今後 3 四半期の最大焦点。
FAQ
Q1. 粗利率が再反転するシグナルは?
A. PB シェアが月次 20% を超え、NB 値上げが一巡する 2026/3Q が分水嶺と見ています。
Q2. 今期ガイダンスに対するリスクは?
A. 最大リスクは人件費再高騰(賃上げ第 2 波)。次点は天候要因での電力費反騰。