決算ハイライト
スター・マイカ・ホールディングス(2975)が2025年6月30日に発表した2025年11月期第2四半期(中間期)決算は、売上高・利益ともQ2累計で過去最高を更新する極めて好調な内容となりました。
主要業績サマリー
項目 | FY25 Q2累計実績 | FY24 Q2累計実績 | 前年同期比 | 通期予想進捗率 |
---|---|---|---|---|
売上高 | 337.2億円 | 272.5億円 | +23.7% | 52.6% |
営業利益 | 40.1億円 | 28.7億円 | +39.7% | 63.8% |
経常利益 | 35.4億円 | 24.1億円 | +46.9% | 71.3% |
当期純利益 | 24.3億円 | 16.6億円 | +46.4% | 70.6% |
注目ポイント:
- 全ての利益項目で40%前後の大幅増益を達成
- 通期予想に対する進捗率が営業利益63.8%、当期純利益70.6%と前倒しで目標を上回るペース
- 中期経営計画期間に入り、株価は約70%上昇
業績分析:全項目で2桁成長
1. 売上高:337.2億円(+23.7%)
売上高は前年同期比23.7%増の337.2億円となり、Q2累計では過去最高を記録しました。この成長の背景には:
- 販売戸数の大幅増加:オーナーチェンジ物件の販売戸数が約2倍に増加
- 高価格帯物件の販売増:都市部集中戦略により単価の高い物件の販売が拡大
- 出口戦略の多角化:ファンド化推進によりOC(オーナーチェンジ)物件の回転効率が向上
2. 営業利益:40.1億円(+39.7%)
営業利益は前年同期比39.7%増の40.1億円と、売上高成長率を大きく上回る増益率を実現しました。
増益要因分析:
- OCリノベ事業:積極的な販売活動により+5.2億円の増益効果
- OCその他事業:出口戦略多角化により+3.8億円の増益効果
- 空室リノベ事業:高価格帯物件への取り組み深耕により+3.1億円の増益効果
- 販管費抑制:消費税負担減により+2.5億円のコスト削減効果
3. 利益率の改善傾向
利益率指標 | FY25 Q2累計 | FY24 Q2累計 | 改善幅 |
---|---|---|---|
売上総利益率 | 18.3% | 18.5% | △0.2pt |
営業利益率 | 11.9% | 10.5% | +1.4pt |
経常利益率 | 10.5% | 8.8% | +1.7pt |
営業利益率・経常利益率の大幅改善により、収益性の向上が確認できます。
セグメント別詳細分析
リノベマンション事業(売買):成長エンジンが本格稼働
業績ハイライト:
- 売上高:304.9億円(前年同期比+30.1%)
- 売上総利益:44.2億円(前年同期比+44.9%)
- 売上総利益率:14.5%(前年同期13.0%から+1.5pt改善)
成長要因の詳細分析:
1. オーナーチェンジ物件への回帰戦略が奏功
物件タイプ | 販売戸数 | 前年同期比 | 平均販売価格 | 総利益率 |
---|---|---|---|---|
OCリノベ | 236戸 | +32.6% | 35.0百万円 | 21.8% |
空室リノベ | 365戸 | △14.1% | 41.0百万円 | 10.3% |
- OCリノベ物件:販売戸数大幅増により売上総利益が+17.9億円に拡大
- 空室リノベ物件:戸数は減少も高価格帯シフトにより平均販売価格が15.8%上昇
2. 都市部集中戦略の成果
- 都市部での購入戸数比率:70%(前年同期68.8%から向上)
- 都市部物件の優位性:
- 戸あたり粗利が非都市部の1.6倍
- 粗利率が**+3.2pt**高い
- 販売期間が21日短縮
リノベマンション事業(賃貸):安定収益源として機能
業績ハイライト:
- 売上高:23.5億円(前年同期比+3.5%)
- 売上総利益:12.1億円(前年同期比△2.4%)
- 売上総利益率:51.5%(前年同期54.6%から△3.1pt)
分析コメント: 長期保有物件に対する減価償却実施により利益率は低下したものの、50%超の高い利益率を維持。安定的なストック収益として機能しています。
財務健全性の向上
バランスシート分析
項目 | FY25 Q2末 | FY24期末 | 増減 |
---|---|---|---|
総資産 | 1,122億円 | 1,027億円 | +95億円 |
現金及び預金 | 34億円 | 19億円 | +15億円 |
販売用不動産 | 1,030億円 | 958億円 | +72億円 |
自己資本 | 285億円 | 254億円 | +31億円 |
自己資本比率 | 25.4% | 24.8% | +0.6pt |
注目すべき改善ポイント
1. 現金ポジションの大幅改善
現金及び預金が78.9%増加し、流動性リスクが大幅に軽減されました。
2. 自己資本比率の着実な改善
約7億円の第三者割当増資(DBJとの資本業務提携)により、25%超の水準まで改善。中期経営計画の目標である25.0%+を前倒しで達成しました。
3. 中計目標を前倒し達成
販売用不動産残高が1,030億円となり、中期経営計画目標の1,000億円を前倒しで突破しました。
中期経営計画の進捗状況
事業戦略:各KPIが順調に推移
1. オーナーチェンジ物件への回帰
- 購入戸数比率:53%(通期計画51%を上回る)
- 販売戸数比率:58%(通期計画53%を上回る)
2. 販売事業期間短縮(規律ある在庫管理)
- 商品化日数:89日(短縮傾向継続)
- 販売日数:109日(データとロジック重視の在庫管理が奏功)
3. OC回転期間の短縮
出口戦略多角化により販売戸数・売上高が大幅増加し、回転効率が向上しています。
財務戦略:成長投資と財務規律の両立
1. 積極的な成長投資
Q2累計の物件投資額は約334億円と、年間目安(500~550億円)に対しハイペースで進捗しています。
2. 資金調達手段の多様化
- DBJとの資本業務提携:約7億円の増資により財務基盤を強化
- 流動化ファンド組成:116戸の信託受益権を24億円で譲渡し、BS回転効率を向上
3. 株主還元の充実
- DPS予想:30.0円(期初予想26.0円から増額)
- 自己株式取得:3億円実施中
- 総還元性向:40%の目標を維持
IR戦略:投資家との対話強化
- 国内機関投資家との1on1面談数:倍増
- 欧州ロードショー:イギリス、オーストリアで計9件の面談実施
- 個人投資家向けセミナー:3件登壇
株価動向と投資家の評価
株価パフォーマンス分析
中期経営計画発表以降の株価推移:
- 2023年11月30日:607円
- 2025年5月30日:1,033円
- 上昇率:70%
相対パフォーマンス(2025年):
- スター・マイカHD:+70%
- TOPIX:+18%
- 不動産セクター平均:+32%
評価向上の背景
1. PBR要素分解による分析
- PBR:1.2倍(1.0倍を上回る水準)
- ROE:13.0%(セクター平均を上回る)
- PER:10.0倍(セクター平均14.3倍を下回り割安)
2. NAVベースでの評価余地
- 現在株価:1,033円
- P/NAV 1.0倍ライン:約1,400円(FY25期末推計値)
- 評価向上余地:約35%
今後の展望と投資判断
FY25通期業績予想の確度
通期予想(変更なし):
- 売上高:640.6億円(YoY +14.7%)
- 営業利益:62.9億円(YoY +14.0%)
- 当期純利益:34.4億円(YoY +10.8%)
達成可能性評価: Q2時点での好調な進捗を踏まえると、通期目標の達成確度は極めて高いと判断されます。特に利益項目では既に70%近い進捗を示しており、上方修正の可能性も示唆されます。
H2(下半期)の戦略ポイント
1. 購入戦略:FY26以降への布石
- 来期以降の成長を見据えた積極的な物件購入
- 都市部のオーナーチェンジ物件中心の基本戦略継続
- 購入価格上昇に伴うコスト増加を想定済み
2. 販売戦略:高単価物件の積極展開
- 都市部の高価格帯物件を積極的に販売
- 新たな流動化ファンド組成を検討中
中長期的な成長ドライバー
1. 市場環境の追い風
- 中古マンション市場の活況継続
- 足元の成約戸数は前年同月比で増加傾向
- 金利上昇の影響は限定的
2. 競争優位性の拡大
- 年間約5万戸の物件情報を収集する情報ネットワーク
- 累計13,000件超の販売実績に基づく長期借入の実現
- 約100名の内製化体制による効率的オペレーション
投資判断とターゲット価格
投資判断:Buy(強気)
根拠:
- 業績の持続的成長:Q2で過去最高益更新、通期目標の前倒し達成ペース
- 財務健全性の改善:自己資本比率25%超、現金ポジション大幅改善
- 株価の割安感:PER 10倍、NAVベースで35%の上昇余地
- 中期経営計画の順調な進捗:各戦略KPIが計画を上回るペース
ターゲット価格:1,400円 (P/NAV 1.0倍ベース、現在株価から約35%上昇)
リスク要因:
- 金利上昇による住宅需要への影響
- 物件購入価格の継続的上昇
- 競合他社との仕入れ競争激化
まとめ
スター・マイカHDの2025年11月期第2四半期決算は、全ての期待を上回る非常に優秀な内容でした。特に注目すべきは:
- 40%近い営業増益率という驚異的な収益性向上
- 中期経営計画の前倒し進捗による成長戦略の確実な実行
- NAVベースで35%の評価向上余地という株価の割安感
中古マンションリノベーション市場のパイオニアとして確立した競争優位性と、データ・ロジック重視の効率的な事業運営により、持続的な成長軌道を描いています。
現在の株価水準は、同社の事業価値を十分に反映していない可能性が高く、中長期的な投資妙味は極めて高いと評価できます。
本記事は2025年6月30日発表の決算資料を基に作成しています。投資判断は自己責任でお願いいたします。