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厚生年金加入最低年数ガイド:転職時の影響と受給資格期間の全解説

多くの方が、老後の生活に関して老齢基礎年金のみでは不安を感じており、厚生年金を受給できるかどうかについても心配しています。この記事では、そうした方々へ向けて、厚生年金の基本的な仕組みと、その受給条件となる加入期間について、丁寧に解説を進めていきます。

まず、厚生年金を受給するために必要な加入期間についてですが、基本的には1か月以上の加入があれば条件を満たすことになります。しかし、ここで注意が必要です。国民年金としての老齢基礎年金の受給資格期間が10年未満であると、残念ながら基礎年金も厚生年金も受け取ることができません。

多くの方が疑問に思う「自分は厚生年金を受け取れるのだろうか?」という問いに対して、公的年金制度は2階建ての構造をしており、1階部分にあたる「国民年金」からは老齢基礎年金を受け取ることができ、その額は満額で年間約78万円です。さらに、2階部分の「厚生年金」からは老齢厚生年金を受け取ることができ、これは平均標準報酬月額と被保険者期間の月数に応じて変動します。このように、老齢基礎年金と厚生年金は、日本の公的年金システムの中で異なる役割を果たし、老後の生活を支える重要な要素となっています。

目次

厚生年金とは

まずは、厚生年金とはどのようなものなのか、その基本的な概要をご紹介します。

厚生年金の基本概要

公的年金制度は、大きく分けて「国民年金」と「厚生年金」の2つの柱から成り立っています。これらはそれぞれ異なる特徴を持ち、老後の生活を支える重要な役割を果たしています。

国民年金では、加入者が納めた保険料は原則として65歳から「老齢基礎年金」として受け取ることができます。一方で、厚生年金では、別途納められた保険料が65歳から「老齢厚生年金」として支給されます。この2つの年金は、老後の経済的な基盤を形成する上で中心的な役割を担っています。

ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取るための条件、すなわち受給資格は異なります。これらの条件を具体的に理解することは、自身の将来の年金受給において非常に重要です。下記の表では、これらの年金の受給資格について詳細に説明しています。

このように、厚生年金の概要を把握することは、老後の生活設計において非常に重要です。年金制度に関する理解を深めることで、安心して老後を迎えるための準備が可能になります。次のセクションでは、これらの点についてさらに詳しく解説していきます。

 国民年金厚生年金
年金老齢基礎年金老齢厚生年金
受給要件受給資格期間が10年以上老齢基礎年金の受給要件を満たすこと
厚生年金保険の被保険者期間が1か月以上あること

公的年金制度は、以前にも述べたように、国民年金と厚生年金の2階建て構造を持っています。この構造を理解することは、老後の年金受給において非常に重要です。具体的には、1階部分にあたる老齢基礎年金の受給資格期間が10年に満たない場合、2階部分である老齢厚生年金も受け取ることができません。この点は、年金計画を立てる上で非常に重要な要素です。

さらに、2017年8月1日からは、年金を受け取るために必要な受給資格期間が25年から10年に短縮されました。この変更は、より多くの人々が年金を受け取りやすくなるという大きな意味を持っています。このように、年金制度は時代と共に変化し、より多くの人々が老後の安心を得られるように進化しています。

この記事では、公的年金制度の基本的な枠組みと、その中で老齢基礎年金と老齢厚生年金がどのように連動しているのかを理解していただくことを目指しています。年金制度に関する知識は、将来への計画を立てる上で非常に役立ちます。次のセクションでは、これらのポイントについてさらに詳しく掘り下げて説明していきます。

厚生年金の加入期間の計算方法

先ほど触れたように、年金を受け取るための大きなポイントは、「国民年金の受給資格期間」が10年以上あるかどうかです。では、この受給資格期間はどのように計算されるのでしょうか。ここでは、その計算方法について2つの重要なポイントを紹介します。

  1. 国民年金だけでなく厚生年金や共済組合の加入期間も含まれる
    年金の受給資格期間を計算する際、国民年金の加入期間だけでなく、厚生年金や共済組合に加入していた期間も含まれます。これにより、さまざまな職業経歴を持つ人でも、加入期間の計算が容易になります。
  2. 年金額には反映されない合算対象期間や保険料の免除期間も含まれる
    また、実際に年金額の計算には影響しない合算対象期間や、保険料が免除された期間も受給資格期間に含まれます。これは、一定の条件下で保険料の支払いが困難だった場合にも、受給資格の獲得を支援するための措置です。

これらのポイントを踏まえ、受給資格期間の計算式は以下のようになります。

受給資格期間 = 保険料を納めた期間 + 免除された期間 + 合算対象期間(カラ期間)

この計算式により、国民年金でも厚生年金でも、保険料を納めた期間と免除された期間の合計が受給資格期間にカウントされます。この理解は、将来の年金計画を立てる上で非常に重要です。

「合算対象期間(カラ期間)」については、この記事の後半で詳しく解説します。年金制度の理解を深めることで、自分や家族の老後の安心を確保するための基盤を築くことができます。次のセクションでは、これらのポイントについてさらに詳しく掘り下げていきます。

厚生年金はどのくらいもらえる?

この章では、どれほどの額の厚生年金を受け取ることができるのかについて説明します。老齢厚生年金の計算方法は複雑ですが、ここではその主要な部分をわかりやすく解説します。また、さらに詳細な情報を知りたい方は、関連記事も合わせてご参照いただくと良いでしょう。

老齢厚生年金の計算は以下のように行われます。

  • 65歳未満: 定額部分 + 報酬比例部分 + 加給年金額
  • 65歳以上: 報酬比例年金額 + 経過的加算 + 加給年金額

①定額部分

定額部分は、被保険者の加入期間に応じて増加する年金額です。この計算は以下の式で行われます。

  • 定額部分:1,657円(令和5年度4月分、67歳以下の場合) × 生年月日に応じた率 × 被保険者期間の月数
  • ※令和5年度68歳以上の場合、1,652円

この計算により、加入期間が長いほど、受け取れる年金額が増加します。

②報酬比例部分

報酬比例部分は、勤務先での平均標準報酬と加入期間に応じて、受け取れる年金額が増えます。この計算は次の2つの式のうち、より高い金額が適用される方式です。

  1. 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の被保険者期間の月数
  2. (平均標準報酬額 × 7.5/1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数 + 平均標準報酬額 × 5.769/1000 × 平成15年4月以降の被保険者期間の月数) × 1.016(昭和13年4月2日以降に生まれた場合は1.014)

③加給年金額

加給年金額は、受給時に生計を維持されている配偶者や子がいる場合に加算されます。これは、厚生年金の被保険者期間が20年以上あり、65歳到達時(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、生計を維持する配偶者または子がいるときに適用される加算です。

このように、厚生年金の受給額は複数の要素に基づいて計算され、各人の加入期間や報酬額、家族構成によって異なります。この章では、老齢厚生年金を計算するための基本的な要素とその仕組みについてご説明しました。これらの情報を理解し、自分の将来に備えることが大切です。

対象者加給年金額年齢制限
配偶者228,700円(※2)65歳未満であること
(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません)
1人目・2人目の子各228,700円18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子各76,200円18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子

③経過的加算

経過的加算は、老齢厚生年金に上乗せされる特別な加算です。この加算は、厚生年金保険に早期または晩年に加入した人々に対して、年金額が65歳以降も変わらずに維持されるように設計されています。特に、加入期間や加入時期によって65歳以降の年金額が下がってしまう可能性があるため、この加算は非常に重要です。

経過的加算の計算は、以下の式に基づいて行われます。

  • 経過的加算:1,657円(令和5年度4月分、67歳以下の場合) × 生年月日に応じた率 × 厚生年金保険の被保険者月数 - 795,000円(令和5年度4月分、67歳以下の場合) × 昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者月数/加入可能年数 × 12

この計算により、厚生年金保険に加入した時期と加入期間に応じて、適切な加算額が算出されます。この経過的加算は、厚生年金の総額に影響を与えるため、年金受給者にとっては非常に重要な要素です。

経過的加算の概念と計算方法を理解することは、自身の年金額を正確に把握し、将来の経済的な計画を立てる上で役立ちます。このセクションでは、経過的加算の基本的な原理と計算方法について説明しました。次のセクションでは、この加算に関連する他の重要な情報についてさらに詳しく掘り下げていきます。

こんなとき加入期間はどうなる?4つのパターン別に解説

人生にはさまざまな変化があり、それぞれの状況で年金保険料の納付や加入期間に影響が出ることがあります。通常、年金保険料の納付期間は20歳から60歳までとされ、約40年間が想定されています。しかし、例えば20歳で年金を納め始め、29歳で退職すると受給資格期間が9年間となり、年金の受給資格を得られるかが疑問となります。

この章では、人生の様々な局面での年金の受給要件について、具体的に解説します。

①転職する場合も厚生年金の加入期間は継続する

転職をする際、多くの人が「厚生年金保険料が給与から天引きされなくなるかもしれない」と不安に思うことがありますが、実際には転職しても厚生年金の加入期間は継続します。厚生年金保険の適用事業所とは、法人や常時5人以上の従業員を持つ個人事業所を指します。加入者は転職先に年金手帳やマイナンバーカードを提出するだけで、事業主は「被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所に提出する必要があります。

②個人事業主として独立する場合は国民年金に切り替えて継続する

個人事業主として独立する場合、厚生年金保険には加入できませんが、国民年金に切り替えて継続することが可能です。個人事業主は、第1号被保険者として国民年金保険料を納付するか、第3号被保険者として扶養されることができます。また、年金保険料の免除や納付猶予の申請も可能です。これらの選択は、収入が分かれ目となります。年収130万円(または106万円)以上では家族の扶養に入ることができないため、第1号被保険者として国民年金保険料を納付する必要があります。逆に年収130万円以下の場合は家族の扶養に入れますが、家族の扶養に入れない場合には、第1号被保険者として国民年金保険料を支払う必要があります。

このように、人生の変化によって年金制度への対応が変わるため、それぞれの状況に応じた適切な手続きが必要です。年金制度の柔軟性を理解し、自分の状況に合わせた最適な選択をすることが重要です。次のセクションでは、その他のライフイベントにおける年金の対応についてさらに詳しく解説していきます。

③家族の扶養に入る場合は国民年金に切り替えて継続する

人生には予期せぬ変化が伴うもので、例えば退職により年収が130万円未満(あるいは106万円未満)になることもあります。このような場合、第2号被保険者(会社員や公務員など)の親族の扶養に入ることができ、この際、第3号被保険者となることが多いです。

この手続きは、事業主(会社)を通じて日本年金機構に「被扶養者(異動)届」を提出することで行われます。ただし、転職時の場合とは異なり、次のような書類の準備が必要になります。

  • 戸籍謄本や住民票など、被保険者との続柄がわかるもの
  • 所得税の控除対象配偶者でなければ、退職証明書や非課税証明書など収入が確認できる書類

④転職先が見つからず無職の場合も国民年金に切り替わる

転職活動中に離職期間が発生し、無職状態になることもあります。この場合、第2号被保険者から第1号または第3号被保険者への切り替えが必要になります。もし家族の扶養に入れない場合は、第1号被保険者として国民年金保険料を納める義務が生じます。

このような状況では、国民年金保険料の納付が経済的に困難なことが予想されるため、国民年金保険料の免除や納付猶予を受ける選択肢があります。この申請は重要なので、忘れずに行いましょう。

厚生年金の加入期間と受け取れる年金額の関係性をシミュレーション

厚生年金制度では、保険料を1か月でも納付し、受給資格期間が10年以上あれば、老齢厚生年金を受け取る資格が得られます。しかし、厚生年金保険料を納めた期間が短い人と長い人では、受け取れる年金額に大きな差が出ます。たとえば、会社員として1年間のみ保険料を納めた人と、40年間保険料を納めた人の受け取れる年金額は大きく異なります。

この章では、厚生年金の加入期間とそれによって受け取れる年金額の関係についてシミュレーションし、その結果を概算で示します。計算を簡単にするために、年収は一定と仮定しています。このシミュレーションを通じて、厚生年金制度の理解を深め、自身の将来の年金受給額を予測するための手助けになることを目指しています。

厚生年金の加入期間老齢基礎年金老齢厚生年金合計年金額
1年約78万円約2.4万円約80.4万円
10年約78万円約24万円約102万円
20年約78万円約47万円約128万円
40年約78万円約95万円約173万円

厚生年金の加入期間が10年に満たなくても年金を受け取る方法とは?

多くの人が、年金の受給資格期間が10年に満たない場合、年金を受け取ることができないと考えがちですが、実際にはいくつかの方法でこの問題を解決することが可能です。

60歳以上も働き続けて加入期間を延ばす

60歳を過ぎても厚生年金の適用事業所で働き続けることで、加入期間を延ばすことができます。こうすることで、厚生年金保険の被保険者として加入し続けることが可能です。ただし、在職中に年金を受け取る場合、給与と年金の合計額に応じて年金が減額されることもあるため注意が必要です。詳細は「在職老齢年金」に関する記事を参照してください。

国民年金の任意加入制度を利用する

60歳以降でも国民年金に加入し、保険料を納めることで加入期間を延ばすことができます。これにより、受給資格期間を満たすことが可能になります。この制度を利用するためには、次の条件をすべて満たす必要があります。

  • 日本国内に住所を有し、60歳以上65歳未満であること。
  • 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと。
  • 20歳以上60歳未満までの保険料納付月数が480月(40年)未満であること。
  • 厚生年金保険、共済組合等に加入していないこと。

厚生年金保険の高齢任意加入制度を利用する

70歳以上で厚生年金保険の加入期間が不足している人は、勤務先が厚生年金の適用事業所であれば、加入期間を満たすまで厚生年金保険に任意加入することが可能です。この制度を利用すると、高齢任意加入被保険者となります。

特定期間該当届による加入期間の修正

第3号被保険者から第1号被保険者に変わる場合、適切な届出が必要です。これは、配偶者が会社員や公務員でなくなった場合などに適用されます。2年以上の届出を怠ると「未納期間」として扱われ、年金の受給資格に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。このような状況では、「特定期間該当届」を提出することで、未納期間を受給資格期間に算入できる場合があります。

合算対象期間(カラ期間)の利用

合算対象期間とは、受給資格期間に算入されるものの、年金受給額には反映されない期間です。この期間には以下のようなケースが含まれます。

  • 日本人が海外居住中で国民年金に任意加入しなかった期間。
  • 平成3年3月までの学生期間中、国民年金に任意加入しなかった期間。
  • 20歳未満または60歳以上の期間中の第2号被保険者としての被保険者期間。
  • 任意加入したが保険料が未納となっている期間(20歳以上60歳未満の期間が対象)。

これらの合算対象期間を利用することで、受給資格期間を満たす可能性があります。

このように、厚生年金の加入期間が10年に満たない場合でも、上記の方法を利用して年金を受け取る道を探ることができます。それぞれの状況に合わせた適切な手続きを行うことで、将来の安定を確保する手助けとなります。

厚生年金の加入期間をねんきんネットで確認しよう

日本年金機構の提供する「ねんきんネット」は、将来の年金見込額やねんきん定期便を確認できる便利なサービスです。パソコンやスマートフォンからアクセスできるため、転職、結婚、その他のライフステージの変化があった時には、自身の年金情報を定期的にチェックする習慣を身につけましょう。これにより、将来の年金受給に関する不安や疑問を早期に解消できます。

まとめ:厚生年金の加入期間は1か月だけで良いが基礎年金の受給資格を押さえること

厚生年金の加入期間に関する重要なポイントについて解説してきました。厚生年金への加入期間が1か月だけでも受給資格は得られますが、重要なのは国民年金の受給資格期間が10年に満たないと、老齢基礎年金と老齢厚生年金のいずれも受給できないという点です。

また、老齢厚生年金の金額は平均標準報酬月額と加入月数に比例します。そのため、加入期間が短いと受け取れる年金額も少なくなります。転職の際には、被保険者として特別な手続きは不要で、厚生年金の加入期間は自動的に継続されますが、会社員や公務員でなくなった場合、第2号被保険者としての厚生年金への加入は続けられません。

第2号被保険者から第1号被保険者あるいは第3号被保険者に切り替わる際には、適切な手続きが必要となります。この点を忘れずに、年金制度の変化に対応することが大切です。年金に関する正しい知識と適切な手続きは、将来の安定した生活を支えるために非常に重要です。

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