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公務員の年金ガイド2023: 受給額の実情と賢い老後資金構築策

2015年の秋、具体的には10月に、「被用者年金制度の一元化」という重要な変更が行われ、それまでの公務員に特有の「共済年金」は、「厚生年金」という形に一本化されたのです。

年金制度のこのような大規模な見直しに伴い、また、「老後2,000万円問題」や「老後破綻」という言葉が世間に浮上し始めたことで、将来に対する不透明感を抱え、退職後の年金受給額や生活設計に対して心配を感じている方々が少なからずいらっしゃることでしょう。

本稿では、公務員の方々が加入されている年金制度がどのような種類があるのか、また、実際に年金として受け取ることができる金額はどの程度なのかについて、分かりやすく解説を行っております。

さらに、年金だけに頼らず、安定した老後を送るための別の資金作りの方法についても、幅広く提案しています。退職後の生活設計を考える上での貴重な情報として、ぜひともご一読いただき、将来に備える参考にしていただければ幸いです。

公務員の皆様が参加する年金プログラムの多様性

かつて「共済年金」として知られていたものは、「厚生年金」へと一本化 それまでの制度では、公務員や私立学校の教員(ここでは総称して公務員とします)は「共済年金」のメンバーであり、一方で企業の従業員は「厚生年金」の下で保護されていました。

共済年金の特色として、その保険料率は厚生年金に比べて控えめであり、また、「職域加算」と称される、共済特有の追加年金の恩恵を受けることができました。

この比較的低い保険料とより高額の年金給付の組み合わせにより、公務員の方々は企業の従業員と比較して、より有利な年金プランのメンバーであると言えるでしょう。

しかし、公務員と企業の従業員間に存在するこの年金制度の格差を是正するため、2015年10月に制度が一元化されたのです。

【公務員の年金制度:一元化前と後】

一元化が行われる前と後の公務員年金制度の変遷 出典:地方公務員共済組合連合会「公的年金制度の概要等」

重要なポイントは以下のとおりです。

共済年金の終了と、その統一による「厚生年金」への移行 「職域加算」の廃止と、新たに「退職等年金給付」の設立 保険料率の段階的な増加(※) など ※公務員の保険料率は2018年に厚生年金と同率になり、私学教職員は2027年に同率に達する予定です。 国民年金(老齢基礎年金) 公務員の方が厚生年金の新たな加入者となりましたが、同時に彼らは国民年金の加入者でもあります。厚生年金の保険料の一部は、国民年金の費用にも割り当てられています。

年金制度の基礎となる国民年金は、日本国内に住む20歳から60歳までの全国民が対象の制度です。

国民年金のメンバーで10年以上の加入(自営業者などは保険料の支払い)があると、65歳から加入期間に応じた老齢基礎年金の支給を受ける資格が得られます。

国民年金は以下のように第1号から第3号までのカテゴリーに分けられ、会社の従業員や公務員は「国民年金第2号被保険者」とされます。

【国民年金のカテゴリー】

種類 該当者 保険料 第1号被保険者 自営業者、学生、 無職の方々など 国民年金保険料 第2号被保険者 企業の従業員や公務員など 厚生年金保険料 第3号被保険者 専業主婦など 保険料は不要です (第2号被保険者の加入している被用者年金制度が負担) 参考:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

厚生年金(老齢厚生年金) 厚生年金(老齢厚生年金) 引用:地方公務員共済組合連合会「公的年金制度の概要等」

公務員にとっての年金の第二層は、一元化以前は「共済年金」でした。

しかし、一元化後は「厚生年金」へと移行しました。

厚生年金は、給与を得る形で雇用されている企業の従業員や公務員が加入するため、「被用者年金」とも呼ばれています。

厚生年金の保険料率は18.3%と定められていますが、この費用は労働者と雇用者が折半で負担するため、実際の従業員や公務員が支払う額はこの半分になります。

少子高齢化の影響で年金の財政が逼迫する中、保険料率は徐々に上昇してきましたが、2004年の年金制度の改正で18.3%が上限とされました。

企業の従業員は2017年、公務員は2018年に保険料率がこの上限の18.3%に達し、私学教職員は2027年に達する予定です。

参考:地方公務員共済組合連合会「公的年金制度の概要等」

退職等年金給付 退職等年金給付 引用:地方公務員共済組合連合会「公的年金制度の概要等」

公務員が年金一元化以前に享受していた「職域加算」は、2015年10月の一元化に伴い廃止されました。

その代わりに、新たな給付として「退職等年金給付」が設立されました。

この給付は、公務員が退職する際に一度だけ受けられるもので、通常の老齢年金に加えて支払われるものです。

給付額は、公務員の勤務期間や最終給与、勤務していた地方自治体によって異なります。

退職等年金給付を受けるには、65歳に達してからでなければならず、また、公務員としての最終在籍地方公共団体から申請する必要があります。

参考:地方公務員共済組合連合会「公的年金制度の概要等」

【公務員年金の現状と課題】

日本の公務員年金制度は、多くの変遷を経て現在に至っています。

一元化前は、公務員には独自の「共済年金」がありましたが、これが「厚生年金」に統合され、一般の労働者と同様の制度になりました。

しかし、これにより、公務員専用の追加給付である「職域加算」が廃止され、「退職等年金給付」という新たな給付が設けられました。

今後の課題としては、年金制度の持続可能性の確保が挙げられます。

少子高齢化の進行や経済状況の変動に伴い、年金制度の財政はますます厳しい状況に直面しています。

これに対応するため、保険料率の見直しや支給資格の変更など、さまざまな改革が検討されています。

しかし、これらの改革は公務員を含むすべての年金加入者に影響を及ぼすため、慎重な議論と計画が必要です。

参考:地方公務員共済組合連合会「公的年金制度の概要等」、「年金制度の現状と課題」

公務員の年金はいくらもらえるのか

公務員の年金受給額は、いくつかの要素に基づいて計算されます。以下は、国民年金と厚生年金の基本的な概要、および公務員の退職金に関する情報です。

  1. 国民年金:
  • 国民年金の最高年金額は、2022年度で777,800円/年です。
  • これは、20歳から60歳までの40年間、国民年金に加入している者が受け取ることができる額です。
  • 老齢基礎年金の計算は以下の式によります: 777,800円 × (加入・納付月数)/ 480ヶ月。
  • 例として、加入月数が444ヶ月の場合、受け取れる年金額は約719,415円になります。
  1. 厚生年金:
  • 厚生年金の受給額は約108万円/年となることが多いです。
  • 老齢厚生年金の金額は、報酬比例部分、経過的加算、加給年金額の合計で計算されます。
  • 例として、平均標準報酬額が37万円で、加入月数が504ヶ月の場合、報酬比例部分は約102万円、経過的加算は約6万円となり、合計で約108万円の年金が受け取れます。
  1. 年金払い退職給付金:
  • これは、65歳での受給開始時に積み立てた金額と年金原価率を基に計算されます。
  • 2022年9月までの年金原価率は、終身年金で23.033747、20年有期年金で20.000000です。
  • 例えば、給付算定基礎額が約280万円の場合、終身年金は約6万円/月、有期年金は約7万円/月となります。
  1. 退職金:
  • 国家公務員の平均退職金は約2,140万円、地方公務員は約2,180万円です。
  • 職種によっても異なりますが、一般的に公務員の退職金の平均は約2,160万円となっています。

具体的な年金額については、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などのサービスを通じて個々に確認することが可能です。年金制度は複雑であり、個々の加入状況や納付実績によって異なるため、正確な情報はこれらのサービスや直接年金事務所での相談を通じて得ることをお勧めします。

年金と退職金で、老後の資金は十分か?

生活費には毎月平均で22.1万円が必要 生命保険文化センターが行った「令和元年度 生活保障に関する調査」によれば、夫婦2人の世帯で老後に必要とされる最低限の生活費は、月平均で22.1万円です。

この調査によると、「20万円~25万円未満」が必要だと回答した人が最も多く、29.4%を占めていました。次いで「30万円~40万円未満」が17.0%、「25万円~30万円未満」が13.1%と続きます。

年齢や職業による大きな違いは見られませんでしたが、世帯年収が上がると、必要とされる生活費の平均も上昇します。特に、世帯年収が1,000万円を超えると、必要な平均生活費は26.1万円に達し、30万円以上が必要だと答えた人が全体の40%以上を占めています。

参考:生命保険文化センター「老後に必要な生活費はどの程度?」

快適な老後のためには、平均で36.1万円が必要 「令和元年度 生活保障に関する調査」によれば、余裕を持った老後生活のためには、最低限の生活費にプラスして平均で14万円が必要です。

この結果、快適な老後生活には月平均で36.1万円が必要とされます。

追加資金は主に「旅行やレジャー」(60.7%)、「趣味や教養」(51.1%)、「日常の生活費の向上」、「家族や友人との交流」(48.8%)などに使われることが予想されます。

ここでも、世帯年収が高いほど、余裕を持った老後生活に必要な金額が増えます。世帯年収が1,000万円超である場合、必要な平均金額は41.7万円で、これは全体平均を5万円以上上回ります。

年金やその他の収入だけでは不足する月々の生活費を補うため、老後資金の準備が必要です。

65歳時点での平均余命は、男性が約20年、女性が約25年です。この点を踏まえ、どの年齢まで生存するかを考慮し、どれだけの資金準備が必要かを計算しましょう。

また、日々の生活費に加え、家の修繕や予期せぬ大病気などのために、さらなる費用が必要になる可能性も考慮しておく必要があります。

年金以外で老後資金を作る方法:公務員編

公務員も老後の資金準備に頭を悩ませています。幸い、年金以外にも様々な選択肢があります。

  1. iDeCo(個人型確定拠出年金): iDeCoは自己責任に基づく私的年金で、税制上の優遇が受けられます。掛金上限は公務員で月12,000円、運用成果に応じて将来的には大きな資金が期待できます。
  2. 積立NISA: 積立NISAでは年間40万円までの投資が運用益の非課税となります。20年間の積み立てで資産形成を目指し、柔軟な資金の引き出しが可能です。
  3. 個人年金保険: 個人年金保険は保険料が所得控除の対象となり、安定した年金収入を得られます。ただ、期待するリターンは控えめです。
  4. 不動産投資: 不動産からの家賃収入は安定した収益源になりますが、物件選びや管理が重要です。信頼できるパートナー選びが成功のカギとなります。

各方法にはメリット・デメリットがあるため、自身のライフスタイルやリスク許容度に合わせて選択しましょう。公務員の安定した職場環境を生かして、将来に備える計画を立てることが重要です。

まとめ:公務員も年金だけに頼らず、積極的な老後資金の準備を

老後の資金準備は、公務員であろうと会社員であろうと、避けて通れない重要な課題です。

社会は少子高齢化の波に直面し、年金制度の将来は不透明な面があります。この現実を踏まえ、公的年金のみを頼りにするのではなく、自身で資産形成の手段を考え、行動に移すことが求められます。

始める一歩として、公的年金の受給見込み額と想定される老後の生活費を比較し、必要な資金を算出しましょう。もし不足が予想されるなら、iDeCoや積立NISA、個人年金保険、不動産投資など、様々な選択肢から自分に適した方法を選び、早期からの準備を心掛けることが大切です。

安定した職に就いているからこそ、前向きな資産運用で、充実した老後を迎える準備をしましょう。時間と共に成長する資産は、将来の安心に直結します。

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