国債は、他の金融商品に比べて利益が上がりやすく、また価値の低下の可能性も低いとして、多くの人々に注目されています。しかし、一方で「国債投資を控えるべきだ」との意見も耳にすることがあり、投資の選択に迷う方も少なくないでしょう。
この記事では、なぜ「国債投資を控えるべき」という意見が存在するのかについて、深く掘り下げていきます。また、国債の長所や短所も詳細に解説し、国債投資を検討している方が判断材料として活用できるようにします。
国債の基本的な概念
初めに、国債に関しての基本的な仕組みや、それに類する種類について説明を行いましょう。
国債とは、国が発行する一種の債券
国債とは、具体的には、国が資金を調達する際に市場に発行する有価証券の一種です。投資者は国債を購入することで、国へ資金を融通し、一定期間ごとに利息を得ることができます。そして、最終的には満期を迎えると元本を取り戻すことができます。
もし、満期まで待つことができない場合には、その国債を換金して現金を得ることもできます。ただし、国債の換金に関する手順は、後ほど説明する国債の種類により異なる点に注意が必要です。
国債には「個人向け国債」と「新窓販国債」という二つのカテゴリが存在する
国債には、主に「個人向け国債」と「新窓販国債」という2つの主要なカテゴリがあります。前者は個人投資家のみが購入可能なもので、後者は個人だけでなく法人も購入することができる国債です。
これら二つの国債の重要な違いは、満期前に換金を行った際、元本が保証されるか否かという点です。具体的には、個人向け国債は満期前の換金でも元本が保証され、国に対して売却する形となります。一方で、新窓販国債は市場に売却するため、市場の動きにより損失を被る可能性があります。
購入に関しても違いがあり、個人向け国債は最低1万円から1万円単位での購入が可能ですが、新窓販国債は最低5万円から5万円単位での購入が必要となります。
個人向け国債は、中途換金時の元本保証や、年利0.05％の最低保証があることから、銀行預金に比べてより利点のある金融商品として認識されています。
参考文献：財務省「個人向け国債」
参考文献：財務省「新窓販国債」
なぜ「国債投資は控えるべき」との声が挙がるのか
国債は、その安定性から通常は低リスクの投資先とされています。しかし、「国債投資は控えるべき」との意見が存在する背景には、特定の2つのリスク要因が影響しているのです。
理由①：元本が返ってこない可能性、いわゆるデフォルトリスク
国債は、国自体が発行する金融商品であり、理論上は国が財政的に困窮すると、元本が戻ってこないというリスク、すなわちデフォルトリスクが存在します。
日本の国の債務残高は、驚くべき1,000兆円近くにものぼり、これは国民総生産（GDP）の約2.5倍以上に相当します。この債務が拡大し続けていることから、将来的に日本が財政破綻を迎えるのではないかという不安の声も存在します。
とはいえ、日本国債がデフォルトする可能性は低いとの見解が多く見受けられます。なぜなら、日本の経常収支は黒字であり、国債の大部分は日本銀行や国内の金融機関が保有していることから、国内で国債が消化されることが期待されているためです。
理由②：金利が変動すると価格が変わる、つまり金利変動リスク（新窓販国債に関して）
新窓販国債においては、金利が上昇するとその市場価格が減少するというリスクがあります。これは、金利が高まると他の高金利商品が増え、それに比べて低金利の国債の魅力が薄れるためです。
2022年には、世界規模でのインフレの影響を受けて金利が上昇し、それに伴い国債の価格が低下しました。国債を満期まで保有していれば元本割れのリスクは避けられますが、途中で現金化する必要が出た場合、市場で売却する際に損失を被る可能性があります。
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個人向け国債における不利な点
国債には、先に触れたリスク以外にも、投資家にとっていくつかの不利な側面が存在しています。それらの主要な点を詳しく解説いたします。
不利な点①：魅力的な利回りは望むべくもない
最初に挙げられる不利な点として、国債に投資した際には、特に高い利回りを望むことは難しいという事実があります。2023年4月6日から28日にかけて募集された個人向け国債の利回りは、以下のようになっています。
- 変動金利型10年満期：0.30%
- 固定金利型5年満期：0.14%
- 固定金利型3年満期：0.05%
これらは銀行預金の金利よりは若干優れていますが、大きな収益を期待するのは難しいでしょう。
不利な点②：最初の1年間は基本的に途中での換金が不可能
次に、個人向け国債は基本的に購入から1年間は途中で換金することができないという点もあります。もし急遽資金が必要になっても、国債を即座に売却することはできません。
国債でも銀行預金でも、中途換金しても元本割れの心配はありませんが、1年以内の換金に関しては銀行預金がより利便性が高いと言えます。
新窓販国債に関しては、購入直後から市場で売却が可能ですが、市場の動きによっては元本割れのリスクを抱える可能性があるのです。
不利な点③：途中で換金すると利息が少なくなる
三つ目の不利な点として、個人向け国債を途中で換金すると、利息が減少してしまうことが挙げられます。「直前2回分の各利子（税引前）相当額×0.79685」が減額されるのです。
国債の利回りは本来低めであり、さらに途中換金を行うと1年分の利子のおおよそ8割が減少するため、元本が大きく増えることはありません。途中換金にはいくつかの制約やデメリットが伴うため、満期までの保有を前提として国債への投資を考慮することをお勧めします。
個人向け国債における利点
このセクションでは、個人向け国債に投資する際の主要な利点について解説していきます。
利点①：国による保証により安心感がある
最初に挙げられる利点は、国債は国によって保証されているため、その安全性が高いという特徴です。国債や社債などの債券類は、国や企業が元本を保証しているので、株式投資のように価格が下落するリスクが少ないのです。特に、国が保証している国債は、企業が保証する社債と比較しても、その安全性は一層高まります。
利点②：1万円という少ない額から始められる
国債のもう一つのメリットは、低い金額から投資を開始できるという点です。個人向け国債は1万円単位、新窓販国債は5万円単位から購入が可能で、初めての投資としても敷居が低いです。
少ない投資金額で始めることにより、リスクを最小限に抑えることができ、投資初心者でも気軽に国債への投資を始めることができます。投資は少額から始めて、経験を積みながら徐々に投資額を増やすのが賢い方法です。
利点③：銀行預金と比べて高い金利が魅力
三つ目の利点は、銀行預金に対して国債の金利が高いという点です。一般に、安全性が高い投資は利回りが低いと言われますが、国債は銀行預金と比較してもやや優れた金利を提供しています。
安全性を重視しつつも、少しでも高い利益を追求したい場合、国債は良い選択肢となります。ただ、急に資金が必要になる可能性がある場合は、銀行預金を選んだ方が安心です。
利点④：手数料がかからず、手軽に管理できる
最後に、国債の購入や口座の管理に関して手数料がかからないというメリットも大切です。これにより、複数の国債に分散して投資したり、手間をかけずに購入や売却ができるのです。
資産運用を行う際には、リスクやリターンだけでなく、投資にかかるコストも重要な判断基準となります。
結論：安定を求めて長い期間投資を考えている方に、国債は適しています
国債に投資することに関して、「デフォルトリスクや金利変動リスク（新窓販国債の場合）が存在するから国債は避けた方が良い」という主張も一部で見られます。それにも関わらず、他の様々な金融商品との比較を行った際には、国債の安全性が高いと判断されることが一般的です。
国債の利回りは特に高いわけではないため、資産運用を通して大幅に利益を上げたいという方にはあまり適していないかもしれません。国債を特に推奨する対象となるのは、資産の成長よりも安定性を優先し、長期にわたって投資を行いたいと考慮している方々です。さらに、途中での換金を考慮する場合、新窓販国債よりも個人向け国債を選択することで、より安定した運用が期待できるでしょう。
